闇蛍 -蛍-
作者:片摩 廣
登場人物
有園 美沙(ありぞの みさ)・・・後輩刑事。内藤と付き合ってる
内藤 直樹(ないとう なおき)・・・先輩刑事。有園と付き合ってる
永野 真紀子(ながの まきこ)・・・有園の整形前の姿と名前
萩原 宗佑(はぎわら そうすけ)・・・内藤の整形前の姿と名前
ニュースキャスター
比率:【1:1】
上演時間:【40分】
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CAST
有園 美抄、ニュースキャスター:
内藤 直樹:
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(署内で事件の捜査資料を纏めている有園)
内藤:「お疲れ。有園」
有園:「お疲れ様です。内藤先輩」
内藤:「どうだ? 捜査状況は?」
有園:「未だ、難航してます・・・。今月に入って、3人目・・・」
内藤:「そうか・・・。これ以上、被害者を増やすわけには、いかないな。同僚達の無念を晴らす為にも、
絶対、犯人、捕まえるぞ」
有園:「勿論です! こんな犯罪・・・。絶対に許せません!」
内藤:「あぁ。・・・それにしても惨いな。どの同僚も、ナイフで何十カ所も刺されて、殺されてる・・・」
有園:「犯人は、警察に怨みを持っているのでしょうか?」
内藤:「或いは・・・、警察関係・・・」
有園:「えっ・・・?」
内藤:「何らかの不祥事で、辞めさせられたか、責任を押し付けられ、辞める事になって、それで恨んでる可能性もある」
有園:「同じ警察官に、犯人がいるなんて、考えたくありません・・・。」
内藤:「有園の気持ちもわかるけど、その優しさが、自分の身を危険に晒す事もある。
もっと、気丈な心、持たないと駄目だぞ!」
有園:「はい! ・・・やっぱり、優秀ですね」
内藤:「ん・・・?」
有園:「警察学校でも優秀だったって有名ですよ。
そんな内藤先輩なら、本庁でのエリートコースも夢じゃないと思うのに、不思議です・・・」
内藤:「そんな事ない。俺より、優秀な同僚は、沢山いる・・・。
俺なんて、エリートコースは目指せないさ・・・」
有園:「あ~あ、私もキャリア組ならな~」
内藤:「ノンキャリア組でも、警察官は警察官だ。・・・犯罪者を逮捕し、世の中の秩序と平和を守る。
それが、俺達、警察官の使命。
キャリアばかり、気にしてたら、ろくな警察官にならないぞ!」
有園:「・・・そうですね。・・・大事な事、忘れかけてました・・・。
心、入れ替えて、捜査続けます!」
内藤:「張り切るのは良いけど、・・・有園、少し疲れてるんじゃないか?」
有園:「いえ、大丈夫です! こんな時に、休んでなんて居られません!
私の事は良いので、内藤先輩こそ、少し休んで下さい。
今にも、倒れそうな顔してますよ」
内藤:「此処の所、ずっと捜査の連続で、まともに休んでなかったからな。
悪いけど、お言葉に甘えて、少し休ませてもらうよ」
有園:「ええ。そうして下さい。・・・後で、起こしに行きます」
内藤:「ありがとう」
有園:「あっ、内藤先輩」
内藤:「何だ?」
有園:「私、内藤先輩と一緒の部署になれて、光栄です!
