アルテミスの惨劇

 

 

作者 ヒラマ コウ

 

 

 

登場人物

 

 

 

渡辺真治・・・穂香の夫。自分の妻、穂香との思い出がまるで思い出せない事に対して、

       一か月前から疑問を抱いていたが、穂香に訊くことが出来ずに、ずっと1人で悩んでいる・・・。

 

 

渡辺穂香(ほのか)・・・真治の妻。優しくて美人だが時折、人が変わったかのように見え、

            何を考えてるかわからなくなる時がある。その理由は・・・。

 

 

 

 

比率【1:1】

 

 

上演時間【40分】

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

CAST

 

渡辺 真治:

 

渡辺 穂香(ほのか):

 

ニュースキャスター

 

 

※ニュースキャスターは穂香役が兼ね役

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

(庭に大きな桜の木がある家 TVからはニュースが放送されている

 台所では真治の為に穂香が朝食の準備をしている)

 

 

 

 

 

ニュースキャスター:「おはようございます! 今朝の気温は13度と過ごしやすい陽気になっております。

           桜も開花して、すっかりお花見シーズン到来って感じです!

           さて早速、今朝の入って来たばかりのニュースをお届けします!」

 

 

 

真治(N):「この街は、何かが可笑しい・・・。

       そう感じたのは、毎日のニュースがどれも明るいニュースで溢れてるからだ。それともう一つ・・・」

 

 

 

穂香:「おはよう、真治。早くしないと仕事に遅刻よ。う~ん、今日も良い天気。庭の桜が綺麗・・・」

 

 

真治:「俺には、この妻、穂香との思い出が無いからだ・・・」

 

 

 

 

 

 

穂香:「どうしたの? ボーっとして。早く、顔洗って来て。折角の朝ご飯が冷めちゃう」

 

 

真治:「・・・ごめん。少し考え事。すぐに洗ってくる」

 

 

穂香:「早くね~」

 

 

穂香:「うん、今日のお味噌汁は我ながら、上手く出来た」

 

 

 

 

真治:「お待たせ」

 

 

穂香:「はい、お味噌汁。・・・思い切って、いつもの出汁じゃないもの、使ったんだけど、味はどう?」

 

 

真治:「・・・美味しいよ」

 

 

穂香:「もう・・・。真治は嘘が下手ね。・・・美味しくないのね」

 

 

真治:「正直に言うと・・・いつもの方が好き」

 

 

穂香:「そう。残念だけど、仕方ないわね。・・・貸して」(箸をおいた味噌汁を真治から奪い、流しに向かう)

 

 

真治:「おい、いきなり何するんだ。まだ飲んでるだろう・・・!」

 

 

穂香:「真治が気に入らない物は、いらないから、捨てるの。・・・残らず全部・・・」(流しに味噌汁を流しながら)

 

 

真治:「勿体ないじゃないか」

 

 

穂香:「大丈夫よ。今度は、真治が気にいるお味噌汁を作るから、楽しみにしてて」

 

 

真治:「・・・」

 

 

穂香:「そうだ。明日はお休みよね? 久しぶりに映画でも観に行かない?」

 

 

真治:「どんな映画?」

 

 

穂香:「恋愛映画か推理サスペンス、どちらも気になってるのだけど、真治はどっちが見たい?」

 

 

真治:「う~ん、穂香に任すよ・・・」

 

 

穂香:「それじゃ、駄目よ。真治が観たい映画じゃなきゃ意味がないの」

 

 

真治:「穂香自身が観たいんだろ。俺の事は良いから、どちらか決めて」

 

 

穂香:「・・・それなら良い。・・・映画なんて観に行かない」

 

 

真治:「どうして?」

 

 

穂香:「だって、真治、乗り気じゃないんだもん・・・」

 

 

真治:「余り映画観ないから、いまいちわからないんだ。だから・・・穂香が観たい方、選んでくれたら助かる」

 

 

穂香:「・・・わかった。そうね・・・じゃあ、恋愛映画が良いな!」

 

 

真治:「オッケー。じゃあ俺、遅刻するからそろそろ出るよ」

 

 

穂香:「ねぇ、帰りは何時?」

 

 

真治:「今日は少し遅くなるかもしれないから、夕飯は良いよ!」

 

 

穂香:「そうなんだ。・・・残念。・・・気を付けてね。行ってらっしゃい」

 

 

真治:「行って来ます!」

 

 

穂香:「真治・・・行っちゃった」

 

 

 

(家の外で真治を見送った後、ドアを閉め、鍵をかけ、台所に戻る穂香。テーブルにはリンゴが置いてある

 そのリンゴを見つめる穂香。手には、果物ナイフを持って暫く見つめると

 次の瞬間、そのリンゴに何度もナイフを突き刺しながら、ぶつぶつと呟く)

 

 

 

穂香:「駄目よ。穂香。・・・真治に嫌われないように、もっと考えて行動しなきゃ・・・」

 

 

穂香:「・・・真治。・・・真治。・・・真治。・・・私だけを見て・・・。・・・真治は私のもの・・・。

    邪魔する者は、このリンゴのようになるだけ・・・フフフ」

 

 

 

 

 

