アイビー・キャットミント

 

 

作者 片摩 廣

 

 

I will be reborn. 生まれ変わる。

 

 

登場人物

 

アイビー・・・女に生まれ変わりたいオネエ 自分を守るために、毒舌

 

 

佐藤 雛乃(キャットミント)・・・今の自分から変わりたくて、コスプレに憧れる女子

 

 

 

比率:【1:1】

 

上演時間【30分】

 

 

 

※芥子菜ジパ子様の企画、#箱庭遊戯

 参加して書いた台本です

 

※ツイキャス、その他の配信アプリ、配信サイトでも上演可能です

 

 

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CAST

 

アイビー:

 

佐藤 雛乃:

 

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(東京ビッグサイトに辿り着く雛乃)

 

 

 

佐藤:「・・・遂に、辿り着いた・・・。・・・思ってた以上に、東京ビッグサイト・・・、大きいな~」

 

 

 

佐藤:(N)「憧れの聖地・・・、東京ビッグサイトに着いた私は、期待と予想以上の凄さに圧倒されていた・・・」

 

 

 

佐藤:「・・・あっ、ごめんなさい・・・」

 

 

 

佐藤:(M)「地元より、人が沢山だし・・・、どの人も皆、自信に溢れていて、輝いてる・・・。

       ・・・駄目・・・、緊張して・・・、吐きそう・・・」

 

 

 

アイビー:「ちょっと、そんな所で蹲(うずくま)ってたら、邪魔じゃない!

      早く、退きなさい!」

 

 

 

佐藤:(M)「何? 私に怒鳴ってるの? うわ~・・・、東京人・・・、怖いよ・・・」

 

 

 

アイビー:「ふ~ん、シカトするの・・・。・・・人が折角、気にかけてあげたってのに、感じ悪~い!」

 

 

 

佐藤:「変な人に絡まれて、怖いよ・・・。お姉ちゃん、助けて・・・!!!」

 

 

 

アイビー:「変な人ですって!? ちょっとあんた、顔すら見せないで、本当、何様よ!!!」

 

 

 

佐藤:(M)「もう・・・、駄目・・・、限界・・・」(気絶する)

 

 

 

アイビー:「え!? ちょっと、何よ!? あんた、体調が悪いなら、早く言いなさいよ!!!

      ねぇ! しっかりしなさい・・・!!!」

 

 

 

 

 

 

(意識を取り戻した佐藤)

 

 

 

佐藤:「・・・あれ・・・? 私、一体・・・」

 

 

 

アイビー:「やっと気付いた・・・。ちょっとあんた、もしかして、寝不足?」

 

 

 

佐藤:「はい・・・。夜行バスで、今朝早くに着いたばかりで・・・」

 

 

 

アイビー:「夜行バスなら、寝れるじゃないの・・・。」

 

 

 

佐藤:「周りは寝てたけど・・・、私は緊張して・・・、寝れなくて・・・」

 

 

 

アイビー:「あっそ。・・・そんな性格で、よく東京まで来れたわね」

 

 

 

佐藤:「着いて早々、綺麗なお姉さんに、怒鳴られて、まさに、東京の洗礼を受けたって感じ・・・」

 

 

 

アイビー:「ん? 綺麗なお姉さんって、私・・・?」

 

 

 

佐藤:「凛々しくて、綺麗なんで・・・、つい・・・」

 

 

 

アイビー:「あからさまな御世辞は、私、大っ嫌いなの!

      綺麗なお姉さん・・・。呆れて物も言えないわ!」

 

 

 

佐藤:「御世辞じゃない! 本心だもん!!!」

 

 

 

アイビー:「はぁ~あ、こんな屈辱・・・、初めてよ・・・!

      あんたみたいな、ドブスに、綺麗だなんて言われたくない!!!」

 

 

 

佐藤:「ドブス・・・! 酷過ぎる・・・。私は、本当に綺麗と思っただけなのに・・・!」

 

 

 

アイビー:「綺麗、綺麗、綺麗・・・! 本当、あんた見てると、イラつく・・・!

      あ~あ! 助けてやらなければ良かった!」

 

 

 

佐藤:「誰も助けてなんて・・・、頼んでない!!!」

 

 

 

アイビー:「何ですって!!!」

 

 

 

佐藤:「・・・こんな冷たい人間が居る場所・・・、来るんじゃなかった・・・。

    もう・・・、地元に帰りたいよ・・・」

 

 

 

アイビー:「あんた、甘えんのも、好い加減にしなさいよ!!!

      何が、冷たい人間の居る場所よ!

      確かに、田舎からしたら、都会は人付き合いもなくて、冷たい場所に見えるだろうけど・・・、

      それでもね・・・! 必死に此処で、自分のやりたい事、成し遂げる為に、

      歯を食いしばって、生きてる人達も居るの!!!