これからも、ご指導、宜しくお願いします!」
内藤:「あぁ。ビシビシ、鍛えるから、そのつもりで!」
有園:「はいっ!!!」
間
(数時間後、内藤を起こしに来る有園)
有園:「先輩、内藤先輩」
内藤:「ん・・・。・・・もう時間か?」
有園:「はい。まだ、寝足りませんか?」
内藤:「そうでもない。有園のおかげで、疲れとれたよ」
有園:「本当ですか? 無茶したら、駄目ですよ」
内藤:「わかってる。なぁ、有園?」
有園:「何ですか?」
内藤:「今夜は、うちに、来るか?」
有園:「別に構いませんけど、疲れてませんか?」
内藤:「このくらい平気だ。今夜は、一緒に居たいんだ。駄目か?」
有園:「わかりました。・・・一度、マンションに戻って、それから行きますね」
内藤:「わかった。・・・待ってるよ」
有園:「それでは、また後で」
間
(内藤のマンション)
内藤:「料理の用意はこんな物か。・・・おっ、有園からメールだ。
後、5分くらいで、着きます・・・か。
本当、真面目だな」
(5分後、内藤の部屋のインタフォーンが鳴る)
内藤:「時間通りだ。は~い。今、開けるから待っててくれ。
・・・よう。随分と来るの遅かったな・・・」
有園:「すみません。色々と、準備に戸惑っちゃって・・・」
内藤:「準備って?」
有園:「それは、これです。じゃ~ん!」(ケーキを差し出す)
内藤:「ケーキか・・・。覚えててくれてたんだな・・・」
有園:「当たり前じゃないですか。今日で先輩と付き合って、1年目なんですから」
内藤:「それで、わざわざ、日付の変わる0時になるのを待ってたんだな」
有園:「流石、先輩、正解です・・・。・・・う~ん、やっぱり、先輩には嘘付けませんね~」
内藤:「そんな優しい一面も、惚れた一つなんだけどな」
有園:「う~ん。他の要因も気になりますね~」
内藤:「知りたいか?」
有園:「知りたいです」
内藤:「仕方ないな。じゃあ、教えてやるよ。それは、有園の顔だ。本当、美人で、俺の好みだ!」
有園:「大好きな内藤先輩に、気に入ってもらえて、私も嬉しいです」
内藤:「怒らないのか?」
有園:「どうして、怒る必要があるんですか~?」
内藤:「顔目的だったのって、怒るかなって」
有園:「怒りませんよ。そんな些細な事で」
内藤:「本当、外見も中身も美人なんだな。・・・なぁ、本当に俺で良いのか?」
有園:「勿論です。どうしてそんな事、聞くんですか?」
内藤:「・・・有園、こんな美人だし、他にもモテるんじゃないかって不安なんだ・・・」
有園:「昔からモテましたよ」
内藤:「やっぱり・・・」
有園:「モテたのですが、それが良い事だけじゃなくて・・・。
私、高校の頃、同じクラスの男の子から・・・、ストーカー行為、されてたんです・・・」
内藤:「ストーカー・・・」
有園:「どうかしましたか?」
内藤:「いや・・・! 何でもない! ・・・ストーカーって、大変だったんだろうなって、思って」
有園:「かなり、大変でしたよ。・・・学校の校門で、待ち伏せされたり、
家まで、後、付いて来られたり・・・。
今、思い出しても、怖くなります・・・」
内藤:「それで、その男の子とは・・・?」
有園:「1年くらい、付きまとわれました・・・」
内藤:「1年? ・・・その後は?」
有園:「その後は・・・、その男の子、他の好きな人、追っかけるようになって、
なんと、そのまま、その人と付き合いだしました。
おかげで、助かりましたけどね~」
内藤:「そうか。それなら良かった。・・・それにしても、美人も苦労あるんだな」
有園:「内藤先輩こそ、男前だし、私、不安になる時、ありますよ~。
先輩は・・・、ストーカーに、あった事は・・・」
内藤:「ないない。俺なんて、全然モテなかったし、付き合ったりも少なかったよ・・・」
有園:「へ~、何か意外です。モテモテだと思ったのに~」
内藤:「買い被り過ぎだ。・・・有園、選んで正解だな」
有園:「え?」
内藤:「仕事とプライベート、ちゃんと分けてくれるから、指導にも、遠慮なく力を入れられるし、
これからが、楽しみだ。
有園なら、きっと俺より出世すると思うぞ!」
有園:「・・・内藤先輩の指導なんです! 死ぬ気で頑張ります!」
内藤:「良い心がけだ! 座って待っててくれ。ケーキ切ってくる」
有園:「わかりました」
(ケーキを持ってキッチンに向かう内藤)
間
内藤:「はい、お待たせ」
有園:「ありがとうございます。内藤先輩・・・、ジュースどうぞ」
内藤:「ありがとう。それにしても、美味しそうなケーキだ・・・」
有園:「美味しいと評判のお店のです。・・・本当は、手作りケーキとか作れたら良かったのですけど・・・」
内藤:「その気持ちだけでも、嬉しいよ。じゃあ、いただきます」
有園:「どうぞ。召し上がれ」
内藤:「ううん、上手い」
有園:「気に入ってもらえて、私も嬉しいです」
内藤:「ほらっ、有園も食べてみろ」
有園:「今は、内藤先輩の、幸せな笑顔見れて、心もお腹も一杯なので、後で食べますね」
内藤:「わかった。・・・しかし、こんな幸せで罰、当たらないか・・・?」
有園:「どうしてですか?」
内藤:「・・・連続殺人事件も解決してないのに、こんな浮かれてて良いのかって思ってな・・・」
有園:「何、言ってるんですか! こう言う時だからこそ、こう言う幸せな時間も大事なんです!
