金木犀の誓い

 

 

作者:片摩 廣

 

 

 

登場人物

 

 

神原 寧音(かんばら しずね)・・・専門学校、卒業後は大手プロダクションに所属

                  順調に女優として活動していた

                  事故にあい、映画の主演は降板になる

                  望月 章介が好き

 

 

峯下 紗夜(みねした さや)・・・専門学校、卒業後は寧音と同じで女優として活動する

                 慶志朗の応援も力となり、徐々に活躍の場も広がる

                 寧音の事故がきっかけで、映画の主演に抜擢される

                 漆川 慶志朗が好き

 

 

望月 章介(もちづき しょうすけ)・・・専門学校、卒業後は、ある出来事がきっかけで、

                    精神的に不安定になり、芸能界、目指すのを止めてしまう

                    峯下 紗夜が好き

 

 

漆川 慶志朗(しつかわ けいしろう)・・・専門学校、卒業後は、芸能界は諦めて、家業を継いでいる

                     紗夜を影ながら応援している

                     神原 寧音が好き

                     

 

 

 

 

比率:【2:2】

 

 

上演時間:【70分】

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

CAST

 

神原 寧音:

 

峯下 紗夜:

 

望月 章介:

 

漆川 慶志朗:

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

神原(N):「残暑も落ち着き肌寒さを感じ始める9月半ばから10月頃・・・。

       ・・・病室の窓から、ふと香って来た花の香りに・・・、私は心を揺さぶられた・・・。

       今は遠い昔の・・・、学生の頃の思い出に・・・」

 

 

 

 

 

(9月の半ば 専門学校からの帰り道)

 

 

 

 

神原:「あっ・・・、金木犀の香り・・・。良い匂い・・・」

 

 

 

 

峯下:「寧音ってば、また、金木犀の前で立ち止まってる・・・。本当、好きだよね・・・。

    ほらっ、早くしないと電車、間に合わないよ」

 

 

 

漆川:「お~い、そんな所で、二人共、何してるんだ・・・。急いでくれよ」

 

 

 

望月:「・・・文化祭の準備に、手間取ってたのは、何処の誰だった?」

 

 

 

漆川:「うっ・・・」

 

 

 

峯下:「そうよ、駅まで、歩く羽目になったのは、元はと言えば、漆川が元凶じゃない」

 

 

 

漆川:「お前ら、それは酷過ぎだろ・・・。俺は、観に来てくれる御客様の為に・・・、頑張ってたのに・・・」

 

 

 

峯下:「はいはい、文句は歩きながらで、聴いてあげるってば。

    ほらっ、寧音も、早く」

 

 

 

神原:「うん・・・」

 

 

 

望月:「いつもの元気はどうした? 今日の寧音は何だか変だったぞ・・・」

 

 

 

神原:「・・・今度の役、私には身が重いなって思ってね・・・」

 

 

 

峯下:「何を弱気になってるのよ・・・。私もあの役、狙ってたのに・・・。そんなのは贅沢な悩みよ」

 

 

 

漆川:「そうだそうだ。章介と寧音は主役とヒロインに選ばれたんだから、もっと自信を持ってくれないと困るぜ」

 

 

 

望月:「俺は、お前が選ばれた悪役の方が、演じてみたかったんだけどな・・・」

 

 

 

漆川:「おっ? そうなのか? それなら、明日、先生に頼んで、役の見直しを頼もう・・・!」

 

 

 

峯下:「何を考えてるのよ・・・、そんなのは無理よ。第一、クラスのメンバーが、納得するとでも思ってるの?

    ねっ・・・? 寧音」

 

 

 

神原:「紗夜の言う通り、選ばれた以上は・・・、私、頑張るよ・・・」

 

 

 

 

峯下:「それでこそ、私の認めたライバル。・・・本番は、いびり倒してあげるんだから、覚悟しといてよね」

 

 

 

 

神原:「お手柔らかにね・・・」

 

 

 

 

峯下:「残念だけど、手加減無用よ」

 

 

 

 

神原:「そんな~・・・」

 

 

 

 

望月:「やばい・・・。乗車予定の電車まで、残り10分・・・」

 

 

 

漆川:「もうそんなに経つのかよ・・・。はぁ~・・・」

 

 

 

峯下:「文句禁止。ねぇ、駅まで、後、どれくらいかかる?」

 

 

 

望月:「このペースで歩いてたら、20分弱だな・・・」

 

 

 

峯下:「間に合わないじゃない・・・! よしっ、皆、駅まで走るわよ・・・!」

 

 

 

神原:「え~、準備で疲れてるのに、走るの・・・?」

 

 

 

漆川:「この電車を逃したら、予約してるお店の時間に、間に合わないぜ」

 

 

 

望月:「散々、待たされた上に、適当な場所で、夕飯なんか、俺はごめんだ。

    さぁ・・・、本番までの体力造りだと思って、走るぞ・・・!!」

 

 

 

 

漆川;「おう!」

 

 

 

峯下:「ええ!」

 

 

 

神原:「3人共、待って・・・。置いてかないでよ~・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

(現在、病室)

 

 

 

 

峯下:「・・・久しぶりね、寧音・・・どう、体の方は・・・?」

 

 

 

神原:「紗夜・・・!? ・・・どうして、此処に来れたの・・・。

    マネージャーにも、関係者以外は秘密厳守にって、伝えたのに・・・」

 

 

 

峯下:「相変わらず、人の気持ちなんてお構いなしなのね・・・。・・・これ、お見舞いの品よ・・・」

 

 

 

神原:「そんな物、要らない・・・。持って帰って・・・」

 

 

 

峯下:「・・・映画の降板、聞いた・・・。残念だったわね・・・」

 

 

 

神原:「どうせ、嘲笑いに来たんでしょう・・・。出てって・・・」

 

 

 

峯下:「今は何を言っても無駄みたいね・・・。・・・あっ、この香りは・・・、金木犀・・・」

 

 

 

神原:「・・・どうして貴女が来たの・・・。・・・章介は、何故、見舞いに来ないのよ・・・」

 

 

 

峯下:「・・・章介は・・・、どしても来れない理由があるの・・・。だから私が代わりに・・・」

 

 

 

神原:「どんな理由よ・・・。私が、そんな説明で納得出来ると思ってるの?」

 

 

 

峯下:「思ってない・・・」

 

 

 

神原:「痛っ・・・」

 

 

 

峯下:「ほらっ、安静にしてないと駄目よ・・・」

 

 

 

神原:「お願い・・・。出てって・・・。こんな惨めな姿・・・、貴女にも見られたくない・・・」

 

 

 

峯下:「また来るから・・・。・・・お大事にね・・・」

 

 

 

神原:「・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(専門学生時代、ファミレス)

 

 

 

 

漆川:「・・・はぁ~、お腹が空いて、死にそうだ・・・。早く、注文、頼もうぜ・・・」

 

 

 

望月:「・・・」

 

 

 

峯下:「章介ってば、いつまで膨れているのよ・・・。仕方が無いでしょう・・・。ほらっ、早く選んで・・・」

 

 

 

望月:「電車には間に合ったのに・・・、この仕打ちは無いだろう・・・」

 

 

 

漆川:「店側の手違いで、予約が出来てなかったなんて、ツイてなかったよな・・・」

 

 

 

神原:「でもでも、物は考えようよ。次回の予約は出来たんだし、おまけにドリンク券まで、付けて貰えたし」

 

 

 

峯下:「それもそうよね~。・・・さ~て、何、食べようかな~」

 

 

 

望月:「お前ら、よくこんなチェーン店のファミレスで喜べるな・・・」

 

 

 

漆川:「最近のファミレスも、捨てたもんじゃないよ。・・・ドリンクバーの種類も豊富だし・・・。

    なっ・・・、飲み物、取りに行こうぜ」

 

