RinNe

 

作者:ヒラマ コウ

 

 

 

登場人物

 

 

タカヒロ・・・30歳。戦争が絶えない惑星。敵対している側の女性、ナオと隠れて会っていたが、お互い自由を願っていたので、

           惑星からの脱出を計画する

 

高広・・・25歳。菜緒が夜の公園で出会う男性。過去に事故で彼女を亡くしている事から、生きるのが辛くなってる

 

  

ナオ・・・25歳。敵対している側の男性、タカヒロと他の惑星で幸せになる為、一緒に脱出を計画して実行する

 

菜緒・・・30歳。上司に怒られビールを夜の公園で飲んでる時に、高広に出会う。過去に彼氏はいたが長くは続かなかった

 

 

比率:【1:1】

 

上演時間:【60分】

 

 

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CAST

 

高広:

 

菜緒:

 

 

 

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菜緒(N):「本当に好きな人と結ばれる・・・。

        そんな、おとぎ話やドラマのような出来事・・・、誰にも起こる訳じゃない・・・。

           現実は裏切られ、傷つけられ、ほんの一瞬の選択次第でガラスのように粉々になる・・・。

           それでも・・・次こそはと期待するのは、ねぇ・・・神様、間違いなのかな・・・?

 

 

 

高広(N):「好きな人と結ばれたい。ただそれだけなのに・・・

        どうしてこんなにも胸が苦しかったり・・・辛かったりするんだろう・・・。

           後少しという所で・・・思わぬ事が起きて引き裂かれてしまう・・・。

           運命って一体何なんだ? 俺達皆、誰もが幸せになったら駄目なのか?

        なぁ? 神様・・・。俺はいつになったら幸せになれるんだ・・・」

 

 

 

 

 

(前世)

 

 

(銃声 SE)

 

 

ナオ:「はぁはぁはぁ・・・。此処まで来たら大丈夫かな・・・?」

 

 

タカヒロ:「そうだな・・・。追っても来ていないみたいだし」

 

ナオ:「タカヒロ・・・。ありがとう・・・」

 

タカヒロ:「いきなりどうしたんだ?」

 

ナオ:「だって私の為に、こんな追われる身になるなんて・・・。

    ねぇ、今からでも遅くないわ・・・! お願い!引き返して!

    そうすれば貴方だけでも助かるわ・・・!!!」

 

 

 

タカヒロ:「何を言ってる!こうする事は俺自身が決めたんだ。

      もう迷いなどない! それに、お前を置いてこのまま引き返すなんて出来ない!」

 

 

ナオ:「でも・・・」

 

 

 

タカヒロ:「今引き返したとしてもどの道、反逆罪で捕まり処刑されるだけだ。

      そんな運命なら、君と一緒に何処までも行く。

      だから、お願いだから、もうそんな事は言うな」

 

 

 

ナオ:「ありがとう。・・・本当はずっとずっと怖かったの・・・。

    貴方がもし私を置いて、引き返すって言ったら・・・」

 

 

タカヒロ:「馬鹿だな。俺はそんな事は絶対に言わないよ。もう少し信用して欲しいな」

 

 

ナオ:「ごめんなさい」

 

 

タカヒロ:「これからどうなるかなんてわからないけど・・・

      きっと何もかも上手くいく。お前と一緒なら、なんだって乗り越えられる!」

 

 

ナオ:「うん!」

 

 

 

(銃声やサイレン SE)

 

 

タカヒロ:「此処も見つかるのは時間の問題だな・・・。動けるか?」

 

 

ナオ:「うん。でも・・・何処に逃げるの?」

 

タカヒロ:「あそこを見て」

 

ナオ:「あれは、他の惑星に出港してるシャトル」

 

 

タカヒロ:「俺達を未来へ運んでくれる架け橋さ。

      あれに乗ってこんな惑星なんて、さっさとおさらばだ」

 

 

ナオ:「・・・本当に、私達自由になれるのね」

 

 

タカヒロ:「あぁ!何もかも捨てて、一から知らない場所で、二人でやり直そう!

