海影島

 

         

作者:片摩 廣

 

 

 

 

登場人物 

 

 

男性

 

 

上田辺 俊一郎(かみたぬい しゅんいちろう)・・・ 30歳 短髪 黒髪 先輩の国崎と一緒にこの島に訪れる  

 

国崎 雅也(くざき まさや)・・・ 35歳 普通の髪の長さ 茶髪 上田辺の先輩

 

太岡寺國正 (たいこうじ くにまさ)・・・45歳 短髪 黒髪 旅館、鏡月の支配人

 

神木啓吾 (こうのぎ けいご)・・・20歳 黒髪 天花寺響子の世話係

 

 

女性

 

 

四神田摩耶(しこうだ まや)・・・ 35歳 ロングの黒髪 島に捜査しに来た刑事

 

天花寺響子(てんげいじ きょうこ)・・・ 28歳 黒髪アップ 天花寺財閥のお嬢様

 

猿野藍(ましの あい)・・・19歳 ショート茶髪 島のガソリンスタンドと、旅館、鏡月でバイトしてる女の子

 

朝熊雪江(あさま ゆきえ)・・・34歳 黒髪アップ 旅館、鏡月の美人若女将 

 

 

 

比率:【4:4】 

 

 

上演時間【120分】

 

 

 

※オンリーONEシナリオ2022、

 

 7月、テーマにしたシナリオ

 

 

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CAST

 

上田辺 俊一郎:

 

国崎 雅也:

 

太岡寺 國正:

 

神木 啓吾:

 

四神田 摩耶:

 

天花寺 響子:

 

猿野 藍:

 

朝熊 雪江:

 

 

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本編はここから

 

 

 

(1日目)

 

 

 

(海影島から海を見つめている朝熊)

 

 

 

朝熊:「・・・海が鳴いている・・・。・・・そう、また新たなお客様が、この海影島に来るのですか・・・。

    ・・・お喜びください、海影様・・・、・・・100年に一度の大事な日も、賑やかになるでしょう・・・。

    ふふふふ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

上田辺:(N)「ある伝説を記事にする為、先輩の国崎 雅也と訪れた人口も少ない島・・・、海影島・・・。

        仕事とはいえ、この離れている島に来る為に、船で2時間・・・。そして・・・」       

 

 

 

 

国崎:「はぁ~、何だか寂れた島だな~・・・。こんな所で仕事とか、本当、ついてないよな・・・」

 

 

上田辺:「取材料の金額を見て、即決したのは、先輩なんですから。・・・ボヤいてる暇があるなら、早く足を動かしてください」

 

 

国崎:「へいへい・・・。それにしても、この島には、まともな旅館とかホテルとか、本当に在るのか?」

 

 

上田辺:「確か、街の観光協会で紹介された旅館がこの辺にあるはずなんですが・・・」

 

 

国崎:「何処にそんな立派な旅館があるんだよ!!! 

               30分以上歩いたけど、民家ばかりじゃねえか!!!」(イラついて上田辺の頭を後ろからどつく)

 

 

上田辺:「痛ったたたた! 暴力反対です!!! そうやってイラついたら、俺を殴る癖、治してくださいよ!!!」

 

 

国崎:「うるせー!!! 殴られるのが嫌なら、さっさと旅館を探しやがれ!!!」

 

 

上田辺:「パワハラでいつか訴えますからね・・・。あっ、あそこに女性がいるので、訊いてみます」

 

 

国崎:「俺は此処で待ってるから、行ってこい」

 

 

 

 

 

四神田:「ふむ・・・、此処も現れた後か・・・。まずい・・・、日が暮れてきたし、急がないと・・・」

 

 

上田辺:「あの! すみません! 道に迷ってまして・・・、教えて欲しいのですが・・・」

 

 

四神田:「道に迷っただと? お前は旅行者か・・・?」

 

 

上田辺:「いえ、仕事で来てまして・・・。今夜から、お世話になる旅館を探してるんです」

 

 

四神田:「そうか・・・」

 

 

上田辺:「この旅館なのですが、ご存じでしょうか?」

 

 

四神田:「あいにく、私も此処に来たばかりだ・・・」

 

 

上田辺:「そうですか・・・。・・・困ったな~」

 

 

四神田:「・・・もう少し行った所に、ガソリンスタンドがある。そこで、道を尋ねてみたらどうだ?」

 

 

上田辺:「ご親切にありがとうございます! 早速、行ってみます!!!」

 

 

四神田:「おい・・・!」

 

 

上田辺:「なんでしょう?」

 

 

四神田:「悪い事は言わない。この島には長居するな・・・」

 

 

上田辺:「それは何故・・・?」

 

 

四神田:「悪いが・・・、詳しくは話せない・・・。じゃあな」

 

 

 

 

 

 

上田辺:「変な女性だったな~・・・。とりあえず、教えてもらったガソリンスタンドに向かうか」

 

 

国崎:「おう、旅館の場所、わかったか?」

 

 

上田辺:「それが、あの女性もこの島の人では無いみたいで・・・、旅館の場所はわかりませんでした」

 

 

国崎:「それで、そのまま戻って来たのか! この役立たず・・・!!!」

 

 

上田辺:「話は最後まで聞いてください!!!

     ですが、この先をもう少し行った所に、ガソリンスタンドがあるみたいですので、そこで訊いてみましょう」

 

 

国崎:「おい・・・、まだ歩くのか・・・」

 

 

上田辺:「仕方ないでしょう。日も暮れて来ましたし、急ぎましょう!」

 

 

国崎:「やれやれ・・・」

 

 

 

 

 

上田辺:「此処が教えてもらったガソリンスタンドですかね・・・」

 

 

国崎:「見るからに、田舎のガソリンスタンドだな・・・。こりゃあ~・・・」

 

 

上田辺:「とにかく、店員を探しましょう!」

 

 

 

 

猿野:「ありがとうございました~!!! 

    ふ~、店長~! お客も落ち着いたし、そろそろ帰って良いかな~?

    ・・・えっ、まだ駄目~!? だって~・・・今日は、もう、お客来ないって!!!」

 

 

 

上田辺:「あのう~、すみません・・・」

 

 

猿野:「はい! いらっしゃい・・・ませ・・・!? 店長~! スーツ姿の男性が2人来てるんだけど!!!」

 

 

上田辺:「・・・少々、道をお尋ねしたいのですが? この場所ってわかりますか?」

 

 

猿野:「あ~、この旅館なら知ってるよ!」

 

 

上田辺:「本当ですか!? 助かります!!!」

 

 

猿野:「お兄さん、お兄さん、ちょっと~、こっち来て~」

 

 

上田辺:「え・・・? 何ですか?」

 

 

猿野:「良いから、良いから~」

 

 

上田辺:「・・・それで何ですか? 勿体ぶらないで、早く教えてください」

 

 

猿野:「お兄さん、鈍いね~・・・。情報料だよ~。・・・タダでとは行かないな~」

 

 

上田辺:「え・・・?」

 

 

猿野:「これくらいで、どうかな~?」

 

 

上田辺:「場所、教えてもらうのに2千円!?」

 

 

猿野:「シッ~~!!!! お兄さん、声がでかいよ~!!!」

 

 

上田辺:「すみません・・・」

 

 

猿野:「こんな寂れた島で、健気に働いてる女の子、可哀想と思わない!?

    思わないわけないよね~?

    お兄さん・・・、身なりしっかりしてるし~、このくらい、お金持ってるよね・・・?」

 

 

上田辺:「持ってるけど・・・、先輩に相談してきます・・・」

 

 

猿野:「私の気が変わらない内に、早くね~!!!」

 

 

 

 

 

 

国崎:「おっ! 旅館の場所、わかったか?」

 

 

上田辺:「それが・・・、知ってるみたいなのですが、お金を要求されて・・・」

 

 

国崎:「ああん? いくらだ?」

 

 

上田辺:「・・・2千円です。・・・幾ら何でも高い・・・」

 

 

国崎:「よし! お前が払え~」

 

 

上田辺:「えええええええ~!!!!」

 

 

国崎:「うるさい奴だな~! 日も暮れてきてるし、俺は・・・、お腹が空いてるんだ!!!

    早く旅館に行く為なら、決まってるだろう!!!」

 

 

上田辺:「わかりましたよ・・・」

 

 

 

 

 

 

猿野:「お兄さん、おかえり~! それで、どうするか決めた~?」

 

 

上田辺:「・・・2千円払うので、場所を教えてください・・・」

 

 

猿野:「やったね~!!!!」

 

 

上田辺:「・・・それじゃあ、はい、これ・・・」

 

 

猿野:「毎度あり~!!! オッホン! この旅館なら~、

    この道をまっすぐ10分程行った先にある山を登って~、20分くらいの所だよ~!」

 

 

上田辺:「ええええ~!? ここから、まだ30分くらいかかるの~!?」

 

 

猿野:「うん!!!!」

 

 

上田辺:俺達、歩きなんだけど~・・・」

 

 

猿野:「ありゃりゃ~、此処から歩いて向かうんだ~・・・。

    日が暮れてきてるし~、山の夜道は・・・、獣とかも出るから危険だよ~・・・」

 

 

上田辺:「え!? それは困ったな~・・・」

 

 

猿野:「そこでだ、お兄さん・・・、物は相談なんだけどさ~・・・」

 

 

上田辺:「うっ、嫌な予感が~・・・」

 

 

猿野:「私、車持ってるんだよね! 更にこれから、その旅館になんと用事があって行くんだよね~!」

 

 

上田辺:「それで・・・?」

 

 

猿野:「お兄さん達、乗せて行ってあげても良いけど・・・、どうかな~?」

 

 

上田辺:「嬉しいけど・・・、勿論、タダでは無いよね・・・?」

 

 

猿野:「あはははは! お兄さん、だいぶ利口になったね~! そうだな~、ここから30分くらいの距離だから・・・、

    ちょっと、待ってね~・・・。ガソリン代とかも含めて~・・・、3千円でどうかな?」

 

 

上田辺:「さっきのお金と合わすと、5千円か・・・」

 

 

猿野:「また先輩に聞いてくる?」

 

 

上田辺:「そうしようかな~・・・」

 

 

国崎:「その必要はない」

 

 

上田辺:「先輩、いつの間に・・・」

 

 

国崎:「あまりに遅いから、気になったんだ。・・・それで、金は払って、場所は聞けたのか?」

 

 

上田辺:「旅館の場所は分かったのですが・・・、ここから更に30分程の距離みたいで~・・・」

 

 

国崎:「それで? 更に俺に歩けというのか・・・?」

 

 

上田辺:「いいえ、違います・・・。この子が車を持ってて、これから旅館に用があるので、

     乗せて行ってあげても良いみたいです・・・」

 

 

国崎:「なんだ、俺達には都合の良い話じゃないか?何が問題なんだ~?」

 

 

上田辺:「それが・・・、追加で3千円、合計で5千円払えと・・・」

 

 

国崎:「5千円だと・・・」

 

 

上田辺:「ねっ! さすがに高いですよね~」

 

 

国崎:「よし! さっさと払え!」

 

 

上田辺:「えええええええ~!」

 

 

国崎:「乗せて行ってくれるんだったら良いだろう! よろしくな! お嬢ちゃん!」

 

 

猿野:「お兄さん、こっちのお兄さんより話が早くて助かる~! そうと決まれば、車を準備してくるから、待ってて~!」

 

 

 

 

 

SE:固定電話の着信音

 

 

太岡寺:「はい・・・、こちら旅館、鏡月(きょうげつ)・・・。・・・あ~、その声は・・・猿野やないか。どうしたんや?」

 

 

猿野:「今から、旅館に泊まるお客、男性2名、連れてくから宜しく~!」

 

 

太岡寺:「わかった・・・。お前・・・、なんや上機嫌だが、さては、また観光客から・・・」

 

 

猿野:「良いじゃない! この島で唯一の小遣い稼ぐ方法なんだから!!! 

    とにかく、今から連れてくから、部屋の用意、宜しくね!」(電話を切る)

 

 

太岡寺:「なんや、切れてもうた・・・。相変わらず、ちゃっかりした性格してるのう・・・」

 

 

朝熊:「國正・・・、騒いだりしてどうしたの?」

 

 

太岡寺:「あぁ・・・、若女将。・・・猿野から連絡がありやして、これから新規のお客が2名、来やす」

 

 

朝熊:「あら、そう・・・。・・・観光協会に頼んでた回がありましたね。

    この海影島を繁栄させる為の、大事なお客様です・・・。

    丁重に出迎えて差しあげなさい・・・」

 

 

太岡寺:「かしこまりやした・・・」

 

 

朝熊:「もうすぐ・・・、7月18日・・・。・・・今年の海影島は・・・、

    どうやら、運も恵まれているようですね・・・」

 

 

太岡寺:「・・・」

 

 

朝熊:「・・・私は、少し出かけますので、後は國正・・・、頼みましたよ」

 

 

太岡寺:「はっ・・・、行ってらっしゃいませ・・・」

 

 

 

 

 

国崎:「さっきからどうした? そんな顔して?」

 

 

上田辺:「別に・・・、何でもないですよ・・・」

 

 

国崎:「お前すぐに顔に出るな~・・・。仕方ないだろう! 