      それも知らないで、冷たい人間が居る場所なんて、決め付けるんじゃないわよ!!!」

 

 

 

佐藤:「私は・・・、悪くないもん・・・」

 

 

 

アイビー:「は?」

 

 

 

佐藤:「どうして、私だけが責められるのよ!!!

    田舎者が、期待に胸を膨らませて、上京して来て・・・、

    余りの凄さに、緊張して気持ち悪くなってた所に・・・、

    あんたみたいな、冷たい人間に、怒鳴られたら、そう思うに決まってるでしょ!!!

    都会に住んでる人だけが、苦労してるように言わないで!!!

    田舎住みの苦労も知らない癖に・・・」

 

 

 

アイビー:「田舎の暮らしなら・・・、嫌って言うほど、知ってるわよ・・・」

 

 

 

佐藤:「え? それならどうして・・・」

 

 

 

アイビー:「ふん! あんたにこれ以上、言う気なんて、微塵もないわ!

      東京の冷たさが、身に沁みたのなら、さっさと帰りなさい!!! じゃあね!!!」

 

 

 

佐藤:「待って!!!」

 

 

 

アイビー:「この期に及んで、まだ何か用?」

 

 

 

佐藤:「行く場所が無いの・・・」

 

 

 

アイビー:「・・・さっき、お姉ちゃん助けて・・・って、言ってたじゃないの。

      そのお姉さんに、連絡しなさいよ」

 

 

 

佐藤:「こっちに来る事、伝えて無いから・・・、

    いきなり来た事を知ったら、きっと怒られる・・・」

 

 

 

アイビー:「それなら、ホテルにでも泊まれば良いじゃない。

      ビジネスホテル、リゾートホテル、幾らでもあるわよ」

 

 

 

佐藤:「明日の夜、帰る予定だったから、そんな余裕も無い・・・」

 

 

 

アイビー:「それなら、あんた、一体何処に、泊まろうとしてたのよ?」

 

 

 

佐藤:「満喫に・・・」

 

 

 

アイビー:「はぁ・・・、呆れた・・・。仮にも、あんた、女でしょ・・・。全く・・・」

 

 

 

佐藤:「どういう意味? そっちも同じ・・・」

 

 

 

アイビー:「ちょっと、嘘でしょ!? じゃあ、あんた・・・、

      本当に、私の事、女だと思ってたの・・・?」

 

 

 

佐藤:「そうだけど・・・」

 

 

 

アイビー:「ふっ、あんた、可笑しい・・・」(笑う)

 

 

 

佐藤:「どういう意味?」

 

 

 

アイビー:「気に入ったって意味よ。良いから、付いてらっしゃい」

 

 

 

佐藤:「え? 何処に・・・!?」

 

 

 

アイビー:「今夜、泊る所よ」

 

 

 

 

 

 

 

(古びたマンション)

 

 

 

佐藤:「付いてきて、何ですが・・・、此処?」

 

 

 

アイビー:「ちょっと、それどういう意味よ。これでも、私の立派な寝城なの。

      良いから、入って」

 

 

 

佐藤:「はい・・・」

 

 

 

アイビー:「何にも無いけど、其処らへん、適当に座って良いわよ」

 

 

 

佐藤:「お邪魔します・・・」

 

 

 

アイビー:「あんた、レモンティー飲める? それとも、緑茶が良いかしら?」

 

 

 

佐藤:「どっちでも」

 

 

 

アイビー:「あら、そう。・・・じゃあ、私の今日の気分で・・・。

      はい・・・、レモンティー」

 

 

 

佐藤:「ありがとう・・・」

 

 

 

アイビー:「・・・それにしても、私の事、女に見間違うなんて、

      よっぽど視力が悪いのね・・・、あんた・・・」

 

 

 

佐藤:「もしかして、オカマ・・・?」

 

 

 

アイビー:「その呼び方は止めて。・・・私は、オネエよ。

      ・・・二度と間違えないで」

 

 

 

佐藤:「ごめんなさい・・・」

 

 

 

アイビー:「分かれば良いのよ。・・・私の名前は、アイビーよ。

      二丁目のバーで、雇われママしてるの。あんたは?」

 

 

 

佐藤:「名前は・・・、えっと・・・」

 

 

 

アイビー:「言いたくないってわけね・・・。それなら、良いわ」

 

 

 

佐藤:「え?」

 

 

 

アイビー:「・・・そうね、それじゃあ、あんたの名前は、キャットミントよ」

 

 

 

佐藤:「キャットミント?」

 

 

 

アイビー:「何よ? 文句があっても変えないから」

 

 

 

佐藤:「良いよ、それで」

 

 

 