(仕事を終え、帰宅する真治。家の明かりは消えてる事を確認するとドアを開け、家に入る

 喉が渇いてたので、飲み物を取りに台所に行くと、そこには穂香が電気をつけないまま椅子に座っていた)

 

 

 

 

真治(M):「家の明かりは消えてる。よし、穂香は寝たみたいだ。起こさないようにしなきゃな・・・。

       ・・・喉が渇いた。・・・ビールでも無かったかな・・・」

 

 

穂香:「・・・お帰り。真治」

 

 

真治:「うわっ! 穂香!?」

 

 

穂香:「どうしたの? 驚いちゃって。私、何か変?」

 

 

真治:「台所の明かりも付けないで、居るから驚いたよ・・・」

 

 

穂香:「ずっと考え事してたら、いつの間にか暗くなって。それでよ。そんな事より、随分と遅かったのね・・・」

 

 

真治:「・・・仕事終わりに、飲みに誘われて・・・それで・・・」

 

 

穂香:「いくらお付き合いとはいえ、連絡は欲しかった。・・・心配したのよ」

 

 

真治:「次からは気を付ける。・・・ほら、明日の映画の為にも、早く寝て」

 

 

穂香:「そうね。そうする。・・・明日が楽しみ。・・・フフフ・・・」

 

 

 

 

(1人台所で、ビールを見つめながら考える真治

 リビングにあるテレビからは、相変わらず、明るいニュースばかりが流れている)

 

 

 

 

真治(M):「穂香は何を考えてるかわからない・・・。俺は、どうやって穂香に出会ったんだ・・・?

       プロポーズの言葉も、結婚の誓いの言葉も・・・何も思い出せない・・・。どうして・・・」

 

 

 

 

(翌日の昼、穂香に連れられ、映画館に来た真治だがその顔は、あまり気乗りしてない

 それとは逆に、穂香は楽しみで仕方ない様子で、歩きながらはしゃいでいる)

 

 

 

穂香:「気持ちの良い天気! 晴れて良かったね! 真治、映画までまだ時間あるし、此処寄りたいな♪ 

    このモール、一緒に来たかったんだ。

    ねぇ、そんな所で立ち止まってないで早く来て!」

 

 

真治:「ごめん。今行く!」

 

 

穂香:「うわ~! このお店の服、素敵! 中、入りましょう!」

 

 

真治(M):「昨日の穂香とは大違いだ・・・。どっちが本当の穂香なんだ・・・?」

 

 

穂香:「ねぇ! この赤と青、どっちが似合うかな?」

 

 

真治:「青が良いかな」

 

 

穂香:「え~! こっちの赤の方が・・・」

 

 

真治:「じゃあ、赤に・・・」

 

 

穂香:「ううん。良い・・・。真治が選んだ青にする。だって、真治が気に入ったんだもん。これじゃなきゃ、駄目・・・」

 

 

真治:「なぁ、穂香。・・・自分の好きな物で良いんじゃないか?」

 

 

穂香:「え? ・・・それじゃあ、一緒に買いに来た意味ないよ。・・・ねぇ、今度は真治の服、見に行こうよ!」

 

 

真治:「あ~、俺は別に良いよ」

 

 

穂香:「駄目よ。私、コーディネートして見たかったんだから。・・・そうと決まれば、こうしては居られない。

    ・・・この服、お会計してくるね!」

 

 

 

(レジに走って向かう穂香を見ながら、1人穂香の事を考える真治)

 

 

 

真治(M):「本当に君は、俺の妻なのか・・・? 時々、執着心というか、怖く感じるのは何故なんだ・・・」

 

 

穂香:「お待たせ。やっぱ、この真治の選んだ青にして良かったよ。店員さんに、凄くお似合いですよって褒められちゃった」

 

 

真治:「良かったな。だけど、今着なくても良いだろ?」

 

 

穂香:「だって、気に入ったし早く着たかったの。どう?」

 

 

真治:「どうって?」

 

 

穂香:「感想よ。聞かせて」

 

 

真治:「大人っぽくて落ち着いてるし、良い感じだよ」

 

 

穂香:「良かった~。じゃあ、次は真治の番だよ! あっ、このお店、良い感じ。ねぇ、入ろう」

 

 

真治:「・・・」

 

 

 

(穂香に手を引っ張られ、お店に入る真治

 穂香がコーディネートする服を着て、それとなしに気に入った事を伝え

 会計を済ませ、お店を出て映画館に向かう

 真治はその間も、穂香との出会いなどを思い出そうとしている)

 

 

 

穂香:「色々悩んだけど、真治もその青にして良かったね」

 

 

真治:「あぁ。穂香が気に入ったのなら、良かった」

 

 

穂香:「・・・そろそろ映画の時間。他にも見てみたいお店あったけど、また後でかな~」

 

 

真治:「なぁ、俺達、結婚して何年目だっけ?」

 

 

穂香:「・・・何? 忘れたの? 今年で2年目よ」

 

 

真治:「結婚式はどんな感じだった? 新婚旅行は!?」

 

 

穂香:「もう。落ち着いて。結婚式は、海が見えるチャペルで、新婚旅行は、貴方の希望でイギリスに行ったじゃない」

 

 

真治:「・・・そうだった。俺ったら、物忘れが始まってるのかな~」

 

 