 

 

ナオ:「うん。戦争で離ればなれにならない場所へ・・・」

 

タカヒロ:「怖いか?」

 

ナオ:「ううん、もう平気よ。貴方がいるのだから」

 

タカヒロ:「よしっ! ナオ、シャトルまで走るぞ!」

 

ナオ:「ええ!」

 

 

 

 

 

(息を切らしながら、シャトルに走る2人)

 

 

タカヒロ:「此処を抜けたら目の前だ! 見張りもいないし、一気に走り抜けるぞ!」

 

 

ナオ:「わかったわ!」

 

 

タカヒロ:「ナオ、ペースが落ちてるぞ!」

 

 

ナオ:「ごめんなさい!」

 

タカヒロ:「後少しだ! 頑張れ!」

 

ナオ:「ええ!」

 

 

(シャトルまで無事に来れて喜ぶ2人)

 

 

タカヒロ:「着いた・・・!」

 

ナオ:「やったわね・・・!」

 

タカヒロ:「これで俺達自由になれる!」

 

ナオ:「ええ!」

 

 

(見張りの気配に気付き叫ぶナオ)

 

 

ナオ:「あれは銃!? タカヒロ!! 危ない!!!」

 

タカヒロ:「え!?」

 

 

(銃声 SE)

 

 

(タカヒロの前に飛び出し見張りの銃撃を受けて倒れるナオ)

 

 

タカヒロ:「ナオ・・・?」

 

ナオ:「タカヒロ・・・ごめんね・・・私は此処までみたい・・・」

 

タカヒロ:「何を言ってるんだ! 大丈夫だ! まだ助かる! 諦めないでくれ・・・!!!」

 

 

ナオ:「私を・・・選んで・・・くれて・・・ありがとう・・・。

    こんな・・・別れ方・・・嫌だけど・・・タカヒロ・・・お願い・・・私の分まで・・・生き延びて・・・」

 

 

(タカヒロの腕の中で息絶えるナオ)

 

 

タカヒロ:「ナオーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

ナオ(N):「薄れゆく意識の中で・・・タカヒロが沢山の銃に狙撃され、その場で倒れたのが見えた。

       あぁ、神様・・・。貴方はどうしてこんなにも残酷な運命を、私達に与えたのですか?

       もしも、これが輪廻に続いてる私達の運命だとしても、私はもう一度必ず、タカヒロに出逢ってみせる。

       何があっても、きっと、必ず・・・!

       だから・・・タカヒロ・・・。来世で待ってて・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(現世)

 

 

 

菜緒:「う~ん、もう少し寝かせてよ・・・。あと・・・5分だけ・・・」

 

 

(寝ぼけながら時計見る)

 

菜緒:「ヤッバ! 遅刻だ!!!」

 

 

菜緒:「もう~! 髪ボサボサ! シャワーも浴びないと行けないし、とにかく急がないと!」

 

 

 

 

 

 

菜緒:「これでよしっと! うん! 今日も可愛いぞ! はっ! そんな事してる場合じゃ無かった!!!

    行って来まーす!!!」

 

 

菜緒(M):「なんだか不思議な夢を見た気がしたけど・・・なんだったんだろう・・・」

 

 

 

 

 

 

菜緒(N):「急いで会社に行ったものの、案の定、上司に散々怒られた。まったくあのハゲ上司・・・。

       いつか見返してやる・・・。気分は最悪のまま仕事は終わり、

       私はいつものお気に入りの場所に立ち寄った」

 

 

 

 

 

 

(ビールを公園のベンチで飲む)

 

 

菜緒:「ぷは~!!! 仕事の後のビールって本当、最高!!!」

 

 

菜緒:「ふ~。気分転換も出来たし、そろそろ帰ろうっと!」

 

 

 (ビールを飲んでほろ酔いでよろけてこける)

 

 

菜緒:「あっ!・・・痛たたた・・・。

    あぁ!!! ヒールが折れた!!! この前買ったばかりなのに!!!