    ここから30分程かかる距離を・・・、俺に歩けとか~、無茶過ぎるだろう!!!」

 

 

上田辺:「それはそうですけど・・・」

 

 

国崎:「それにだ! そんな距離を俺に歩かせてみろ・・・。

    ・・・俺のイライラが限度を超えて、お前を何度、叩くかわからないからな~。

    これは、お前の為だ~」

 

 

上田辺:「それは、流石に嫌ですけど・・・」

 

 

国崎:「だろう? だからこの決定は、仕方ない事なんだ!」

 

 

上田辺:「ですかね・・・」

 

 

 

 

 

 

猿野:「お待たせ~!!! あれ? どうしたの~?」

 

 

国崎:「ん? 何でもない! お嬢ちゃん、宜しく~」

 

 

猿野:「そう? それじゃあ、出発するから、さっさと乗った乗った」

 

 

 

 

 

(猿野の車で、旅館に向かう)

 

 

 

猿野:「それで、お兄さん達は、この島に何しに来たの~?」

 

 

国崎:「俺達は、仕事で来たんだ」

 

 

猿野:「ふ~ん、こんな所に来るなんて大変だね~。いつまでいる予定?」

 

 

国崎:「それは、まだわからないけど、1週間くらいの予定だ」

 

 

猿野:「そうなんだ。それじゃあ、その間、車が必要だったら、またいつでも声かけてね」

 

 

国崎:「なんだか悪いな~。じゃあ、お言葉に・・・」(頼もうとするのを止めるように上田辺が断る)

 

 

上田辺:「いいえ、結構です!!!」

 

 

国崎:「いきなり大声でどうしたんだ!?」

 

 

上田辺:「旅館からタクシーとか呼べば良いですし、車は何とかなりますよ」

 

 

国崎:「それもそうだな。お嬢ちゃん、そういう事だ、悪いな~」

 

 

猿野:「そっか、残念。所でさ、お兄さん達、名前は? 私は、猿野藍(ましの あい)、宜しく~」

 

 

国崎:「俺は国崎 雅也(くざき まさや)、そんで、こいつは・・・」

 

 

上田辺:「上田辺 俊一郎(かみたぬい しゅんいちろう)です」

 

 

猿野:「国崎さんに、上田辺さんね~! 

    あっ、そうそう・・・、これから行く旅館には、今夜泊まる人、これから連れてくって伝えてるからね」

 

 

国崎:「おっ、気が利くな~! ありがとうよ!」

 

 

猿野:「どういたしまして。さてと、これから山道に入るけど~、

    くねくねした道だから、気持ち悪くなったりとかしたら、すぐに教えてね~」

 

 

国崎:「わかった」

 

 

 

 

 

 

上田辺:「・・・」

 

 

国崎:「おい、どうした? 顔色が悪いぞ?」

 

 

上田辺:「なんだか気持ちが悪く・・・」

 

 

猿野:「あ~、言ってる側から~。・・・はい、国崎さん、これ、飲ませてあげて」(水筒を渡す)

 

 

国崎:「これは・・・?」

 

 

猿野:「この島でとれたお茶だよ。車酔いにも、効果抜群なんだから~!」

 

 

国崎:「そうなのか~。ほら、上田辺・・・、飲めるか・・・?」

 

 

上田辺:「すみません・・・。いただきます・・・」

 

 

 

 

 

 

国崎:「どうだ、気分は・・・?」

 

 

上田辺:「は~・・・、落ち着いて来ました~・・・」

 

 

国崎:「全く~、心配させるなよ~」

 

 

上田辺:「すみません・・・、先輩・・・」

 

 

猿野:「へ~、国崎さんて、後輩思いなんだね~」

 

 

国崎:「世話の焼ける後輩で、困りもんだよ~」

 

 

猿野:「またまた~、そこが可愛いんじゃないの?」

 

 

国崎:「馬鹿!? そんなわけないだろう!!!」

 

 

猿野:「そうなんだ~。仲良く見えたんだけどな~」

 

 

国崎:「気のせいだ!!! なぁ~?」

 

 

上田辺:「ええ・・・。国崎さんは、そんな優しい先輩じゃないですよ・・・」

     第一、優しいならさっきの5千円も、自分で払いますよ・・・」

 

 

国崎:「この、上・・・田・・・辺~!!!!!!!」 (羽交い絞めにする)

 

 

上田辺:「うわあああ!!!! 先輩!!! 危ないですよ~!!! 苦しい~!!! 助けて~!!!!!」

 

 

猿野:「はいはい~、もうすぐ、旅館に着くから、我慢してね~」

 

 

上田辺:「そんなあああああああ~!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

猿野:「お二人さん、さぁ、着いたよ~。あ~・・・上田辺さん、生きてる~?」

 

 

上田辺:「なんとか~・・・」

 

 

国崎:「さっさと受付に行くんだから、早く降りろ」

 

 

上田辺:「は~い・・・」

 

 

国崎:「ありがとうな! お嬢ちゃん! 助かったよ!」

 

 

猿野:「どういたしまして~。それじゃあ、私はこれで。またね~、お二人さん!」

 

 

 

 

 

 

 

国崎:「さてと、チェックインの手続き手続き・・・」

 

 

太岡寺:「いらっしゃいませ! もしかして、御二方は先程、猿野(ましの)から連絡いただいた方々で?」

 

 

国崎:「あぁ、そうだ」

 

 

太岡寺:「それはそれは、遠路はるばるお越しいただきやした。私は、この旅館の支配人の太岡寺(たいこうじ)と申しやす。

     まずは、こちらでチェックインの手続きをお願いしやす」

 

 

国崎:「あぁ~、上田辺、・・・手続き頼む」

 

 

上田辺:「わかりました」

 

 

太岡寺:「それでは、こちらでございやす」

 

 

国崎:「ふ~ん、ロビーからの景色はまずまずな感じだな。ん? 他にも、客は居るみたいだな~」

 

 

天花寺:「熱っ!!! 何ですの!? このお茶は!!!! ちょっと、啓吾! 啓吾!!!!」

 

 

神木:「はい! なんでしょう! お嬢様!!!」

 

 

天花寺:「何ですじゃありませんの! こんな熱いお茶、飲めるわけないでしょう!!! 早く取り換えてきなさい!!!」

 

 

神木:「そうは言われましても・・・」

 

 

天花寺:「良いから早くなさい! この役立たず!!! もたもたしてると、ぶちますわよ!!!」

 

 

神木:「はいっ! いますぐに!!!」

 

 

天花寺:「全く、この旅館のサービスはどうなってますの・・・。 ・・・何か・・・?」(国崎を睨みつける)

 

 

国崎:「・・・別に・・・」

 

 

天花寺:「・・・あ~、鬱陶しい!!! 見世物ではございませんの!!! いつまでもジロジロと・・・、気持ち悪い・・・」

 

 

国崎:「あ!? 失礼だな! 俺は別に見たくて見たんじゃねえよ!!!」

 

 

天花時:「それ、どう言う意味ですの!?」

 

 

国崎:「お前がロビーで、下品な大声で騒いでるから見ただけだ! 少しは周りの迷惑ってのもちっとは考えやがれ!!!」

 

 

天花時:「無礼な・・・。先程から、この私(わたくし)に向い、暴言の数々・・・。・・・絶対に許せませんの!!!」

 

 

国崎:「お? なんだやるってのか!!!?」

 

 

天花時:「望むところですわ! かかって来なさい!!!」

 

 

国崎:「女でも、俺は容赦なんてしないからな!!! 後悔するなら、今の内だぜ!!!」

 

 

天花時:「問答無用ですわ!!!」

 

 

上田辺:「ちょっと! 先輩、何やってるんですか!!!?」

 

 

国崎:「おっ! 良い所に来た! 上田辺、お前も加勢しろ!!!!」

 

 

上田辺:「しませんよ! 良いから、落ち着いてください!!!」

 

 

国崎:「この野郎! 何しやがる!!! 離しやがれ!!!」

 

 

上田辺:「嫌です!!! 離しません!!!」

 

 

神木:「お嬢様、お待たせしまし・・。ああああ、わわわわわ!!!」

 

 

国崎:「え!?」

 

 

(お茶が国崎の足にこぼれる)

 

 

国崎:「ぎゃああああああああ!!! 熱ちちちちち!!!!」

 

 

上田辺:「先輩!? 大丈夫ですか!!!!?」

 

 

国崎:「大丈夫なわけあるか! 早く冷やすもの持ってこい!!!」

 

 

上田辺:「はい!!!」

 

 

天花時:「お~ほほほほほっ! いい気味です事!!!

     この私に無礼な事を言うから罰(ばち)が当ったのですのよ! よくやりましたの! 啓吾!」

 

 

神木:「あのう、放って置いて良いんですか? お嬢様・・・?」

 

 

天花時:「良いんですのよ! さ~て、お部屋に戻りますわよ。早く来なさい、啓吾!」

 

 

神木:「待ってください。お嬢様!」

 

 

国崎:「この野郎!待ちやがれ!!!」

 

 

天花時:「待ちませんわ! お~ほほほほっ!」

 

 

 

 

国崎:「くそう・・・・」

 

 

上田辺:「先輩、氷とタオル持ってきました!」

 

 

国崎:「この馬鹿野郎! 遅いんだよ!!!」(上田辺を殴る)

 

 

上田辺:「痛っ! 先輩、酷いじゃないですか・・・」

 

 

国崎:「遅いのが悪い! それより、何者だ、あいつは?」

 

 

上田辺:「そんな事、わかりませんよ・・・」

 

 

太岡寺:「先程のお客様は、天花時財閥のお嬢様で、天花寺響子(てんげいじ きょうこ)様でございやす」

 

 

国崎:「天花寺財閥?」

 

 

太岡寺:「はい・・・。隣島にあります大きなお屋敷のお嬢様で、この旅館を買収しに来たのでございやす・・・」

 

 

上田辺:「買収ですか・・・」

 

 

国崎:「この旅館、無くなっちまうのか? 俺達、1週間か、2週間程、泊まる予定なんだが?」

 

 

太岡寺:「心配は無用でございやす。視察に来ただけで、すぐに、この旅館は無くなりやせん」

 

 

国崎:「それなら良いのだが・・・」

 

 

太岡寺:「悪い事は良いやせん。あのお嬢様には近付かない事です。

     それでは、私はこの辺で・・・。

     係りが部屋までご案内しやすので、ごゆっくり御寛ぎくださいやせ」

 

 

上田辺:「旅館も大変なんですね・・・」

 

 

国崎:「そうみたいだな・・・。だけど、今は俺の足の方が大変だ」

 

 

上田辺:「先輩、立てますか?」

 

 

国崎:「なんとかな・・・」

 

 

 

 

 

四神田:「ん? お前達はさっきの・・・。・・・また会ったな・・・」

 

 

上田辺:「あっ、先程はありがとうございました。貴女もこちらの旅館に?」

 

 

四神田:「あぁ・・・。予約はしてなかったのだが、タクシーの運転手に泊まる所無いか訊いたら、此処に連れて来られたんだ」

 

 

上田辺:「そうでしたか」

 

 

四神田:「それより・・・。ここら辺は、夜は物騒だから、くれぐれも外には出るなよ」

 

 

上田辺:「物騒? 何か出るのですか?」

 

 

四神田:「・・・質問は無しだ。良いか、わかったな?」

 

 

上田辺:「・・・わかりました」

 

 

四神田:「それで良い。それじゃあ、またな・・・」

 

 

 

 

国崎:「おい、あの女性は確か・・・」

 

 

上田辺:「はい、ガソリンスタンドを教えてくれた方です」

 

 

国崎:「黒髪、ロングにビシッとしたスーツ。・・・クールな感じがたまらんな~!」

 

 

上田辺:「一体、何考えてるんですか!」

 

 

国崎:「何でもない! さてと、さっさと案内してもらって部屋に行くぞ」

 

 

上田辺:「待ってください! 全く・・・。それにしても、物騒ってどうして・・・?」

 

 

 

 

 

 

国崎:「おう、案内、ご苦労だったな! また何かあったら頼むぜ、姉ちゃん!

    ・・・さてと、夕飯の前に、ひとっ風呂浴びて来るか!」

 

 

上田辺:「先輩・・・」

 

 

国崎:「なんだ? 温泉は嫌か?」

 

 

上田辺:「違います。実は・・・」

 

 

 

 

国崎:「・・・なるほどな~」

 

 

上田辺:「それで、どうしますか・・・?」

 

 

国崎:「どうするって・・・、夜は出歩かなければ良いんだろう?

    周りにコンビニとか、風俗街とか、あるわけでも無いし、出歩く気すら起きないよ」

 

 

上田辺:「それはそうなんですが・・・、ちょっと気になっちゃって・・・」

 

 

国崎:「それが、お前の悪い癖だ! どんな所であれ、仕事も遊びも全力で! それが俺のもっとーだ!

    わかったら、さっさと浴衣に着替えて、温泉に行くぞ!」

 

 

上田辺:「・・・全く、強引なんだから・・・」

 

 

 

 

 

(フロント裏、事務所)

 

 

 

朝熊:「・・・國正」

 

 

太岡寺:「若女将、お帰りなさいませ・・・」

 

 

朝熊:「・・・新規のお客様は、無事に到着されましたか・・・?」

 

 

太岡寺:「・・・問題なく・・・」

 

 

朝熊:「あら、そう・・・。・・・それで、お前の目から見て、そのお客様は、どう・・・?」

 

 

太岡寺:「・・・理想的だと思いやす・・・。ただ・・・」

 

 

朝熊:「何か問題かしら・・・?」

 

 

太岡寺:「・・・新規のお客以外に、少々、厄介な人物が・・・」

 

 

朝熊:「何者か、わかりましたか?」

 

 

太岡寺:「恐らく、この島での騒ぎを嗅ぎつけた刑事かと・・・」

 

 

朝熊:「・・・そうですか。・・・大事な時期に困りましたね・・・。

    ・・・良いでしょう。・・・私が策を考えます。

    國正・・・、お前は手出し無用です・・・。わかりましたね?」

 

 

 

太岡寺:「わかりやした・・・」

 

 

 

朝熊:「今夜の月は、何て美しいのでしょう・・・。光り輝けば、輝くほど・・・、その傍らで、濃い影が産まれる・・・。

    ・・・さぁ、月よ・・・。もっとこの海影島を、照らし続けなさい・・・! ふふふふ・・・!」

 

 

 

 

 

 

天花寺:「・・・此処が温泉ですの・・・?」

 

 

神木:「そうみたいですが・・・」

 

 

天花寺:「はぁ~、庶民の温泉ってこんなものなんですのね・・・。まぁ、良いわ。啓吾、貴方も汗を流してらっしゃい」

 

 

神木:「え? 宜しいのですか?」

 

 

天花寺:「当たり前でしょう・・・。汗臭いままで、側に居られる方が嫌ですわ。

     ・・・夕食の時間までまだありますし、ゆっくり入ってらっしゃい」

 

 

神木:「ありがとうございます!」

 

 

天花寺:「それと、待ってなくて良いですの! 夕食まで、自由行動してらっしゃい」

 

 

神木:「わかりました、お嬢様!」

 

 

 

 

国崎:「・・・上田辺、本当に、こっちで合ってんのか?」

 

 

上田辺:「案内通りに来たので、合ってると思いますよ~」

 

 

天花寺:「ん? あのデリカシーの無い声は、さっきの男ですわね・・・! 