凄惨な事件ばかり、続いてるんですよ・・・。
今は、この幸せな時間、分かち合いましょう。・・・ねっ?」
内藤:「有園・・・。それも、そうだな。
せっかくの、有園との記念日なのに、台無しにする所だった・・・。ごめん」
有園:「良いんですよ。内藤先輩は、真面目ですけど・・・、真面目過ぎる部分もあるので、
何でも、背負いがちで、心配です・・・。
プライベートの時くらいは、私に甘えたり、弱音も吐いてください。私が、内藤先輩、癒してあげますから」
内藤:「わかった。これからはもっと、そうする。・・・だけど、嫌いにならないでくれよ?」
有園:「なりませんよ。安心してください。
ほらっ、ケーキ、どんどん、食べてください」
内藤:「おう」
間
有園:「内藤先輩」
内藤:「何だ?」
有園:「食べながらで良いんで、そのまま聞いててください。・・・私達、付き合って今日で1年ですよね。
前から考えてたんですけど・・・、そろそろ、将来の結婚を考えて、お互いの両親に、挨拶しときたいなって・・・」
内藤:「・・・」
有園:「そうは言っても、私の両親は、幼い頃、事故で亡くなっているから、養父母で、
本当の両親では無いのですけど・・・」
内藤:「・・・あぁ」
有園:「養父母も、有園先輩と、御両親に会っておきたいと行ってますし、どうでしょうか?」
内藤:「有園・・・。ごめん。・・・うちの両親、両方とも海外に住んでて、忙しいんだ・・・」
有園:「そうですか・・・」
内藤:「そんなガッカリするな・・・! 俺も、有園との将来を真剣に考えてる。
だから、もう少しだけ待ってくれ。ちゃんと、両親にも、伝えとく」
有園:「内藤先輩・・・。嬉しいです・・・」
内藤:「直樹だ。・・・いい加減、二人っきりの時は、名前で呼んでくれよ。・・・美沙」
有園:「わかっては居るのですが、内藤先輩の方が1つ年上だから、慣れなくて・・・」
内藤:「そうか・・・。でも、そんな所も可愛いな」
有園:「もう! からかわないでくださいよ~」
内藤:「ごめんって。・・・じゃあ、そんな可愛い美沙との、付き合って1年目に、乾杯!」
有園:「乾杯!」
内藤:「じゃあ、俺、お祝いのお料理、持ってくるな」
有園:「手伝いましょうか?」
内藤:「いやいい。そのまま座って待っててくれ」
有園:「わかりました」
(台所で手料理を皿に、盛り付けている内藤)
内藤:「有園、俺の手料理、気に入ってくれるかな。う、う・・・それにしても、やっぱり疲れてるのか・・・。
何か、フラフラする~。・・・あれっ・・・」
間
(見知らぬ倉庫で目を覚ます内藤
椅子に手を固定されてる)
内藤:「う、う~ん・・・。・・・此処って何処だ? ・・・倉庫? ・・・俺、自分の家で、美沙とお祝いしてて・・・。
ん!? ・・・何で俺、椅子に縛られてるんだ・・・!?」
有園:「あっ・・・、ようやくのお目覚めですか~。・・・5時間も寝てるなんて計算外。・・・睡眠薬の量、間違えたかな~」
内藤:「美沙・・・!? これは一体、何のつもりだ!?」
有園:「今、何のつもりって言いました? あはははははは!」
内藤:「何が可笑しいんだ! 良いから、質問に答えろ!」
有園:「本気で言ってんの? 自分がどうして、こんな状況になってるか~、
本当、身に覚えないのですか~?」
内藤:「ある訳ないだろ! 良いから早く、縄解いてくれ! じゃないと、ただじゃおかないぞ!」