    もう!!!! 今日は一体何なのよ!!!」

 

 

 

高広:「ねえ? 君、どうしたの?」

 

菜緒:「あっ! 平気平気! お構いなく!」

 

高広:「本当、大丈夫?」

  

菜緒:「・・・ねえ、ちょっと時間ある?」

 

高広:「ある事はあるけど、まずはその前にその靴なんとかしないとね」

 

菜緒:「そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

菜緒:「へぇ~、器用だね」

 

高広:「前にも同じような事があったからね」

 

菜緒:「同じ事?ひょっとして彼女?」

 

高広:「えっ?まぁ・・・、そんな所かな」

 

菜緒:「ふ~ん」

 

高広:「よし! これで良いかな。履いてみて」

 

菜緒:「うん」

 

高広:「どうかな?」

 

菜緒:「うん、良い感じ!」

 

高広:「良かった」

 

菜緒:「えっと、その・・・どうもありがとう」

 

高広:「どういたしまして。ん? どうしたの?」

 

菜緒:「え!? あ~、人にお礼言うのって、どうも苦手で・・・」

 

高広:「照れくさいとか?」

 

菜緒:「ふぇ? なんで!?」

 

高広:「だって、顔真っ赤になってるよ」

 

菜緒:「これは! お酒のせいよ!」

 

高広:「そうなんだ」

 

菜緒:「そうよ!」

 

 

(笑いあう2人)

 

  

 

 

菜緒:「実はさ・・・、朝から何だか、ついてない日で散々だったの。

    だからさ、此処の景色観ながら、ビールをぐいっと飲みたいなって思って」

 

 

高広:「そうだったんだ。でも此処からの景色って最高だよね。街全体が見渡せて」

 

菜緒:「そうそう! だから嫌な事があった時はさ。此処に来るわけよ!」

 

高広:「そっか」

 

菜緒:「でも、ほら此処ってさ、柵が低いから近付き過ぎると、なんだか下まで落ちそうで怖いのよね」

 

高広:「そうだね。本当、落ちたら助からないだろうね・・・」

 

菜緒:「そうね・・・って! 何、物騒な事いってんのよ!」

 

高広:「ごめんごめん」

 

菜緒:「けどさ。君もどうして此処に?」

 

高広:「何だか景色が見たくて、つい、ふらっとね・・・」

 

 

菜緒:「ふ~ん、そうなんだ。じゃあ私と同じだね。ねぇ、君、名前は?

    此処で会ったのもなんかの縁かもしれないし」

 

 

高広:「俺は、高広。君は?」

 

菜緒:「私は菜緒!よろしくね」

 

高広:「菜緒さんか。よろしくね」

 

 

菜緒:「今日は付き合ってくれてありがとう。またね!」

  

高広:「うん、また」

  

高広:「またか・・・。俺は・・・まだ・・・」

 

 

 

菜緒(M):「なんだか分からないけど、凄く心が落ち着いたな。

       こんな気持ち久しぶり。また何処かで会えると良いな」

 

 

 

 

  

(街中のコンビニで高広が買い物をしてると菜緒が声をかける)

 

 

菜緒:「やっほ、奇遇だね!」

 

高広:「あっ、菜緒さん、こんばんわ」

 

菜緒:「ちょっと! 何よ、栄養の偏ってる物ばかり! こんなんじゃ、駄目だよ!」

 

高広:「そうかな? 普通だと思うけど」

 

菜緒:「ひょっとして、こんな物ばかり・・・毎日食べてるの?」

 

高広:「そうだけど?」

 

菜緒:「全く・・・そこでちょっと待ってて!」

 

高広:「・・・うん」

 

 

 

 

菜緒:「お待たせ! ほら、行くよ!」

 

高広:「行くって何処に?」

 

菜緒:「そんなの着いたら、わかるわよ!」

 

高広:「・・・」

 

 

 

 

菜緒:「着いた。此処よ」

 

高広:「此処って?」

 