穂香:「それにしても忘れ過ぎよ。何か変わった事でもあった?」

 

 

真治:「別に何も」

 

 

穂香:「だったら、きっと仕事疲れよ。今日はその疲れを、ゆっくり癒して」

 

 

真治:「ありがとう。・・・そうする」

 

 

穂香:「席はオンライン予約していたから、私はチケット、発券してくるね。真治は売店で飲み物、買ってきてくれる?」

 

 

真治:「何が良い?」

 

 

穂香:「う~ん。真治が選ぶものなら何でも良い。任せたわよ」

 

 

真治:「それが一番、困るのだけど・・・。仕方ない。買ってくるか」

 

 

(穂香を見送り、売店に向かう。売店は混んでて暫く並んで待つ真治)

 

 

真治:「結構、並んでるな・・・。早くしないと穂香が戻ってきちゃうよ・・・」

 

 

間    

 

 

真治:「・・・やっとか。えっと、珈琲とオレンジジュース、ください」

 

 

 

 

穂香:「はい、チケット。飲み物は買えた?」

 

 

真治:「買えたよ。オレンジジュースで良かった?」

 

 

 

穂香:「良いよ。私、オレンジジュースって大好き♪ もうすぐ始まるから、急がなきゃ!」

 

 

真治:「あぁ!」

 

 

 

 

穂香:「何とか間に合ったね。・・・真治と久しぶりの映画、楽しみ~」

 

 

真治:「え?」

 

 

穂香:「もしかして、それも覚えてないの?」

 

 

真治:「ごめん。覚えてないや・・・」

 

 

穂香:「・・・そう」

 

 

真治:「これから観る映画は、どんな感じ?」

 

 

穂香:「記憶喪失の主人公が、ある日、ヒロインの女性に出会って、その女性と過ごしてる内に、段々と過去の事を思い出すの」

 

 

真治:「それで? その後は?」

 

 

穂香:「その後は、映画を観てからのお楽しみ。・・・って言っても、私も予告しか観てないから、

    此処までしか知らないの。さっ、始まるわよ」

 

 

 

(劇場が暗くなり、映画が始まる

 真治は、珈琲を飲みながら、暫く黙って見ていたが途中でお腹が空き思わず呟く)

 

 

 

真治:「飲み物だけじゃ、お腹が空くね・・・。やっぱ、何か食べるもの買っておけば良かった・・・」(小声)

 

 

穂香:「フフフ・・・。真治ならそう言うだろうと思って、売店でホットドッグ買っておいて正解ね。はい、真治の分」

 

 

真治:「・・・ありがとう。でも、いつの間に買ってきたんだ?」

 

 

穂香:「真治と合流する前に、買ったのよ。・・・あっ、ヒロインが登場した。

    ・・・この女優さん、やっぱ美人ね~。私もこういう顔に生まれたかったな~」

 

 

 

 

(映画に夢中な穂香と対照的に、真治は目の前にあるホットドッグを、穂香がどうやって買ったのか考えている)

 

 

 

真治(M):「売店で買っただと・・・? どういう事だ・・・。・・・この映画館には、売店は1つしかなかった。

       ・・・それなのに、俺に見られることなく、どうやって・・・? 

       俺が見落としてただけで、他にも売店があったのか・・・?」

 

 

穂香:「ねぇ、真治。この女優さんと、私、どっちが美人?」

 

 

真治:「え? その質問はちょっと・・・」

 

 

穂香:「真治の馬鹿。お世辞でも、私って言ってよ・・・」

 

 

真治:「ごめん。・・・じゃあ、逆にこの俳優と、俺、どっちが・・・」

 

 

穂香:「真治。そんなの訊くまででも無いよ。真治の方がずっと格好良い」

 

 

真治:「・・・ありがとう」

 

 

穂香:「恋愛映画って、やっぱり良いな~。真治と初めて会った時、思い出しちゃう。・・・素敵な出会いだったな~」

 

 

真治(M):「穂香の笑ってる顔は好みだ。・・・なのに、これだけ穂香の事を考えても、出会った時はおろか、

       デートした日々、結婚した時、何一つ思い出せない。・・・俺は一体、どうしたんだ・・・」

 

 

 

 

 

 

(映画を観終わり、映画館を出て、遅めのランチをしようとお店を探す穂香

 その間も、真治は穂香の事、さっきの映画館での出来事を考えている)

 

 

 

穂香:「映画、最高だったね。最後は、あんな終わり方するなんて、想像もつかなかった」

 

 

真治:「そうだな。あれは意外だった」

 

 

穂香:「でしょ。レンタルになったら、また観なくちゃ。・・・ねぇ、お腹空かない?」

 

 

真治:「そういえば、空いたな~」

 

 

穂香:「よし。お店探そう。真治は何食べたい?」

 

 

真治:「お昼の時間は過ぎちゃったし、ファミレスで良いんじゃない?」

 

 

穂香:「中途半端な時間だし、それしかないか・・・。じゃあ、さっきのモール内にあったと思うから戻ろう」

 

 

真治:「穂香は、俺の事、大好きなんだな」

 

 

穂香:「当たり前じゃない。夫婦なんだから」

 

 

真治:「当たり前か・・・。じゃあ、どんな俺でも、変わらずに愛す自身もある?」

 