有園:「はははははは! ある訳ないってか!!!! はははははは!!!!」
内藤:「何だよ・・・」
有園:「10年前~。とんでもない事、しでかしましたよね~? それも、覚えてないの~?」
内藤:「10年前・・・。・・・何も、してない・・・」
有園:「嘘付くんじゃねぇ~!」
内藤:「クッ!」
有園:「ねぇ~、内藤先輩。・・・貴方は、何故、刑事になったのですか~?」
内藤:「それは、世の中の犯罪をなくす為・・・」
有園:「はははははは! 犯罪をなくす!!!! はははははは!!!」
内藤:「刑事なんだから、当たり前だろ!」
有園:「当たり前・・・。・・・世の中の犯罪をなくす・・・。そんな事、本当に出来るのかな~?」
内藤:「どういう事だ?」
有園:「犯罪なんて、一体どのくらいの数、未捜査で溢れてるんだろうなって思ってさ~。この犯罪国家では」
内藤:「・・・」
有園:「未解決事件、捜査打ち切り、それに・・・隠蔽」
内藤:「・・・」(隠蔽という言葉で、表情が曇る)
有園:「あははははは!!!! あ~、その表情!!!! 最高だよ~!!!! 普段、必死に隠して、隠し通していた
内藤先輩の、その顔~!!! ようやく見る事が出来た~!!!」
内藤:「何の事だ! 俺は別に・・・」
有園:「先輩~。駄目じゃないですか!!! あれだけ、厳しい警察学校での訓練で~、
忍耐力、精神力、何度も何度も何度も~!!!!
嫌になるくらい、教官に鍛えられたのに! それなのに、こんな「隠蔽」なんて言葉一つで、崩しちゃうなんて!!!」
内藤:「・・・」
有園:「隠蔽。隠蔽。隠蔽。隠蔽! 隠蔽!! 隠蔽!!! 隠蔽!!!!」
内藤:「もう止めてくれえええええ!!!!! お願いだから・・・!」
有園:「何を一体止めるって言うんですか!? 私はただ、隠蔽って言葉、連呼してるだけですけど~!!!!」
内藤:「美沙・・・。お前・・・。一体・・・、何者なんだ?」
有園:「えええええ~、私は私ですよ~! あははははは!!!」
内藤:「ふざけてないで、答えろ!!!!」
有園:「ふふっ。蛍」
内藤:「今、何て!?」
有園:「蛍・・・。蛍。蛍。蛍。蛍。だよ! これで、ちゃんと聴こえましたよね~!」
内藤:「何で!? お前が、その事、知ってるんだ・・・!?」
有園:「さぁ、何ででしょうね・・・。・・・内藤先輩だとわかるまで、3人・・・犠牲にしちゃった~。
内藤:「3人・・・? じゃあ、連続警察官、行方不明事件の犯人って!」
有園:「あっ、それ私です」
内藤:「一体、何の為に!?」
有園:「先輩を見つける為ですよ!!! いや~、流石の私も気付きませんでした。
・・・随分と苦労しましたよ。・・・だって貴方、顔、整形してるんだから!!!!」
内藤:「あ・・、あ、あ、あ、あああああああああああ!!!!!」
有園:「その絶望した顏!!!! 待ってました!!! 写メ、撮っとこう~。
あはっ! あはっ! あははは!」(スマホで写真、何枚も撮る)
内藤:「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・! ・・・お前は一体誰だ・・・!?」
有園:「さぁ、誰なんでしょうね~!!!! 刑事なんだから、ちゃんと推理してくださいよ~!!!」
内藤:「あれは、事故だったんだ!!!」
有園:「事故!? あれ~! 可笑しいな~! 事故!!! 事故だって!!! あはははは!!!
