Over and over 後編
作者：ヒラマ コウ
登場人物
ダニエル・ダグラス：地球によく似た星の開発を、複数の無人ロボットと一緒に１人で行っている。
ダニエルＡ：ダニエルの前に現れたダニエルそっくりの人物。
比率：【１：０】
上演時間：【２０分】
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ダニエル：
ダニエルＡ：
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（確認作業を終え、一旦部屋に戻るダニエルとダニエルＡ、そして１時間後、先にコミュニティールームに来るダニエル）
ダニエル：（Ｍ）「あいつはまだ来てないのか。それにしても通信機はなんで動かないんだ。
残された日にちも少ないと言うのに・・・。
とにかく時間が無いんだ。明日こそ、原因を見つけないと。
駄目だ・・・。何か心を落ち着かせなければ・・・」
（コミュニティルームに置いてあるＣＤで曲をかけ、ソファーに腰を下ろしそっと目を瞑るダニエル、
そこにやってくるダニエルＡ、同じように腰をソファーに下ろす）
【ＢＧＭ：バッハ、Ｇ線上のアリア】
ダニエル（Ｍ）：「心が落ち着く。嫌な事を忘れるには、これが一番だ。地球の皆は、元気でいるんだろうか・・・」
ダニエルＡ：「バッハのＧ線上のアリアか。名曲だよな。心が落ち着いてくる。やっぱ、お前も俺なんだな」
ダニエル：「あぁ、そうだ。お前と同じ血が流れてる」
ダニエルＡ：「この曲を聴くと、思い出さないか。地球での出来事、仲間をさ。本当懐かしいよな・・・」
ダニエル：「そうだな・・・。みんな、どうしてるんだろうな。心配とかしてないと良いんだが・・・」
ダニエルＡ：「そうだな・・・。通信機も壊れて、心配してるかもしれないな。
地球との時差は１０年・・・。
戻る頃には、１０歳もみんな年上だ。そう考えるとなんだが、寂しいよな・・・」
ダニエル：「あぁ・・・。だけど、この仕事は望んで引き受けたんだ。
だけど、思わぬトラブルで達成できないのが悔しい・・・」
ダニエルＡ：「今回のこの状況は、予想は出来なかったんだ。そんなに悲観しなくても良いさ」
ダニエル：「俺達を見て、みんなはどう思うだろうな」
ダニエルＡ：「そりゃあ、最初は驚くだろうな。だけど、きちんと話せばわかってくれる。
上手く行けば俺達、有名人になれるかもな！」
ダニエル：「能天気だな。だけど・・・それも悪く無い」
ダニエルＡ：「だろ！ 会社の連中とは戻ってからも、何かと喧嘩になるかもしれないが、
俺はお前と一緒なら上手く行く気がするんだ」
ダニエル：「どうしてだ？」
ダニエルＡ：「ちゃんと考えろよ相棒。俺達は世間で言う双子より、考えてる事がわかるんだ。
俺達２人がいれば、どんな窮地に陥ってても、乗り越えれるさ」
ダニエル：「その為には・・・まずは、お互い信じる事から始めないとな。相棒」
ダニエルＡ：「あぁ、その通りだよ。相棒。
悪い・・・なんだか眠くなってきた。
少し寝かせてくれ。起きたら一緒に夕食食べよう・・・」
ダニエル：「そうだな。俺もなんだか、凄く眠い・・・」
（心地よい音楽のせいか、眠ってしまうダニエルとダニエルＡ、そして２時間が経過して、空腹で先に起きるダニエルＡ、
だがそこには信じれない光景が待っていた。）
ダニエルＡ（Ｍ）：「ん・・・あれから何時間寝たんだ・・・。お腹が空いて死にそうだ・・・。
早くあいつを起こして・・・。
おい・・・。これは何の冗談なんだ・・・。まさか、寝てる間に・・・！？
嘘だろ、さっき約束して、こんな事するのか？
信じようって思ってたのは、結局、俺だけだったって事か・・・」