 

穂香:「どういう事?」

 

 

真治:「立ち話もなんだから、続きはレストランで」

 

 

穂香:「わかったわ」

 

 

(レストランに入り、席に案内され席に着いてメニューを見る真治と穂香)

 

 

 

真治:「さてと、何、頼む?」

 

 

穂香:「私は、ナポリタンにしようかな。真治は?」

 

 

真治:「俺は、ペペロンチーノにしようかな」

 

 

穂香:「あ~、ペペロンチーノも美味しそう。私も、やっぱそうしようかな~」

 

 

真治:「仕方ないな。少し分けるから、穂香はナポリタン、頼んで良いよ。それならどっちも、食べれるだろう?」

 

 

穂香:「それもそうね。じゃあ、そうする。飲み物は何にする?」

 

 

真治:「そうだな~、アイス珈琲にする」

 

 

穂香:「わかったわ。・・・すみません、注文良いですか?

    このナポリタンとペペロンチーノ。それと飲み物はアイス珈琲と、私は・・・メロンソーダ、お願いします!」

 

 

 

 

穂香:「さてと、メニューも頼んだし、さっきの続き、聞かせて。一体、どういう事?」

 

 

真治:「穂香、驚かないで聞いて。俺には、穂香との思い出が無いんだ・・・」

 

 

穂香:「・・・え? それ本当?」

 

 

真治:「今朝からずっと考えてたけど、どうしても思い出せない・・・」

 

 

穂香:「ねぇ、それはいつから?」

 

 

真治:「え?」

 

 

穂香:「おかしいなと気付いた日よ。一体、いつから?」

 

 

真治:「一ヶ月前くらいからだと思う・・・」

 

 

穂香:「そんな前から!? どうして、もっと早くに教えてくれなかったの!」

 

 

真治:「それは・・・こんな話、いきなりしたら、穂香も驚くと思って・・・」

 

 

穂香:「だとしても、遅すぎよ! もっと早く知ってたら対処も!!!」

 

 

真治:「え? 対処?」

 

 

穂香:「いや・・・、そう、病院に行って診てもらうとか、そういう意味よ! ねぇ、他におかしいと感じた事はある?」

 

 

真治:「他に・・・。・・・あっ、そう言えば、さっきのホットドッグ。あれはどうやって?」

 

 

穂香:「普通に、売店でよ」

 

 

真治:「売店は、他の客もいて・・・、俺並んでたけど、穂香の姿は見なかった」

 

 

穂香:「・・・なんだ。それで疑ってたのか。・・・あそこの映画館は、売店が二つあるから、真治と違う売店に並んで買ったのよ。

    チケット、発券して真治の居る売店見たら、少し並んでるから、そうしたの」

 

 

 

 

真治(M):「売店が2つ・・・。あの映画館は規模が大きかったし・・・、

       やはり俺が単に見落としてただけか・・・。でも、何か腑に落ちない・・・」

 

 

穂香:「あ~、またその目、してる」

 

 

真治:「え?」

 

 

穂香:「真治って、疑ってると、目細める癖あるでしょ。それでわかったの。もう、少しは私の事、信じてよ・・・」

 

 

真治:「ごめんごめん。・・・おかしいな。疲れてるから、こんな事ばかり考えちゃうのかな?」

 

 

穂香:「きっとそうよ。今夜は、早めに寝て、体調整えてね」

 

 

真治:「わかった。そうする」

 

 

穂香:「あっ、来た来た。・・・美味しそう。ナポリタンにして良かった~!」

 

 

真治:「良かったな。穂香。・・・俺のも美味しそうだ。

    ・・・あっ、メロンソーダは、そっちに。俺は、そのアイス珈琲を・・・うわっ!」

 

 

穂香:「ちょっと真治。大丈夫!?」

 

 

真治:「平気平気。服にちょっと、アイス珈琲、こぼれただけだから・・・」

 

 

穂香:「・・・折角、私が真治の為に、頑張ってコーディネートした服なのに・・・」

 

 

真治:「穂香、どうした?」

 

 

(さっきまでの穂香と一変して、冷酷な表情で店員を見て、怒鳴りだす穂香

 それを見て、只ならぬ状況だと判断して、止めに入る真治)

 

 

 

穂香:「・・・拭いて。・・・早く拭きなさい!!!」

 

 

真治:「穂香・・・?」

 

 

穂香:「・・・この服、私がどんな思いで、彼に選んだかわかってるの!?

    ボケっとしてないで、早く拭きなさいよ!!!

    何してるの!? 早く! チッ・・・あんた、とろ過ぎ!

    それと、真治に上目遣いなんか使って、一体どういうつもり!!!」

 

 

真治:「おい、穂香。いくら何でも言い過ぎ」

 

 

穂香:「真治は黙ってて!!!!」

 

 

真治:「・・・」

 

 

穂香:「もういい。あんたじゃ埒が明かないから、ここの責任者、呼んできて。

    ほら、早く!!! ・・・もう、一体どういう教育してるのよ・・・!