アイビー:「あんた、素直な部分もあるじゃない。

      今夜は、疲れたでしょ? もう、寝なさい」

 

 

 

佐藤:「え? アイビーは?」

 

 

 

アイビー:「私は、少しお店に顔出してくる。あんたは気にせず、寝ときなさい。

      わかったわね?」

 

 

 

佐藤:「わかった・・・」

 

 

 

アイビー:「良い子ね。じゃあ、おやすみ」

 

 

 

 

 

 

佐藤:「行っちゃった・・・。・・・案外、良い人なのかな・・・。

    ・・・駄目だ・・・。・・・少し寝よう・・・」

 

 

 

 

(翌日)

 

 

 

佐藤:「う・・・う~ん・・・、良い匂い・・・」

 

 

 

アイビー:「やっと起きたわね。・・・朝食の用意、出来てるわよ」

 

 

 

佐藤:「ありがとう・・・」

 

 

 

アイビー:「今朝の気分は、カモミールティーよ。・・・あっ、料理の味は期待しないで」

 

 

 

佐藤:「いただきます・・・。・・・」

 

 

 

アイビー:「何よ? その顔」

 

 

 

佐藤:「不味い・・・」

 

 

 

アイビー:「あんた、ちょっとは、御世辞でも言いなさいよ」

 

 

 

佐藤:「御世辞、嫌いじゃなかったっけ?」

 

 

 

アイビー:「ん・・・。それもそうね。

      ・・・食べたら、出かけるわよ」

 

 

 

佐藤:「え・・・? 何処へ?」

 

 

 

アイビー:「あんたの地元よ」

 

 

 

佐藤:「それなら、今夜の夜行バスで・・・」

 

 

 

アイビー:「あんたのその様子じゃ、素直に帰らない気がしたの。

      だから、私が、地元まで送っていく」

 

 

 

佐藤:「送るってどうやって?」

 

 

 

アイビー:「車でよ。決まってるじゃない」

 

 

 

佐藤:「車、持ってるんだ」

 

 

 

アイビー:「ちょっと、何処見て、言ってんのよ!

      そりゃあ、住んでる根城は、おんぼろマンションだけど・・・。

      車くらい持ってるわよ」

 

 

 

佐藤:「ふ~ん・・・」

 

 

 

アイビー:「良いから、食べたら出発するんだから、早く場所、教えなさいよ」

 

 

 

佐藤:「遠くても?」

 

 

 

アイビー:「疑い深いわね・・・。ちゃんと、送ってくわよ。・・・それで、何処?」

 

 

 

佐藤:「福岡」

 

 

 

アイビー:「はぁ!?」

 

 

 

佐藤:「ほら、その顔。予想してたより、遠いって思ってる」

 

 

 

アイビー:「東京から、福岡よ・・・。そりゃあ、驚くわよ・・・」

 

 

 

佐藤:「無理しなくて良いよ。どうせ、今夜には・・・」

 

 

 

アイビー:「・・・ちょっと待ってて」

 

 

 

佐藤:「・・・」

 

 

 

アイビー:「・・・植物園あるのね」

 

 

 

佐藤:「・・・行った事、無いけど」

 

 

 

アイビー:「そう、それは良かった。それなら、行きましょう」

 

 

 

佐藤:「はぁ?」

 

 

 

アイビー:「何よ、送ってくだけじゃ、楽しく無いじゃない。

      長い移動になるんだから、構わないでしょ?」

 

 

 

佐藤:「別に構わないけど・・・」

 

 

 

アイビー:「それなら決まりね。ほらっ、さっさと食べちゃって」

 

 

 

佐藤:「は~い・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(マンションに併設された駐車場)

 

 

 

佐藤:「え? この車・・・?」

 

 

 

アイビー:「そうよ、何か文句ある?」

 

 

 

佐藤:「初心者マーク、付いてるけど」

 

 

 

アイビー:「久しぶりに乗るけど、初心者期間は、過ぎてるし、外すわね」

 

 

 

佐藤:「本当に、任せて大丈夫?」

 

 

 

アイビー:「良いから、早く乗りなさい!」

 

 

 

 

 

 

佐藤:「ねぇ~、この車、エアコンの効きが悪いんだけど・・・」

 

 

 

アイビー:「窓、開けなさい」

 

 

 

佐藤:「はぁ~・・・」

 

 

 

アイビー:「何よ? 文句ある?」

 

 

 

佐藤:「別に~・・・」

 

 

 

アイビー:「・・・感じ悪いわよ、あんた・・・」

 

 

 

佐藤:「ねぇ・・・、どうしても、帰らないと駄目?」

 

 

 

アイビー:「当たり前じゃない。・・・勝手に家を出て来て、親御さんも心配してるわよ・・・」

 

 

 