ダニエルＡ：「おいっ！ 早く起きろ！」
ダニエル：「ん・・・俺も寝てたのか・・・。今何時だ・・・？」
ダニエルＡ：「そんな事はどうでも良いんだ！ これは一体どういう事だ！」
ダニエル：「何を一体叫んでるんだ・・・？」
ダニエルＡ：「この野郎！ 恍（とぼ）ける気か！？ そこに散乱してる物は何だって聞いてんだ！」
ダニエル：「まったく騒がしい奴だな。散乱してる物って・・・。おい、これは何の冗談だ・・・」
ダニエルＡ：「冗談！？ よくもそこまで、白を切れるもんだ！ これはお前の仕業なんだろう！
お互いを信じる事から始めないとな・・・。よくもまぁ、さっきは言えたもんだな！」
ダニエル：「待て！？ 俺はやってない！ 寝てる間に何が起きたって言うんだ・・・」
ダニエルＡ：「この散乱してる固形バーが動かぬ証拠だろうが！ 一気に３本も食うとは、
どんな神経してるんだよ！ お前は！！！」
ダニエル：「冷静になって考えてみろ。俺はお前と同じで、さっきまで寝てたんだ。こんな事が出来るわけないだろ！
他の誰かが、俺達を嵌めようとしてるのかも知れない・・・」
ダニエルＡ：「他の誰かって誰だよ！ おい！ いるなら出てこい！！！ なっ、俺達以外は誰もいない！
それに、先に起きれば出来るさ。あれから２時間も経ってるんだからな！
俺は、正直ガッカリした・・・！ お前の事、信じようって思ってたのによ！
その矢先に、こんな裏切りが待ってるなんてな！！！」
ダニエル：「あぁ、そうかよ！ じゃあ、言わせてもらうがな。お前こそ、食べたんじゃないのか！？
作業終わる時、腹が減ったって騒いでただろうが！ 我慢できずに、食べたんじゃ無いのか？
俺が寝てるのを良い事によ！」
ダニエルＡ：「俺が食べるわけないだろ！ お前本当、頭どうかしてんだな！ 流石俺のクローンだ！
死んで、もう一度会社の連中に、作り直してもらったらどうだ？」
今度は本物の俺みたいに、頭が良くなるようによ！」
ダニエル：「お前こそ、死んでクローンになったらどうだ？ そしたら、そのキレ易い性格も少しは真面になるだろうよ！
なぁ、喧嘩してる場合じゃないんだ・・・。少しは落ち着いて考え・・・」
（ダニエルの言葉を聞かずに、ついに殴ってしまうダニエルＡ）
ダニエルＡ：「はぁ、はぁ、はぁ・・・。あぁ、清清した！ そうだよな・・・。結局、可愛いのは自分だけって事だよな！
お前がその気なら、こっちにも考えがある！ 精々、楽しみにしてるんだな！」
ダニエル：「痛ぅ・・・。おい！ 待ちやがれ！ まだ話は終わって無いだろうが！！！」
ダニエルＡ：「もうお前と話す事は何もない！ 覚悟しておくんだな！ 最初に始めたのは、お前なんだ！
この戦争、受けて立ってやるよ。じゃあな！」
（コミュニティールームを後にするダニエルＡ、１人残されたダニエル、部屋にはリピートされてるＧ線上のアリアが流れている）
ダニエル（Ｍ）：「何が起きったって言うんだ・・・。あいつは、俺を最初から生かす気がなかったって言うのか？
駄目だ駄目だ！ 俺までこんな考えでは、２人共死ぬだけだ・・・。
あいつ、一体これから何する気なんだ・・・。
とにかく、食糧庫の錠前は、厳重にした方が良さそうだな・・・」
（不安を残しつつも、食糧庫の鍵を厳重にした後に、自室に戻るダニエル
そしていつの間にか寝てしまったが、深夜に何かの物音で目が覚める）
ダニエル(Ｍ)：「ん・・・何の音だ・・・？ 何かを叩いてる音・・・？ 今度は何が起きてるんだ・・・？」
ダニエルＡ：「はぁ、はぁ・・・。畜生！ あの野郎！ 鍵をかけやがったな！ そっちがその気ならこうだ！！！
頑丈な鍵だな・・・。だが、もう一息だ！ おらっ！」