 

 

峯下:「それもそうね。荷物あるから、二人ずつ交代で行きましょう」

 

 

 

漆川:「賛成~。そうと決まれば、章介・・・」

 

 

 

峯下:「ほらっ、慶志朗、行くわよ」

 

 

 

漆川:「え? 俺は、章介と・・・」

 

 

 

峯下:「良いから、来なさい・・・!」

 

 

 

神原:「二人共、行ってらっしゃ~い。・・・ねぇ、章介・・・、何にするか決めた・・・?」

 

 

 

望月:「これと言って、食べたい物が見つからない・・・」

 

 

 

神原:「じゃあ、私が決めてあげようか? 章介は嫌いな物、ある?」

 

 

 

望月:「特に無いけど。任せて良いのか?」

 

 

 

神原:「むしろ任せてくれたら、嬉しいと言うか・・・」

 

 

 

望月:「そっか。それなら、頼む・・・」

 

 

 

神原:「うん・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

峯下:「二人共、良い感じじゃない・・・」

 

 

 

漆川:「強引に引っ張って来た理由は、これかよ・・・。それにしても、あいつら、いつの間に・・・」

 

 

 

峯下:「私が見る限りは、まだ付き合ってないと思うけど・・・。良い感じは、間違いないわよね~」

 

 

 

漆川:「ふ~ん・・・。そんな物か・・・」

 

 

 

峯下:「・・・その、・・・慶志朗は、今は誰か好きな人は・・・、居ないの?」

 

 

 

漆川:「特に居ないけど・・・。今は、演技の勉強に集中したいから、恋愛は二の次かな。

    ・・・そういう紗夜は、どうなんだよ?」

 

 

 

峯下:「ふえっ!?」

 

 

 

漆川:「どうした? そんなに慌てて・・・」

 

 

 

峯下:「まさか、聞き返されるなんて思ってなかったから、つい・・・。

    私も・・・、今は居ないけど・・・」

 

 

 

 

漆川:「そっか、じゃあ同じだな。・・・そうだよな、覚えなきゃ行けない事は山のようにあるし・・・、

    今は、貪欲に学ぶのみ・・・。・・・それにしても、種類が多くて迷うな~・・・」

 

 

 

 

峯下:「ふふ・・・、優柔不断な慶志朗らしくて、笑っちゃう・・・!!」

 

 

 

漆川:「悪かったな、優柔不断で・・・。紗夜は何にするか決めたのかよ?」

 

 

 

 

峯下:「私はね~・・・、う~ん、私も、まだ悩み中・・・」

 

 

 

 

漆川:「何だ、そりゃあ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

神原:「・・・紗夜と慶志朗、戻って来ないけど、大丈夫かな?」

 

 

 

望月:「他のファミレスと違って、種類が豊富みたいだし・・・、何にするか迷ってるんだろう・・・。

    ・・・こんな所で、テンション上がるのが羨ましいよ・・・」

 

 

 

神原:「そうかな~。私も、種類豊富だと嬉しいけど・・・。ねぇ、章介は、いつもどんな所で、食事してるの?」

 

 

 

望月:「最近は、ヘルシー志向の個人店とか・・・、自炊が多い・・・」

 

 

 

神原:「自炊してるんだ・・・。偉いな~」

 

 

 

望月:「寧音は、自炊しないのか・・・?」

 

 

 

神原:「私は、むしろ食べる専門。・・・料理はお母さんに教えてもらったけど・・・、駄目だった・・・。

    きっと、才能が無いんだよ・・・」

 

 

 

望月:「そんな事は無いと思うぞ。・・・食べるのが好きな人なら、料理も上達するって、本で読んだ事がある」

 

 

 

神原:「へぇ~、それなら、今度、チャレンジしてみようかな~。

    あのさ・・・、上手く出来たら・・・、味見してくれる・・・?」

 

 

 

望月:「俺でも良ければ、別に良いけど・・・」

 

 

 

神原:「やった。・・・約束だからね」

 

 

 

望月:「おう・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

漆川:「・・・おい・・・、まだ悩んでるのかよ・・・」

 

 

 

峯下:「お互い様でしょう。・・・よしっ、やっぱり、いつものメロンソーダにしようっと」

 

 

 

漆川:「散々悩んで、定番ね・・・。ちょっとは冒険しろよ~」

 

 

 

峯下:「そういう慶志朗こそ、いつものコーラじゃない・・・。人の事、言えるわけ?」

 

 

 

漆川:「俺は・・・、好きだから良いんだよ・・・。小さい頃は、飲みたくても、飲めなかったんだから・・・」

 

 

 

峯下:「・・・ふ~ん。その反動が暴走して、今に至るってわけね」

 

 

 

漆川:「暴走だと・・・?」

 

 

 

峯下:「あっ、そろそろ戻らないと、流石にまずいわね・・・。

    早く入れて、帰りましょうって・・・、あああああああ!!!! 何するのよ~!!!」

 

 

 

漆川:「反動なんて言ったお返しだよ」

 

 

 

峯下:「折角のメロンソーダが・・・」

 

 

 

漆川:「コーラと混ざって、抹茶色だな・・・」

 

 

 

峯下:「よくも・・・。そっちがその気なら・・・。えいっ!」

 

 

 

漆川:「ああああああああ!!! おい、俺のまで、メロンソーダ、混ぜるなよ・・・!!!」

 

 

 

峯下:「ふん、メロンソーダの仇よ・・・。責任持って、最後まで飲みなさい・・・!」

 

 

 

漆川:「言われなくても、飲むよ。・・・ふんっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

神原:「あっ、戻って来た。・・・二人共、遅かったじゃない・・・って・・・、何そのドリンク・・・?」

 

 

 

漆川:「紗夜に聞いてくれ・・・」

 

 

 

神原:「ねぇ、紗夜・・・。それって・・・?」

 

 

 

峯下:「・・・慶志朗が、メロンソーダにコーラ、混ぜたせいよ・・・」

 

 

 

漆川:「お前も、その後、俺のコーラにメロンソーダ、混ぜたじゃないか・・・」

 

 

 

神原:「二人共、子供なんだから・・・」

 

 

 

望月:「幾ら飲み放題とはいえ、はしゃぎ過ぎだ・・・。責任持って飲むんだぞ」

 

 

 

漆川:「は~い・・・」

 

 

 

峯下:「は~い・・・」

 

 

 

神原:「それじゃあ、私達もドリンク、取りに行こうか」

 

 

 

望月:「そうだな・・・。・・・お前達、大人しく待ってろよ」

 

 

 

漆川:「分かってるよ」

 

 

 

峯下:「行ってらっしゃ~い。・・・はぁ・・・」

 

 

 

漆川:「溜息付いてないで、飲んでみろよ」

 

 

 

峯下:「全く、誰のせいだと思ってんのよ・・・。・・・。・・・あっ・・・」

 

 

 

漆川:「どうした? やはり不味いのか・・・?」

 

 

 

峯下:「・・・不味い・・・」

 

 

 

漆川:「・・・何だ、チャレンジ、失敗かよ・・・。飲みたくね~な」

 

 

 

峯下:「責任もって、飲むんでしょ・・・?」

 

 

 

漆川:「分かってるよ・・・。・・・よし・・・。・・・あっ・・・」

 

 

 

峯下:「どう・・・?」

 

 

 

漆川:「・・・思ってたより、美味しいじゃね~か。・・・ビビッて損した~」

 

 

 

峯下:「美味しいなら、最後まで飲みなさいよ」

 

 

 

漆川:「飲まないんなら、俺が貰ってやろうか?」

 

 

 

峯下:「馬鹿・・・!? 何を言い出すのよ・・・!!」

 

 

 

漆川:「そんなに驚かなくて良いだろ。俺は親切心で言っただけで・・・」

 