菜緒:「私の家よ」

 

高広:「え!?」

 

菜緒:「良いから、早く入って!」

 

高広:「はい! お邪魔します・・・」

 

 

 

 

菜緒:「どうぞ。あっ、そこら辺適当に座って待ってて」

 

高広:「はい」

 

菜緒:「ねえ? 何か嫌いな物とかってある?」

 

高広:「ピーマンが苦手だけど・・・」

 

菜緒:「OK!」

 

高広:「あの、菜緒さん!」

 

菜緒:「な~に~?」(キッチンから)

 

高広:「その・・・、俺、男だけど?」

 

菜緒:「それがどうしたの?」

 

高広:「だから、その・・・」

 

菜緒:「もう、何が言いたいのよ!」

 

高広:「えっと、菜緒さんは、いつもこんな事を?」

 

菜緒:「こんな事?」

 

高広:「男を連れ込んだり・・・」

 

菜緒:「もう!そんなわけないでしょ!」(笑いながら)

 

高広:「そうなんだ。てっきり・・・」

 

菜緒:「てっきり、何?」

 

高広:「いや! なんでも!」

 

菜緒:「はは~ん。さては、やらしい事とか考えてたな?」

 

高広:「・・・」

 

 

菜緒:「全く! そんな事は考えて無いし、とって喰ってしまおうなんて考えてないからね!

    ただ単に、栄養ある物食べさせてあげたいなって思っただけだよ」

 

 

高広:「俺の為に手料理を?」

 

 

菜緒:「ええ! 言っとくけど、美味しいかどうかはわかんないから・・・

    まっ、でも・・・、コンビニ弁当には負ける気しないな!」

 

 

高広:「そっか。じゃあ、期待して待ってる!」

 

 

菜緒:「ありがとう! よ~し! 待ってなさい! 腕に縒りを掛けるから!」 

 

 

 

  

菜緒:「お待たせ! さあ、食べましょう! お腹ペコペコ・・・!」

 

高広:「・・・」

 

菜緒:「ん? 食べないの? 冷めちゃうよ?」

 

高広:「ピーマン、入ってる・・・」

 

菜緒:「あ~それ? 残り少ないし、そのまま腐らせても勿体ないから、肉野菜炒めにしようって思って入れた」

 

高広:「嫌いなの言ったよね?」

 

菜緒:「好き嫌いは駄目! 騙されたと思って、一口で良いからさ、ほら!食べてみ!」

 

高広:「う~ん」

 

菜緒:「せっかく・・・高広君の為に、一生懸命作ったんだけどな・・・」

 

高広:「・・・本当に、一口で良い?」

 

菜緒:「うんうん!」

 

高広:「じゃあ・・・」(食べる)

 

菜緒:「どう・・・かな?」

 

高広:「食べられた・・・」

 

菜緒:「味はどう?」

 

高広:「美味しいよ」

 

菜緒:「良かった! ほら、まだいっぱいあるから、どんどん食べて!」

 

高広:「うん!」

 

 

  

 

 

 

菜緒:「美味しかった! 我ながら良い出来だった!」

 

高広:「ご馳走様」

 

菜緒:「どう? 満足した?」

 

高広:「うん」

 

菜緒:「高広君さ、もっと笑いなよ」

 

高広:「え?」

 

 

菜緒:「なんていうかさ、高広君の笑顔、私好きだよ。見てて癒される」

 

 

高広:「ありがとう」

 

菜緒:「それだよ! 笑ってたらさ、暗い気持なんて吹っ飛ぶよ!」

 

高広:「え?」

 

 

菜緒:「コンビニで見かけた時にさ、なんか思い詰めてたような感じがしたから。

    私の気のせいかもしれないけど、それ見てたら、

    居ても立っても居られなくなっちゃって誘ったんだ」

 

 

高広:「そうだったんだ」

 

 

菜緒:「うん。なんか悩んでるならさ、話してよ。解決できるかわからないけど、

    ほら! 人に話せば楽になるって言うもんだし! ねっ?」

 