佐藤:「それなら、大丈夫だよ。友達のエリちゃん家で泊まるって言ってあるもん」

 

 

 

アイビー:「はぁ~・・・」

 

 

 

佐藤:「何よ、その溜息?」

 

 

 

アイビー:「キャットミント、あんたって頭、悪いでしょ?」

 

 

 

佐藤:「そんな事ないもん・・・」

 

 

 

アイビー:「すぐにバレちゃう嘘、付いてて、何言ってんだか・・・」

 

 

 

佐藤:「・・・ねぇ、どのくらいで着くの?」

 

 

 

アイビー:「そうね、15時間くらいかしら」

 

 

 

佐藤:「そんなに早く着くんだ・・・」

 

 

 

アイビー:「途中、SAで、休憩したりする予定だから・・・、

      実際は、もっと時間かかるわよ」

 

 

 

佐藤:「それでも、2日以上は、かからないよね?」

 

 

 

アイビー:「幾ら何でもかからないわよ・・・」

 

 

 

佐藤:「なんだ・・・。ガッカリ・・・」

 

 

 

アイビー:「あ~、もう! じれったいわね~!」

 

 

 

佐藤:「ちょっと、いきなり大声、出さないでよ!」

 

 

 

アイビー:「黙らっしゃい!!!」

 

 

 

佐藤:「っ!」

 

 

 

アイビー:「良い、よ~くお聞きなさい! さっきから理由も言わないで、

      ぐだぐだ、ぐだぐだ・・・。あたしね、まどろこしいの、大嫌いなのよ!

      帰りたくない理由があるなら、早く言いなさい!」

 

 

 

佐藤:「・・・怒らないって約束出来る?」

 

 

 

アイビー:「話の内容によっては、怒るわよ」

 

 

 

佐藤:「・・・やっぱり言うの嫌だ・・・」

 

 

 

アイビー:「良いから、話して。・・・ちゃんと最後まで聞いてあげるから」

 

 

 

佐藤:「・・・」

 

 

 

アイビー:「・・・」

 

 

 

佐藤:「・・・5日後にね、お父さん、再婚するの・・・」

 

 

 

アイビー:「・・・」

 

 

 

佐藤:「・・・新しいお義母さんになる朋子さんは、凄く優しくて、人当たりも良くてね・・・。

    非の打ち所がない人なんだ・・・。

    だからかな・・・。・・・亡くなったお母さんに申し訳なくて・・・。

    結婚式の日にちが決まった時も、・・・私ね、素直におめでとうって、伝えられなかったの・・・」

 

 

 

アイビー:「それで・・・?」

 

 

 

佐藤:「・・・結婚式の日が近付く内に、お父さん、朋子さんに・・・、

    どんな顔で接して良いか分からなくなって・・・。

    ・・・悩んでた時に、東京ビッグサイトで開かれるコスプレイベント知ったの・・・。

    とにかく、二人から離れたくて、・・・気付いたら夜行バスに乗ってた・・・」

 

 

 

 

アイビー:「・・・そうなの。・・・あんたって、行動力は一人前ね」

 

 

 

 

佐藤:「皮肉なんて言わないでよ」

 

 

 

アイビー:「あら、あたし也の、褒め言葉よ。

      ・・・ねぇ、本当は、東京にいるお姉さんにも、相談したかったんじゃないの?」

 

 

 

佐藤:「アイビーには敵わないな・・・。・・・正解・・・。

    ・・・でも、お姉ちゃんは、きっとこう言うに決まってる。

    何で悩む必要あるの? って・・・」

 

 

 

アイビー:「あんたより、要領が良さそうじゃない」

 

 

 

佐藤:「アイビー、怖い・・・。

    ねぇ、占い師、副業でやってみれば、稼げるんじゃない?」

 

 

 

アイビー:「あたしが占うんだから、当然よ」

 

 

 

佐藤:「・・・アイビーは、自信に満ち溢れてるから、凄いよ・・・。

    ・・・お姉ちゃんはね、私より明るくて、要領も良いんだ・・・。

    ちょっとお調子者の部分もあったり、無責任な部分もあるけど・・・、

    それでも、昔からお姉ちゃんの周りには、気付くと沢山の仲間が居てね・・・。

    ・・・それが凄く羨ましかった・・・」

 

 

 

アイビー:「あんたが・・・コスプレに憧れてる理由もわかった」

 

 

 

 

佐藤:「え?」

 

 

 

アイビー:「お姉ちゃんみたいに、なりたいのね」

 

 

 

佐藤:「うん・・・。でも、現実は厳しかったな~。

    ・・・お台場に着いて、あれだもん・・・。

    私なんて・・・、コスプレしても、私のまま・・・」

 

 

 

アイビー:「あんたの悪い癖よ、それ」

 