 

 

峯下:「お気遣いなく。ちゃんと最後まで飲むわよ」

 

 

 

漆川:「ああ、そうかよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

神原:「うわ~。本当に、種類、沢山あって迷うね~。ねっ、どれにする?」

 

 

 

望月:「俺、珈琲に決めたよ。・・・じゃあ、先に戻ってるから」

 

 

 

神原:「え? ちょっと・・・。・・・そんな~・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(現在 病室)

 

 

 

 

神原:「ふっ・・・。章介・・・、昔から、私になんて・・・、興味無かったわね・・・」

 

 

 

 

(ノック音)

 

 

 

神原:「どうぞ・・・」

 

 

 

 

漆川:「・・・よう・・・、久しぶり・・・。・・・体の具合はどうだ・・・?」

 

 

 

 

神原:「慶志朗・・・。・・・そう・・・。・・・紗夜が教えたのね・・・。

    ・・・見ての通りよ・・・」

 

 

 

 

漆川:「・・・命が助かっただけ、良いじゃないか・・・。俺がどんなに心配したか・・・」

 

 

 

 

神原:「命があれば、良いって何よ・・・。・・・私は、長年の夢も全て、水の泡になったと言うのに・・・。

    人の気も知らないで、勝手な事、言わないで。・・・何しに来たのよ・・・」

 

 

 

漆川:「何しに来たは無いだろう・・・。・・・寧音が事故にあったと、紗夜から電話があったから、

    稽古も切り上げて、駆け付けたんだぜ・・・」

 

 

 

神原:「・・・稽古・・・? へぇ~・・・あんなに嫌がってたのに、受け継いだんだ・・・」

 

 

 

 

漆川:「仕方が無いだろう・・・。いずれは決まってた運命だったんだ・・・」

 

 

 

 

神原:「ねぇ・・・、章介は、今、どうしてるの・・・?」

 

 

 

 

漆川:「・・・紗夜に聞いたんだろう。・・・俺の口からも、教える事は出来ない・・・」

 

 

 

 

神原:「・・・そうやって、また私だけ、除け者扱いするんだ・・・」

 

 

 

 

漆川:「まただと? あの時は・・・、お前が先に、俺達から離れたんだろう・・・?」

 

 

 

 

神原:「ええ、そうだったわね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

(文化祭の終了後)

 

 

 

 

峯下:「あっ・・・、慶志朗。・・・お疲れ」

 

 

 

漆川:「おう。・・・あれ? 章介と寧音は何処に行った・・・?」

 

 

 

峯下:「章介なら、公演に来てくださった御客様に、御見送りに行ったわよ。

    寧音は、何か先生に呼ばれてた・・・」

 

 

 

漆川:「二人共・・・、ちゃんと戻ってくるだろうな・・・。この後、舞台のバラシとか色々あるってのに・・・」

 

 

 

峯下:「また夜遅くまで、居残り決定かしら・・・」

 

 

 

漆川:「・・・また駅まで走るなんて、ごめんだからな・・・」

 

 

 

峯下:「あっ、そんな事もあったあった・・・! ・・・あれから、もう1年が経つのね~・・・」

 

 

 

漆川:「・・・俺達も来年の春には・・・、この学校も卒業だな・・・。2年なんて、あっという間だ・・・」

 

 

 

峯下:「・・・1年前は・・・、今、思い出しても、散々だったわよね・・・」

 

 

 

漆川:「あぁ・・・。・・・ミノタウロス、演じた時は、苦労したぜ・・・」

 

 

 

峯下:「・・・ミノタウロスが迷宮に閉じ込められ、人間を食べる気持ちに、葛藤してたわよね・・・」

 

 

 

漆川:「それに比べて、章介と寧音は、去年の文化祭から、才能が発揮して・・・、今回の公演も大成功だったし・・・、

    自分の実力不足とはいえ・・・、悔しさも残るな・・・」

 

 

 

峯下:「そんな事無い!」

 

 

 

漆川:「え? いきなりどうした・・・?」

 

 

 

峯下:「慶志朗、1年前のミノタウロスの時は・・・、自分の役を演じる事に精一杯で、余裕が無かったけど・・・、

    今回の、夏の夜の夢は・・・、ちゃんと役柄を理解して・・・、立派に演じてた・・・。

    ・・・だからもっと胸を張りなさいよ! 私達は、1年前の自分達より、ちゃんと成長してるんだから・・・」

 

 

 

 

漆川:「ありがとうな・・・、紗夜」

 

 

 

峯下:「落ち込んでるんなんて、慶志朗らしくないんだからね」

 

 

 

漆川:「あぁ、その通りだ・・・。落ち込んでる暇なんて無いんだ・・・。俺には・・・」

 

 

 

峯下:「それって・・・」

 

 

 

望月:「二人共、待たせたな・・・。・・・あれ? 寧音は、どうした?」

 

 

 

峯下:「それが・・・」

 

 

 

望月:「ん?」

 

 

 

神原:「ごめんね~・・・。・・・先生の話が長引いちゃって・・・」

 

 

 

望月:「先生に呼ばれてたのか・・・?」

 

 

 

神原:「うん、ちょっとね・・・」

 

 

 

峯下:「何か様子が変だけど・・・、どんな話だったの・・・?」

 

 

 

神原:「それがね・・・。・・・あっ、・・・ねぇ、この後、皆で夜の遊園地に行かない・・・?」

 

 

 

峯下:「え? いきなりどうしたのよ!?」

 

 

 

神原:「何だか、この4人で、遊びに行きたくなったんだ~。ほらっ、公演も無事に終わった事だし、そのお祝いに、ねっ!?」

 

 

 

漆川:「そうは言われてもな・・・。・・・どうする? 章介・・・」

 

 

 

望月:「・・・それなら、急いでバラシ、終わらせないとな・・・。皆、急ぐぞ」

 

 

 

峯下:「・・・結局、また急ぐのね・・・」

 

 

 

神原:「愚痴なら後で聞くから、ほらっ、早く」

 

 

 

峯下:「はいはい・・・」

 

 

 

漆川:「・・・」

 

 

 

峯下:「ん? 慶志朗、どうかした?」

 

 

 

漆川:「あ~、ちょっと考え事・・・。悪い悪い・・・。さぁ、始めようぜ」

 

 

 

 

峯下:「ええ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

神原:「・・・ほらっ、皆、早く早く~・・・!!」

 

 

 

望月:「寧音~!! そんなに走ったら、転んで怪我するぞ~!!」

 

 

 

神原:「平気、平気~!!」

 

 

 

望月:「何だか、今日の寧音は、テンションが高くないか・・・?」

 

 

 

峯下:「・・・公演が終わった後、先生に呼び出されてからだと思うけど・・・、何があったのか分からない」

 

 

 

漆川:「まっ、気にするだけ無駄じゃね~か。・・・折角、遊園地に来たんだから、楽しもうぜ」

 

 

 

峯下:「それもそうね。・・・うん、そうしよう!」

 

 

 

望月:「切り替えが早くて羨ましいよ・・・、全く・・・」

 

 

 

 

 

 

 

神原:「夜の遊園地って、幻想的だよね~。ねぇ、次は何に乗る・・・?」

 

 

 

峯下:「・・・来てから、連続で色々乗ったし、少し休憩した~い」

 

 

 

漆川:「あっ、俺も~」

 

 

 

神原:「二人共、体力が無いな~。・・・じゃあ少し休憩・・・」

 

 

 

峯下:「寧音は、まだ休憩しなくても大丈夫なんでしょう。私達の事は良いから、行って来て良いよ」

 

 

 

神原:「でも、それじゃあ何だか悪いよ・・・」

 

 

 

峯下:「大丈夫だから行ってきて。・・・あっ、章介も、まだ体力あり余ってるし、連れって行ってあげて」

 