                    鉢合わせしたら、また五月蠅そうですし、早く入りに行きますわよ!」

 

 

神木:「わかりました。・・・お嬢様、後ほど」

 

 

 

 

 

 

国崎:「はぁ~、やっと着いた・・・」

 

 

上田辺:「近くに川も流れていて、風情のある所ですね」

 

 

国崎:「風情はどうでも良い。いつまで、景色眺めてるんだ・・・。さっさと入るぞ」

 

 

上田辺:「待ってください、先輩・・・」

 

 

国崎:「なんだ、先客がいるのか・・・。せっかく、一番風呂に入れると思ったのによ・・・」

 

 

上田辺:「そりゃあ居ますよ・・・」

 

 

国崎:「せっかく、誰もいない露天風呂で、泳ごうと思ったのによ! つまんねぇの!」

 

 

上田辺:「そんな事、企んでたんですか!? 子供じゃないんですから、止めてください!」

 

 

国崎:「わかったよ! それにしても、上田辺・・・、お前相変わらず、筋肉無いな・・・。ちゃんと食べてるのか?」

 

 

上田辺:「失礼な! 先輩が筋肉馬鹿なだけでしょう・・・」

 

 

国崎:「はははは! 筋トレは良いぞ! 己の体を極限まで痛めつけて、その先に幸福が待ってるんだ!」

 

 

上田辺:「先輩みたくなりたくないので、遠慮します」

 

 

国崎:「男のロマンがわかってないな・・・」

 

 

上田辺:「わかりたくないです」

 

 

国崎:「なんだと!」

 

 

上田辺:「そんな事は良いから、早く入りましょう!」

 

 

国崎:「待て、上田辺・・・。お前への説教は、まだ終わって・・・、おおお! こりゃあ、良い温泉だな~!」

 

 

上田辺:「先輩、声がでかいですってば!」

 

 

国崎:「気にしない! 気にしない!」

 

 

上田辺:「全く・・・」

 

 

国崎:「さぁ、さっさと入ろうぜ。・・・あっ」

 

 

神木:「あっ」(同時に)

 

 

上田辺:「貴方は、確か先程の・・・」

 

 

神木:「先程は、どうも・・・、失礼しまし・・・ウッ! ・・・苦しい・・・。いきなり、何するんですか・・・」

 

 

国崎:「この野郎・・・。謝って済む問題じゃねえんだよ! ほらっ、苦しいか? 俺はこれより酷い目に・・・!」

 

 

上田辺:「先輩! いきなり何やってるんですか!!!」

 

 

国崎:「こいつを懲らしめないと、俺の腹の虫がおさまらねぇんだよ!!!」

 

 

神木:「助・・・けて・・・。お嬢様・・・」

 

 

国崎:「あのお嬢様は、此処まで来れねえよ! 残念だったな!」

 

 

上田辺:「先輩、それ以上はヤバいですって!」

 

 

神木:「・・・」

 

 

国崎:「なんだ・・・、あっけない奴だな・・・」

 

 

上田辺:「もう! 何してるんですか! ・・・あの、大丈夫ですか?」

 

 

神木:「ゲホッゲホッゲホッ・・・」

 

 

上田辺:「いきなり、すみませんでした・・・」

 

 

神木:「いえ・・・、こちらこそ先程は・・・、失礼致しました・・・」

 

 

国崎:「おい、お前のお嬢様に伝えとけ! 次会ったら、ただじゃおかないってな!」

 

 

神木:「・・・お嬢様は・・・、寂しいお方なんです・・・」

 

 

国崎:「あ?」

 

 

上田辺:「それは、どういう意味ですか?」

 

 

神木:「・・・お嬢様は天花寺財閥に生まれ、周りから見れば、お金持ちで、何不自由なく暮らしてるように見えるのでしょう。

    ですが・・・、旦那様は男の子が跡継ぎに欲しかったらしく、

                長女の響子お嬢様は肩身の狭い思いをずっとしてきました・・・。

    その後に、長男の雅治(まさはる)様がお生まれになってからは、更に肩身が狭くなりまして、

    響子様が創立した会社まで、旦那様は雅治様に譲れと言う始末・・・。

    いても立ってもいられなくなった響子お嬢様は、この土地の買収を計画し、この島を新たなリゾート地にする事で、

    旦那様に、実力を認めてもらおうと、今回、出向いたのでございます」

 

 

上田辺:「そうだったんですね・・・」

 

 

国崎:「金持ちなりの苦労って奴か・・・」

 

 

神木:「お嬢様は口が悪かったり、すぐ怒ったりしますが・・・、

                ああ見えて優しいお方なんです。出来るなら仲良くしてあげてください」

 

 

国崎:「そうは見えなかったけどな・・・」

 

 

上田辺:「まるで誰かさんと似てますね・・・」

 

 

国崎:「ほほう? よほど・・・お湯の中に深く、浸かりたいようだな~!」

 

 

上田辺:「それは・・・、遠慮しときま~す!!!」

 

 

国崎:「こら! 待ちやがれ、上田辺!!! 

    とにかくだ、もっと御淑(おしと)やかになるように伝えとけ! 良いな!!!」

 

 

神木:「わかりました・・・」

 

 

 

 

 

 

天花寺:「先程から男湯の方が騒がしいけど、一体、何事ですの? 

                    さては、またあの男が騒いでますの? 全くもって、不愉快ですわ!

 

 

四神田:「あぁ・・・、まさにその通りだ」

 

 

天花寺:「きゃっ!?  一体、誰ですの?」

 

 

四神田:「いきなり、話かけてすまない」

 

 

天花寺:「私こそ、驚いてしまい、申し訳ありませんの」

 

 

四神田:「・・・此処へは旅行で来たのか?」

 

 

天花寺:「旅行で来れたなら、どんなに気が楽だったでしょう・・・。残念ながら、仕事で来ましたわ・・・」

 

 

四神田:「仕事・・・? いつまで、滞在するつもりだ?」

 

 

天花寺:「仕事の進み具合で変わりますし、何とも言えませんの。・・・どうして、そんな事、聞くんですの?」

 

 

四神田:「この街は物騒だから、あまり長居するなと、忠告しようと思っただけだ・・・」

 

 

天花寺:「どう物騒ですの・・・?」

 

 

四神田:「詳しくは話せないんだ。とにかく、あまりこの街に長居するな。それじゃあ、私は先に出る。またな・・・」

 

 

天花寺:「またですわ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

天花寺:「はぁ・・・。せっかくの温泉が台無しですの・・・ 。

                    月が綺麗ですわね・・・。気分を変えて散歩でもして帰りましょう・・・。

     ん? ・・・それにしても、この廊下・・・、こんなに長かったですの・・・?」

 

 

天花寺:「え? ・・・これは・・・、何・・・? 急に体が・・・動かない・・・。

     ・・・何の音です!? 何かを引きずってるような不快な感じ・・・」

 

 

(不気味な笑い声)

 

 

 

天花寺:「誰かそこに居るんですの!? えっ!? そんな・・・まさか・・・どうして・・・こんな事・・・!?」

 

 

天花寺:「嫌・・・、近付かないで!!! 誰か・・・助けてくださいの・・・! 啓吾・・・!!!」

 

 

天花寺:「いやあああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

国崎:「ん!? 悲鳴だと!?」

 

 

上田辺:「先輩!!! 今の聴きました!?」

 

 

国崎:「あぁ・・・、女性の悲鳴だった・・・」

 

 

神木:「あれは、お嬢様の声・・・!? お嬢様の身に何かが・・・!? 響子お嬢様!!!!!!!」

 

 

国崎:「おい、上田辺! 俺達も行くぞ!!!」

 

 

上田辺:「はいっ!!!」

 

 

 

 

 

神木:「うううう・・・、お嬢様・・・! 目を開けてください・・・! 響子お嬢様・・・」

 

 

国崎:「これは一体・・・」

 

 

上田辺:「どう言う事ですか?」

 

 

国崎:「さぁ、わからん・・・」

 

 

太岡寺:「お客様!? どうされやしたか!!!」

 

 

国崎:「それが・・・」

 

 

神木:「・・・私が見つけた時には・・・、既に、倒れてました・・・」

 

 

国崎:「おい、あれ!!!」

 

 

神木:「あれは・・・!?」

 

 

国崎:「お嬢様の右腕・・・、前から、痣なんてあったのか?」

 

 

神木:「いいえ、お嬢様には、痣なんてありません・・・」

 

 

国崎:「それじゃあ、これは何なんだ・・・」

 

 

上田辺:「何か強い力で、握られた痕にも見えますね・・・」

 

 

太岡寺:「・・・」

 

 

国崎:「さっきから、黙り込んでどうした?」

 

 

太岡寺:「いえ・・・。何でも御座いやせん。とりあえず、お部屋まで、お客様をお運び致しやす・・・」

 

 

神木:「お嬢様は、大丈夫なのでしょうか?」

 

 

太岡寺:「こんな事は初めてでして・・・、私にもわかりやせん・・・」

 

 

神木:「そうですか・・・。お嬢様・・・」

 

 

太岡寺:「とにかくお部屋まで。お医者様の手配もありやすので」

 

 

神木:「わかりました・・・」

 

 

 

 

 

 

上田辺:「先輩・・・? どうかしたんですか?」

 

 

国崎:「あの支配人・・・、なんか隠してやがる・・・」

 

 

上田辺:「どういう事ですか?」

 

 

国崎:「あのお嬢様の痣を見た時の表情・・・、これは、何かあるぞ・・・」

 

 

四神田:「お前、中々に鋭いな・・・」

 

 

上田辺:「鋭いだと?」

 

 

四神田:「念には念を入れて、忠告はしたのだが・・・、どうやら、遅かったようだ・・・」

 

 

国崎:「何か知ってるなら、教えてくれないか? 一体、あれが何なのか・・・」

 

 

四神田:「・・・」

 

 

上田辺:「俺からも、お願いします」

 

 

四神田:「これ以上、隠しておく事は不可能か・・・。此処では誰が聞いているかわからない・・・。

     ・・・私の部屋に来てくれないか?」

 

 

上田辺:「わかりました」

 

 

国崎:「あぁ、案内、よろしく」

 

 

 

 

 

 

(旅館、ロビー)

 

 

 

朝熊:「國正・・・」

 

 

太岡寺:「若女将・・・。例の印が出たお客様が現れやした・・・」

 

 

朝熊:「あら、そう・・・。今宵の月に、感謝しなければなりませんね・・・。それで、そのお客は、誰かしら?」

 

 

太岡寺:「・・・天花時財閥のお嬢様で、天花寺響子(てんげいじ きょうこ)様でございやす・・・」

 

 

朝熊:「それは、本当・・・? あの天花時財閥のお嬢様が・・・。それはそれは・・・。

    ・・・私達にとって、又と無い朗報・・・。・・・良い、國正・・・。

    天花時財閥のお嬢様・・・、しっかりと監視しなさい・・・」

 

 

太岡寺:「かしこまりやした・・・。・・・あの若女将・・・」

 

 

 

朝熊:「あら、何かしら?」

 

 

 

太岡寺:「そちらの準備の方は・・・、順調で御座いやすか?」

 

 

 

朝熊:「ええ、順調ですよ。島の人達も、誠意を持って、準備をしてくださってます・・・」

 

 

 

太岡寺:「・・・」

 

 

 

朝熊:「あら、不安そうな顔ね・・・?」

 

 

 

太岡寺:「・・・例の新規のお客の内、一人が何か怪しんでるようで・・・」

 

 

朝熊:「そう・・・、それなら、そのお客には、対処しなければ行けませんね・・・」

 

 

太岡寺:「騒ぎになりやせんか・・・?」

 

 

朝熊:「・・・國正、貴方は心配しなくて良いんですよ。・・・後は、私に任せて・・・」

 

 

太岡寺:「・・・はい・・・」

 

 

 

 

 

 

 

四神田:「着いた・・・、この部屋だ」

 

 

国崎:「俺達の部屋より豪華だな~」

 

 

四神田:「そうなのか?」

 

 

国崎:「あぁ・・・」

 

 

上田辺:「今は部屋とか言ってる場合じゃ・・・」

 

 

国崎:「そうだったな。それで、一体あの痣は、何なんだ?」

 

 

四神田:「あれは・・・、信じられないかもしれないが・・・、影の仕業だ・・・」

 

 

国崎:「影だと? ・・・どういう事だ・・・」

 

 

四神田:「太陽、月、電気などの明かりで、私達に出来る影の事だ・・・」

 

 

国崎:「それはわかるけどよ! その影が、あの痣と、どう関係してるんだよ?」

 

 

四神田:「始まりは半年前・・・、その現象は起こった・・・。

     ある夕方、被害者が歩いてると、突如、金縛りにあい、その場から動けなくなった。

     そして、何かを引きずるような不快な音があたりに響いて・・・。

     ふと足元から気配を感じ、下を見ると、そこには黒い影が、自分と同じ姿に変わって、現れ・・・」

 

 

国崎:「どうなったんだ・・・?」

 

 

四神田:「物凄い力で体を掴まれ、痣を残した・・・。

     そしてその痣をつけられた者は、事あるごとに自分の影に追いかけまわされ、

                    やがて・・・、逃げきれなくなった者は影に支配されてしまう・・・」

 

 

上田辺:「そんな・・・」

 

 

国崎:「何だそりゃ・・・。馬鹿げてる・・・」

 

 

四神田:「これは、現実に起こっている事だ・・・。恐らく、あのお嬢ちゃんも・・・」

 

 

国崎:「その影とやらに出会ったら、逃げ回るしか無いってのか? 何か対策は・・・?」

 

 

四神田:「対策は・・・、今の所、見つかってない・・・」

 

 

国崎:「それじゃあ、あのお嬢様は、これからどうなるんだ・・・?」

 

 

四神田:「影に追いかけまわされ、いずれは同じように・・・」

 

 

上田辺:「そんな・・・。・・・あの・・・、俺達は大丈夫なんですか・・・?」

 

 

四神田:「それもわからない・・・。この旅館内なら大丈夫だと思ったのだが・・・、そう甘くは無かったようだ・・・」

 

 

国崎:「冗談じゃない・・・。明日の朝、起きたらこの島を出るぞ。・・・あのお嬢様の事は、警察に任せれば良い」

 

 

上田辺:「そうですね・・・」

 

 

四神田:「生憎それは無理だ・・・」

 

 

国崎:「どうしてだ?」

 

 

四神田:「隣島に向かう船と、この島への定期船は・・・、突如発生した嵐の影響で、この島には来られない・・・」

 

 

国崎:「なんだって!?」

 

 

上田辺:「船が駄目なら、ヘリで救助とかは、どうですか・・・?」

 

 

四神田:「それも考えたが、この島全体に、特殊な磁場が形成されてるらしく、

                    安易に近付けば計器は故障し墜落するから無理だ・・・」

 

 

国崎:「何だよ・・・。俺達は、この島から出られないって訳か?」

 

 

四神田:「そういう事になる・・・」

 

 

上田辺:「これから、一体、どうしたら・・・」

 

 

四神田:「今は耐えるしか無い。この島から脱出する方法は、日が昇ったら探してみる」

 

 

国崎:「それなら、俺達も手伝う」

 

 

四神田:「ありがとう。そうしてくれると助かる」

 

 

 

 

猿野:「失礼しま~す。夕食持ってきました! あっ、お兄さん達!?」

 

 

国崎:「おお、さっきのお嬢ちゃんじゃねえか!」

 

 

四神田:「何だ? 知り合いか?」

 

 

上田辺:「ええ、此処まで案内して乗せて来てくれた、ガソリンスタンドの子です」

 

 

四神田:「そうだったのか・・・」

 

 

猿野:「えっと~、このお部屋は1名様って聞いてたのだけど・・・、どういう事?」

 

 

四神田:「あぁ、それであってる。この2人は客人だ。そうだ! 2人さえ良ければ、一緒にこのまま夕食でもどうだ?