(ダニエルＡの何度もの強打に負けて、ついに食糧庫の鍵が壊れた)
ダニエルＡ：「手子摺らせやがって・・・。これで、此処の食料は、俺の物だ！」
ダニエル：「そこで何をしている！ お前、気は確かなのか？」
ダニエルＡ：「これは、これは、遅い到着で。気は確かかだって？ じゃあ、答えてやるよ。あぁ、気は確かだ！」
ダニエル：「とてもそうには思えない。まずは、その手に持っているスパナを、床に置くんだ」
ダニエルＡ：「あぁ、これが怖いのか。それもそうだよな！ こんな物で頭殴られたら、大怪我じゃ済まないよな！」
ダニエル：「そうだ・・・。お願いだ。もう一度、冷静になって話し合おう」
ダニエルＡ：「冷静になって何を話すんだよ！ そんな事はどうでも良い！ 俺は腹が減って気が狂いそうなんだ！
邪魔をするってんなら、間違えて・・・お前の頭に、このスパナ振り下ろすかもな！
わかったんなら、さっさとそこをどきやがれ！」
ダニエル：「言われた通りにする・・・。ただし、条件がある」
ダニエルＡ：「この期に及んで条件だと？ お前、自分の立場が、わかってるのか？」
ダニエル：「あぁ、わかってるさ。俺は・・・お前のクローンだし、お前は本物だ・・・」
ダニエルＡ：「その通りだ。良いぞ、続けろ」
ダニエル：「ここの食料は残り僅かだ。本当なら、均等に分け合いたい物だが、それも無理そうだ・・・。
だから・・・６０と４０くらいで、手を打たないか？」
ダニエルＡ：「俺が６０で、お前が４０？」
ダニエル：「そうだ。悪くない条件だろ？」
ダニエルＡ：「あぁ、そうだな。だけど、それじゃ駄目だ！ そうだな、俺が７０で、お前が３０。これならどうだ？」
ダニエル：「その条件を飲めば、無茶な事はしないんだな・・・？」
ダニエルＡ：「あぁ、約束だ」
ダニエル：「わかった・・・。その条件で良い」
ダニエルＡ：「物分かりが良くなったな。・・・相棒」
(食糧庫の残りの食料を７０と３０で分け合うダニエルとダニエルＡ)
ダニエル：「これで良いな？」
ダニエルＡ：「あぁ、この俺の食料は、自分で管理する」
ダニエル：「此処に置いておけばいいだろう？」
ダニエルＡ：「勘違いするんじゃない！ まだお前を信用した訳じゃない！」
ダニエル：「じゃあ、明日からの作業はどうするんだ？」
ダニエルＡ：「そうだな。時間を決めて、お互い１人で作業するのはどうだ？
悪いが・・・お前と一緒に作業なんて、ごめんだからな！」
ダニエル：「それだと、作業に遅れが出るかもしれない。無茶を言うんじゃない！」
ダニエルＡ：「無茶か・・・。そんな物やってみないとわからないだろう！ 言っておくがな、作業の時間も公平じゃないんだ！
精々、頑張りなよ！ 相棒！」
ダニエル：「どういう意味だ？」
ダニエルＡ：「俺は正午から２時までの２時間。お前はその後、夜の９時までだ！ これから毎日な！」
ダニエル：「７時間だと！ それはいくら何でも、無茶過ぎるだろ！」
ダニエルＡ：「反論は認めない！ これはもう決めた事だ！
じゃあ、そういう事だから、明日から宜しくな！ 相棒！」
(そう言って食糧庫を出ていくダニエルＡ、その場で呆然とするダニエル)
ダニエル(Ｍ)：「どうすれば良いんだ・・・。誤解を解くには、真実を見つけるしかない・・・。
しかし、どうやって・・・？」
（翌日、ダニエルの部屋前）
ダニエルＡ：「おい！ いつまで寝てやがる！ お前の作業の時間はとっくに始まってるぞ！
さっさと着替えて、行きやがれ！」
ダニエル：「冷静になるんだ・・・。俺は本当に、食料を独り占めしてない・・・」
ダニエルＡ：「そんな謝罪、信用できるわけないだろ！ 本当に独り占めしてないと言うなら、証拠を見せろ！
そしたら、信用してやる！」