 

 

神原:「わかった。・・・じゃあ二人共、少し此処で休憩しててね。・・・行こう、章介」

 

 

 

望月:「あぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

漆川:「・・・二人共、元気だよな~・・・」

 

 

 

峯下:「流石と言えば、流石よね~・・・」

 

 

 

漆川:「・・・そうだな~。・・・はぁ・・・」

 

 

 

峯下:「溜息なんてついて、どうしたのよ・・・?」

 

 

 

漆川:「こうやって、4人で馬鹿騒ぎ出来るのも、残り僅かだなって思ってさ・・・」

 

 

 

峯下:「何よいきなり・・・。まだ卒業まで時間あるし、それに卒業後も、会おうと思えばいつでも・・・」

 

 

 

漆川:「俺、跡を継ぐことに決まったんだ」

 

 

 

峯下:「え・・・?」

 

 

 

漆川:「・・・お前達には言えずにいたけど・・・、俺・・・、歌舞伎の後継者なんだ・・・。

    幼い頃から、いつか継ぐ事は決まっていて・・・。

    でも、親父達のように、上手く出来なくて・・・、決められた運命のレールから、逃げたくて・・・、

    必死に、その手段を考えた・・・。そして辿り着いたのが・・・、この道さ・・・。

    だが・・・、所詮は悪あがきに過ぎなかった・・・。

    ・・・今回の公演を、親父が観に来て・・・、2年間で結果が出せなかったも同然だと・・・、言い渡されたよ・・・」

 

 

 

 

峯下:「そんなのって、酷い・・・。慶志朗は、一生懸命、頑張ったじゃない・・・」

 

 

 

 

漆川:「頑張っても、結果が出せないんじゃ・・・、意味はない・・・。

    そういう事だから・・・、紗夜は、俺の分まで夢を・・・」

 

 

 

 

峯下:「そんなの嫌よ・・・」

 

 

 

 

漆川:「え?」

 

 

 

 

峯下:「だって、私は・・・、慶志朗が同じ夢に向かって、楽しい時も、辛くて泣き出しそうな日も、

    一緒に同じ夢を目指してくれたから頑張れたの・・・。

    それなのに・・・、これから先、慶志朗が居なくなったら・・・、私は、どうすれば良いのか、分からないよ・・・」

 

 

 

 

漆川:「・・・何も俺が居なくなっても、夢は・・・」

 

 

 

 

峯下:「この鈍感・・・! 私はね・・・、初めて慶志朗の演技を見た時から・・・、ずっと貴方の事が好きだったの・・・!!」

 

 

 

 

漆川:「でもお前、1年前、ファミレスで訊いた時は、俺と同じで、居ないって」

 

 

 

 

峯下:「悟られたくなかったから、嘘ついてたのよ・・・。

    でも・・・、こうなるって分かってたら、あの時・・・、告白しとけば良かった・・・」

 

 

 

 

漆川:「紗夜・・・。・・・俺の方こそ、ごめん・・・」

 

 

 

峯下:「え? どうして、貴方も謝るの?」

 

 

 

漆川:「あの時、俺も嘘ついてた・・・。本当は、俺も好きな人が居たんだ・・・」

 

 

 

 

峯下:「え? それって、もしかして・・・」

 

 

 

漆川:「俺は、寧音に片思いしてたんだ・・・。でも、あの時、紗夜から、二人の仲が良い事を聞いて・・・、

    咄嗟に・・・、好きな相手は居ないって答えた・・・」

 

 

 

 

峯下:「私達・・・、お互い、片思いだったんだ・・・。何だか笑っちゃう・・・」

 

 

 

 

漆川:「・・・さっきの話に戻るけど・・・、夢を諦めるなんて、勿体ないぜ。

    紗夜には、観客を惹き付ける魅力があるんだ・・・。それをこれからも伸ばして、立派な女優になってくれ」

 

 

 

 

峯下:「その時は・・・、私の最初のファンに、立候補してくれる?」

 

 

 

 

漆川:「あぁ、勿論だ」

 

 

 

峯下:「嬉しい・・・。約束なんだからね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

望月:「・・・あの」

 

 

 

神原:「・・・あの」(同時に)

 

 

 

 

神原:「ふふっ・・・、どうしたの? 章介」

 

 

 

望月:「・・・いつまで、隠してるつもりなんだ?」

 

 

 

神原:「何だ・・・。気付いてたんだ・・・。・・・ねぇ、いつから?」

 

 

 

望月:「・・・慶志朗と紗夜は、気付いてなかったみたいだけど・・・、俺は、先輩から聞いて知ってたんだ・・・。

    2年の公演が終了後、先生に呼び出された生徒は・・・、所属先が決まった合図だって・・・」

 

 

 

 

神原:「私も、先輩から聞いてたけど、半信半疑だった・・・。それがまさか、本当に自分の身に起こるなんてね・・・」

 

 

 

 

望月:「おめでとう・・・」

 

 

 

神原:「ありがとう・・・。でも、そんな強張った表情で、言われても嬉しくないよ・・・。

    ・・・ねぇ、知ってたって事は・・・、章介も・・・」

 

 

 

望月:「あぁ・・・、待ち望んでたよ・・・。・・・でも、今回の公演で痛感した・・・。

    寧音は、誰よりも観客を魅了していたってな・・・」

 

 

 

神原:「・・・章介だって、負けないくらい賞賛の声が・・・」

 

 

 

 

望月:「下手な同情は良してくれ・・・。俺なんか、まだまだ実力不足だよ・・・」

 

 

 

 

神原:「同情なんて馬鹿にしないで・・・!」

 

 

 

 

望月:「寧音・・・?」

 

 

 

 

神原:「章介は、今回の公演で輝いてた・・・。ううん・・・、初めて演技を観た時から、ずっと・・・。

    ・・・私は、章介に、惹かれていたんだから・・・」

 

 

 

望月:「え? 今、なんて・・・」

 

 

 

神原:「ほらっ、その態度・・・。・・・去年のファミレスの頃から、気付いてた・・・。

    章介は・・・、他に好きな人が居るんだって・・・!!」

 

 

 

 

望月:「・・・」

 

 

 

 

神原:「・・・紗夜でしょ?」

 

 

 

 

望月:「・・・あぁ・・・」

 

 

 

 

神原:「やっぱり、そうなんだ・・・。・・・それじゃあ、私と、こうして二人っきりで、観覧車に乗ってるなんて苦痛よね・・・」

 

 

 

 

望月:「・・・」

 

 

 

神原:「返事くらいしてよ・・・。意気地なし・・・」

 

 

 

 

望月:「・・・すまない」

 

 

 

神原:「安心して・・・。振られたからって、騒いだり、見っとも無い真似はしないから。私にはそんな時間も無いし・・・」

 

 

 

望月:「・・・なぁ、慶志朗と紗夜には、いつ言うんだ・・・?」

 

 

 

神原:「所属先が決まった事なら、時期を考えて言うつもりよ・・・」

 

 

 

望月:「時期って、いつだ・・・?」

 

 

 

神原:「さぁね・・・。少なくとも、今では無いのは確かよ・・・。

    大丈夫、安心してよ・・・。二人とは、これまでと変わらずに、上手く仲良くするから・・・」

 

 

 

望月:「お前・・・、この1年で変わったな・・・。・・・そんな気持ちで、二人に接するなんて、俺が絶対に許さない・・・」

 

 

 

 

神原:「あっそう・・・。・・・良いわよ。・・・残り僅かだったし・・・、これからは、自分の為に進む事にする・・・。

    ねぇ・・・、私が貴方の事、好きだったのは、嘘偽りない、本当の気持ちよ・・・。

    それだけは、覚えといてね・・・。

    貴方も、本気で芸能界で生きていく覚悟があるなら・・・、情に惑わされずに、自分の為に生きなさい。

    ・・・丁度、観覧車も終わりの時間ね・・・。じゃあね・・・、章介・・・」

 