 

 

佐藤:「え?」

 

 

 

アイビー:「変わりたいって思ったのも、お父さんと、朋子さんに、

      素直な気持ちで、おめでとうって言えるように、勇気を持ちたいからでしょ?」

 

 

 

佐藤:「うん・・・」

 

 

 

アイビー:「・・・やる前から、諦めるんなんて許さないわよ」

 

 

 

佐藤:「でも・・・」

 

 

 

アイビー:「はぁ~・・・。・・・ねぇ、運転疲れたから、少しここのSAに寄るわよ」

 

 

 

佐藤:「うん・・・」

 

 

 

 

 

 

アイビー:「・・・さて、私は適当に食べ物、飲み物、買って来るから、

      あんたは、お手洗い、済ましてらっしゃい。

      トイレの場所、わかる?」

 

 

 

佐藤:「子供じゃないんだから、流石にわかる・・・」

 

 

 

アイビー:「そう。・・・なら、行ってらっしゃい」

 

 

 

佐藤:「は~い・・・」

 

 

 

 

 

 

アイビー:「さてと・・・、買い出しと、今夜の準備しなくちゃ・・・。

      本当、馬鹿なんだから・・・」

 

 

 

 

 

 

 

佐藤:「アイビー、お待たせ」

 

 

 

アイビー:「ねぇ、キャットミント、あんた、嫌いな物ってある?」

 

 

 

佐藤:「そこまでは、ないけど・・・」

 

 

 

アイビー:「それなら、私の気分で買うわよ。そうね、これと、これ、後、これも追加っと・・・。

      ・・・会計、済ましてくるから、先に車に戻ってなさい」

 

 

 

佐藤:「ねぇ、アイビー・・・」

 

 

 

アイビー:「何よ、その上目遣いは・・・?」

 

 

 

佐藤:「これも、買って欲しいな~・・・」

 

 

 

アイビー:「仕方ないわね~・・・。・・・静岡のお茶・・・。ふ~ん、いかにもあんたらしいチョイス・・・」

 

 

 

佐藤:「地味で悪かったわね。

    でも、これキャップの部分、捻ると新鮮な茶葉が落ちて、美味しいお茶になるんだもん・・・」

 

 

 

アイビー:「別に珍しくも無いわよ・・・」

 

 

 

佐藤:「・・・そんな~。わかった・・、じゃあ、諦める・・・」

 

 

 

 

アイビー:「はぁ~・・・。

      ・・・ねぇ、キャットミント、それもう一本、取って来て」

 

 

 

佐藤:「え?」

 

 

 

アイビー:「あたしの分もよ。ほら、早く」

 

 

 

佐藤:「・・・アイビー、大~好き!!! すぐに取って来るね!」

 

 

 

アイビー:「大声で騒がないで!!! ・・・もう・・・」(無邪気な顔で商品を取りに行く姿を見て笑う)

 

 

 

 

 

 

 

佐藤:「・・・はぁ~、重い・・・」

 

 

 

アイビー:「文句言ってないで、車まで運ぶ」

 

 

 

佐藤:「何もこんなに買い込まなくても・・・」

 

 

 

アイビー:「・・・夜中にお腹空いたら、困るでしょ・・・。

      それに、今夜泊まるビジネスホテル、素泊まりしか取れなかったからよ」

 

 

 

佐藤:「え? 今、何て?」

 

 

 

アイビー:「だから、今夜泊まる所に・・・」

 

 

 

佐藤:「1泊しても良いの?」

 

 

 

アイビー:「すぐに帰りたくないのでしょ?」

 

 

 

佐藤:「うん・・・」

 

 

 

アイビー:「なら、決定よ。・・・さっ、ホテルに向かいましょう」

 

 

 

佐藤:「うん!」

 

 

 

 

 

 

(予約していたホテルに到着するアイビーと佐藤)

 

 

 

 

アイビー:「思ってたより、広い部屋ね」

 

 

 

佐藤:「ベッドが二つ・・・」

 

 

 

アイビー:「ツインルームだから、当然じゃない」

 

 

 

佐藤:「アイビーと一緒の部屋・・・」

 

 

 

アイビー:「あたしは、オネエよ。

      心配しなくても・・・、あんたみたいな乳臭い女に、興味は無いから襲わないわよ」

 

 

 

佐藤:「それはそれで、何かムカつく」

 

 

 

アイビー:「文句ばっかり言ってないで、お風呂入りに行くわよ」

 

 

 

佐藤:「お風呂、あるの!?」

 

 

 

アイビー:「最上階に、あるらしいわよ」

 

 

 

佐藤:「まさか、混浴じゃ・・・」

 

 

 

アイビー:「男女、別よ・・・。変な事ばっか言ってると、置いてくからね」

 