ダニエル：「それは・・・」
ダニエルＡ：「どうした？ 早くお前がやってない証拠を見せろ」
ダニエル：「今は証拠はない・・・。だけど！ 必ず証拠は見つけて証明する。だから少し時間をくれ・・・」
ダニエルＡ：「今日中だ。明日の朝には俺に証拠を見せろ！ それ以上は待たない。良いな？」
ダニエル：「・・・わかった。約束は必ず守る・・・」
ダニエルＡ：「話は終わりだ。作業にちゃんと行けよ。じゃあまた明日な」
ダニエル：「あぁ・・・。期限は一日・・・。グズグズしてる暇はない・・・。
まずは、コミュニティルームからだ・・・」
（コミュニティルーム）
ダニエル（M）：「俺は昨夜・・・ここでダニエルと一緒に、Ｇ線上のアリアを聴きながら、談笑してて、気付いたら眠っていた。
そして、ダニエルに起こされた時には、固形バーは、食べ散らかしてあった・・・。
どう考えてもおかしい・・・！ この施設には俺とあいつしかいないはず・・・。
他に考えれるとしたら・・・。あいつが、俺に嘘をついて、初めから計画をして・・・。
でも、いくら食料を欲しいからといって、あそこまでするか・・・？
なにかがおかしい・・・。あの不自然な眠気も気になる・・・。
催眠ガスも考えられるが、一体誰が何のために・・・？」
間
ダニエル（M）：「コミュニティルームを、くまなく調べたが異常は見られない・・・。
他に考えれる場所はあいつが言ってた部屋か・・・。
昨夜の事と、消えた医療ポッドは、関係あるのか・・・？」
（医療ポッドがあったらしき部屋）
ダニエル（M）：「この部屋だよな・・・。やはり何もない・・・。やはり、あいつが言ってる事は嘘なのか・・・？
それとも、どこかに何か仕掛けが・・・？
ん・・・？ この床のタイル・・・。ここだけ、何か違和感があるな・・・。
この隙間にナイフを差し込めば、タイルを剥がせるかもしれないな」
間
ダニエル：「よし！ 隙間にナイフが入った。後は、てこの原理で・・・」
（その時に施設全体と部屋の床が急に物凄い音と共に振動し始めた。）
ダニエル：「おいおい・・・。これは何かやばくないか・・・？
一旦、この部屋から出よう！」
ダニエルＡ：「この揺れはなんだ！？ お前一体何をしやがった！？」
ダニエル：「俺もわけがわからない・・・。とにかくここは危険だ・・・。部屋から出るぞ！」
ダニエルＡ：「嘘だろう・・・！？ 部屋のドアがどんどん遠ざかっていく・・・。どうなってやがる・・・？
ダニエル：「いや、違う！ この床が下降しているんだ。どんどん下に降りてくぞ。どこまで行くんだ・・・？」
（下降途中で見えた光景に驚くダニエル２人）
ダニエルＡ：「冗談じゃないぞ・・・。これは本当に現実なのか・・・？
俺が沢山いる・・・。１人、２人なんてもんじゃない・・・。
この医療ポッドらしき中に眠ってる俺は１００人以上・・・」
ダニエル：「これは何かの悪夢なのか・・・？ お前の言ってた医療ポッドってのは、これの事か？」
ダニエルＡ：「よく覚えて無いが恐らく・・・。どうやら、着いたようだぞ・・・」
（床が止まり、着いた先の空間には無数の医療ポッドと中心にコンピューターらしき制御装置とモニター）
ダニエル：「あれは制御装置・・・？ モニターもあるな・・・。とにかく近づいてみよう」
ダニエルＡ：「あぁ・・・」
間
ダニエルＡ：「おい、動かせるのか・・・？」
ダニエル：「わからないな・・・。キーボードもあるし、なんとかなるだろう・・・」
（キーボードをいじってる内にあるプロジェクトのファイルを見つける）
ダニエル：「これは・・・」
ダニエルＡ：「Ｄ・プロジェクト・・・。これがどうしたんだ・・・？」
ダニエル：「何か気になるんだ・・・。開いてみるぞ・・・」