     すまないが・・・、此処にこの2人の夕食の用意もお願い出来るか?」

 

 

猿野:「可能だと思うけど、ちょっと確認してきま~す!」

 

 

四神田:「あぁ、頼む・・・」

 

 

四神田:「それでさっきの話だが、まだ他の人には話さないでくれないか?」

 

 

上田辺:「どうしてですか?」

 

 

四神田:「対策がわからない以上、無闇に恐怖を広める必要も無いって事だ」

 

 

国崎:「それもそうだな。よし! わかった! 他の奴には秘密にしておく」

 

 

四神田:「宜しく頼むよ」

 

 

 

 

 

 

猿野:「あの~、用意する事は出来るのだけど、元々のお兄さん達のコース料理だと、

    お客様のコースよりだいぶ劣るんだよね・・・。一緒に出して良いのかな~?」

 

 

四神田:「そうなのか・・・。それじゃあ、この2人のコース料理も、私のと同じものに変更してくれないか?

     それと、追加の料金は私が支払うから、この部屋に付けてくれ」

 

 

猿野:「かしこまりました~。手配して来ま~す!」

 

 

 

 

 

 

上田辺:「良いんですか・・・?」

 

 

四神田:「あぁ、構わない。これから手伝ってもらう礼だ」

 

 

国崎:「何だか知らないが、夕飯が豪華に・・・。得したな、上田辺!!!」

 

 

上田辺:「先輩、言い方!!!」

 

 

四神田:「はははは、面白い奴等だな。

     そういえば、まだ自己紹介がまだだったな・・・。私は四神田摩耶(しこうだ まや)。職業は・・・、刑事だ」

 

 

上田辺:「えっ!? 刑事なんですか?」

 

 

四神田:「何を驚いているんだ。それで、お前達は何者だ?」

 

 

上田辺:「あっ、えっと・・・、上田辺 俊一郎(かみたぬい しゅんいちろう)、職業はルポライターです」

 

 

国崎:「俺は国崎 雅也(くざき まさや)、こいつの先輩で職業は同じくルポライターだ」

 

 

四神田:「上田辺に国崎か。よろしく頼む。良いか、くれぐれも私の事を、刑事って呼ぶんじゃないぞ」

 

 

国崎:「わかってるって。気軽に摩耶ちゃんって、呼ばせてもらうよ!」

 

 

四神田:「どうやら、鼻の穴を3つにされたいようだな・・・」

 

 

国崎:「冗談だって! そんな物騒な物は、さっさとしまえよ!」

 

 

四神田:「全く・・・。次は無いからな」

 

 

国崎:「へいへい」

 

 

 

 

 

猿野:「失礼しま~す! 夕食の用意出来ましたので、ご用意させていただきま~す」

 

 

四神田:「あぁ、頼む」

 

 

 

 

猿野:「それでは、ごゆっくりご堪能下さいませ! お食事が終わったころに、またお伺い致します。それでは~!」

 

 

四神田:「ご苦労様」

 

 

国崎:「おおおお! なんて豪勢なんだ! 冷めない内に、いただこうぜ!」

 

 

四神田:「あぁ、まずは存分に食べてくれ」

 

 

国崎:「それじゃあ、お言葉に甘えて! いただきま~す!」

 

 

上田辺:「いただきます」

 

 

 

 

国崎:「それで、刑事ってのはわかったけど、何で1人なんだ?」

 

 

四神田:「私がまず偵察してから、現場の状況を判断して、仲間が来る手はずだった・・・でも、このありさまだ・・・」

 

 

国崎:「何だ・・・、警察も頼りにならないな~・・・」

 

 

四神田:「警察も、こんな特殊なケースは・・・、予想範囲外だ・・・。何にしても、この島の事、まずは調査しなければ・・・」

 

 

上田辺:「調査・・・? それも、影が関係してるって事ですか?」

 

 

四神田:「わからないが、その可能性はありそうだ・・・」

 

 

上田辺:「・・・その事件を解明すれば、脱出の手掛かりも・・・」

 

 

四神田:「あぁ・・・、見つかるかもしれない」

 

 

国崎:「なるほど! それじゃあ、今は目の前の豪華な料理を堪能するしか、方法は無いって事だな!」

 

 

四神田:「・・・暢気な奴だな」

 

 

国崎:「歩きまくってお腹が減ってんだよ! その天麩羅、食べないならもらうぞ!」

 

 

四神田:「あ~! これは最後に食べる為に取って置いたんだ! 人の物まで手を出すんじゃない!」

 

 

国崎:「うるせ~! いつまでも、食べないのが悪いんだよ!!! 良いから、こっちによこせ!!!」

 

 

上田辺:「はぁ~・・・、明日から大丈夫かな・・・」

 

 

 

 

国崎:「ふ~、お腹いっぱい!もうこれ以上食えない!」

 

 

四神田:「それだけ食べれば十分だろ! 全く!」

 

 

上田辺:「摩耶さん、ご馳走様でした」

 

 

四神田:「あぁ。それじゃあ、明日から宜しく頼んだよ」

 

 

上田辺:「はい」

 

 

国崎:「上田辺~、何してるんだ~、早く部屋に戻るぞ~!」

 

 

上田辺:「わかりましたよ! それじゃあ、おやすみなさい」

 

 

四神田:「あぁ、おやすみ。・・・今夜は、何事も起こらなければいいのだが・・・」

 

 

 

 

 

 

国崎:「ふ~、部屋に到着っと! おっ、もう部屋に布団も敷いてあるじゃねえか! それじゃあ、俺は寝るぞ~! おやすみ~!」

 

 

上田辺:「ちょっと先輩! って・・・もう寝てるし、本当ある意味才能だよな・・・。

     ・・・あの先輩、俺は、もう一度、温泉に行って来ますね」

 

 

国崎:「・・・(大きな寝息)」

 

 

上田辺:「あぁ・・・、全然、聞こえてない・・・。まっ、良いか・・・。それじゃあ、行って来ま~す」

 

 

 

長い間

 

 

 

(寝言を言いながら気持ちよさそうに寝てる国崎。そこにそっと入って来る天花寺)

 

 

 

国崎:「う~ん・・・、もう、食べれないってば・・・」

 

 

国崎:「いきなり何するんだ~・・・、摩耶ちゃん・・・。幾ら何でも、そんな事したら・・・やばいだろう・・・」

 

 

国崎:「待ってくれ、上田辺も見てるし、流石にそれは・・・」

 

 

 

 

天花寺:「・・・。お前・・・、殺す・・・。死ね・・・」(首を絞める)

 

 

国崎:「・・・なんだ!? お前は、生意気なお嬢様・・・!? 

                ぐっ・・・! いきなり何しやがる・・・、苦しい・・・、離しやがれ・・・」

 

 

天花寺:「苦しめ・・・。もっともっと・・・恐怖して、泣き叫べ・・・」

 

 

国崎:「一体、なんなんだ・・・。この俺以上に、力があるだと・・・!?」

 

 

天花寺:「抵抗しても・・・、無駄・・・。大人しく・・・死ね・・・」

 

 

国崎:「ぐっ!? このままじゃ・・・、やばい・・・!!! 何処に行ったんだ!!!? 上田辺!!!」

 

 

 

 

 

 

猿野:「あれ~、上田辺さん! どうしたの~?」

 

 

上田辺:「あぁ、猿野さん。寝る前にもう一度、温泉でも入ってこようかなって」

 

 

猿野:「そうなんだ。余程、此処の温泉、気に入ったんだね~」

 

 

上田辺:「まぁ、そんな所。・・・猿野さんは仕事終わり?」

 

 

猿野:「うん、そんな所」

 

 

上田辺:「そっか、お疲れ様。あれ? でもこっちて、温泉に向かう廊下だよね?」

 

 

猿野:「あぁ、うんとね・・・、この時間ならお客様も少ないし、温泉も入って良いんだ。

    今日は疲れたし、入ってこうかなって」

 

 

上田辺:「そうだったんだ」

 

 

猿野:「ねぇ、上田辺さん。猿野さんじゃなくて、藍って下の名前で呼んでよ。その方がなんか良いしさ!」

 

 

上田辺:「わかった。それじゃあ、俺の事も、俊一郎で良いよ」

 

 

猿野:「うん!」

 

 

上田辺:「それで、藍ちゃんは、この島の出身なのかな?」

 

 

猿野:「そうだけど、どうして・・・?」

 

 

上田辺:「いや!? そうなのかな?って思っただけで特に理由は・・・」

 

 

猿野:「そうなんだ」

 

 

上田辺:「此処らへんは、鹿や猪が出るってさっき言ってたけど、他には何か出たりしない?」

 

 

猿野:「他に? その他の動物も山だし、出ると思うけど?」

 

 

上田辺:「そうだよね! 何、訊いてんだろう、俺!」

 

 

猿野:「変なの! ねぇ、あのさっきのお客様とは、どうやって知り合ったの?」

 

 

上田辺:「あぁ、ガソリンスタンドの事教えてくれたのが、あの人だったんだよ」

 

 

猿野:「そうだったんだ。一緒にあのお客様の部屋に居るから、てっきり知ってる人かと思ったよ~。

    ねぇ、あのお客様って、何者なんだろう~」

 

 

上田辺:「え?」

 

 

猿野:「俊一郎は、親しく話してたから、何か知ってるかな~って」

 

 

上田辺:「そうなんだ。・・・う~ん、観光で訪れたみたいだから、特に怪しい人では無いよ」

 

 

猿野:「何だ、残念~。・・・一般の人とは、雰囲気が違うな~って思ったんだけど、私の勘違いか~。

    変な事、訊いてごめんね~」

 

 

上田辺:「うん、良いよ。・・・あっ、藍ちゃんは、この島からは、出たりしないの?」

 

 

猿野:「う~ん、いつか出たいとは思ってるよ。だからその時の為に、ガソリンスタンドと、この旅館で働いてお金稼いでる」

 

 

上田辺:「何か出たい理由は、ある?」

 

 

猿野:「え? あ~、なんとなくだよ・・・。

    ずっと産まれてから此処にいるとさ、他の土地で住むって考えても、やっていけるのかも不安だし・・・。

    そう考えるとね、何だか決心がいつまでもつかないんだ~・・・」

 

 

上田辺:「そうなんだね・・・」

 

 

猿野:「ごめん、何だかしんみりしちゃったね・・・。さ~て、温泉、温泉っと! それじゃあ、また明日ね! 俊一郎!

 

 

上田辺:「うん、また明日。・・・さ~て、俺も温泉に・・・。あっ、部屋の鍵、二本共、持ってきちゃった・・・。

     先輩、起きないと思うけど・・・、起きた時、何処にも行けないとなったら、また怒られるだろうな・・・。

     仕方ない・・・。一旦、戻ろう・・・」

 

 

 

 

 

天花寺:「ふふふふ・・・、いつまで・・・抵抗・・・する・・・」

 

 

国崎:「悪いな・・・、そう・・・簡単に・・・死ねないん・・・でね・・・」

 

 

天花寺:「しぶとい・・・奴め・・」

 

 

国崎:「上田辺の奴、こんな時に・・・何処に行って・・・やがるんだ!!!」

 

 

 

 

上田辺:「そうだ・・・、先輩、だいぶお酒も飲んでたし、自販機で、お水でも買って行くか~」

 

 

 

 

天花寺:「ふふふふ・・・」

 

 

国崎:「流石に・・・このままじゃ・・・やばいな・・・。上田辺も帰ってこないし・・・、

    よし! いちかばちか!!!

    恨むんじゃねえぞ! お嬢様!!!」(お腹辺りを思いっきり蹴っ飛ばす)

 

 

天花寺:「(苦痛の声)」

 

 

国崎:「げほ、げほ、げほっ・・・。よし、上手くいった・・・」

 

 

天花寺:「おのれ・・・、絶対に・・・許さない・・・。

                    死ねえええええええええ!!!」 (何処から出した包丁を国崎に向けて振り下ろす)

 

 

国崎:「おい、包丁だと! それは、流石に反則だろうがあああああ!!!」

 

 

天花寺:「ヒ~ッヒヒヒヒヒヒヒッ!」

 

 

国崎:「ぐっ!!! この・・・、化け物がああああああああ!!!!」

 

 

天花寺:「貴方の胸に・・・、赤い・・・、赤い・・・花を・・・、咲かせましょううううううううううう!!!!!」

 

 

国崎:「くそ・・・これ以上は、力が・・・。・・・上田辺の馬鹿野郎があああああああ!!!」

 

 

 

上田辺:「先輩、鍵、持って行った事、そんなに怒らなくても分かってます・・・って!? 何なんです!? この状況は!?」

 

 

国崎:「見てわからないのか・・・。全く、遅いん・・・だよ・・・! このボケッ!!! 