 

高広:「そうだね。でも、大丈夫。ただ・・・ちょっと考え事してただけだから」

 

 

菜緒:「そっか。じゃあ良いや。でもなんか困った事あったら遠慮せず言ってね。

    頼りになるかもしれないし!」

 

 

高広:「うん、その時はそうするよ。今日はありがとう。そろそろ帰るよ」

 

 

菜緒:「うん、夜道に気を付けてね。おやすみ」

 

高広:「おやすみ」

 

 

 

菜緒(N):「時折見せる彼の寂しそうな、そして何処か思い詰めた顔が、なんだか胸に残り私の心を揺さぶった。

       そしてそれは思いがけぬ展開へと私達を突き進ませた」

 

 

 

 

 

 

 

(夢の中)

 

 

(タカヒロの前に飛び出し見張りの銃撃を受けて倒れるナオ)

 

 

タカヒロ:「ナオ・・・?」

 

 

ナオ:「タカヒロ・・・ごめんね・・・私は此処までみたい・・・」

 

 

タカヒロ:「何を言ってるんだ! 大丈夫だ! まだ助かる! 諦めないでくれ・・・!!!」

 

 

ナオ:「私を・・・選んで・・・くれて・・・ありがとう・・・。

    こんな・・・別れ方・・・嫌だけど・・・タカヒロ・・・お願い・・・私の分まで・・・生き延びて・・・」

 

 

(タカヒロの腕の中で息絶えるナオ)

 

 

タカヒロ:「ナオーーーー!!!」

 

 

 

菜緒(M):「・・・!!! 今の夢は何だったの・・・? なんだか凄く胸が苦しい・・・。

       夢の中の人、必死だったな・・・。タカヒロって呼ばれてた。

       あぁ・・・、高広君と同じ名前・・・。私、もしかして高広君と・・・」

 

 

 

 

 

 

 

菜緒:「もしもし、高広君。久しぶり~。いきなりなんだけどさ、来週予定ある?」

 

高広:「来週って・・・その・・・」

 

菜緒:「そう! クリスマスイヴ。予定無いならさ、家でパーティーしない?」

 

高広:「あっ、うん、良いけど・・・」

 

菜緒:「よし! 決まり! じゃあ来週はパーッと騒ごう!!!」

 

高広:「わかった」

 

菜緒:「じゃあそういう事で!」

 

菜緒:「(電話を切る)ふぅ~! 良かった。よ~し! 来週に向けて色々準備準備!!!」

 

高広:「来週・・・」

 

 

 

 

 

 

 

菜緒(N)「そしてあっという間に日にちは過ぎいよいよ当日を迎えた。

      私は期待と不安が入り混じった、複雑な感情で、彼が来るのを待った」

 

 

 

菜緒:「いらっしゃい! ん? 何持ってるの?」

 

高広:「シャンパン。手ぶらだと悪い気がして」

 

 

菜緒:「おっ! 気が利いてるじゃない! さあ、早く入って!」

 

 

高広:「うん」

 

 

菜緒(N)「私はやけにテンションがあがっていた。変な目で見られていないか心配だったけど、

      この際、どうでも良かった」

 

 

菜緒:「じゃ~ん!!! このごちそうの数々を見よ!!!」

 

高広:「これは凄いね! どれも美味しそうだ!」

 

菜緒:「手間暇かけた自信作よ! 心して食べなさい! じゃあ、乾杯~!」

 

高広:「乾杯~! それじゃあ、いただきます!」

 

菜緒:「召し上がれ!」

 

 

 

 

菜緒:「どう? 料理のお味は?」

 

高広:「抜群に美味しい! 菜緒さん頑張ったね!」

 

菜緒:「そうだろそうだろ! 遠慮せずどんどん食べて!」

 

 

菜緒:「高広君、今日は元気良くて結構結構!