ダニエルＡ：「大丈夫なのか・・・？」
ダニエル：「わからない・・・。でも、何かこの施設の手掛かりがわかるかもしれないんだ。
開くぞ・・・」
（エンターを押して、ファイルを開くとそこにはＤ・プロジェクトの詳細が書かれていた）
ダニエル：「読むぞ。Ｄ・プロジェクト。このプロジェクトは、我社ＦＴＥの一大プロジェクトであり極秘事項である。
被験者ＮＯ.０００１、ダニエル・ダグラス。かの被験者のクローンを生成、大量生産し、近未来での
この星での労働力になりえるか、この星の施設において、実験を行う。
なお、実験内容を毎日記録をし、なにか不備があったときは、クローンを処分し、
新たなクローンを使い、実験を繰り返す・・・」
ダニエルＡ：「クローンを処分・・・」
ダニエル：「続きがある。なお、何らかの予想外の出来事により、クローンがこの計画を知った場合は、
本社の秘密工作部隊が施設を完全消去する・・・」
ダニエルＡ：「おい、完全消去ってどういう事だよ・・・！」
ダニエル：「これは・・・？」
ダニエルＡ：「他に何を見つけたんだ？」
ダニエル：「動画のようだ。昨日の日付になってる・・・。ひょっとして！？」
ダニエルＡ：「昨夜の出来事の犯人が・・・」
ダニエル：「あぁ、わかるかもしれない。再生するぞ」
ダニエルＡ：「あぁ・・・」
間
ダニエル：「やはり昨日のコミュニティルームの様子だ・・・。俺とお前は寝ているな」
ダニエルＡ：「本当だ・・・」
ダニエル：「ん？ 今入ってきたのは・・・無人ロボット・・・？ 固形バーを無造作に開け始めたぞ・・・。
少し、砕いて置いた・・・」
ダニエルＡ：「まさか、無人ロボットが犯人だったなんて・・・」
ダニエル：「これで俺の無実は証明されたわけだな・・・」
ダニエルＡ：「殴ったりしてすまなかった・・・。俺もどうかしてたんだ・・・」
ダニエル：「誤解がとけたならそれでいい。まて・・・。これは例の報告書か・・・。
３日前の日付だ・・・。
本部へ、本日深夜、機械の誤作動により２体目のクローンが目覚める。
予想外の出来事が起こったので報告をする。
そして、経過を観察し続けるので、また報告する」
ダニエルＡ：「観察してたのか、あの無人ロボット供め・・・」
ダニエル：「２日前の日付も読むぞ。経過報告。クローン２体は言い争いをしながらも、協力して作業を行っている。
なお、目覚めたほうのクローンは、この地下の医療ポッドの存在を覚えてる可能性が高く、このままにしていては
危険と判断。処分の指示を本部に願う・・・」
ダニエルＡ：「やはり俺達を処分しようとしてるんだな・・・。続きはないのか？」
ダニエル：「１日前・・・。経過報告。クローン２体のこのままの団結は危険だと判断し、
工作活動により、２体のクローンの団結力は無くなったが、本社の秘密工作部隊の申請を願う」
ダニエルＡ：「俺たちごと、この施設も消去する気か・・・。あの無人ロボット達、全員ぶっ壊してやる！」
ダニエル：「残念ながらそれは無理のようだ・・・」
ダニエルＡ：「どうしてだよ？」
ダニエル：「本社からの返信が来てる」
ダニエルＡ：「なんて書いてある？」
ダニエル：「今から２時間後、秘密工作部隊は到着・・・だと・・・」
ダニエルＡ：「２時間・・・。すぐじゃねえか・・・？」
ダニエル：「あぁ・・・」
ダニエルＡ：「脱出方法はないのか！？ ほら、ロケットとか宇宙船とか脱出ポッドとかなんかあるだろう！」
ダニエル：「今、調べてる・・・」
間
ダニエルＡ：「どうだ・・・？」
ダニエル：「何もない・・・。この施設はおろか、この星には脱出する手段はない・・・」
ダニエルＡ：「そんな馬鹿なことがあってたまるか・・・。このままじゃ、俺達は・・・」