 

 

 

望月:「・・・」

 

 

 

 

 

 

 

峯下:「・・・お帰り・・・。あれ? 寧音は、一緒じゃ無かったの・・・?」

 

 

 

漆川:「・・・章介・・・、暗い顔してどうした・・・?」

 

 

 

望月:「・・・もう、寧音は、俺達の所には、来ない・・・。俺達の知ってる寧音は、消えたんだ・・・」

 

 

 

峯下:「何よ、それ・・・。一体、どういう意味よ・・・!! ねぇ、ちゃんと答えて・・・!!」

 

 

 

漆川:「落ち着け!! 紗夜・・・!! ・・・さっき、先輩からメールが届いた・・・」

 

 

 

峯下:「え?」

 

 

 

漆川:「・・・寧音は、大手プロダクションに、所属が決まった・・・。

    だから、俺達の側から、離れたんだろう・・・?」

 

 

 

 

望月:「その通りだ・・・。・・・そういう訳だから、俺達の打ち上げも、解散だ・・・。じゃあな・・・」

 

 

 

漆川:「おい、待てよ・・・、章介。一緒に・・・。・・・行っちまった・・・。おい・・・、大丈夫か・・・、紗夜?」

 

 

 

峯下:「・・・絶対に許さない・・・。・・・このままでは、済まさないんだから・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

(現在、病室)

 

 

 

 

漆川:「・・・あの遊園地の後・・・、俺達とお前の仲は悪くなって・・・、

    結局、卒業の時すらも声をかけないまま、今に至るってわけだな・・・」

 

 

 

神原:「・・・公演後からだった・・・。クラスの中でも、私が大手プロダクションに所属が決まった事が知れて・・・、

    それから、卒業までは・・・、貴方達も含めて・・・、周りは敵だらけに思えたわ・・・。

    卒業後・・・、所属した後も・・・、先輩達との上下関係に悩まされたり・・・、その度に悔し涙を飲んだ・・・。

    そんな経験も、幾度も乗り越えて・・・、少しずつ人脈も広がっていき・・・、ようやく主演の映画が決まったのよ・・・。

    それなのに・・・、今回の事故で、それも全て白紙に戻った・・・。残ったのは、この醜い額の傷だけ・・・。

    ねぇ、笑えるでしょ? 貴方達を見限って頑張ったなれの果てが、このざまよ・・・!」

 

 

 

 

漆川:「笑えないよ・・・」

 

 

 

 

神原:「良いから、笑いなさいよ・・・。ざま~見ろよと、心の底から、嘲笑いなさいよ!!!」

 

 

 

 

漆川:「もう、止めてくれ・・・。これ以上、自分自身を傷付けるのはよすんだ・・・」

 

 

 

 

神原:「嫌よ・・・。こんな醜い傷が残って、私の人生・・・、終わりよ・・・」

 

 

 

漆川:「そんな事は無い。・・・女優以外にも、道は・・・」

 

 

 

神原:「・・・さっさと諦めて、後継者なんかになった貴方にだけは言われたくない!!」

 

 

 

漆川:「痛ぅ・・・」

 

 

 

神原:「何? 私に傷付けられて、心が痛い!? じゃあ、早く出て行きなさいよ。・・・これ以上、傷付けられる前に・・・」

 

 

 

漆川:「寧音・・・、俺は・・・」

 

 

 

神原:「良いから出てけっ!!!!」(お見舞い品の花束を投げつける)

 

 

 

漆川:「痛ぅ・・・。くっ・・・」(慌てて出ていく)

 

 

 

神原:「(荒い息)・・・。・・・もう、私に構わないで・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

峯下:「・・・あれって、慶志朗・・・? ねぇ、慶志朗・・・!! 慶志朗ってば!!」

 

 

 

漆川:「紗夜・・・」

 

 

 

峯下:「寧音の見舞いに行ったのよね? どんな様子だった・・・?」

 

 

 

漆川:「・・・ごめん、俺、急ぎの用事あるから・・・」

 

 

 

峯下:「え!? ちょっと、待ってよ!! ・・・慶志朗、どうしたって言うの・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

(街中のBAR)

 

 

 

SE:ドアベル

 

 

 

 

望月:「ごめんなさ~い・・・。まだ準備中なのよ~・・・。・・・え? 慶志朗・・・?

    どうしたのよ? こんなに、ずぶ濡れで・・・」

 

 

 

漆川:「・・・ゲリラ豪雨に遭遇しただけだ・・・」

 

 

 

望月:「だからって、そのままにしてたら、風邪、引いちゃうわよ・・・。ちょっと待ってて。

    今、バスタオルと着替え、持ってくるから・・・」

 

 

 

漆川:「すまない・・・」

 

 

 

 

 

 

望月:「はい、お待たせ・・・。ほらっ、早く着替えて・・・」

 

 

 

漆川:「あぁ・・・」

 

 

 

望月:「・・・ねぇ、何があったのよ・・・? 今日は確か・・・、神原のお見舞いに行くって言ってたわよね・・・」

 

 

 

漆川:「・・・」

 

 

 

望月:「その様子だと・・・、何かあったのね・・・。だから言ったじゃない・・・。

    もうあの子は、私達の事なんて忘れたいんだって・・・」

 

 

 

漆川:「・・・そんな事は分かってた・・・。でも、酷い事故にあったんだ・・・。

    心配で仕方なかった事くらい、分かるだろう・・・」

 

 

 

望月:「あの子に関しては、自業自得じゃないかしら・・・」

 

 

 

漆川:「何だと・・・?」

 

 

 

望月:「・・・私達の事を見限って、疎遠になったのよ・・・。・・・罰が当たったのよ・・・。

    あ~、神様ってちゃんと私達の事、見ているのね~。・・・今まで抱えていた気持ちが、スッキリした~」

 

 

 

漆川:「ふざけんな・・・」(小声)

 

 

 

望月:「ふざけて無いわよ。・・・私の心からの本心よ」

 

 

 

漆川:「章介・・・、てめえ・・・!!」(顔面殴る)

 

 

 

望月:「・・・ぷっ(血を吐き出す)・・・へぇ~、腑抜けてた割には、良いパンチじゃない・・・」

 

 

 

漆川:「さっきの言葉、今すぐ訂正しろ・・・」

 

 

 

望月:「・・・嫌よ・・・」

 

 

 

漆川:「何だと・・・、もう一度、行ってみろ・・・!」

 

 

 

望月:「あんたも・・・、良いや・・・、お前も良い加減、目を覚ませってんだ!!」(顔面殴る)

 

 

 

漆川:「・・・痛ぅ・・・。オカマになり下がった割には・・・、重いパンチなんて・・・、ありかよ・・・」(気絶する)

 

 

 

望月:「オカマじゃない・・・。オネエだ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

漆川:「ううう・・・」

 

 

 

望月:「ようやくの御目覚めか・・・」

 

 

 

漆川:「章介・・・。てめえ・・・」

 

 

 

望月:「・・・まだ頭が冷やし足り無いようだな・・・」

 

 

 

漆川:「・・・大丈夫だ・・・。おかげで、冷静になったよ・・・」

 

 

 

望月:「そりゃ良かった。それで、何があったんだ・・・。

    大方、神原に傷付けられて、傘も差さないまま、路頭に迷ってたんだろうけど・・・」

 

 

 

漆川:「相変わらず、勘だけは鋭いな・・・。あぁ、その通りだよ・・・。

    ・・・さっさと諦めて、後継者なんかになった貴方にだけは言われたくない!! と、言われたよ・・・」

 

 

 

望月:「そりゃあキツイパンチを食らったな・・・。・・・だから言ったろ・・・。行かない方が良いって・・・」

 