    美味しい物を食べる時は、笑顔が一番だよ!」

 

 

高広:「菜緒さんって、本当優しいね」

 

菜緒:「そう? 普通だと思うけど? 高広君こそ、気が利くし優しいじゃん」

 

 

高広:「そうかな?」

 

 

菜緒:「そうだよ! だってさ、私、一緒にいると凄く楽しいよ!

    ・・・あのさ! 高広君さえ、良ければさ! このまま私達付き合っちゃうっていうのは?」

 

 

高広:「・・・え?」

 

奈緒:「・・・」

 

高広:「・・・」

 

 

 

菜緒(N):「その場の勢いもあったと思うけど、私はつい告白してしまった」

 

 

     

菜緒:「ほら! こんなに話せるようになったし、私達なら上手くいくかも! そう思わない?」

 

高広:「俺は・・・その・・・」

 

菜緒:「ねえ? 私の事嫌い・・・?」

 

高広:「俺は・・・ごめん!!! 帰る!!! 今日はありがとう!!! じゃあね!」

 

菜緒:「え? ちょっと!待って!!!」

 

 

 

 

 

 

菜緒(M):「少し焦り過ぎちゃったかな・・・。全てあの夢のせいだよ。

       でも夢の中の彼も辛そうだったな。

       なんだろう・・・。この不安な気持ち・・・。

       このまま高広君と二度と会えない気がする・・・。

       そんなの嫌だ!」

 

 

 

 

高広(M)「もう嫌だ! 同じ想いは二度としたくない! またいつか失うかもなんて・・・

      俺には耐えられない!!!」

 

 

 

 

 

 

 

菜緒:「高広君!!! 待って!!!」

 

 

高広:「・・・」

 

 

菜緒(M):「もう! こんな時に信号が赤だなんて! お願い!早く変わって!!!」

      

 

 

高広(M):「もう・・・流石に疲れた・・・」

 

 

 

 

 

 

菜緒(N):「彼との距離が、どんどん遠く離れていく気がした。走っても走っても追いつかない。

       追いつくかと思ったら邪魔が何度も入り、私の声すら彼には届かなかった」

 

 

 

菜緒(M):「このままお別れなんて嫌だよ!!! ねぇ、神様! いるならお願い力を貸して!

       高広君にもう一度会わせて・・・!!!」

 

 

 

菜緒(N):その時、私はふと彼と出会った時のことを思い出した。

 

 

 

 

 

(回想 高広と初めて会った日 夜の公園)

 

 

菜緒:「実はさ・・・、朝から何だか、ついてない日で散々だったの。

    だからさ、此処の景色観ながら、ビールをぐいっと飲みたいなって思って」

 

 

高広:「そうだったんだ。でも此処からの景色って最高だよね。街全体が見渡せて」

 

菜緒:「そうそう! だから嫌な事があった時はさ。此処に来るわけよ!」

 

高広:「そっか」

 

菜緒:「でも、ほら此処ってさ、柵が低いから近付き過ぎると、なんだか下まで落ちそうで怖いのよね」

 

高広:「そうだね。本当、落ちたら助からないだろうね・・・」

 

菜緒:「そうね・・・って! 何、物騒な事いってんのよ!」

 

高広:「ごめんごめん」

 

 

 

(回想終了)

 

 

 

 

 

 

菜緒(M):「もしかして!、あの時、そう言う目的であの場所に居たとしたら・・・。

       うん、高広君は必ずあそこにいる。待ってて。今行くからね!」

 

 

 

 

高広(M):「この景色を見るのも今日が最後かな・・・。結局、今日まで待たせちゃったね・・・。

       もうすぐそっちに行くからね・・・」

 

 

菜緒:「高広君!!! 待って!!! 馬鹿な真似はやめて!!!」

 

 

高広:「止(と)めないでくれ・・・。俺はこの世になんてもういたくないんだ・・・」

 

 

菜緒:「馬鹿!!! 何があったかはわからないけどさ、これからいくらでもいっぱい良い事や

    楽しい事あるよ!!!」

 

 

高広:「そんなのわからないじゃない・・・。なんでそんな事が言えるの?」

 