ダニエル：「本社の手によって抹消される・・・」
ダニエルＡ：「ただ、死ぬのを待つしかないのか・・・」
ダニエル：「ここで嘆いてても仕方ない・・・。上に戻るぞ・・・」
ダニエルＡ：「上に戻ってどうする？ 俺達はどうせ死ぬ運命だ・・・。上もここも変わらねえよ・・・」
ダニエル：「いや変わるさ・・・。最後の時くらい、好きな音楽をお前と聞きたいんだ・・・」
ダニエルＡ：「なんか口説かれてるみたいだな・・・」
ダニエル：「自分を口説いてどうする」
ダニエルＡ：「それもそうだよな・・・。仕方ない。最後くらいお前に付き合ってやるよ」
ダニエル：「ありがとう、ダニエル」
（上に戻り、コミュニティールームに戻り、Ｇ線上のアリアを聴いてる２人）
ダニエル：「やはりこの曲は良いな・・・」
ダニエルＡ：「あぁ・・・。これから最後を迎える俺達には、ピッタリの曲だな・・・」
ダニエル：「どうせ死ぬなら、悪あがきしてみるか？」
ダニエルＡ：「何か打開策が浮かんだのか？」
ダニエル：「本社の宇宙船から秘密工作部隊が来たら、そいつらをぶっ殺して、宇宙船を乗っとる」
ダニエルＡ：「その後はどうする？ 地球に戻っても、本社のことだ、俺達を指名手配にして殺そうとするぜ」
ダニエル：「地球には帰らない。どこか宇宙船で住める場所を探す」
ダニエルＡ：「放浪の旅ってわけか・・・。良いね・・・」
ダニエル：「俺達はクローンだ。失うものは何もない。そう考えれば気楽なもんだ」
ダニエルＡ：「違いないな・・・」
間
ダニエル：「本社到着まで残り３０分・・・」
ダニエルＡ：「絶対に俺達は生き残るぞ」
ダニエル：「あぁ。俺とお前、一緒に生きて脱出だ」
（その時、惑星に強い揺れが襲う）
ダニエルＡ：「なんだ？ この揺れは！？ もしかして地震なのか？」
ダニエル：「本社の到着を待つ前に、死ぬ運命なのか・・・」
ダニエルＡ：「おいおい、冗談じゃねえよ！ 何があっても、俺達は生き残るんだ・・・！
こんな揺れなんかに負けてたまるか！」
ダニエル：「そうだな・・・！ ここは物が多くて危険だ・・・。移動するぞ・・・！」
ダニエルＡ：「あぁ・・・」
（宇宙船到着口、エントランス）
ダニエル：「本社到着まで残り２０分・・・。このハッチが開いたら、突っ込むぞ！」
ダニエルＡ：「本社の連中が何人いるかわからないのに、本当無茶苦茶な作戦だな！」
ダニエル：「少しでも生き残れるなら、その確率を、俺はこの手で掴み取るだけだ！」
ダニエルＡ：「ついてくぜ、相棒！」
ダニエル：「あぁ！」
（その時、これまで以上の衝撃が２人を襲う、その衝撃で気絶する２人、暫くして目を覚ますダニエルＡ）
間
ダニエルＡ：「痛っ・・・。さっきの強い衝撃で、壁にぶつかって気絶してたのか・・・。
おいっ、ダニエル、しっかりしろ！」
ダニエル：「一体どうしたんだ・・・？」
ダニエルＡ：「さっきの強い衝撃で、俺達、気絶したようだ・・・」
ダニエル：「時間は・・・？ どれくらい経過した・・・？」
ダニエルＡ：「待て・・・今確かめる。１０分くらいだな・・・。本社到着まで、後１０分しかないぞ・・・」
ダニエル：「揺れもおさまったようだし、さっきの作戦通り、行くぞ」
ダニエルＡ：「動けるのか？」
ダニエル：「頭は打ったようだが、大丈夫だ。お前は大丈夫か？」
ダニエルＡ：「なんとか大丈夫だ」
ダニエル：「そうか・・・。じゃあ、俺は左側、お前は右側、ハッチまで距離５０ｍ。
合図と同時に、ハッチに向かって走って突っ込むぞ」
ダニエルＡ：「ＯＫ！」
（時間になり宇宙船が到着した音が聴こえ、ハッチの開閉が始まる）
ダニエル：「いよいよだ。行くぞ・・・。よし、いまだ！ ＧＯ！！！ 走れ！！！」