                 早くこの化け物を・・・何とかしやがれ!」

 

 

上田辺:「そう言われても!!! どうしたら!!?」

 

 

国崎:「何でもいいから、早くしろ・・・!!!」

 

 

上田辺:「もう、どうすれば・・・。・・・仕方ない!!! ええい!!!!!!」(響子に向かって体当たりする)

 

 

天花寺:「(うめき声)」

 

 

国崎:「よくやった!!! 上田辺!!!」

 

 

上田辺:「先輩! 大丈夫ですか!?」

 

 

国崎:「首を絞められたり、刺されそうになったがなんとかな・・・」

 

 

上田辺:「なんでこんな事に・・・?」

 

 

国崎:「わからねえよ! 寝てたらいきなり襲われて、後は見ての通りだ! それより、あのお嬢様はどうだ?」

 

 

上田辺:「そうでした! 勢いで体当たりしたけど、大丈夫ですかね?」

 

 

国崎:「そんな事、知るか! 早く、様子を見て来い!」

 

 

上田辺:「え? 俺がですか!?」

 

 

国崎:「他に誰がいるんだ! 良いからさっさと行け!」

 

 

上田辺:「わかりましたよ・・・」

 

 

 

 

国崎:「どうだ・・・?」

 

 

上田辺:「それが・・・」

 

 

国崎:「どうしたんだ?」

 

 

上田辺:「それが・・・何処にも、居ないんです・・・」

 

 

国崎:「どういう事だ?」

 

 

上田辺:「わかりませんよ。確かに体当たりして、こっちの部屋に、吹っ飛んだはずなんですが・・・」

 

 

国崎:「それじゃあ、部屋に戻ったて言うのか?」

 

 

上田辺:「そうだとしか・・・」

 

 

国崎:「一体どうなってやがるんだ!!!」

 

 

上田辺:「先輩、落ち着いてください! とりあえず、今夜は寝ましょう。鍵もちゃんとかけてくるので・・・」

 

 

国崎:「一体、この島で、何が起こってるんだ・・・」

 

 

 

 

 

(フロント裏、事務所)

 

 

朝熊:「國正・・・」

 

 

太岡寺:「若女将・・・。例のお客様は・・・?」

 

 

朝熊:「先程、連絡が来ました・・・。どうやら、対処は失敗したようです・・・。まだ、力が不安定だったのでしょうね・・・」

 

 

太岡寺:「それじゃあ・・・このままだと、やばいのでは・・・?」

 

 

朝熊:「それもそうですね・・・。明日は、大事な日・・・。準備を急がなくては・・・」

 

 

 

 

 

(2日目)

 

 

国崎:「(激しい寝息)」

 

 

上田辺:「先輩! 先輩! もう朝ですよ! 起きてください!」

 

 

国崎:「(更に激しい寝息)」

 

 

上田辺:「朝御飯、食べに行く時間無くなりますよ!

     ん~、仕方ないな・・・。恨まないで下さいよ! エイッ!」

 

 

国崎:「痛ってええええええええ!!! 何するんだ! 上田辺!!!」

 

 

上田辺:「やっと起きましたね! さっさと顔洗って来てください」

 

 

国崎:「なんだよ! まだ朝の7時前じゃねえか!」

 

 

上田辺:「もう7時ですよ! 朝食は一階のレストランでバイキングみたいなので、早く用意してくださいね」

 

 

国崎:「(欠伸)いちいち面倒だな・・・。朝食、此処で食べれねえのか?」

 

 

上田辺:「バイキングなんですから無理ですよ。諦めてください」

 

 

国崎:「仕方ねえな。用意してくるか・・・」

 

 

上田辺:「早くしてくださいよ」

 

 

 

 

国崎:「待たせたな」

 

 

上田辺:「30分も何してたんですか・・・」

 

 

国崎:「いやぁ、髪型がうまく決まらなくて」

 

 

上田辺:「そうですか・・・。それじゃあ、行きますよ」

 

 

 

 

太岡寺:「これはこれは、国崎様、上田辺様、おはようございやす。ゆっくりとお休みになられやしたでしょうか?」

 

 

国崎:「あんな事があったのに、ぐっすり寝れるわけねえだろ!」

 

 

上田辺:「その割には、いびきかいて、ぐっすり寝てましたけどね・・・」(小声)

 

 

国崎:「ふん!!!(殴る)」

 

 

上田辺:「痛ッ!」

 

 

太岡寺:「どうかされやしたか?」

 

 

国崎:「気にしなくて良い。・・・席まで案内してくれ」

 

 

太岡寺:「かしこまりやした。こちらでございやす。朝食はバイキング形式になりやすので、ご自由にお召し上がりくださいやせ」

 

 

国崎:「案内ありがとうよ。さてと、いつまで頭擦ってるんだよ。早く取りに行くぞ!」

 

 

上田辺:「頭の形がおかしくなったら、治療代請求しますからね」

 

 

国崎:「そうか。もう一度殴ったら、バランスよくなるかもしれないな!」

 

 

上田辺:「ほんの冗談ですよ!」

 

 

四神田:「朝から騒々しい奴等だな・・・」

 

 

上田辺:「摩耶さん、おはようございます」

 

 

四神田:「おはよう。今日はかなり歩き回るから、しっかり食べとけよ。それじゃあ、また後でな」

 

 

国崎:「なぁ、一緒に食べないか?」

 

 

四神田:「遠慮しとく。朝は静かに過ごしたいんだ。じゃあな」

 

 

国崎:「つれない奴だな」

 

 

 

 

猿野:「お2人共、おはよう~!」

 

 

上田辺:「藍ちゃん、おはよう。朝食でも働いてるんだね」

 

 

猿野:「うん、この旅館ってさ、人手不足だし、私としては給料がその分良いから、構わないんだけどさ」

 

 

上田辺:「そうなんだ」

 

 

国崎:「よう! お嬢ちゃん! 朝食で一番オススメなのは何だい?」

 

 

猿野:「そうだな~。この島で捕れた魚を使った南蛮漬けと、産みたての卵で食べる卵かけ御飯かな~」

 

 

国崎:「どっちも美味しそうだな! よし、両方いただこう!」

 

 

猿野:「あっちに置いてあるから、食べたいだけ皿に盛っていってね。俊一郎は何が食べたい?」

 

 

上田辺:「ん~、他にオススメはあるかな?」

 

 

猿野:「採れたての新鮮な野菜を使った煮物とかも、オススメだよ」

 

 

上田辺:「美味しそうだね」

 

猿野:「他の料理もみんな美味しいから、色々食べてみてね!」

 

 

上田辺:「ありがとう、そうするよ」

 

 

猿野:「あっ、お客様が呼んでる。またね~、俊一郎!」

 

 

上田辺:「あぁ」

 

 

国崎:「上田辺~、いつの間に、あのお嬢ちゃんと仲良くなったんだ~?」

 

 

上田辺:「昨日、寝る前に、温泉に行こうとした時にですよ・・・。結局、入れなかったですけど・・・」

 

 

国崎:「ほほう・・・。俺が・・・、あのお嬢様に襲われてて大変な時に、お前はイチャイチャしてたっけ訳か・・・」

 

 

上田辺:「いやっ! イチャイチャと言うか・・・! お互いの、ファーストネーム、呼び合った・・・だけですよ」

 

 

国崎:「よしわかった! それが、お前の辞世の句だな!」

 

 

上田辺:「えっ、これは違います! 偶然です!!!」

 

 

国崎:「問答無用!!!(殴る)」

 

 

上田辺:「ぎゃあああああああああ!」

 

 

四神田:「あの馬鹿どもめ・・・。少しは静かに出来ないのか・・・。・・・おっ・・・、このお茶、美味しいな・・・」 

 

 

 

 

 

上田辺:「うううう・・・、酷い・・・」

 

 

国崎:「お前が悪い。この後だが、あのお嬢様の部屋に行くぞ」

 

 

上田辺:「え? 部屋にですか?」

 

 

国崎:「そうだ。昨日の事について、色々と確認もしたいし、御礼もしないとな・・・」

 

 

上田辺:「またそんな物騒な事を。確かに、あれはただ事じゃなかったですが・・・、

     第一、泊まってる部屋もわからないのに、どうやって行くんですか?」

 

 

国崎:「それは、これから考えようと思ってたんだ・・・」

 

 

上田辺:「全く・・・。少しは考えてから発言や行動してくださいよ・・・」

 

 

国崎:「うるせぇ! 良いか、昨夜の事は、まだあの刑事には言うんじゃねえぞ!」

 

 

上田辺:「どうしてですか?」

 

 

国崎:「意地だよ」

 

 

上田辺:「何ですかそれ・・・」

 

 

国崎:「さっさと食べて、フロントに行くぞ!」

 

 

上田辺:「わかりましたよ・・・」

 

 

 

長い間

 

 

 

国崎:「何で教えれないんだよ!良いじゃねえか! 部屋の1つや2つ! あ~、もう頼まないよ!ケチ野郎!!!」

 

 

上田辺:「どうでしたか?」

 

 

国崎:「どうもこうもねえよ! お客様のプライバシーの侵害になるので、教える事は出来ません、だってよ!

    全く世の中、どうなってやがるんだ!」

 

 

上田辺:「世の中とか関係なく、常識だと思いますが・・・」

 

 

国崎:「どいつもこいつも使えねえな! おっ・・・あれは・・・」

 

 

上田辺:「えっ、先輩、何処に行くんですか?」

 

 

 

 

神木:「はぁ・・・、お嬢様・・・」

 

 

国崎:「おい! お前!!!」

 

 

神木:「ひぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 

国崎:「おい!!! 逃げるな!!! 待ちやがれえええええええ!!!」

 

 

神木:「誰か助けてぇぇぇえ!!! 殺されるぅぅう!!!」

 

 

国崎:「誰が殺すか!!! お前に訊きたい事があるんだよ!!!」

 

 

神木:「嘘だぁぁぁあ!!! お嬢様ぁぁあ!!!」

 

 

国崎:「いい加減に、しや・・・がれ・・・!!!!」(履いてたスリッパを思いっきり投げる)

 

 

神木:「ぎゃあああああああああ!!!」(倒れる)

 

 

国崎:「ようやく止まったか・・・。おい、しっかりしろ!!!」

 

 

 

 

神木:「此処は・・・」

 

 

国崎:「よう! ようやく起きたか」

 

 

神木:「ひぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 

上田辺:「落ち着いてください! 此処はロビーです。先輩が失礼致しました・・・」

 

 

国崎:「俺は悪くねえ! こいつが俺を見た途端、逃げ出すのが悪いんだ!」

 

 

神木:「すみません・・・」

 

 

上田辺:「そうは言っても、止める為にスリッパを投げつけるのはやり過ぎですよ!

     どうです? 少しは落ち着きましたか?」

 

 

神木:「はい・・・」

 

 

上田辺:「どうして、逃げたりしたんですか?」

 

 

神木:「凄い剣幕で、声をかけて来られたので、殺されると思いまして・・・」

 

 

上田辺:「あぁ・・・、それは確かに、逃げたくもなりますね・・・」

 

 

国崎:「いや、なんでだよ!!!」

 

 

上田辺:「ですが、覚えといてください。狂犬も逃げたりしたら、わけもなく追いかけ回してくる。

     それと同じなんです。わかりましたか?」

 

 

神木:「はい・・・」

 

 

国崎:「ふんっ!(殴る)殴るぞ、上田辺!!!

 

 

上田辺:「殴ってから言わないでください!!!」

 

 

神木:「それで・・・、何か御用でしょうか?」

 

 

国崎:「そうだった! おい、お前達の部屋まで案内しろ!」

 

 

神木:「お部屋にですか?」

 

 

国崎:「そうだ! 良いから早くしろ!!!」

 

 

神木:「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 

上田辺:「先輩!!!」

 

 

国崎:「すまない・・・」

 

 

上田辺:「少し、お嬢様の事で確認したいことがあるので、お部屋まで案内してもらえますか?」

 

 

神木:「わかりました・・・」

 

 

国崎:「なんで、お前の言う事なら聞くんだよ」

 

 

上田辺:「良い方と表情ですかね。先輩はもっと柔らかく、笑顔で言わないと」

 

 

国崎:「笑顔・・・、こうか・・・?」

 

 

神木:「・・・」

 

 

上田辺:「・・・。さぁ、急ぎましょう・・・」

 

 

神木:「そうですね・・・、案内します」

 

 

国崎:「おい! 俺の笑顔、どうだったんだよおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 

 

 

神木:「着きました。・・・此処です」

 

 

上田辺:「流石、財閥のお嬢様の泊まられてるお部屋ですね・・・」

 

 

神木:「この旅館で一番のお部屋だそうです」

 

 

国崎:「それで、肝心のお嬢様は?」

 

 

神木:「まだ目覚めておりません・・・」

 

 

国崎:「本当なのか?」

 

 

神木:「はい・・・」

 

 

国崎:「昨夜、何処かに出かけたりもしてないのか?」

 

 

神木:「昨日、あそこで倒れてから一度も目を覚ましておりません・・・」

 

 

国崎:「そんな馬鹿な・・・。それじゃあ、昨夜のあいつは・・・」

 

 

神木:「どうかされましたか?」

 

 

国崎:「いや・・・」

 

 

上田辺:「あの、もし、お嬢様の意識が回復したら教えていただけますか?」

 

 

神木:「構いませんが・・・」

 

 

上田辺:「これが泊まってる部屋番号です」

 

 

神木:「わかりました」

 

 

上田辺:「お邪魔しました。先輩、行きますよ」

 

 

国崎:「あぁ・・・」

 

 

 

 

国崎:「・・・」

 

 

上田辺:「先輩・・・?」

 