内藤:「事故だって言ってるだろ!!!」
有園:「・・・じゃあ、何で、新聞にも、ニュースにもならなかったんですか!!!」
内藤:「それは・・・! ・・・」
有園:「ねぇ・・・。何で・・・、ですかっ!!!!?」
内藤:「・・・」
有園:「早く答えてくださいよ~。内藤・・・先輩!!!! ねぇ!!!!」
内藤:「俺が、親父に頼んで、隠蔽したからだ!!!!」
有園:「よく答えれました~!!!」(拍手する)
内藤:「お前、あの事故の関係者か! 俺に復讐する為に、こんな計画を・・・」
有園:「あはははははは!!!!」
内藤:「笑ってないで、答えろ!!!」
有園:「どうせ殺すから、最後に、教えてあげます。・・・私は、関係者ではなく・・・、
10年前、あんたに突き飛ばされた・・・永野 真紀子。本人だよ!!!!」
内藤:「嘘だ!!!!! そんなはずない!!! だって、親父も、上手く処理したと!!!」
有園:「あぁ・・・。処理しかけられました。だけど、危機一髪という所で、助けられたんです!!!」
内藤:「どうやってだ!!!」
有園:「それは詳しく教えられないよ~!!!
教えたら、その人にも迷惑かかる。強いて言うなら、命の恩人は、堅気じゃないからさ~!
あっ、顏もその時、整形しました」
内藤:「・・・」
有園:「・・・あの頃から、美人ばかり追いかけてたから、
どんなタイプ、好むかも、簡単でしたよ。
思惑通り、貴方は、私を好きになった」
内藤:「・・・その恩人のせいで、俺は・・・、こんな目に・・・」
内藤:「内藤 直樹、いいえ、萩原 宗佑さん、
名前まで変えてるとはね~。
新聞で、貴方は、事故死したと見た時から、怪しいと思ってました。
だから、必死に勉強して、警察官になり、その真相を探ろうと思ったんです。
貴方の父親、萩原警視総監の事をね!」
内藤:「くっ・・・」
有園:「まぁ、恩人の力もあって、萩原警視総監は、密かに若い男性と会ってるのもわかりました。
でも、残念ながら、誰とまではわからず、こうして、探し出すまで苦労した訳ですよ。
3人共、ハズレでしたから」
内藤:「じゃあ、あの人達は、俺のせいで・・・」
有園:「ええ。死にました。みんな、泣き叫びながら、命乞いしてましたよ~」
内藤:「そんな・・・」
有園:「3人の遺体、完全に処理しなかったの、何故だか、わかりますか?」
内藤:「どうしてだ・・・?」
有園:「それは~、貴方へのメッセージだったからですよ~。
まっ、その様子だと、意味なかったようですけど・・・。
少しは、正体がばれて、復讐されるとか、考えなかったのですか?」
内藤:「・・・」
有園:「本当、先輩って、萩原警視総監に、全部任せてたんですね。
そして、のうのうと、生きて、私と恋愛なんかも楽しんで!!!
本当、良いご身分だ!!!」
内藤:「俺の過ちで、あの3人の・・・人生は・・・」
有園:「ねぇねぇ~、私の人生も貴方、変えたの忘れないでくださいよ~!!!
あの事故から、まるっきり変わりましたよ!!!