 

 

佐藤:「あ~、待ってよ! アイビー!」

 

 

 

 

 

 

 

(露天風呂内)

 

 

 

 

アイビー:「はぁ~、良いお湯・・・。生き返るわ~・・・」

 

 

 

佐藤:「アイビー、そっちの湯加減、どう?」

 

 

 

アイビー:「最高よ~・・・。そっちはどうなの?」

 

 

 

佐藤:「こっちも快適~。・・・それよりも、安心した~」

 

 

 

アイビー:「何がよ?」

 

 

 

佐藤:「アイビーも、女湯に入るんだと思った」

 

 

 

アイビー:「馬鹿ね。あたしは、まだ未工事だから、無理よ」

 

 

 

佐藤:「それもそうか。・・・それにしても、良い眺め~」

 

 

 

アイビー:「悪くない景色ね。・・・此処、選んで正解だわ~」

 

 

 

佐藤:「本当、素直じゃないんだから」(小声)

 

 

 

アイビー:「あんたよりは、素直よ」

 

 

 

佐藤:「嘘!? 今の聴こえたの!?」

 

 

 

アイビー:「当然よ。あたし、耳も良いのよ。

      さっ、長く浸かってると、茹で蛸になっちゃう・・・。

      上がるわよ・・・」

 

 

 

佐藤:「は~い・・・」

 

 

 

 

 

 

佐藤:(N)「部屋に戻った後、アイビーと買ってきたお弁当と、カップラーメンを食べたのだけど、

      お風呂を上がった後から、アイビーさんは、心なしか元気が無かった・・・。

      どうしてだろうと気にはなったけど、移動し疲れた私は、食後、気付いたら寝てしまった・・・。

      ・・・どれくらい寝たのだろう・・・。気付くと、アイビーは、部屋に居なかった・・・」

 

 

 

 

佐藤:「あれ? アイビー、何処に行ったんだろう・・・」

    

 

 

佐藤:(N)「ふと、窓の外を見ると、海岸に人影が見えた。

       アイビーかも知れないと思った私はホテルを出て、海岸に向かう事にした」

 

 

 

 

 

 

 

アイビー:「・・・どうして、私だけが、こんな苦しまないと行けないの・・・。

      私、何か悪い事したの? ねぇ、何も悪い事してないのよ・・・。

      どうして、私だけ・・・。誰か答えてよ・・・!」

 

 

 

佐藤:(N)「あんなに自信に満ち溢れてたアイビーが、泣いていた・・・。

       私は、どう声をかけて良いかもわからず、少し距離を置いて見守るしかなかった・・・」

 

 

 

 

アイビー:「・・・ただ私は、普通の人みたいに、普通の幸せを望んでるだけなの・・・。

      なのに・・・、周りは私を見て、まるで腫れ物に触れるみたいに接したり・・・、

      好奇な目で見て来る・・・。・・・私はあんた達の見世物になる為に・・・、

      この世に産まれて来たわけじゃないわよ・・・。

      どうして、私だけ、こんな目に合うの・・・」

 

 

 

佐藤:「アイビーだけが辛いわけない!」

 

 

 

アイビー:「え・・・?」

 

 

 

佐藤:(N)「私は、気付くと声をかけていた」

 

 

 

アイビー:「・・・良いから、放って置いてちょうだい・・・。これは、ただの発作みたいな物よ・・・。

      ホルモン剤、注射してるから、・・・時々、情緒不安定になるだけ。

      そんな時は泣けるだけ泣いて、精神安定剤を飲んだら・・・、治まるんだから・・・」

 

 

 

佐藤:「でも、一時的だよね・・・? それじゃあ、いつまで経っても解決しないよ」

 

 

 

 

アイビー:「あんたに、何が分かるって言うのよ! 私の辛さは、私にしか分からないの!!!

      泣いてる姿、見たからって、母性本能でも覚醒したのかしら?

      それなら、お気の毒様! 今のあんたは、ただのお節介に過ぎないわよ!!!」

 

 

 

佐藤:「お節介でも良い! 放って置けるわけないじゃない! そんなに自分自身、傷つけても苦しいだけだよ」

 

 

 

アイビー:「それくらい分かってるわよ! でも、そうでもしないと、この不安からは逃れられないのよ!!!」

 

 

 

佐藤:「なら! 私がアイビーの精神安定剤になる!!!」

 

 

 

アイビー:「何、言ってるのよ・・・、あんた・・・」

 

 

 

佐藤:「ごめんね・・・。・・・自信に満ち溢れてたから、その内側で・・・、

    こんなに苦しんでるアイビー、分からなかった・・・」

 

 

 

アイビー:「昨日、会ったばかりのあんたに、そんな一面、見せる訳ないでしょ・・・。

      ・・・だから、こうして海岸に来て、一人で泣いてたのよ・・・」

 