 

 

 

漆川:「良い加減、話せよ・・・」

 

 

 

 

望月:「あの夜の事か・・・?」

 

 

 

漆川:「ああ、そうだ・・・。・・・観覧車の中で、お前達に何が起きたんだ・・・」

 

 

 

望月:「神原は・・・、変わってしまったんだ・・・。俺達の友情より、芸能界を選んだのさ・・・」

 

 

 

漆川:「そんなの嘘だ・・・。だって寧音は・・・!!!」

 

 

 

望月:「・・・金木犀の誓い・・・」

 

 

 

漆川:「・・・そうだ・・・。俺達、あの時、4人で誓ったじゃないか・・・」

 

 

 

望月:「あぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

(過去)

 

 

 

 

神原:「皆、文化祭、お疲れ様・・・!!!」

 

 

 

峯下:「初めての文化祭、無事に終わった~・・・!!」

 

 

 

望月:「そうだな・・・」

 

 

 

漆川:「・・・終わったって充実感と、此処は、こうしたかったって気持ちが入り混じっていて・・・・、

    何か、凄く疲れたけど・・・、興奮が収まらないぜ・・・」

 

 

 

峯下:「うんうん! ねぇ、バラシが終わったら、教室に戻って、皆で反省会したい」

 

 

 

望月:「良い案だな・・・。よしっ、皆、疲れてるだろうけど、バラシを・・・」

 

 

 

神原:「ねぇ、皆、ちょっと私の話を聞いて・・・!!!」

 

 

 

漆川:「ん? 改まってどうしたんだよ」

 

 

 

神原:「私ね・・・、紗夜、章介、慶志朗と居る時間、本当に楽しくて・・・、

    だから・・・、この専門学校、卒業してからも・・・、ずっと仲間で居たいなって・・・!!」

 

 

 

峯下:「寧音・・・。・・・うん、勿論だよ。・・・ねっ、慶志朗、章介」

 

 

 

漆川:「勿論だよ」

 

 

 

望月:「そうだな」

 

 

 

神原:「皆、ありがとう・・・!! 私ね、実は、もう、名前も考えてたんだ・・・」

 

 

 

峯下:「名前・・・?」

 

 

 

神原:「うん・・・。私達の、誓いの名前だよ・・・。・・・金木犀の誓いなんて、どうかな・・・?」

 

 

 

峯下:「・・・あはははは」

 

 

 

神原:「え? えええええ!!! どうして、笑うの!?」

 

 

 

峯下:「ごめんごめん・・・、寧音らしいって思ったから、つい・・・。

    ・・・うん、良い名前だね。・・・私は、賛成。・・・慶志朗、章介は?」

 

 

 

望月:「反対する理由が無いな。賛成だよ」

 

 

 

漆川:「そうそう、俺も賛成」

 

 

 

峯下:「全員、賛成って事で・・・、私達、ずっと一緒だよ! 寧音!」

 

 

 

 

峯下:「うん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

(現在 望月のBAR)

 

 

 

 

望月:「・・・あの頃は、俺達、純粋だったな・・・」

 

 

 

漆川:「・・・寧音自身が、誓いを破るなんて、思わなかった・・・」

 

 

 

望月:「・・・今更、悔やんでも、過去には戻れないんだ・・・。

    俺達は、前に進むしか無いんだよ・・・」

 

 

 

漆川:「前にか・・・。お前は、そんな姿になっても、前に進んでるのか・・・?」

 

 

 

望月:「お前に、俺の何が分かる・・・」

 

 

 

漆川:「・・・良い加減、そんな風に変貌しちまった理由、話してくれよ・・・」

 

 

 

望月:「・・・タバコ、吸って良いか?」

 

 

 

漆川:「お前、喉に悪いから、タバコは吸わないって・・・」

 

 

 

望月:「今は、芸能界も目指してないんだ・・・。関係ないさ・・・。

    ・・・ふぅ~・・・。(タバコを吸う)

    ・・・俺は、観覧車の中で、寧音に告白されたんだ・・・」

 

 

 

 

漆川:「え? ・・・まぁ、二人で観覧車に向かって歩いて行ったから、予想はしてたけどな。

    ・・・それで、お前は、どうしたんだ?」

 

 

 

望月:「俺は・・・、神原の気持ちに答える事が出来なかった・・・。

    ・・・俺には、その時には、好きな人が居たんだ・・・」

 

 

 

 

漆川:「え? 誰だよ。・・・俺達の知らない相手か?」

 

 

 

 

望月:「それは・・・」

 

 

 

携帯のバイブ音

 

 

 

 

漆川:「今、良い所だったのに、誰だよ・・・」

 

 

 

望月:「誰からだ?」

 

 

 

漆川:「・・・紗夜からだ・・・。

    病院で鉢合わせしたけど、寧音から傷付けられて落ち込んでたから・・・、用事あるって逃げたんだ・・・。

    きっとそれで心配して、かけてきたんだと思うけど・・・、どうしよう・・・」

 

 

 

望月:「早く出てやれ・・・」

 

 

 

漆川:「わかったよ・・・。・・・もしもし・・・」

 

 

 

峯下:「・・・馬鹿! 早く出なさいよ・・・!!!

    ねぇ、今、何処に居るの・・・?」

 

 

 

 

漆川:「それは・・・」

 

 

 

峯下:「あぁ・・・。もう良い。

    ・・・話あるから、病院の近くにあるファミレスに、今から来て。良い? 絶対よ! じゃあね!」

 

 

 

 

漆川:「おい、待てよ! 紗夜、紗夜・・・!!!」

 

 

 

望月:「紗夜からの呼び出しか? そうなら、早く行ってやれ」

 

 

 

漆川:「あぁ・・・。でも、その前に、もう一つ、お前に伝える事があった・・・」

 

 

 

望月:「何だ・・・?」

 

 

 

漆川:「俺・・・、お見合い相手と、結婚する事に決まった。

    ・・・だから、お前にちゃんと話をしようと・・・」

 

 

 

望月:「おいっ!!!」(漆川の胸ぐらを掴む)

 

 

 

漆川:「いきなり何するんだ! 腕を放せよ・・・」

 

 

 

望月:「それじゃあ、紗夜はどうするんだよ・・・」

 

 

 

漆川:「仕方ないだろう・・・。・・・どうする事も出来ないんだ・・・」

 

 

 

望月:「だったら、最初から紗夜を振り回すな!!! あいつが、どんな想いで、お前の事を・・・!!!」

 

 

 

漆川:「紗夜には悪いと思ってる・・・。でも、俺にも俺の事情が・・・」

 

 

 

望月:「あぁ、分かってる! それでもだ!!!」(殴る)

 

 

 

漆川:「痛っ・・・! ・・・どうして俺が、殴られなきゃ行けないんだ・・・」

 

 

 

望月:「俺が、どんな想いで・・・、今、このBARに居ると思ってるんだ・・・。くそおおおおおおお!!!!」

 

 

 

漆川:「章介・・・」

 

 

 

望月:「神原との観覧車後から、俺は・・・、女性との恋愛が怖くなった・・・。

    誰もが、あいつみたいに、二面性を持っているんじゃないかって、人間不信に陥った・・・。

    気付いたら・・・、雨の中・・・、宛てもなく歩いていたよ・・・。

    そんな時に、このBARのママに声を掛けられたんだ・・・。

    そして、俺は、ママの人生論に共感して・・・、卒業後、此処で働くことにしたんだ・・・」

 

 

 

漆川:「そうだったのか・・・。俺はてっきり、男が好きになったのかと・・・」

 

 

 

望月:「・・・。・・・さぁ、それは、どうかしら・・・。

    私自身、私が分からなくなったの・・・。女性が好きなのか、男性が好きなのか・・・。

    だから今は、恋愛より・・・、此処に来る傷を抱えたお客さんを、癒すのが、私の仕事よ・・・」

 