身体が回復してからは、色々と教えてもらったな~。人の殺し方を・・・。
全ては、今日この日、貴方に、復讐する為にね!!!!」
内藤:「復讐なんて、出来ると思うか?」
有園:「どういう意味ですか? それ~?」
内藤:「お前も知ってる通り、俺の親父は警視総監だ。・・・俺の居場所は常にGPSでわかるようになってる。
そして、今夜はその親父と、会食に出かける予定だ。・・・それなのに、俺から連絡がないとなれば、
親父は心配する。・・・きっと、今頃、こっちに部下達を向かわせてるはず。
だから、お前も此処でお終いだ。・・・わかったなら、早く解放しろ!!!」
有園:「あははははは!!!!」
内藤:「何が可笑しいんだ? 早く解放してくれ!!!!」
有園:「あ~、可笑しい。そっか~。親子って、死ぬ瞬間に言う言葉も似て来るんだ~!!! 勉強になったな~!!!!」
内藤:「今、何て・・・?」
有園:「あれ~? 聞こえませんでした~? じゃあ、もっと分かりやすく教えてあげま~す。
貴方の父親、萩原警視総監は~、今、貴方が座ってる椅子で、死にました~!!!」
内藤:「そんなの嘘だ・・・。親父が死んだなんて、嘘だ!!!」
有園:「10年前の事件・・・、ばらすと脅したら、
部下も連れず、一人でまんまと此処に来ましたよ~!
そして、警視総監は、私にこう提案してきました。
3千万、用意する。・・・だから、息子の秘密はばらさないでくれと!」
内藤:「・・・」
有園:「3千万ですよ! 3千万!!! そんな、はした金で、交渉するなんて、本当、馬鹿ですよね~!!!!」
余りにも、馬鹿過ぎだから、殺そうって決めました。
私が、その金額で良いですよ。わかりましたと言ったら、一瞬油断したので、
その時に、このナイフで、刺しました。
でも、刺した所、致命傷にならなかったらしく・・・、仕方ないので、また刺しました。
何度も。何度も。何度も。何度も!!!」
内藤:「あああああああああ!!!!!!」
有園:「圧巻の光景でしたよ!!! 口から大量の血、溢れだして~、まるで、シンガポールの観光名所、
マーライオンのようでした~!!! ドバ。ドバ。ドバ。と!!!!!」
内藤:「もう止めろ!!!! 聞きたくない!!!!」
有園:「何でですか!!! これからが良い所なのに~。他にも楽しい部分あるけど、仕方ない。
省略しますね。余りにも、苦しみ続けたので、私も、可愛そうに思えて来て、
何だか、笑いこみ上げちゃいました。あ~、この人、これから死ぬんだなって~!!!」
内藤:「お前、狂ってる・・・!!!」
有園:「あれ? ほらっ、あれと同じですよ! ホラー観てると、あまりの怖いシーンだと、
思わず、笑ってしまう事、ありますよね~?
あれって、きっと脳が、これ以上の恐怖で、体に負担をかけないよう、指令出してるんだと思うんです。
だから私も、あの時、そんな感じだったんです」
内藤:「恐怖の感情すらも、麻痺してるだけじゃないか!!! お前はサイコだ!!!」
有園:「そんなサイコを愛したのは、何処の誰でもない! 貴方ですよ!!!」
内藤:「俺の愛した美沙は、お前じゃない!!!!」
有園:「あ~、あまりの恐怖で、頭まで可笑しくなったのですか?
私です!!! 私。私。私。私!!!!!」
内藤:「ああああああああああああああ!!!!!!」
有園:「叫んでばかり居ないで、認めてください!!!