    ごめんね。真治。折角の服が・・・」

 

 

真治:「これくらいなら、クリーニングに出せば、何とかなるよ。だから、穂香、落ち着いて」

 

 

 

穂香:「クリーニング・・・。・・・汚れは落ちても、真治との思い出に泥を塗られたのは、変わらない・・・。

    まぁ、良いわ。今は許してあげる。・・・そう。今だけは・・・」

 

 

真治:「・・・穂香、何を言ってるんだ?」

 

 

穂香:「何でもない。真治は気にしなくて良いよ。私に全部任せて。気にせず、冷めない内に食べて」

 

 

真治:「あぁ。穂香が、そう言うなら・・・任せる」

 

 

穂香:「うん」

 

 

(食事を後にした穂香と真治は、家に帰宅して、夕飯までゆっくりしている)

 

 

穂香:「ただいま~。今日は少し、トラブルもあったけど楽しかったね。

    あっ、クリーニングにだしとくから、さっきの服、出しておいてね」

 

 

真治:「わかったよ」

 

 

穂香:「ねぇ、夕飯は何が食べたい?」

 

 

真治:「穂香に任せるよ」

 

 

穂香:「それじゃ、困る~。ちゃんと食べたい物、言って」

 

 

真治:「じゃあ、和食が良いな」

 

 

穂香:「オッケー。じゃあ、私、これから買い物に行ってくるから、真治はゆっくりテレビでも見て休んでて」

 

 

真治:「気を付けてね」

 

 

穂香:「わかってるわよ。・・・フフフ」

 

 

 

 

真治(M):「レストランでの穂香。あきらかに可笑しかった・・・。それにあの店員の女性、何か見覚えがある・・・。

       でも変だ。俺はあのレストランに行くのは初めてだ。なのに、どうして・・・?」

 

 

 

(リビングで暫くTVを観ていると、ふと、庭の桜が目に入った

 その桜は、だいぶ下に桜の花びらが散っていた)

 

 

 

真治(M):「庭の桜、少し散り始めてるな・・・。暴風が吹いてたし、その影響もあるのか・・・。

       それにしても、相変わらず、どのチャンネルのニュースも平和な話題ばかりだ。

       世の中、こんなに平和だったか・・・?」

 

 

 

(色々、考えてる内に穂香が買い物を終えて、帰ってくる)

 

 

 

穂香:「ただいま」

 

 

真治:「おかえり」

 

 

穂香:「じゃがいもが今日は特売で安かったの。真治、肉じゃがも好きよね?」

 

 

真治:「あぁ。・・・それにしても、少し買い過ぎじゃない?」

 

 

穂香:「ウインナーも特売してたし、別の日にジャーマンポテトも良いかなって」

 

 

真治:「それなら買い過ぎても仕方ないな・・・。許す」

 

 

穂香:「真治ならそう言うと思った♪ あっ、ちゃんとビールも買ってるからね」

 

 

真治:「ありがとう」

 

 

穂香:「フフフ・・・。・・・もう、また、ニュースなんて観てたの?」

 

 

真治:「他に観るものなくて・・・。なぁ、穂香。毎日、明るい話題ばかり流れるのって、可笑しくないか?」

 

 

穂香:「何言ってるのよ。それだけ、平和って事でしょ。平和なのは良い事じゃない」

 

 

真治:「それもそうか・・・」

 

 

穂香:「な~に? また考え事?」

 

 

真治:「いや、何でもない」

 

 

穂香:「そう。じゃあ、急いで支度するから、リビングでくつろいでて~」

 

 

真治:「あぁ」

 

 

(黙々と夕食の準備を始める穂香 それを後ろから、黙って見つめる真治

 穂香は笑顔で料理を作っている。その姿を見ながら、考える真治)

 

 

 

 

 

 

穂香:「よし。下準備はこれくらいかな~。後は、お鍋を用意して~」

 

 

真治(M):「穂香の言った対処という言葉・・・。何か気になる。・・・やはり、もっと聞いとくべきだったか・・・。

       でも、聞いたところで、穂香はさっきのように誤魔化すだけか・・・」

 

 

穂香:「ねぇ、真治。さっきから黙って見つめてるけど、どうしたの?」

 

 

真治:「え? 何でわかったんだ?」

 

 

穂香:「もう、そんなに穴が開くほど、見つめられたら、こうして背中向けて、料理してても気配でわかるわよ・・・。何か用?」

 

 

真治:「別に。ただ、穂香を見てただけだよ。悪いか?」

 

 

穂香:「別に悪くないけど、何か気になっちゃった。・・・もう少しで準備出来るから」

 

 

真治:「あぁ、楽しみにしてる。なぁ、俺達さ、別々の部屋じゃなくて、一緒の部屋にしないか? ほら、夫婦だし」

 

 

穂香:「またその話? お互いのプライベートもあるし、別々の部屋にしようって、先に言ったのは真治でしょ」

 

 

真治:「そうだったけ・・・?」

 

 

穂香:「もう・・・。幾ら何でも忘れ過ぎよ・・・」

 

 

真治:「ごめん・・・」

 

 

 

 

穂香:「お待たせ。準備は出来たし、夕飯にしましょう。今夜の肉じゃがは自分で言うのもなんだけど、自信作なんだから」

 

 

真治:「それは、心して食べなきゃな。いただきます」

 

 

穂香:「召し上がれ。・・・味はどう?」

 

 