 

 

佐藤:「嫌われると思った・・・?」

 

 

 

 

アイビー:「馬鹿言わないで! 何でそんな事、私が気にしてないと・・・」

 

 

 

佐藤:「アイビー、口は悪いけど・・・、心は温かいから・・・。

    第一、昨日、会ったばかりの女性、送ってこうなんて考えないよ」

 

 

 

アイビー:「放って置けるわけないじゃない! こんな危なっかしい子・・・。

      ・・・あんたがお台場で、一人、蹲ってる時・・・、昔の自分を思い出したの・・・」

 

 

 

佐藤:「え?」

 

 

 

アイビー:「あたしも初めて、東京に出て来た時、同じだった・・・。

      周りに知り合いは、誰一人も居なくて・・・、

      道に迷って人に尋ねようとしても、誰も足を止めてくれなかった・・・。

      それも、当然よね・・・。こんな化粧の来い化け物に、声かけられそうになるんだもの・・・」

 

 

 

佐藤:「アイビー・・・」

 

 

 

 

アイビー:「だから、昨日、あんたに声かけたの・・・。昔の自分を見ているようで、放って置けなかった・・・。

      あの時、手を差し伸べてあげなければ、あたしは、きっと後悔して昔の自信の無い姿に戻ってた。

      でも、まさか・・・、そんな弱ってたあんたに、今度はあたしが救ってもらうなんてね・・・。

      さっきの言葉・・・、悪くなかったわよ・・・。・・・ありがとう、キャットミント・・・」

 

 

 

 

佐藤:「どういたしまして・・・」

 

 

 

 

アイビー:「さぁ、次はキャットミント、あんたが変わる番。

      今なら、あたし達しか居ないから、お父さん、朋子さんに伝える練習・・・」

 

 

 

 

佐藤:「あぁ、それなら、もう大丈夫。・・・もう、良いんだ~!」

 

 

 

 

アイビー:「どうしてよ?」

 

 

 

佐藤:「コスプレしたら、違う自分になれると思うけど・・・、気付いたんだ私・・・。

    ・・・ありのままの・・・、今の私で、お父さん、お義母さんに、おめでとうって、伝えるのが良いんだって・・・。

    だから、もう大丈夫・・・」

 

 

 

アイビー:「I will be reborn」

 

 

 

佐藤:「え?」

 

 

 

アイビー:「キャットミント・・・、あんたは、生まれ変わったのよ。

      今のあんたなら、ちゃんと伝えられるわよ」

 

 

 

 

佐藤:「ありがとう。アイビー」

 

 

 

アイビー:「・・・ねぇ、コスプレは諦めるの?」

 

 

 

佐藤:「・・・やっぱり私には、ハードルが高いかな~。

    それに私、綺麗じゃ・・・」

 

 

 

アイビー:「いいえ、あんた、綺麗よ。・・・あたしが普通の男なら、惚れてる」

 

 

 

佐藤:「何よ、ドブスなんて言ったくせに」

 

 

 

アイビー:「あの時は、内面がそうだったからよ。でも、今のあんたは、そうじゃない。

      間違いなく、惚れてたわ」

 

 

 

佐藤:「それなら、試しに付き合ってみる?」

 

 

 

アイビー:「はぁ?」

 

 

 

佐藤:「私達、案外、良いパートナーになれるかも・・・!」

 

 

 

アイビー:「10年、早いわよ! その言葉!」

 

 

 

佐藤:「あ~、振られちゃった・・・。あっ、アイビーの名前って自分で付けたの?」

 

 

 

アイビー:「ええそうよ。・・・I will be reborn。

      ・・・私は、生まれ変わる・・・。

      弱気な自分から、変わりたくて、Iとbeを取って、アイビーよ」

 

 

 

佐藤:「結構、凝ってるね。・・・じゃあ、私のキャットミントは?」

 

 

 

アイビー:「あら、簡単よ。・・・花言葉で、無邪気。

      ・・・あんたにピッタリだと思ったから付けたのよ」

 

 

 

佐藤:「な~んだ。期待して損した・・・」

 

 

 

アイビー:「さっ、明日は朝早いから、ホテル、戻って休むわよ」

 

 

 

佐藤:「は~い」

 

 

 

 

 

 

 

佐藤:(N)「翌朝、早くに出た私達は、途中SAに寄りながらも、

       ついに、目的地の植物園に辿り着いた・・・。

       道中、アイビーとの会話は楽しくて、私は、これで別れになるのが寂しいと思った」

 

 

 

 

アイビー:「植物園に到着」

 

 

 

 

佐藤:「うん・・・」

 

 

 