菜緒:「根拠なんていらない!!! 私がそう思ったからだよ!!!」

 

高広:「なんで君は・・・、そんなに何にでも必死になる事が出来るの?」

 

 

菜緒:「だって、生きてればどうにかなるし、一度きりの人生なんだから思いっきり、

    何にでも必死にならなきゃ損じゃない!」

 

 

高広:「損・・・。君は強いね。俺だって・・・希望や必死になった時もあったよ。

    だけど・・・去年の今日、俺の生きる意味は消えたんだ」

 

 

菜緒:「どういう事・・・?」

 

 

高広:「当時、婚約まで決まってた彼女がいて、それは毎日が夢のように幸せだった。

    俺はこの人とこれから一緒に歩んでいくんだと思った。

    だけどそんな儚い望みさえ・・・あっけなく引き裂かれたよ」

 

 

菜緒:「それって・・・」

 

 

 

高広:「俺達はクリスマスイヴに待ち合わせをしてた。待ち合わせの時間になって、

   俺は彼女を見つけ手を振った。後は、ほんの一瞬の出来事で、何が起きたか分からなかった。

   俺は呆然として、頭が真っ白になった・・・」

 

 

   

菜緒:「・・・何が起きたの?」

 

高広:「俺の大事な彼女は・・・目の前で・・・暴走した車に轢かれたんだ・・・」

 

菜緒:「嘘・・・」

 

 

高広:「本当だよ。彼女は俺に向かって笑顔で手を振っていた! そんな彼女も次に俺が見た時は血まみれで、

    俺は急いで駆けつけ、彼女を腕に抱えると、その体がどんどん冷たくなっていくのがわかった・・・。

    救急車を呼んだけど、彼女は着いた頃には・・・もう息絶えていたよ・・・」

 

 

 

高広:「それからの日々はもう、どうでも良くなった・・・。

    毎日が長く感じ、地獄だったよ・・・。

    運転手に復讐する事も考えた! だけど、そんな事しても彼女は戻ってこない・・・。

    そして、君と会った日は、彼女が亡くなってから半年。

    正直、もう良いかなって思って、此処に来たんだ。

    彼女の元に行こうって・・・」

 

 

 

菜緒:「その時に、私を見かけたのね・・・」

 

 

 

高広:「最初は声をかける気なんてなかった。だけどこの世で何か良い事をしたら、

    あの世で彼女に会えるかなって思ったんだ。だから君に声かけたんだよ。

    どう? 幻滅した?」

 

 

 

菜緒:「幻滅なんてしない。・・・でも、そのおかげで私達、あの時出会えたんだよ。

    それってさ、運命なんじゃないのかな?」

 

 

高広:「運命・・・?」

 

 

菜緒:「高広君と此処で出会えたのは運命。現に、その後も何度も会えたじゃない!」

 

   

高広:「そうだけど・・・」

 

 

菜緒:「こんな話、信じてもらえないと思うけどさ、

    夢の中で、高広君にそっくりな人が出て来たんだ。どこか遠い惑星なんだけど、そこで・・・」

 

 

高広:「え・・・?」

 

菜緒:「2人共、追っての銃に撃たれて・・・死んだの・・・」

 

高広:「そんな馬鹿な・・・。俺達、同じ夢を見たって事?」

 

菜緒:「高広君も、同じ夢を?」

 

高広:「夢の内容的に・・・、同じだよ」

 

菜緒:「私ね、高広君にあの時、初めて会った時に何か不思議な気持ちだった」

  

高広:「俺も・・・君を見かけた時、何とも言えない気持ちになった。

    一緒にいて、気持ちが軽くなるのを感じた」

 

菜緒:「高広君も・・・?」

 

高広:「夢の中で、銃で撃たれた女性を腕に抱きかかえた時・・・、君にそっくりだった気がする・・・」

 

菜緒:「それって?」

  

高広:「君と出会って、その夢を見てからは、なぜだかより一層、一緒にいたいと思った。 

    だけど、何度も会う内に、また彼女みたいに、いつか失うかもしれないと思うと、

    怖くて仕方なかった・・・」

 