 

国崎:「どういう事なんだ・・・。俺を襲った姿は、間違いなくあの、生意気なお嬢様だった・・・」

 

 

上田辺:「摩耶さんの話してた、影って事ですかね・・・」

 

 

国崎:「そうだとしてもだ。なぜ、俺を襲ったりしたんだ・・・?」

 

 

上田辺:「それは簡単です。先輩の事恨んでるからですよ」

 

 

国崎:「恨まれる事なんてした覚えねえぞ」

 

 

上田辺:「良いですか、自分の胸に手を当ててよ~く考えてみてください。何か心当たりありませんか?」

 

 

国崎:「う~ん・・・」

 

 

上田辺:「何か心当たりありましたか?」

 

 

国崎:「何も無いな。さっぱりわからん!」

 

 

上田辺:「・・・」

 

 

国崎:「ん? どうした? 上田辺?」

 

 

上田辺:「先輩が鈍感なのが、よくわかりました・・・」

 

 

国崎:「どういう意味だよ?」

 

 

上田辺:「そろそろ、摩耶さんとの待ち合わせの時間です。玄関に急ぎますよ」

 

 

国崎:「おい、気になるだろうが! 待ちやがれ!」

 

 

 

 

国崎:「おい、さっきのはどう言う意味だ! いい加減、教えやがれ!」

 

 

 

上田辺:「もう、しつこいですよ! 摩耶さん、お待たせしました・・・。

     あれ? 居ない・・・」

 

 

 

国崎:「まだ部屋にでも、居るんじゃないか?」

 

 

上田辺:「・・・俺、呼びに行ってきます・・・」

 

 

国崎:「すれ違いになると行けないから、俺はロビーで待ってるよ~」

 

 

上田辺:「わかりました・・・。それじゃあ、行ってきます」

 

 

国崎:「自分から、手伝えって言っておきながら、遅刻とは、刑事も良いご身分だな~・・・」

 

 

 

 

朝熊:「お客様は・・・、もしや、国崎様でいらっしゃいますか?」

 

 

国崎:「・・・あんたは誰だ・・・? どうして、俺の名前を知ってる・・・」

 

 

朝熊:「これは、大変失礼致しました・・・。私(わたくし)、この旅館、鏡月の、若女将の朝熊と申します」

 

 

国崎:「若女将・・・。そそられる言葉だな。・・・それで、その若女将が俺に何の用だ・・・?」

 

 

朝熊:「お連れ様より、伝言を預かっております・・・」

 

 

国崎:「伝言だと・・・?」

 

 

朝熊:「はい、調べたい場所が出来たから、先に向かってると・・・」

 

 

国崎:「その連れの名前は・・・?」

 

 

朝熊:「四神田(しこうだ)様で御座います」

 

 

国崎:「全く・・・。・・・それで調べたい場所ってのは・・・?」

 

 

朝熊:「この旅館から、下った先にある、洞窟で御座います」

 

 

国崎:「洞窟だと? 観光名所か何かなのか?」

 

 

朝熊:「左様でございます」

 

 

国崎:「・・・わかった。・・・連れが戻ってから、行くよ」

 

 

 

 

 

 

 

(四神田の部屋に向かう上田辺)

 

 

 

上田辺:「一体、摩耶さんはどうしたんだ・・・。早く探さないと・・・」

 

 

猿野:「あっ、俊一郎さん・・・」

 

 

上田辺:「藍ちゃん、丁度良い所に・・・。摩耶さん、見かけなかった?」

 

 

猿野:「摩耶さん・・・?」

 

 

上田辺:「俺達と一緒に居た女性だよ」

 

 

猿野:「あ~、あのお客様ね。・・・さっき向こうの廊下で見かけたと思うけど・・・」

 

 

上田辺:「それ本当? 案内してくれないかな?」

 

 

猿野:「良いよ、付いてきて~」

 

 

 

長い間

 

 

 

朝熊:「お連れ様、戻って来ませんね・・・」

 

 

 

国崎:「一体、何してるんだ・・・」

 

 

 

朝熊:「四神田様は、何やら急いでらしたので・・・、国崎様も、お急ぎになられた方が宜しいのでは無いでしょうか?」

 

 

 

国崎:「何だと? ・・・すまない、若女将・・・。俺の連れの上田辺って男が、戻ってきたら、先に向かってると伝えてくれ」

 

 

 

朝熊:「かしこまりました。どうか、お気を付けて、行ってらっしゃいませ」

 

 

 

国崎:「あぁ、ありがとうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

朝熊:「國正・・・」

 

 

太岡寺:「若女将・・・」

 

 

朝熊:「そっちの手筈は、整ったかしら・・・?」

 

 

太岡寺:「順調でございやす・・・。でも・・・」

 

 

朝熊:「國正・・・。今更、怖気づいたのですか? 海影島は、私達にとって、大事な島・・・。

    決して、逆らっては駄目・・・。この島で生まれた貴方なら、それは十分、わかっているでしょう?」

 

 

太岡寺:「・・・祖父の代から、ずっと掟は破るなと良い聞かさせて来やした・・・。

     でも・・・、100年も昔の話やないですか・・・。・・・本当に、今更・・・」

 

 

朝熊:「・・・海影島が私に語り掛けるのです・・・。掟を・・・、儀式を行え・・・と・・・。

    そうすれば・・・、この海影島は・・・、再び100年、無病息災、子孫繁栄に恵まれる・・・!

    ・・・その儀式の為に建てられた旅館が、この鏡月なのですよ・・・」

 

 

太岡寺:「・・・この島の為には、仕方ないんはわかっていやす・・・。でも、計画は上手く・・・」

 

 

朝熊:「何も心配は要りません・・・。全て順調なんですから・・・。

    だって・・・、【私達だけ】ではないですもの・・・。ふふふ・・・。

    だから、心配しなくて大丈夫・・・。わかったのなら、さぁ、早く準備を進めてちょうだい・・・」

 

 

 

太岡寺:「わかりやした・・・、若女将・・・」

 

 

 

 

 

 

 

SE (床に落ちる水の雫の音)

 

 

 

 

天花寺:「・・・ん、・・・私(わたくし)は、確か旅館の廊下で・・・。

     ・・・これは縄・・・? 一体、此処は何処ですの・・・!? 誰か、助けて・・・!!!」

 

 

 

四神田:「その声は・・・、そこにいるのは、温泉で一緒に居たお嬢ちゃんか?」

 

 

 

天花寺:「その声は、温泉であった人ですわね!? 此処は、一体、何処ですの・・・?」

 

 

 

四神田:「・・・此処は、恐らく牢屋だ・・・。然もかなり古い建物だ・・・。・・・ん?」

 

 

 

天花寺:「どうして、私達はこんな所に・・・!?」

 

 

 

四神田:「どうやら・・・、その答えは、お前の連れが知ってるらしい・・・」

 

 

 

天花寺:「啓吾がですの!? それは一体、どういう事・・・」

 

 

 

神木:「・・・響子お嬢様・・・。ようやくお目覚めになられましたか・・・」

 

 

 

天花寺:「啓吾・・・。これは貴方の仕業ですの・・・?」

 

 

 

神木:「・・・半分、正解でございます。・・・響子お嬢様・・・」

 

 

 

天花寺:「それは、どういう意味ですの・・・?」

 

 

 

神木:「そう焦らないでください。もうすぐ分かりますよ・・・。・・・あっ、ほらっ」(上田辺達の声が聴こえてくる)

 

 

 

上田辺:「くそっ・・・、この縄、解いて・・・。お願いだから・・・」

 

 

 

猿野:「ごめ~ん、俊一郎、拘束するのに、時間、かかっちゃった~。神木・・・、そっちの手筈はどう~?」

 

 

 

神木:「はい、こっちも万事順調です・・・」

 

 

 

猿野:「それは良かった~。大事な儀式の邪魔されたら、大変だからね~」

 

 

 

四神田:「・・・お前は上田辺・・・」

 

 

 

上田辺:「摩耶さん・・・、すみません・・・。摩耶さん探してたら、突然、後ろから襲われて・・・、この有り様です・・・」

 

 

 

猿野:「俊一郎はね~、お姉さんの事、必死に探そうとしてたんだよね~。

    流石に、このままにしておけないと思って、拘束させてもらったよ~」

 

 

 

上田辺:「藍ちゃん、どうしてこんな事・・・」

 

 

 

猿野:「恨まないでよね~、俊一郎!

    これも全て、この島の為なんだよ~。大丈夫、海影様は、皆の味方だよ~。

    だから、逆らったりしないでね~。・・・さぁ、儀式の時間まで、この刑事さんと一緒に、牢屋で大人しく待っててね~」

 

 

 

上田辺:「知ってたのか・・・?」

 

 

 

猿野:「うん、知ってたよ。部屋の外で、盗み聞きしてたからね~」

 

 

 

四神田:「一体、お前達は何をしようとしてるんだ? 儀式とは何の事だ!?」

 

 

 

神木:「それは、時期に分かりますよ。さぁ、猿野・・・。さっさと彼を牢屋へ。次の準備に取り掛かりましょう」

 

 

 

猿野:「それもそうだね~。・・・ほらっ、俊一郎、早く入って!!!」

 

 

 

上田辺:「くっ・・・」

 

 

 

SE:【牢屋の閉まる音】

 

 

 

猿野:「よし、完了っと! それじゃあ、御三方、時間まで、ごゆっくり~!!!」

 

 

 

 

(牢屋から離れる神木と猿野)

 

 

 

 

 

 

天花寺:「・・・啓吾。どうして、こんな事・・・」

 

 

 

四神田:「心当たりは無いのか・・・?」

 

 

 

天花寺:「ありませんわ・・・」

 

 

 

四神田:「・・・そうか。・・・それなら、まずはこの縄を解いて、此処を脱出する方法を探すのが先か・・・」

 

 

 

天花寺:「貴女は、こんな状況でも、冷静ですのね・・・」

 

 

 

四神田:「・・・刑事として、厳しい訓練を経験してるからな・・・」

 

 

 

天花寺:「納得ですわ・・・。それにしても、啓吾の言って居た儀式が気になりますの・・・」

 

 

 

四神田:「それもそうだな・・・」

 

 

 

上田辺:「もしかしたら・・・」

 

 

 

四神田:「何か心当たり在るのか?」

 

 

 

上田辺:「・・・今回、この海影島に来た理由と、関係あるのかなって・・・」

 

 

 

四神田:「一体、どういう事だ・・・?」

 

 

 

上田辺:「この島の伝説を確かめる為に、今回、訪れたんです・・・」

 

 

 

四神田:「伝説だと・・・?」

 

 

 

上田辺:「はい・・・。・・・古い伝説なのですが・・・、100年に一度・・・、

                    この海影島の周辺の海は、赤い色に染まると・・・」

 

 

 

四神田:「海が赤く染まる・・・?」

 

 

 

上田辺:「恐らく、赤い藻の大量発生による何かで、一時的に赤くなるのだと思いますが・・・、

     他に、何か原因があるのではと、先輩と一緒に調べに来たんです・・・」

 

 

 

四神田:「・・・そうだったのか・・・」

 

 

 

上田辺:「もっと早くに、話すべきでした・・・。すみません・・・」

 

 

 

四神田:「今更、謝っても仕方ないだろう・・・。今は、此処を脱出するのが先だ・・・」

 

 

 

上田辺:「そうですね・・・」

 

 

 

 

 

 

(洞窟に辿り着く国崎)

 

 

 

 

国崎:「此処が、若女将の言ってた洞窟か・・・。それにしても、薄暗いな・・・」

 

 

 

朝熊:「国崎様・・・」

 

 

 

国崎:「若女将・・・。一体、どうして此処に?」

 

 

 

朝熊:「懐中電灯を届けに来たのです・・・。私とした事が、うっかりしておりました・・・」

 

 

 

国崎:「それは、わざわざ悪かったな」

 

 

 

朝熊:「さぁ、早く参りましょう」

 

 

 

国崎:「え?」

 

 

 

朝熊:「どうしたのですか? お連れ様がお待ちですよ」

 

 

 

国崎:「あんたも一緒に行くのか?」

 

 

 

朝熊:「大事なお客様に何かあったら、大変ですから・・・」

 

 

 

国崎:「わかった・・・」

 

 

 

朝熊:「私が先導しますので、付いてきてください」

 

 

 

国崎:「あぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

(洞窟を案内する朝熊)

 

 

 

朝熊:「・・・それにしても、国崎様は付いてらっしゃいますね。

    今日は、海の日・・・。この海影島では、お祭りが開かれるのですよ」

 

 

 

国崎:「祭りだと・・・? この島の伝説・・・、赤い海と何か関係あるのか・・・?」

 

 

 

朝熊:「あら、伝説をご存じで御座いましたか・・・。ええ、100年に一度、この周辺の海は・・・、

    赤く綺麗に染まるそうです・・・。その光景の美しさは、この世の物では無いと言い伝えられております」

 

 

 

国崎:「・・・それが今夜だと言うのか?」

 

 

 

朝熊:「左様で御座います」

 

 

 

国崎:「・・・・なぁ、質問して良いか?」

 

 

 

朝熊:「何で御座いましょう」

 

 

 

国崎:「どうして、この島は、海影島という名前なんだ?」

 

 

 

朝熊:「・・・それは簡単で御座います。この島は、遙か昔から海影様という神様に護られて来ました・・・」

 

 

 

国崎:「海影様だと・・・? そんな神様は聞いた事が無いぞ・・・」

 

 

 

朝熊:「この島だけに伝わり、代々、護り祀って居る神様なので、当然で御座います。

    私達、島に住む者は・・・、海影様に感謝しているのです・・・」

 

 

 

国崎:「感謝だと・・・? どうしてだ・・・」

 

 

 

朝熊:「それは、国崎様も、すぐに分かると思いますよ・・・」

 

 

 

国崎:「・・・」

 

 

 

朝熊:「あら・・・、どうやら、あちらに四神田様が、居られるようで御座いますね」

 

 

 

国崎:「あぁ、そのようだな・・・」

 

 

 

朝熊:「それでは、・・・私は、この辺で・・・。・・・それでは、国崎様、また旅館で・・・」

 

 

 

国崎:「あぁ、案内、ありがとうよ・・・。・・・さてと、おい、摩耶ちゃん、一体、何を考えてるんだ・・・」

 

 

 

四神田:「・・・すまない・・・。此処を・・・、どうしても調べたかったんだ・・・」

 

 

 

国崎:「一体、此処に何があるって言うんだ・・・。・・・ん、これは・・・。おいおい、これは一体、何の冗談だ・・・」

 

 

 

四神田:「冗談・・・? 見ての通りだ。・・・此処がお前の・・・」

 

 

 

国崎:「おいっ・・・」

 

 

 

四神田:「墓になる場所だ!!!」(銃を撃つ)

 

 

 

SE:【銃声】

 

 

 

国崎:「危なっ!!! 一体、何のつもりだ!!!」

 

 

 

四神田:「何故、避ける・・・。避けなければ・・・、楽に死ねたのに・・・」

 

 

 

国崎:「冗談はよしてくれ!!! 一体、どうしたって言うんだ!!!」

 

 

 

四神田:「早く死んで、この墓に入るんだあああああああああ!!!」

 

 

 

国崎:「冗談じゃないぞ!!! 何で、俺ばかりこんな目に合うんだああああああああ!!!!!