アイビー:「でも、残念ながら閉館時間、過ぎたわね・・・」

 

 

 

佐藤:「だから、SAに寄り過ぎだって言ったじゃない」

 

 

 

アイビー:「仕方ないでしょ。・・・あんたと少しでも、長く居たかったんだから・・・」

 

 

 

佐藤:「え・・・?」

 

 

 

アイビー:「これで、最後になるのが、寂しいって思っただけよ・・・。悪い?」

 

 

 

 

佐藤:「ふふふ・・・、あっははははは!!!」

 

 

 

 

アイビー:「何よ、何が可笑しいのよ!?」

 

 

 

佐藤:「私達、同じ気持ちだったんだなって」

 

 

 

アイビー:「え?」

 

 

 

佐藤:「相思相愛って事! ちょっと待って・・・。

    はい、これ、私の連絡先・・・」

 

 

 

アイビー:「ちょっと! 何よ、これ!」

 

 

 

佐藤:「さ~て、家に帰ろうっと! ・・・。(車から降りる) 

    ・・・送ってくれて、ありがとうね! アイビー!」

 

 

 

アイビー:「もう・・・。ちゃんと寄り道しないで、家に帰りなさいよ」

 

 

 

佐藤:「分かってるよ、それくらい」

 

 

 

アイビー:「じゃあね・・・!」

 

 

 

佐藤:「ねぇ、アイビー~!!!」

 

 

 

アイビー:「何よ?」

 

 

 

佐藤:「・・・I'll be back!!!」

 

 

 

アイビー:「はぁ? 別れ際でそれ?」

 

 

 

佐藤:「ちょうど良いタイミングかなって! じゃあね~!!!」

 

 

 

アイビー:「何なのよ、全く・・・」

 

 

 

 

 

 

 

アイビー:(N)「それから、数日後・・・。

         キャットミントから、メールが届いた。

         そこには、お父さんと朋子さんの真ん中に、幸せそうな笑顔で写っている彼女が居た」

 

 

 

 

アイビー:「ちゃんと、心からおめでとう言えたのね・・・。ん・・・? これって・・・?」

 

 

 

佐藤:「追伸・・・、I'll be back!!!」

 

 

 

 

アイビー:「あの子ったら・・・。ふふふ・・・」

 

 

 

アイビー(N):「その追伸の意味を知るのは、それから2年後の事だった・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(東京ビッグサイト前)

 

 

 

 

佐藤:「アイビー・・・。来ちゃった・・・」

 

 

 

アイビー:「あんた・・・、見事に、I'll be backしたわね・・・」

 

 

 

佐藤:「だって、アイビーに会いたかったんだもん・・・」

 

 

 

アイビー:「はぁ~・・・。それで、いつまで居るつもり?」

 

 

 

佐藤:「・・・とりあえず2年・・・。その後は、また考える」

 

 

 

アイビー:「あんた、それは上京じゃない!!!」

 

 

 

佐藤:「あっ、それもそうだね!」

 

 

 

アイビー:「・・・それで、住む場所は決めてるのよね?」

 

 

 

佐藤:「あっ、それもまだなんだ」

 

 

 

アイビー:「はぁ!?」

 

 

 

佐藤:「だから、暫くアイビーの家に、居候させて! ねっ、お願い!!!」

 

 

 

アイビー:「仕方ないわね・・・。・・・じゃあ、条件があるわ」

 

 

 

佐藤:「何だろう・・・」

 

 

 

アイビー:「いい加減、名前、教えなさい!」

 

 

 

佐藤:「な~んだ。そんな事か・・・。・・・私は、佐藤 雛乃。・・・宜しくね」

 

 

 

アイビー:「ドブスにしては、可愛い名前じゃない・・・。」

 

 

 

佐藤:「あ~、2年ぶりに再会して、それは無いよ~」

 

 

 

アイビー:「文句あるなら、居候させないんだから」

 

 

 

佐藤:「そんな~・・・」

 

 

 

アイビー:「それと、仕事が見つかるまで、私のお店で、ドラッグクイーンとして、働いてもらうわよ。

      良いわね! 雛乃!」

 

 

佐藤:「色々と、無茶苦茶だよ~。・・・せめて、女性として・・・」

 

 

 

アイビー:「さぁ、早く・・・。家に帰って、夕飯の支度よ・・・」

 

 

 

佐藤:「じゃあ、もしかして・・・! 住まわして・・・」

 

 

 

 

アイビー:「来るの? 来ないの?」

 

 

 

佐藤:「あっ、行くから、置いてかないで・・・!!!」

 

 

 

アイビー:「もう、初めから素直になりなさいよ・・・。ほらっ、行くわよ!」

 

 

 

佐藤:「うん! 待ってよ、アイビー!!!」

 

 

 

 

 

 

終わり