真治:「・・・確かに自信作っていうだけあるな。味が染みてて美味しいよ」

 

 

穂香:「良かった・・・。おかわりもあるから、一杯食べてね♪」

 

 

真治:「うん」

 

 

 

 

穂香:「あ~、美味しかった~」

 

 

真治:「ご馳走様。さてと、俺は少し、書斎で明日の仕事の資料作りするから、洗い物だけど・・・」

 

 

穂香:「大丈夫よ。そこに置いておいて。少し休んだら、洗うから。お仕事、頑張ってね」

 

 

真治:「ありがとう。穂香」

 

 

(真治が書斎に行くのを確認した後、一人、台所からリビングに移動して、庭の桜の木を見つめる穂香)

 

 

 

穂香:「真治。今日の肉じゃが、凄く気に入ってくれてた・・・。この味付け、忘れないようにしなくちゃ・・・。

    あっ・・・庭の桜、少し散り始めてる・・・」

 

 

穂香:「・・・対処、しなくちゃ駄目ね・・・フフフ・・・」

 

 

 

(翌日の朝、真治はいつものように目が覚め、仕事に行く準備をする

 準備を終えて、台所に向かうと、穂香が朝食の用意をしていた)

 

 

 

ニュースキャスター:「おはようございます! 今朝の気温は13度と過ごしやすい陽気になっております。

           桜も開花して、すっかりお花見シーズン到来って感じです!

           さて早速、今朝の入って来たばかりのニュースをお届けします!」

 

 

 

 

真治:「おはよう。穂香。・・・今日の朝食は何?」

 

 

穂香:「おはよう。真治。今日の朝食は、マフィンとベーコンエッグよ。う~ん、今日も良い天気。庭の桜が満開で綺麗・・・」

 

 

真治:「え? 満開・・・?」

 

 

穂香:「ほら、見て。こんなに満開♪ 綺麗よね・・・。この美しさは、いつ見ても変わらないわ・・・。

    ねぇ、真治。今度の休みはお花見に行きましょう!」

 

 

真治:「ちょっと待ってくれ穂香。・・・満開なはずないだろ・・・」

 

 

穂香:「もう、真治ったら何言ってるのよ。間違いなく満開よ」

 

 

真治:「昨日の夜、見た時は確かに、桜は少し散り始めてた・・・。一体、何が起こってるんだ・・・」

 

 

穂香:「それ、ただの見間違いでしょ。もう、そんな事言ってたら、また遅刻するわよ。折角の朝食も冷めちゃうし、早く座って」

 

 

真治:「穂香。・・・何か俺に隠して無いか?」

 

 

穂香:「隠すって何を? くだらない事言う暇あったら、早く食べて」

 

 

真治:「・・・嫌だ。・・・明らかに何か可笑しいよ。散ってた桜が満開になるわけない・・・。

    それに、どうして毎日、明るい話題のニュースばかりなんだ!?

    ただ平和なだけ・・・? そんなはずが無いだろ!」

 

 

穂香:「真治・・・」

 

 

真治:「そう言えば、何で俺達、夫婦なのに、部屋は別々なんだ・・・?」

 

 

穂香:「それは、真治のいびきが五月蠅いから、私の為に、部屋を別々にしたんじゃない・・・。忘れたの?」

 

 

真治:「俺のいびきの為?・・・そんなのも覚えてない。・・・前から気になってたんだ。

    ・・・俺、穂香の部屋に入った事が無い・・・」

 

 

穂香:「それは、昨日も言ったけど、お互いのプライバシーの為に・・・」

 

 

真治:「幾ら何でも、可笑しいだろ・・・。まさか、何か隠してるんじゃ?」

 

 

穂香:「別に何も隠してない!」

 

 

真治:「だったら、入っても良いよな・・・!」(そう言うと、2階の穂香の部屋に走り出す)

 

 

穂香:「あっ! 真治、待って! 待ちなさい!」

 

 

 

(穂香の部屋に勢いよく、入る真治

 次の瞬間、目の前が真っ暗になり、強烈な頭痛が真治を襲う

 その痛みがおさまり、明るくなると、そこは見知らぬ部屋

 部屋の中には、沢山のパソコンと何か計器のような物が置かれている

 そして見知らぬ女性が数名、その計器と装置のような物に繋がれてるのが見える

 その計器や装置は、真治の体にも繋がれている)

 

 

 

真治(M):「此処が穂香の部屋。中に一体、何を隠してるんだ!?

       くそっ、躊躇してたら穂香が来る。だけど、何が起こるかわからない・・・。

       このままも嫌だし・・・こうなりゃ、やけだ! ええい!」

 

 

 

真治(M):「あれ? 普通の部屋・・・。俺の考えすぎか・・・。・・・なんだ! 部屋の明かりがいきなり消えた!?