 

 

漆川:「章介・・・」

 

 

 

 

望月:「さぁ、話は以上よ・・・。もうすぐ営業時間になるわ・・・。

    あんたも早く、紗夜の元に行ってあげなさい・・・。

    慶志朗・・・、殴って悪かったわね・・・」

 

 

 

 

漆川:「いや、良いんだ・・・。話にくい事、話してくれて、ありがとう・・・。

    じゃあ、またな・・・」

 

 

 

 

望月:「ええ、またの来店、お待ちしてるわね。

    ・・・。・・・慶志朗の馬鹿・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

(病院近くのファミレス)

 

 

 

 

峯下:「慶志朗、もう、遅~い」

 

 

 

漆川:「ごめんごめん、これでも、急いで走って来たんだ・・・!」

 

 

 

峯下:「まぁ、良いわ。・・・中に入りましょう」

 

 

 

漆川:「あぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

峯下:「・・・何か此処、文化祭の帰りに立ち寄ったファミレスに似てるわよね。

    ・・・でっ・・・、その傷は何? 誰かと喧嘩でもしたの?」

 

 

 

 

漆川:「・・・これはだな・・・」

 

 

 

峯下:「・・・章介に殴れられたんでしょう?」

 

 

 

漆川:「え? どうして、分かったんだ?」

 

 

 

峯下:「簡単な事よ。・・・寧音に傷付けられて、落ち込んで向かう先なんて・・・、章介のお店しか無いでしょう?」

 

 

 

 

漆川:「うっ・・・、その通りだな・・・。痛っ・・・」

 

 

 

峯下:「あぁ、もう・・・。良いから傷、見せて・・・」

 

 

 

漆川:「え? 紗夜、何するんだよ」

 

 

 

峯下:「良いからじっとしていて・・・。よっしっ、これで良いかな。

    ほらっ、手当してあげたんだから、お礼・・・」

 

 

 

漆川:「ありがとう・・・」

 

 

 

峯下:「素直で宜しい。・・それじゃあ私、ドリンクバー、取ってくるから」

 

 

 

 

漆川:「あっ、俺も・・・」

 

 

 

峯下:「良いってば、怪我人は、大人しく待ってて」

 

 

 

漆川;「わかったよ・・・」

 

 

 

 

 

 

峯下:「・・・お待たせ! はい、慶志朗の分・・・」

 

 

 

漆川:「随分と早かったな。・・・あっ、これって・・・」

 

 

 

峯下:「メロンコーラ・・・」

 

 

 

漆川:「・・・お前、あの時も、不味いって言ってたんじゃ・・・」

 

 

 

峯下:「表情で、本当に不味いと思ってたか、気付きなさいよ・・・」

 

 

 

漆川:「・・・すまない」

 

 

 

峯下:「・・・やっぱり、いつ飲んでも、美味しい・・・」

 

 

 

漆川:「それで、肝心の話だけど・・・」

 

 

 

峯下:「・・・慶志朗、・・・私ね・・・。・・・知ってると思うけど、

    今度、映画デビューするの・・・」

 

 

 

漆川:「あぁ、ニュースで観たよ。・・・おめでとう・・・」

 

 

 

峯下:「・・・私が、此処まで頑張れたのも、慶志朗が応援してくれたから・・・。

    だから、凄く感謝してるの・・・。それでね・・・、今度、その御礼に・・・、二人っきりで・・・」

 

 

 

 

漆川:「俺、結婚するんだ」

 

 

 

峯下:「え?」

 

 

 

漆川:「見合い相手と、結婚するんだ。

    ・・・だから、紗夜の言おうとした事・・・、すまないけど・・・、俺は・・・、一緒に行けない・・・」

 

 

 

 

峯下;「そうなんだ・・・。・・・うん・・・。・・・何か急にごめんね・・・!

    そうよね・・・。結婚するのが決まった相手と、二人っきりになりたいなんて・・・、

    何、馬鹿な事、私、言ってるんだろう・・・。・・・本当、ごめん・・・!」

 

 

 

 

漆川:「良いんだ・・・。結婚しても、お前達と仲間なのは、変わらないから・・・、

    また章介のお店で会って、飲んだりも出来るしさ・・・」

 

 

 

峯下:「そっか、それなら安心した。ほらっ、居るでしょ?

    結婚した途端に、友達付き合い悪くなる人。・・・慶志朗が、そうじゃなくて良かった」

 

 

 

 

漆川:「俺は、そうはならないよ。・・・心配し過ぎだ」

 

 

 

 

峯下:「それもそうよね。あっははは・・・」

 

 

 

漆川:「悪い・・・。この後、お見合い相手と用事があるから、もう行くよ」

 

 

 

峯下:「うん、分かった。・・・あっ、此処の支払いは・・・」

 

 

 

漆川:「俺が出すから、紗夜は、ゆっくりしていけば良いよ。・・・それじゃあ、またな」

 

 

 

峯下:「うん。・・・あっ、待って、慶志朗!」

 

 

 

漆川:「何だ?」

 

 

 

峯下:「・・・奥さんと、お幸せにね・・・!」

 

 

 

漆川:「あぁ・・・、ありがとうな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

峯下:「・・・慶志朗と、結婚する相手・・・、幸せなんだろうな・・・・。

    ・・・純白のドレス来て・・・、慶志朗と笑顔で微笑んで・・・。

    それから、それから・・・。

    ・・・あれ? 何でよ・・・。・・・今日の混ぜ方、間違えたかな・・・?

    ・・・何だか、しょっぱく感じるよ・・・」(涙が溢れて止まらなくなる)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(病院 神原の部屋)

 

 

 

神原:「・・・何でよ。どうして、あいつが・・・、私の代わりなの・・・。私は、もう、お払い箱なの・・・」

 

 

 

ノック音

 

 

 

神原:「誰・・・!?」

 

 

 

峯下:「・・・私、紗夜よ・・・」

 

 

 

神原:「・・・どうぞ・・・」

 

 

 

峯下:「・・・寧音。・・・あのね・・・」

 

 

 

神原:「マネージャから聞いたわよ。・・・私の代わりに、あの映画の主役に決まったみたいね・・・。

    ・・・おめでとう・・・」

 

 

 

峯下:「ありがとう・・・」

 

 

 

神原:「何で、よりにもよって、貴女なのよ・・・」

 

 

 

峯下:「え・・・?」

 

 

 

神原:「あの役はね・・・。貴女になんて、演じ切れるわけが無いのよ・・・。

    ねぇ、覚えてる? 2年生の文化祭・・・?

    あの時でさえ、貴女は、私の影みたいな存在だったの・・・!

    観に来てくれたお客様は、貴女じゃなくて、皆、私の演技に、魅了されていたのよ!!!」

 

 

 

峯下:「・・・寧音、貴女、本当に変わったのね・・・。

    だったら、私も言えなかった事、言うわ・・・。

    ・・・文化祭後の貴女は、本当、見ていて、怖かった・・・。

    一緒に練習しようと、声、かけたクラスの仲間に対しても、冷たい態度で・・・。

    でも、その時・・・、私、気付いたの・・・。

    貴女みたいに、周りが敵だらけと疑心暗鬼に陥っては・・・、芸能界では活躍出来ないとね!」

 

 

 

神原:「何を言うかと思ったら、そんな事? その考えが甘ちゃんなのよ!

    良い? そんな事、実力と周りを惹き付ける魅力さえあれば、どうにでもなるの!!!