 

菜緒:「大丈夫、私はいなくならないよ。彼女さんの分まで、今度は私が必ず高広君を守る。

    だからこれからの人生、私と生きて!」

 

 

高広:「・・・菜緒さん。うん・・・。俺も全力で守るよ」

 

 

菜緒:「ありがとう。・・・えっとね、高広・・・、私の事も菜緒って呼んで」

 

 

高広:「わかった。菜緒・・・」

 

 

 

 

  

菜緒:「ねぇ、見て! 雪だよ!!! 私達の事祝福してくれているのかな?」

 

高広:「そうだと良いね。菜緒、本当にありがとう」

 

菜緒:「うん! さ~て家に戻ろうか! 寒~い! 高広、ほら早く!」

 

高広:「菜緒、そんなに急いだら危ないよ!」

 

菜緒:「平気平気! クリスマスイヴのパーティー早くやり直さないと!!! あっ!?」

 

高広:「菜緒っ!!!」

 

 

 

 

 

 

菜緒(N)「私が次の瞬間に見た光景は・・・、私を抱きしめながら頭から血を流してる彼だった。

      階段から転げ落ちたんだ。私達は・・・。私の馬鹿・・・。私のせいで・・・。

      そっか・・・、やっぱりあの夢の2人は私達だったんだ・・・。

      ねぇ・・・神様。貴方はなんで、こんな運命を繰り返させるの・・・?」

 

 

 

高広:「菜緒・・・大丈夫・・・? ごめん・・・」

 

 

菜緒:「なんで・・・高広が謝るの・・・? 私こそ・・・ごめんね・・・。

    私のせいで・・・ごめんね・・・」

 

高広:「菜緒と・・・これから・・・いっぱい・・・幸せになりたかったな・・・」

 

菜緒:「何言ってるの? ・・・いっぱい・・・これから・・・幸せになるんだよ・・・私達・・・」

 

高広:「そうだね・・・そうなると・・・いいな」

 

菜緒:「きっとなるよ・・・。だからお願い、しっかりして!」

 

 

菜緒(M):「今まで色々な人と付き合っては別れたりしたけど、彼だけは・・・特別な存在なんです・・・!!!

       夢の中の彼も前世の高広君なんでしょ!? 神様、これ以上、私から彼を奪わないで・・・!!!」

 

 

  

長い間

 

 

 

 菜緒:「・・・此処は病院? 彼は!? 高広は何処!?」

 

高広:「菜緒・・・。俺達・・・、助かったみたい・・・」

 

菜緒:「高広・・・。良かった・・・。」

 

高広:「頭を打って危なかったみたいだけど・・・、こうして生きてる」

 

菜緒:「2度も高広君を失うかと思った・・・。そう思うと怖かった・・・」

 

高広:「2度というと、やはりあの夢は・・・俺の前世の姿・・・」

 

菜緒:「・・・うん。私達、こうしてやっと結ばれたんだよ」

 

 

高広:「夢の中に・・・彼女が出てきた・・・。彼女は笑ってこう言ったよ。

    貴方と彼女は生きてって・・・」

 

 

菜緒:「それって・・・?」

 

 

高広:「俺達の命を・・・彼女が救ってくれた・・・」

 

 

菜緒:「それじゃ、私達、幸せになっていいの? もう2度と高広を失わなくても良いの・・・?」

 

 

高広:「あぁ。あの惑星で、菜緒を幸せに出来なかったけど、今度はちゃんと幸せにする。

    それに、また運命が俺達に試練を与えても・・・、俺は必ず、菜緒を見つけ出す」

 

 

菜緒:「高広・・・。私も必ず見つけ出す。だから、もう運命なんて怖くないよ!」

 

 

 

 

菜緒(N):「私達は、運命にもう負けたりしない! どんな試練も側に彼がいれば、きっと乗り越えられる・・・!」

       

 

 

 

終わり