       それに、急に頭痛が・・・! ぐわああああああああ!!!!」

 

 

 

穂香:「真治!!! 間に合わなかった・・・。くそっ! この手だけは使いたくなかったけど・・・仕方ない!」

 

 

 

真治:「・・・此処は? 俺は穂香の部屋に入って・・・目の前が急に真っ暗になって、頭痛がして・・・。

    はっ、何だこの計器とパソコンは!? それに、この女性達はなんだ? 装置に繋がってる・・・。

    ・・・俺の体にもだ・・・。何なんだこれは・・・」

 

 

 

 

(装置に繋がってる女性の1人を見ると、見覚えがあるのに気付く

 近付くと、その女性はあのレストランで働いてた店員だった

 大丈夫かと声をかけようとして近付くが

 その女性は既に死んでるのを知って驚く真治

 その様子を見ながら、白衣を着た女性がパソコンで作業をしている)

 

 

 

真治:「あの女性、見覚えが・・・。そうだ・・・! あのレストランでの店員だ! ・・・おい? そこの君、大丈夫か?

    ・・・うわっ!!! ・・・嘘だろ。・・・死んでる・・・」

 

 

白衣を着た女性:「その女性だけど、もう死んでるわよ」

 

 

真治:「・・・おい。此処は一体何処なんだ? 俺達に何したんだ・・・? この女性は何で死んでるんだ!?」

 

 

白衣を着た女性:「一度に質問しないで。・・・その女性は、貴方にあんな事をしたんだから、死んで当然よ」

 

 

真治:「もしかして・・・お前、穂香なのか?」

 

 

(真治の問いかけに、穂香とは似ても似つかない眼鏡をかけた地味な女性は、自分が穂香だと答える)

 

 

穂香:「・・・そうよ。貴方の妻の穂香よ!」

 

 

真治:「どういう事だ!? 声は似てるけど、姿は別人じゃないか・・・!」

 

 

穂香:「それは・・・あなた好みの顔、体型にしたんだから、当然よ。

    ・・・現実の私じゃ、どれだけ頑張っても、貴方は見向きもしないんだもの・・・」

 

 

真治:「現実? じゃあ、今までのは・・・?」

 

 

穂香:「私が作り出した、VRの世界・・・。もっとわかりやすく説明するなら、仮想世界って物ね。どう? 快適だったでしょ?」

 

 

真治:「快適だっただと・・・。ふざけるな! こんなの勝手にしやがって! 犯罪じゃないか!」

 

 

穂香:「あっはははは!」

 

 

真治:「何が可笑しいんだ?」

 

 

穂香:「だって、真治ったら凄く正義ぶってんだもん。可笑し過ぎよ。

    ・・・現実なんて、欺瞞や嘘、それに暴力、犯罪で溢れてるじゃない!

    そんな世界の何処が良いのよ! 私はずっと不満で一杯だった。

    ・・・この容姿もそうだし、周りの人達もみんなみんな、どいつも自慢や、自分の為なら利用する奴等ばかり。

    本当、全員、消えてしまえば良いと思ってた!」

 

 

真治:「だからと言って、消すことなんて不可能だろう!?」

 

 

穂香:「現実ではね・・・。悔しいけど、私のこの頭脳を持っても無理だった・・・。

    だから発想の転換をしたの。・・・現実が駄目なら、バーチャルがあるじゃないって」

 

 

真治:「まさか・・・」

 

 

穂香:「ええ。結果はこの通り。真治・・・。貴方も体験したでしょ? 私の考えは大成功!

    今や、日本の住民、全てがこのバーチャルシステム、アルテミスの虜となったわ」

 

 

真治:「日本中だって、不可能だ! どうやって!?」

 

 

穂香:「簡単よ。此処、とある電気製品会社なのよね。・・・そこの私の研究施設。

    そして、私が開発したバーチャルシステムは、初めは、反論もあったけど・・・、

    少しずつ賛同者も増えて、段々と、利用者も増えて言ったわ。

    そうしてく内に、反論する人もいなくなり・・・今に至るってわけ。

    まっ、決定的だったのは、議員の一人が偉く気に入っちゃって、

    チャンスだと思い、猛プッシュしたら、案の定、虜になっちゃって・・・。

    資金面も援助してくれて、大量生産が可能になったからかしら。

    そのおかげで、今の私は・・・皆を導く、月の女神よ!

    何でも私の思い通りに出来るのよ!!! あっはははは!!!!」

 

 

 

真治:「自分の思い通りにだろ・・・。この狂った月の女神め・・・」

 

 

穂香:「あら? それは違うわ。・・・皆、幸せそのものよ。ほら、モニターを見て、皆こんなに笑顔で一杯♪」

 

 

真治:「偽りの笑顔だ」

 

 

穂香:「それでも幸せなら、それが現実になるわ。私のこのアルテミスが、それを可能にしたのよ!

    まぁ・・・真治みたいに、何かしらのエラーが起きて、記憶が消えてしまうのは誤算だったけど・・・。

    今後のアップデートの良い参考になったわ。ねぇ、何か質問ある?」

 

 

真治:「この女性達は、俺と関係あるのか!?」

 

 

穂香:「知りたいの? どうしようかな~」

 

 

真治:「ふざけてないで、教えろ!」

 

 

穂香:「フフフ・・・。後悔しても知らないんだから。・・・その女性達はね・・・。

    真治、貴方の今まで付き合ってた彼女よ」

 

 

真治:「何だと・・・!?」

 

 

穂香:「更に付け加えると、そこで死んでる女性は・・・、現在、付き合ってる彼女さんでした~」

 

 

真治:「まさか・・・。そんな・・・嘘だ・・・!」

 

 

 

穂香:「嘘じゃないわよ。ほら、モニター観て。どう? 貴方とその彼女が、楽しそうにしてるでしょ。

    ・・・本当、何度見てもムカつくし、また殺したくなる・・。

    何度でも甦らしては・・・刺殺、絞殺、毒殺、色々と試したわ!