    上田辺の馬鹿野郎!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

上田辺:「ん? 今、先輩の叫び声が、聴こえたような・・・」

 

 

 

四神田:「あいつ・・・、私達を探しに来たのか・・・?」

 

 

 

上田辺:「そうかもしれませんね・・・」

 

 

 

天花寺:「あの口うるさい男ですわね・・・。あんな男に助けられるなんて、私のプライドが許しませんの・・・」

 

 

 

四神田:「あぁ、確かにな・・・。だが、そんな暢気な事も言ってられないようだ・・・」

 

 

 

朝熊:「あら、天花寺財閥のお嬢様・・・。お会いするのは、いつぶりでしょうね・・・」

 

 

 

天花寺:「貴女は・・・、確か朝熊さんでしたわね・・・。我が天花寺財閥の式典でお会いした以来ですの・・・」

 

 

 

朝熊:「ええ、そうで御座いましたね・・・。・・・その財閥の貴女が、こんな牢に閉じ込められて・・・、可哀想に・・・」

 

 

 

天花寺:「そうお思いなら、早く解放してくださいの!!!」

 

 

 

朝熊:「残念ですが、それは出来ません・・・。貴方達は儀式の大事な贄なんですから・・・」

 

 

 

四神田:「贄だと・・・?」

 

 

 

朝熊:「ええ、そうです・・・。貴方達は、とても運が良いのですよ・・・。

    この海影島の伝説を・・・、その身で体験できるのですから・・・」

 

 

 

四神田:「・・・くっ」

 

 

 

朝熊:「あら、そう怯えなくても大丈夫です・・・。海影様は、貴方達を受け入れてくれます・・・」

 

 

 

太岡寺:「若女将・・・」

 

 

 

朝熊:「國正・・・。準備は整いましたか?」

 

 

 

太岡寺:「全て、整いやした・・・」

 

 

 

猿野:「若女将、早く儀式、やっちゃおうよ~。私、明日もバイトなんだよね~」

 

 

 

朝熊:「月が出るまでの辛抱ですよ・・・。大丈夫、明日のバイトには間に合います」

 

 

 

猿野:「そっか~、それならちゃんと待つよ」

 

 

 

朝熊:「國正・・・、神木はどうしました?」

 

 

 

太岡寺:「既に、儀式の準備の為に、お清めに入っております」

 

 

 

朝熊:「そうですか・・・」

 

 

 

天花寺:「啓吾を一体、どうするつもりですの・・・?」

 

 

 

朝熊:「・・・夜になれば分かりますよ・・・。さぁ、贄であるこの者達を・・・、

    海影様の待つ、儀式の間に・・・」

 

 

 

太岡寺:「わかりやした・・・。おいっ、猿野・・・。儀式の間だ」

 

 

 

猿野:「はいはい~。さぁ、御三方、お散歩の時間だよ~。さっさと、歩いた、歩いた~」

 

 

 

上田辺:(M)「先輩・・・。・・・早く助けに来てください・・・」

 

 

 

 

 

 

国崎:「はぁ、はぁ、はぁ・・・。走って逃げて来たが・・・、一体、此処は何処なんだ・・・」

 

 

 

上田辺:「あっ、先輩・・・。こんな所に居たんですか・・・。探しましたよ・・・」

 

 

 

国崎:「上田辺・・・。お前、どうして此処に?」

 

 

 

上田辺:「女将さんから、伝言を聞いてですよ・・・。そんな事より、早くこの洞窟、出ましょう・・・。

     摩耶さんも、旅館で待ってますよ・・・」

 

 

 

国崎:「旅館でだと!? 俺は、さっき、この洞窟で、殺されそうになったんだぞ・・・」

 

 

 

上田辺:「そんな訳あるわけないじゃないですか・・・。馬鹿な事、言ってないで、早く行きますよ」

 

 

 

国崎:「あぁ・・・」

 

 

 

上田辺:「・・・どうかしたんですか?」

 

 

 

国崎:「なぁ、上田辺・・・。摩耶ちゃんとは、何処であったんだ?」

 

 

 

上田辺:「摩耶さんとは、この洞窟に向かう、道でですよ。

     幾ら待っても・・・、俺達が来ないから、戻って来たって・・・。

     摩耶さん、かなり怒ってましたよ・・・。早く帰って謝らないと・・・」

 

 

 

国崎:「そうだったのか・・・。それにしても、上田辺・・・。お前・・・」

 

 

 

上田辺:「どうかしたんですか・・・? さぁ、洞窟の出口まで、もう少しです・・・。

     そんな所に、立ち止まってないで、こちらに来てください・・・」

 

 

 

国崎:「あぁ・・・」

 

 

 

上田辺:「先輩・・・?」

 

 

 

国崎:「悪い・・・、上田辺・・・。そっちには行けない・・・」

 

 

 

上田辺:「え?」

 

 

 

国崎:「危うく騙される所だったよ・・・。お前にまで、化けれるんだな・・・」

 

 

 

上田辺:「・・・いつから・・・気付いてた・・・」

 

 

 

国崎:「摩耶ちゃんの話からだよ・・・。どう考えても可笑しいんだ・・・。

    あの女将と言い・・・、お前は誰なんだ・・・」

 

 

 

上田辺(影):「・・・そのまま、気付かなければ・・・、楽に死ねたのに・・・」

 

 

 

国崎:「何だと・・・? ・・・うわっ・・・、そっちは、洞窟の崖だったのか・・・」

 

 

 

上田辺(影):「海影様に・・・、逆らう者は・・・、要らない・・・」

 

 

 

国崎:「・・・本当の上田辺や摩耶ちゃんは、何処に居る!?」

 

 

 

上田辺(影):「お前は・・・、此処で・・・、死ぬ・・・」

 

 

 

国崎:「あぁ、そうかよ・・・。だが、お前と一緒は、ごめんだ・・・!!!」(隠し持っていたライトを付ける)

 

 

 

上田辺(影):「何だ・・・、この光は・・・、ぐあああああああ・・・・」

 

 

 

国崎:「・・・よし、今の内に・・・」

 

 

 

 

 

 

国崎:「はぁ、はぁ、はぁ・・・。一体、あの影は何なんだ・・・。

    摩耶ちゃんの次は・・・、上田辺になって現れやがった・・・。

    早く、本当の上田辺と、摩耶ちゃん、見つけて洞窟を脱出しないと・・・。・・・うっ・・・」(手刀をくらう)

 

 

 

 

太岡寺:「全く・・・、しぶといお方で御座いやすね・・・。貴方には、暫く眠っていただきやす・・・」

 

 

 

国崎:「お前は、あの旅館の・・・、支配人・・・。・・・くそっ・・・、上田辺・・・」

 

 

 

太岡寺:「よいしょっと・・・。・・・さて、急ぎませんと・・・」(国崎を担いで、洞窟の奥に歩いて行く)

 

 

 

 

長い間

 

 

 

猿野:「そっちじゃないよ。・・・抵抗しても、無駄だからね~。ほらっ、早くこっちに歩いた、歩いた~」

 

 

四神田:「くそっ・・・。・・・ん? ・・・何だ、此処は・・・」

 

 

朝熊:「此処は、海影様をお迎えする、神聖な儀式の間です・・・」

 

 

上田辺:「儀式の間・・・?」

 

 

天花寺:「やはり、私達を殺す気ですのね・・・。誰か助けてくださいの・・・」

 

 

朝熊:「殺す・・・? 何を言って居るのです・・・。

    貴方達は、今日・・・、この場に居る事を、感謝しなければなりません・・・。

    100年に一度しか、御姿を見れない・・・、海影様に会えるのですから・・・」

 

 

 

上田辺:「・・・そんな事、望んでない・・・。早く、俺達を開放しろ・・・」

 

 

 

猿野:「海影様は・・・、私達、島に住む人の、大事な神様なんだよ~。その素晴らしさが、俊一郎にも、すぐに分かるよ~」

 

 

 

上田辺:「そんなの分かりたくない・・・」

 

 

 

猿野:「本当、強情なんだから~。でも、その威勢がいつまで、持つかな~。・・・ほらっ、あそこ見てみて~」

 

 

 

上田辺:「あれは、国崎先輩!!!」

 

 

 

猿野:「へへへ、正解」

 

 

 

上田辺:「先輩!!! 国崎先輩!!! 起きてください!!!」

 

 

 

猿野:「そんなに叫んでも、先輩には聴こえないよ~。國正の手刀、食らっておねんねしてるからさ~」

 

 

 

上田辺:「そんな・・・」

 

 

 

太岡寺:「女将・・・。遅くなりやした・・・」

 

 

 

朝熊:「そう・・・、その者は、対処できなかったのですね・・・」

 

 

 

太岡寺:「申し訳御座いやせん・・・」

 

 

 

朝熊:「まぁ、良いでしょう。・・・対処、出来ないのなら・・・、

    この者も一緒に、贄にするまでです・・・。

    さぁ、3人を、儀式の磔付け台に、固定しなさい・・・」

 

 

 

太岡寺:「かしこまりやした・・・」

 

 

四神田:「くっ・・・、此処までなのか・・・」

 

 

天花寺:「無礼者・・・!!! 私に触れるんじゃありませんの!!! 嫌ああああああああああ!!!!」

 

 

上田辺:「くそっ・・・、止めるんだ・・・!」

 

 

太岡寺:「いい加減、諦めてくださいやせ・・・。抵抗しても、何も変わりやせんよ・・・」

 

 

上田辺:「・・・くっ。・・・先輩・・・」

 

 

 

長い間

 

 

 

 

国崎:「・・・ん・・・、此処は一体・・・。俺は、あの支配人の手刀を食らって・・・」

 

 

 

朝熊:「ようやくお目覚めですか・・・」

 

 

 

国崎:「若女将・・・。全てはお前と、あの男の仕業か・・・」

 

 

 

朝熊:「ふふふふ・・・」

 

 

 

国崎:「何が可笑しいんだ!!!」

 

 

 

猿野:「ねぇ、国崎さん・・・。どうして、この島から出ようとするの~?

    此処は、平和で良い島なんだよ~」

 

 

 

国崎:「お前も、グルだったわけか・・・」

 

 

 

猿野:「私だけじゃ無いよ・・・。ほらっ、あそこの祭壇、見てみてよ~」

 

 

 

国崎:「あれは・・・、上田辺・・・。摩耶ちゃん・・・。あのお嬢ちゃんまで・・・。

    磔にして、一体、これから、あいつらに何する気なんだ?」

 

 

 

猿野:「それはね~、私達の仲間にするためだよ~」

 

 

 

国崎:「仲間にだと? どういう意味だ・・・?」

 

 

 

猿野:「神木~、説明、面倒だからパス~」

 

 

 

神木:「仕方ありませんね・・・。実は、私は、この島の生まれの人間なんです・・・」

 

 

 

国崎:「何だと・・・? それじゃあ、どうしてあのお嬢ちゃんに、仕えてたんだ?」

 

 

 

神木:「それは、いつか利用する為にですよ・・・。・・・もっと先になるかと思っていましたけど・・・、

    今回のお嬢様の行動で・・・、当初の目的も・・・、予定より早まりました・・・。

    これも、全て、海影様の御導きのお陰です・・・」

 

 

 

国崎:「お前達の目的は何だ・・・?」

 

 

 

神木:「さっき、猿野も言ったじゃないですか・・・。私達の仲間にする為ですよ・・・。

    その為に、これから始まる儀式は、必要不可欠なんです・・・」

 

 

 

国崎:「儀式だと・・・?」

 

 

 

神木:「さぁ、そろそろ時間のようです・・・。若女将・・・」

 

 

 

朝熊:「そのようですね・・・。さぁ、皆でお呼びするのです・・・。海影様を・・・」

 

 

 

朝熊:「海影様・・・、海影様・・・、海影様・・・、どうか私達の前に、そのお姿を御見せください・・・」

 

 

 

太岡寺:「海影様・・・、海影様・・・、海影様・・・、100年に一度の贄も、此処に用意してありやす・・・」

 

 

 

猿野:「海影様・・・、海影様・・・、海影様・・・、どうか私達の島に、繁栄を・・・」

 

 

 

神木:「海影様・・・、海影様・・・、海影様・・・、私達の島を、どうか御守りください・・・」

 

 

 

(4人の声に、応えるかのように、海が荒れ始める)

 

 

 

 

国崎:「くそっ・・・、一体、どうしたら・・・」

 

 

 

朝熊:「海が、私達の声に、応えています・・・。さぁ・・・、海影様に贄を・・・!」

 

 

 

神木:「わかりました・・・。さぁ、祭壇に向かって歩きなさい・・・」

 

 

 

国崎:「くっ・・・」

 

 

 

 

 

 

上田辺:「・・・先輩・・・」

 

 

 

四神田:「・・・」

 

 

 

天花寺:「啓吾・・・」

 

 

 

 

 

 

神木:「さぁ、そこに跪きなさい・・・」

 

 

 

国崎:「くそっ・・・」

 

 

 

上田辺:「先輩・・・」

 

 

 