ダニエルＡ：「あぁ！」
間
ＢＧＭ：Ｇ線上のアリア
ダニエル（Ｎ）：「俺の考えは甘かった・・・。掛け声と共に駆け出した俺とあいつ。
無我夢中で走った・・・。しかし一発の銃声が鳴り、
次に見えたのは、倒れ込んだあいつの姿だった・・・。
額を撃ち抜かれ、あいつは即死・・・。
俺は絶望に襲われ、その場で膝まづいた。
そんな俺に近づく１人の男・・・。
そいつの顔を俺は見る。そいつは・・・
俺自身だった・・・。
そうかこいつも・・・。
俺がそう思った時、２発目の銃声が無情にも響いた・・・」
（銃声）
間
ダニエルＡ：「おいっ、ダニエル。しっかりしろ！」
ダニエル：「ここは天国か・・・？」
ダニエルＡ：「何をぼけた事言ってるんだ。さっきの強い揺れで、頭を強く打ったのか？」
ダニエル：「ダニエル・・・。お前は、俺の目の前で奴らに、額を撃ち抜かれて・・・」
ダニエルＡ：「額を撃ち抜かれる・・・？ 俺はこの通り生きてるぜ。悪い夢でもみたんじゃねえのか？」
ダニエル：「本当に夢だったのか・・・。だとしたら正夢・・・？
時間はどれくらい経過した？」
ダニエルＡ：「今、確かめる。１０分くらいだな」
ダニエル：「本社到着まで、あと１０分くらいか・・・。
じゃあ、俺は左側、お前は右側、ハッチまで距離５０ｍ。
合図と同時にハッチに向かって走って突っ込むぞ」
ダニエルＡ：「ＯＫ！」
（先程の光景が浮かんだダニエル）
ダニエル：「いや、待て！ やはり変更だ！ 俺は右側、おまえは左側だ」
ダニエルＡ：「なんだか知らないがそれで良いぜ」
ダニエル（Ｍ）：「これがもし正夢だとしたら、これで俺に向けて奴らは発砲するはずだ。
そしたら俺はそれをかわす。
そしたら、あいつは無事にハッチにたどり着くはず・・・」
ダニエルＡ：「本社が到着したみたいだぜ・・・。いよいよだな・・・」
ダニエル：「あぁ・・・。よし、いまだ！ 走れ！！！」
ダニエルＡ：「あぁ！」
間
ダニエル（Ｎ）：「これであいつが、死ぬ運命は変わるはずだった・・・。
しかし無情にも、銃声が聞こえた後、見た光景は・・・
あいつが倒れる姿だった・・・。
どうして・・・？
正夢じゃないのか・・・？
目の前の状況で、混乱してる俺に、２発目の銃声が聞こえた・・・」
間
ダニエルＡ：「おいっ、ダニエル。しっかりしろ！」
ダニエル：「・・・」
ダニエルＡ：「俺の事がわかるか・・・？」
ダニエル：「あぁ・・・」
ダニエルＡ：「俺達、あの強い揺れで、頭を打って気絶してたようだ・・・」
ダニエル（Ｍ）：「何が起きてるんだ・・・」
ダニエルＡ：「本当に、大丈夫なのか？」
ダニエル：「大丈夫だ。時間は、どれくらい経過した？」
ダニエルＡ：「今、確かめる」
ダニエル（Ｍ）：「このままじゃ、またあの光景を、目にする事になるかもしれない。だとしたら・・・」
ダニエルＡ：「１０分くらいだ。本社、到着まで残り１０分くらいだな・・・」
ダニエル：「そうか・・・。ダニエル、すまない。そこに落ちてる工具箱、とってくれないか？」
ダニエルＡ：「わかった。これで良いか？」
ダニエル：「（腹を殴る）」
ダニエルＡ：「何をするんだ・・・」（倒れ意識を失う）
ダニエル（Ｍ）：「すまない・・・。お前を救うには、こうするしか無いんだ・・・」
ダニエル：「時間だ・・・」
ダニエル（Ｎ）：「意識を失ったダニエルを安全な場所に寝かせ、ハッチの前に戻ったら・・・
３度目のハッチが、ゆっくり音をたて、開き始めた」
ダニエル：「此処で待ってろ・・・。俺とお前は、絶対生きてここを脱出する！
その為なら、何度でも俺は、このチャンスを生かす！
さあ、これが３度目の勝負だ！！！」
終わり