    その度に、貴方の彼女は、泣いて命乞いして醜かった~! 真治にもその姿、見せたかったな~!」

 

 

真治:「・・・」

 

 

穂香:「あ~あ、もう、ネタばらしもしたし、このデーターもみんな消去して良いよね!?」

 

 

真治:「ふざけるな・・・」

 

 

穂香:「あら? 私は本気よ。・・・こんなデーター、一欠けらも残してたくないの・・・。・・・みんな消さなきゃ」

 

 

真治:「そんな事、させない・・・」

 

 

穂香:「今の貴方に何が出来るっていうの?」

 

 

真治:「殺してやる・・・!」

 

 

穂香:「やれるものなら、やってみなさいよ! ほら、早く!」

 

 

真治:「・・・くっ、何で手が動かない・・・」

 

 

穂香:「さぁ、どうしてでしょう・・・」

 

 

真治:「くそっ! 動け! 動けよ! 動きやがれ!!!」

 

 

穂香:「・・・気が済んだかしら?」

 

 

真治:「一体、俺の体に何したんだ!?」

 

 

穂香:「簡単よ~。・・・此処はね、現実じゃなくて、まだ私の作ったバーチャル空間の1つよ。

    ・・・まんまと騙されて可笑しい!」

 

 

真治:「そんな馬鹿な事が・・・」

 

 

穂香:「あるんだよね~! これが! ・・・わかったでしょ。私を殺すなんて、貴方には到底、無理なのよ!」

 

 

真治:「くそおおおおおおおっ!!!! 此処から出せえええええ!!!」

 

 

穂香:「駄~目・・・。私は、貴方の事を、初めて見た時から好きだったの・・・。

    そして、手に入れたくて、手に入れたくて、仕方なかったの!

    それがこうしてやっと叶ったのに・・・、手放すわけないでしょ?」

 

 

 

真治:「お前との事なんて、覚えてない!!!」

 

 

 

穂香:「そりゃそうよ。貴方は、綺麗な女性ばかり目に入ってたんだから。

    私みたいな眼鏡で地味な女性なんて、覚えて無くて当然だわ・・・

    だからこそ、このバーチャルの中では、貴方が好む、容姿にしたの。

    そして、貴方が好きな物を、好きになろうと努力したわ」

 

 

真治:「それで、全てが納得したよ・・・。・・・お前はただの中身が空っぽの人形だ!!!」

 

 

穂香:「それも全部、貴方の為よ!!! ・・・まぁ、それも頑張ったけど、疲れちゃった・・・。

    だから今度は、真治に私の好きな事や物を、沢山インプットしてあげる・・・。その方が、私も楽だし」

 

 

真治:「そんな事されても、俺はまた思い出す・・・。必ず・・・。何度でも・・・」

 

 

穂香:「それは楽しみ・・・。そうなったら、その度にまたアップデートしてあげる。

    さぁ、戻る時間よ。平和な世界へ。また、あっちでね。・・・真治」

 

 

真治:「くっ・・・。・・・こんな世界、・・・俺は・・・絶対に・・・認めない・・・」

 

 

 

(穂香がパソコンの操作をすると、目の前から、真治が消え始め、やがて、穂香一人だけになる)

 

 

 

穂香:「さてと、このバグを調べて・・・アップデートしなくちゃ。

    ・・・もう少し様子を見て、頃合いが来たら、今度は世界中に、このアルテミスを普及させるわ。

    ・・・その為には、バーチャル空間と現実をわからなくなるように、何か手を考えなきゃ・・・。

    大丈夫。私ならそれもきっと可能よ・・・。だって私は、月の女神なんですから!」

 

 

 

 

 

 

穂香:「ふ~。もうこんな時間。そろそろ真治の元へ戻らなくちゃ・・・」

 

 

 

(再び真治のいるバーチャル空間に戻る穂香

 そして、当たり前のように、朝食の準備をしだす

 暫くして仕事の用意をし終えて、台所へ来る真治)

 

 

 

ニュースキャスター:「おはようございます! 今朝の気温は13度と過ごしやすい陽気になっております。

           桜も開花して、すっかりお花見シーズン到来って感じです!

           さて早速、今朝の入って来たばかりのニュースをお届けします!」

 

 

 

穂香:「今日のお味噌汁は、真治の好みになったわね。あっ・・・そろそろかな~」

 

 

真治:「おはよう。穂香。今日の朝食は何?」

 

 

穂香:「おはよう。真治。今日は焼き鮭に、出汁巻玉子、それと真治好みのお味噌汁よ」

 

 

真治:「それは楽しみだ。いつもありがとう。穂香」

 

 

(理想の真治を見て答える穂香

 庭の桜を見て悪魔な笑みを浮かべる)

 

 

 

穂香:「真治の為だもん。当然よ。・・・ねぇ、見て。・・・庭の桜が今日も満開で綺麗・・・。フフフ・・・フフフフフ・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

終わり