俺の愛した、美沙は、お前だって!!!」
内藤:「嫌だ・・・!」
有園:「ほらっ、認めて楽になりましょうよ。ほらっ、ほらっ!!!」
内藤:「嫌だ!!! 嫌だあああああああああああ!!!!」
有園:「本当、強情ですね。じゃあ、認めてもらう為に良い事、教えてあげます」
内藤:「何をだ?」
有園:「昨夜のケーキ、内藤先輩、美味しそうに食べてましたよね~」
内藤:「それが、どうしたんだ!」
有園:「あのケーキ、本当は、私が作りました~! 美味しいと、言いながら食べてくれて、私、凄く嬉しかったんですよ~。
嬉しいと同時に、あ~、予想より、上手く出来たな~って思ってました!」
内藤:「一体、どう言う意味だ?」
有園:「あのケーキ、味調整するの苦労しました~。なんせ、材料が材料なんで~」
内藤:「まさか・・・」
有園:「あはははははは!!!! 同僚の味はどうでしたか~!!!!!」
内藤:「嘘だろ・・・! 嘘だ・・・! 嘘だ!!!!!」
有園:「ううん。上手いって、笑顔で言ってたじゃないですか!!!!
サイコが作った、特製、同僚ケーキ!!!」
内藤:「うっ・・・」
有園:「あ~、吐かないでくださいね~。後片付け、面倒なので~」
内藤:「はぁ、はぁ、はぁ、・・・なぁ、美沙」
有園:「何ですか? 内藤先輩!」
内藤:「俺が悪かった・・・。・・・開放してくれたら、お前の事、罪に問わないし、
探したりもしない! ・・・だから、お願い、開放してくれ!」
有園:「そんな嘘臭い言葉、信じると思ってるのですか!?」
内藤:「嘘じゃない!!!」
有園:「本当は、内藤先輩との、恋人ごっこも、もう少し楽しみたかったんですよ・・・。
なのに、昨日、内部に犯人いる可能性もあるなんて、言っちゃうから。
殺すの早めないと行けなくなったじゃないですか!!!」
内藤:「俺は、お前の事、本気で好きに・・・!」
有園:「私も~、内藤先輩の事、大、大、大、大、大好きでしたよ~!!!
どんな方法で、殺してやろうかって、毎日、毎日、側で思ってました~!」
内藤:「お前は、俺の事、好きじゃなかったんだな・・・」
有園:「さっきから、内藤先輩、つまらないです!!!
正直、ガッカリです。ガッカリしたので、これから殺しますね」
内藤:「・・・! 嫌だ。嫌。止めろ・・・、止めてくれえええええええええ!!!!」
有園:「泣き叫んでも、誰も助けに来ませんよ。・・・ちゃんと細工もしましたから」
内藤:「お願いだ・・・。・・・俺が、悪かった・・・。・・・だから、命だけは、助けてくれ・・・!」
有園:「じゃあ、チャンス上げます。・・・私の事、突き飛ばしたあの日、何で突き飛ばしたのですか?」
内藤:「・・・気持ち悪かったからだ」(小声)
有園:「今、何て言いました?」
内藤:「気持ち悪かったからだ!!! ・・・勝手に俺の事、好きになっただけじゃなく、
毎日、毎日、学校帰り、待ち伏せしたり、・・・可笑しくなりそうだった!!!」
有園:「そうでしたか・・・。じゃあ、何であの日!!! 私をデートに誘ったん・・・ですか!!!!?」
内藤:「それは・・・」
有園:「そ、れ、は!?」
内藤:「お前を、その日、殺したいと思ってたからだ!!!!!」
有園:「・・・ふふっ。・・・あははははは!!!!!」
内藤:「ちゃんと答えただろ!!! これが知りたかったんだろ!!!」
有園:「ええ。ずっと知りたかったです。あの時の気持ちを・・・。
今日、呼び出したのは、永野さんの事、気になってたから、デートしたかったんだ!
なんて笑顔で近付いて来たのに・・・。
デートの途中も、私の事、殺したくて、殺したくて、堪らなかったんですね!!!