    現に私は、そうして、この芸能界で生き残って来た!!! 貴方に説教なんてされる筋合いは無いわよ!!」

 

 

 

峯下:「生き残って来たのは、凄いと思うよ・・・。それは寧音の実力だし・・・、悔しいけど認める・・・。

    でもね、そうだとは言っても・・・、大事な周りの仲間を傷つけて良い事にはならないのよ!!」

 

 

 

神原:「傷付けた? あぁ~、慶志朗の事かしら? そっか、それで貴女は、そんなに怒ってるんだ~。

    でも、ふふ・・・。あっははは・・・」

 

 

 

峯下:「何が可笑しいのよ?」

 

 

 

神原:「私、分かっちゃった・・・。そっか、それで入ってくる時、落ち込んでたんだ~。

    慶志朗に振られたんでしょう?」

 

 

 

峯下:「・・・」

 

 

 

神原:「もしかして、慶志朗が家を継ぐために、お見合いしてたのも知らなかった・・・?」

 

 

 

峯下:「・・・」

 

 

 

神原:「知らなかったんだ・・・。へぇ~・・・、それでもしかして、二人で会って、告白しちゃったの?

    そうだとしたら、とんだ悲劇のヒロインじゃない! テレビドラマだったら、どのくらい視聴率、取れるかしら~!!!」

 

 

 

峯下:「もう止めて!!! ・・・お願いだから、これ以上は・・・」

 

 

 

 

神原:「ついでに教えてあげるけど、慶志朗は、紗夜じゃなくて、私の事が好きな・・・」

 

 

 

峯下:「いい加減にして!!!」(頬をぶつ)

 

 

 

神原:「痛い・・・。よくも大事な顔を。・・・ふざけるな!!!」(頬をぶつ)

 

 

 

峯下:「痛っ・・・。・・・(睨む)」

 

 

 

神原:「何よ、その目は・・・。私を睨むなんて、許さない・・・!!」

 

 

 

峯下:「貴女の方こそ・・・、慶志朗を傷つけて・・・、絶対に許さない!!!」

 

 

 

神原:「許すも何も、もう慶志朗は、貴女の物じゃないのよ!!」

 

 

 

峯下:「何ですって!!!」

 

 

 

望月:「二人共、良い加減にしなさい!!!」

 

 

 

峯下:「え!? 章介!!! お願い、離してよ!!! この馬鹿に、今日こそ分からせるんだから!!!」

 

 

 

望月:「そんな事しても、貴女が傷付けられるだけよ!!! 私は、そんな紗夜、見たくないの!!!」

 

 

 

神原:「章介・・・、何よ、その恰好と喋りは・・・」

 

 

 

望月:「・・・神原さん、お久しぶり・・・。良い、よく聞きなさい。

    もう、これ以上、私の大事な仲間を、傷付けないで・・・。

    もし傷付けると言うなら、私が、絶対に許さないわよ・・・!!」

 

 

 

神原:「・・・ふふふ。・・・まるで、あの観覧車の再現みたいじゃない・・・。

    そう・・・。貴方は、そんな姿と口調に変わっても・・・、

    心は、あの時の章介のままなのね・・・。本当、可笑しい・・・」

 

 

 

 

峯下:「あんたね!!!」

 

 

 

望月:「良いのよ、紗夜」

 

 

 

峯下:「でも・・・!!!」

 

 

 

望月:「・・・ねぇ、神原さん・・・」

 

 

 

神原:「何よ・・・」

 

 

 

望月:「此処に来るまでの間・・・、私は・・・、相当、悩んだわ・・・。

    貴女に、この姿のまま会うか、それとも、男の姿で会うかを・・・」

 

 

 

神原:「・・・」

 

 

 

望月:「でも、気付いたの・・・。貴方の前に、男の姿で・・・、男の口調で現れても・・・、

    それでは、貴女に本当の気持ちは、伝わらないんだって・・・。

    だから包み隠さずに、貴女に本当の事を伝えるわ・・・」

 

 

 

 

神原:「・・・」

 

 

 

 

望月:「・・・私は、貴女との観覧車での出来事後から、人間不信に陥って・・・、女性と恋愛が出来なくなったの・・・。

    貴女の事だから、だから何よと、今、心の中で悪態付いてると思うのだけど・・・。

    良い事・・・、これだけは、これから先も肝に銘じなさい・・・。

    今後、周りを傷付けるのも、貴女の自由よ・・・。

    だけどね・・・、その傷付けた相手の、その先の人生さえも、変えてしまう事になる事を忘れないで・・・。

    ・・・貴女に、そんな人達の人生を背負う覚悟はあるの?」

 

 

 

 

神原:「・・・。・・・私が全部、悪いっていうの・・・? 私だって、周りに傷付けられたり・・・、辛い思いして来た・・・」

 

 

 

 

望月:「疎遠になってからの貴女の事は・・・、分からないわ・・・」

 

 

 

神原:「・・・」

 

 

 

望月:「だけどね・・・、もし、貴女がもう一度、やり直したいと言うのなら・・・、

    ・・・チャンスをあげる・・・。

    ・・・退院したら、・・・此処に来て・・・。

    紗夜と、慶志朗と、私の3人で、待っているから・・・」

 

 

 

 

神原:「・・・」

 

 

 

 

望月:「話は以上よ・・・。・・・よく考えなさい・・・。

    ・・・さぁ、紗夜、帰りましょう・・・」

 

 

 

 

峯下:「ええ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

神原:「・・・章介。・・・紗夜。・・・慶志朗・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

(病院の帰り道)

 

 

 

峯下:「・・・章介・・・」

 

 

 

望月:「あら、何かしら・・・?」

 

 

 

峯下:「私ね・・・。・・・慶志朗に振られちゃった・・・。

    でもね・・・、悔いは残らないように、ちゃんと気持ちは伝えたの・・・。

    ねぇ・・・」

 

 

 

望月:「ん?」

 

 

 

峯下:「私さ・・・、かなり・・・、頑張ったと思わない・・・?」(涙をこらえる)

 

 

 

望月:「・・・あぁ・・・。・・・お前は立派だよ。・・・紗夜・・・、よく頑張ったな・・・」

 

 

 

峯下:「ありがとう・・・。章介・・・」

 

 

 

望月:「さぁ、早く帰りましょう」

 

 

 

峯下:「ねぇ、章介は・・・、好きな相手に・・・、気持ち、伝えなくて良いの・・・?」

 

 

 

望月:「・・・私は良いのよ・・・。・・・私は、今のままで・・・、十分、幸せなの・・・」

 

 

 

峯下:「章介・・・」

 

 

 

望月:「・・・さっ、これから忙しくなるわよ・・・。準備、手伝ってよね・・・!」

 

 

 

峯下:「うん・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

(望月のBAR)

 

 

 

 

漆川:「・・・なぁ・・・」

 

 

 

望月:「何よ?」

 

 

 

漆川:「・・・寧音が退院したと聞いてから、2週間が経つな~・・・」

 

 

 

望月:「そうね~」

 

 

 

漆川:「・・・この店の内装は・・・、いつまで続けるんだ・・・?」

 

 

 

望月:「・・・あの子が来るまでは、このままよ~。ねぇ、紗夜」

 

 

 

峯下:「そうよ・・・。集めたりするの、大変だったんだから~・・・」

 

 

 

漆川:「良い香りだけど・・・、此処まで近くにあるとだな・・・」

 

 

 

望月:「文句ばかり言っても、撤去はしないわよ~。

    だって、この金木犀は・・・、・・・寧音の大好きな花なんだから・・・」

 

 

 

漆川:「おい、今、下の名前で!?」

 

 

 

望月:「良いでしょう~。オネエは、気まぐれなのよ~」

 

 

 

峯下:「そう、そういう事よね~」

 

 

 

望月:「ね~!」

 

 

 

漆川:「お前達な~・・・」

 

 

 

 

SE:ドアベルの音

 

 

 

 

望月:「・・・。・・・入らっしゃい・・・。・・・待ってたわよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

終わり