国崎:「上田辺・・・、すまない・・・。俺がこんな場所に来るなんて、提案しなければ、こんな事に・・・」

 

 

 

上田辺:「先輩のせいだけでは無いです・・・。・・・俺にも責任はあります・・・」

 

 

 

国崎:「上田辺・・・」

 

 

 

天花寺:「啓吾・・・。早く此処から解放しなさい・・・。こんな事して、お父様が知ったら・・・、

     ただでは済みませんのよ・・・!!!」

 

 

 

神木:「心配は要りませんよ・・・。お嬢様・・・。すぐにそんな事、どうでも良くなりますから・・・」

 

 

 

天花寺:「一体、それはどういう意味ですの? 啓吾・・・、啓吾・・・!!!」

 

 

 

四神田:「・・・私達をどうする気だ・・・」

 

 

 

神木:「すぐにわかります・・・。さぁ・・・、時間のようです・・・」

 

 

 

上田辺:「先輩、あれ、見て下さい!!!! 海が赤く染まって・・・」

 

 

 

国崎:「何て光景なんだ・・・。・・・あれは、まるで・・・」

 

 

 

四神田:「・・・血の色のようだ・・・」

 

 

 

朝熊:「あぁ・・・、御先祖様から、言い伝えられてきた、伝説は・・・、やはり正しかったのです・・・。

    あれこそ、海影様の来られた証拠です・・・」

 

 

 

国崎:「証拠だと・・・?」

 

 

 

猿野:「へぇ~、お爺ちゃんから、話は聞いてたけど、本当に真っ赤に染まるんだ~」

 

 

 

太岡寺:「あれは、これまで贄になった者達の流した血の色だと・・・、聞いてやす・・・」

 

 

 

朝熊:「ええ、その通りですよ。・・・ですが、今までの方々も、光栄だった事でしょう・・・。

    その身を持って、海影様の一部となれたのですから・・・」

 

 

 

国崎:「・・・この島は、狂ってやがる・・・」

 

 

 

朝熊:「狂う・・・? そんな事はありません・・・。私達は、選ばれた者達なんです・・・。

    そして、貴方達も・・・、これから・・・」

 

 

 

国崎:「何だと・・・?」

 

 

 

朝熊:「さぁ・・・、神木・・・。海影様は、お待ちですよ・・・。

                早く、その身を、この神聖なナイフで、差し出しなさい・・・」

 

 

 

神木:「はい・・・、女将・・・」

 

 

 

天花寺:「啓吾・・・! 馬鹿な真似は、およしなさい!!! 啓吾!!! 啓吾!!!!」

 

 

 

神木:「お嬢様・・・。そんな感情も、一時の苦しみに変わります・・・。

    今まで、お世話になりました・・・。・・・そして、女将・・・、

    私に、こんな素晴らしい機会を与えてくださり、感謝しています・・・」

 

 

 

朝熊:「貴方の犠牲は、これからも、この海影島に語り継がれるでしょう・・・。啓吾・・・、さぁ・・・!」

 

 

 

神木:「はい・・・。・・・海影様・・・、私を貴方様の元へ、御導きください・・・!!!」(用意していたナイフで、心臓を刺す)

 

 

 

天花寺:「いやああああああああああ!!!! 啓吾!!! 啓吾おおおおおおお!!!!」

 

 

 

神木:「あああああああ!!! ・・・海影様!!! 貴方の存在が・・・、近くに感じます・・・!!!

    ・・・私の血を・・・、全て、貴方に捧げます・・・。・・・今・・・、参ります・・・」

 

 

 

国崎:「くっ・・・、用意したナイフで、心臓を突き刺すとは・・・」

 

 

 

四神田:「何て、惨いんだ・・・」

 

 

 

上田辺:「先輩!!! 見て下さい!!! あれ!!!」

 

 

 

国崎:「何なんだ・・・。さっきよりも赤く、海が染まっていく・・・」

 

 

 

朝熊:「あああああ!!! 神木より流れ出た、血が海に届き・・・、海影様が喜んでいらっしゃいます!!!!

    ・・・私達の願いは、無事に届いたようです・・・。儀式は無事に成功したのです!!!」

 

 

 

国崎:「何が成功しただ!!! 人、一人、殺しておいて、お前達は、殺人者だ!!!」

 

 

 

朝熊:「あら、殺してなんて居ません・・・。神木は、海影様の御傍に行ったのです・・・。

    さぁ、次は・・・、お前達の番ですよ・・・」

 

 

 

国崎:「俺達も、殺す気か・・・!?」

 

 

 

朝熊:「ふふふふ・・・」

 

 

 

国崎:「笑ってないで、応えろ!!!」

 

 

 

上田辺:「先輩!!!!!!」

 

 

 

国崎:「どうした!!! 上田辺・・・!!?」

 

 

 

上田辺:「俺達の影が・・・、どんどんこっちに!!!」

 

 

 

国崎:「何だと!!! くそっ、何なんだ、これは!!!」

 

 

 

上田辺:「く・・・、抵抗しても・・・、どんどん、飲み込まれて行きます!!!!」

 

 

 

四神田:「くそっ・・・! 離せええええええええ!!!」

 

 

 

朝熊:「何も恐れる事はありません・・・。自分達の影に、身を任せるのです・・・」

 

 

 

天花寺:「あの時の影!? 嫌ですわ!!! 誰か助けて!!!!! 嫌あああああああああああ!!!!」

 

 

 

猿野:「あ~あ、藻掻いても苦しいだけなのに~」

 

 

 

上田辺:「先輩・・・!!!!」

 

 

 

国崎:「上田辺・・・!!!!!!!!!!!! くそおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

 

朝熊:「ふふふふ・・・、はははははは!!!!! 海影様、この島に、更なる繁栄と、御導きをお与え頂き、感謝します・・・!!!!」

 

 

 

 

 

長い間

 

 

 

 

 

猿野:「・・・俊一郎、俊一郎ってば・・・」

 

 

 

上田辺:「ん・・・、あれ? 藍ちゃん、此処は・・・?」

 

 

 

猿野:「もう、何、寝ぼけてるのよ~。・・・此処は、泊ってる部屋だよ~」

 

 

 

上田辺:「あれ? 俺、確か・・・、何か怖い目にあってたような・・・」

 

 

 

国崎:「おう! 上田辺・・・。やっと起きたか・・・。いつまでも、起きないから、先に朝飯、食べて来たからな」

 

 

 

上田辺:「先輩・・・。あれ・・・、それじゃあ、全部、夢だったのかな~・・・」

 

 

 

国崎:「夢? 一体、何の事、言ってんだ?」

 

 

 

猿野:「あ~、何か悪い夢見たらしいよ~」

 

 

 

国崎:「それは、朝から大変だったな・・・」

 

 

 

上田辺:「そうだ・・・。摩耶さんと、あのお嬢さんは、無事ですか?」

 

 

 

国崎:「摩耶・・・? 誰だそれ?」

 

 

 

上田辺:「え・・・? 摩耶さんですよ!!! 刑事の!!!」

 

 

 

国崎:「・・・さっぱり、わからねえな・・・」

 

 

 

上田辺:「そんな・・・。・・・あのお嬢様だって、先輩、ロビーで喧嘩して・・・」

 

 

 

国崎:「・・・余程、変な夢、見てたんだな・・・。良いから、早く朝飯、食べて来い」

 

 

 

上田辺:「わかりました・・・」

 

 

 

猿野:「それじゃあ、布団、片付けちゃうね~」

 

 

 

国崎:「おう、すまねえな」

 

 

 

 

 

 

上田辺:(N)「俺は何か、悪い夢でも見てたのだろうか・・・。

        だとしても、何でこんなに、胸が苦しいんだろう・・・。

        摩耶さんの事・・・、先輩も覚えてないなんて、可笑しい・・・。

        ・・・あれ? 摩耶さんって・・・、そもそも誰だっけ・・・?」

 

 

 

 

朝熊:「おはようございます・・・。上田辺様・・・。どうかなさいましたか?」

 

 

 

上田辺:「いえ、何でもないです・・・」

 

 

 

朝熊:「お連れ様も、いつまでも来ないと、心配されてましたよ」

 

 

 

上田辺:「そうでしたか・・・」

 

 

 

朝熊:「朝食は、まだ間に合いますが、チェックアウトは10時となってますので、お気を付けください」

 

 

 

上田辺:「わかりました・・・。それでは・・・。

     早く、朝食、食べて戻らないと・・・」

 

 

 

 

 

 

 

国崎:「おっ、戻って来たか・・・。・・・さぁ、チェックアウトまで時間が無い・・・。急いで用意しろよ」

 

 

 

上田辺:「あの・・・、先輩・・・」

 

 

 

国崎:「どうかしたか・・・?」

 

 

 

上田辺:「いえ、何でもないです・・・」

 

 

 

上田辺:(N)「そうだ・・・。あれは、全部、夢だったんだ・・・。早く、帰る準備しないと・・・」

 

 

 

 

 

 

 

太岡寺:「おはようございやす・・・。チェックアウトで宜しゅうございやすか?」

 

 

 

国崎:「おう、お世話になったな」

 

 

 

太岡寺:「またいつでも、お越しくださいやせ・・・」

 

 

 

上田辺:「ありがとうございます・・・」

 

 

 

国崎:「さぁ、上田辺・・・。タクシーも到着してるし、帰るぞ」

 

 

 

上田辺:「そうですね。行きましょう、先輩」

 

 

 

 

 

 

 

国崎:「・・・港に到着したようだな。・・・運転手、ありがとうよ」

 

 

 

上田辺:「先輩、そこにあるお土産屋、寄っても良いですか?」

 

 

 

国崎:「船の時間まで時間が無いから、急ぐんだぞ」

 

 

 

上田辺:「わかってますよ・・・! あっ・・・」

 

 

 

四神田:「あっ・・・」

 

 

 

上田辺:「どうも、すみません・・・」

 

 

 

四神田:「良いんだ、こっちこそ、すまない・・・」

 

 

 

上田辺:「あの何処かで、お会いしましたか・・・?」

 

 

 

四神田:「いいや、初めてだが・・・」

 

 

 

上田辺:「そうですか・・・」

 

 

 

四神田:「・・・おい、お前・・・」

 

 

 

上田辺:「はい?」

 

 

 

四神田:「帰るなら、気を付けて帰れよ・・・」

 

 

 

上田辺:「貴女も、お気を付けて・・・」

 

 

 

四神田:「・・・さて・・・、私も帰って上司に報告しなければ・・・。

     この海影島は・・・、事件など起きない平和な島だと・・・。

                     だって、此処は・・・海影様に、護られてるのだからな・・・」

 

 

 

上田辺:「・・・さて、早くお土産、買って先輩の元に戻らないと・・・」

 

 

 

 

 

 

天花寺:「・・・それは、絶対に、貴方が悪いんですわ!!!」

 

 

 

国崎:「いいや! それを言うなら、お前の方が悪い!!!」

 

 

 

天花寺:「何ですって!!! 私を一体、誰だと思ってますの!!!」

 

 

 

上田辺:「ちょっと先輩、何、騒いでるんですか!?」

 

 

 

国崎:「この女が、いきなり俺にぶつかって来たんだよ!」

 

 

 

上田辺:「はぁ・・・」

 

 

 

天花寺:「それは、そっちからでしょう!!! 本当に、気分が悪いですの!!!」

 

 

 

国崎:「それは、こっちの台詞だ!!!」

 

 

 

天花寺:「・・・埒が明きませんわ。・・・ふん・・・!!!」

 

 

 

国崎:「おい!!! 待て、この野郎!!! ちゃんと謝っていけ!!!」

 

 

 

天花寺:「嫌ですわ!!! 早く、此処の状況、知らせて、リゾートの地の開発を進めますのよ・・・。

     さぁ、もたもたしてないで、早く家に帰りますわよ・・・! 

     ん・・・? ・・・どうして、側には誰も居ないのに、独り言を・・・。

     私も、疲れてるのですわね・・・。お父様も・・・、この島の海影様の素晴らしさ知れば・・・、

     きっと、分かってくださいますの・・・」

 

 

 

国崎:「おいっ!!! 人の話、さっきから無視するな~!!!」

 

 

 

上田辺:「先輩!!! あっちは隣の島に向かう船なんで、無理ですって!!!!」

 

 

 

国崎:「くそっ!!! 覚えてやがれ・・・」

 

 

 

上田辺:「さぁ、俺達も帰りましょう・・・」

 

 

 

国崎:「そうだな・・・。早く、帰ってこの島の記事、書かないと・・・」

 

 

 

 

SE:【船の汽笛】

 

 

 

(船は出発して、デッキの上で考え事をしている上田辺)

 

 

 

 

上田辺:「・・・」

 

 

 

国崎:「どうした? 船の中に入らないのか?」

 

 

 

上田辺:「何だか、あの島と別れるのが、寂しくて・・・」

 

 

 

国崎:「不思議だな・・・。俺も今、同じ気持ちだ・・・」

 

 

 

上田辺:「先輩・・・。海影島の伝説は・・・、実在したのでしょうか・・・?」

 

 

 

国崎:「さぁな・・・。でも、一つだけわかったのは・・・、

    あの島は、昔から、海影様に護られているって事だな・・・。

    それが分かっただけでも、今回の仕事は、良いんじゃないか?」

 

 

 

上田辺:「それもそうですね・・・。海影様のおかげで、こうして、無事に帰れるんですし。

     早く帰って、海影島の記事、仕上げちゃいましょう」

 

 

 

国崎:「今回の記事で、海影島も観光客が増えて、海影様も喜ぶだろうな~」

 

 

 

上田辺:「ええ、きっとお喜びになられますよ・・・。それでは、また、いつの日か・・・。

     海影様・・・、そして、海影島・・・」

 

 

 

(一人、海影島の丘で、海影島を出て行く船を見送る朝熊)

 

 

 

朝熊:「さぁ、海影様の素晴らしさを、皆で伝えましょう・・・!

    ・・・私は、海影様と、この海影島で・・・、また新たなるお客様の来訪を・・・、

    お待ち申し上げております・・・。ふふふふ・・・」

 

 

 

 

SE:【遠くで聴こえる船の汽笛】

 

 

 

 

 

 

 

 

終わり