・・・あ~、これで全部すっきりした。・・・殺しますね」
内藤:「止めろ!!! ちゃんと答えたじゃないか!!! 訊いても、どうせ殺す気だったんだろ!?」
有園:「それは幾ら何でも心外だな~。あの時から今でも、貴方の事、好きなのは変わらないのに・・・。
・・・仕方ない。・・・もう一つだけチャンス上げます。
内藤:「本当か!?」
有園:「ええ。答え次第では、開放してあげます。では、問題です。
・・・あの夜、待ち合わせした場所で、蛍は一体、何匹、飛んでいたでしょう~?」
内藤:「そんなのわかる訳・・・」
有園:「5」
内藤:「待ってくれ!? 10!!!」
有園:「4」
内藤:「30!!!」
有園:「3、2、1」
内藤:「50!!!!」
有園:「0・・・。・・・」(0と同時に有園の腹をナイフで刺す)
内藤:「うっ・・・」
有園:「所詮、貴方にとっては、偽りのデートだったんだ・・・。私は、あの夜の光景、今も忘れません。
沢山の蛍が綺麗で、まるで私達を祝福してるようでした」(刺す)
内藤:「うっ・・・」
有園:「あっ、正解は~、100匹以上ですよ~。内藤先輩!!!」(刺す)
内藤:「うっ・・・。止めろ・・・」
有園:「嫌です」(刺す)
内藤:「うっ、俺は・・・、何も・・・、悪くなんか・・・」
有園:「私の心、弄びました」(刺す)
内藤:「それは・・・。・・・お前が勝手に・・・」
有園:「勝手にじゃない!!!!」(強く刺す)
内藤:「ぐああああああああああ・・・!」
有園:「痛いですよね!!! ・・・その痛みは、私の心の痛みと、あの時の体の痛みです!!!
存分に、堪能してください~。ほらっ。ほらっ。ほらっ!」(連続で刺す)
内藤:「うっ。うっ。うっ。・・・これ以上は・・・」
有園:「突き飛ばされて、車に跳ねられた時の痛みは、こんな物じゃないですよ!
それだけじゃない・・・! 突き飛ばし、私が車に轢かれた後、貴方は、そのまま逃げ去りましたよね!!!
あの時、味わった絶望感は、こんなもんじゃ・・・なかった!!!」(刺す)
内藤:「うっ、・・・すまない・・・。・・・もう・・・、許してくれ・・・」
有園:「まだ、これからですよ。死ぬなんて、許しませんよ!!! ほらっ。ほらっ。ほらっ。」(更に刺す)
内藤:「うっ、うっ、うっ・・・。・・・もう、無理だ・・・。・・・殺してくれ・・・」
有園:「あれ~? 生きたかったんじゃないんですか~?」
内藤:「・・・お願いだ」
有園:「折角、死なないように、楽しんでたのに、根性ないですね~。わかりました。
終わりにしてあげます」
内藤:「ありがとう・・・」
有園:「いえいえ」(刺す)
内藤:「ごふっ、・・・これで、楽に・・・」
有園:「あっ、深く刺しましたけど~、まだ死ぬまでには、時間かかると思いますよ~。
終わりにするってのは、私が刺すのをです。
誰も、一気に殺すなんて、一言も言ってませんよ~」
内藤:「嘘だ・・・。・・・なぁ。それじゃ、話が違うじゃないか・・・! 早く殺してくれ・・・!
俺を愛してたんだろ! だったら、殺してくれ!!!」
有園:「嫌ですよ~。勝手に、一人で、苦しみながら、これまでの事、後悔しながら、死んでってくださ~い。
内藤先輩には感謝してますよ~。私に、憎愛って感情、教えてくれて!!!
じゃあ、さようなら・・・。内藤先輩~。あはははははは!!!!!」
(内藤を一人置いて、部屋を出ていく有園)
内藤:「おい、待て・・・、待ってくれ!!!
・・・こんなの嫌だ。嫌・・・。嫌だ。お願いだ・・・! 戻ってきてくれ!!!
あああああああああああああああああああああ!!!!!!」
間
ニュースキャスター:「続いてのニュースです。先週から、行方不明だった警察官、内藤 直樹さんが、遺体で発見されました。
内藤さんは、全身を複数刺されており、何らかの事件に巻き込まれたのではないかと、
捜査が続いております。なお、同僚の警察官、有園 美沙さんも行方不明となっており、
行方を、警察は捜査してるそうです」
終わり
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