蝉裏腹
作者:片摩 廣
登場人物
ススム
ジン
マイ
シズル
比率 【2:1】
上演時間 【50分】
※こちらの台本は、上演前に事前読み、推奨です
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CAST
ススム:
ジン:
マイ:
シズル
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ススム:「はぁ~。またバイト・・・、クビになったよ・・・。これで何度目だろう・・・。
どうして僕は、こんなにも、ダメ人間なのかな・・・」
ジン:「元気出せよ。ススムはダメ人間じゃない。ただ、周りの人間からしたら、少し劣って見えるだけだ」
ススム:「ジン・・・。それって励ましてくれてるの?」
ジン:「そのつもりだったが、駄目だったか?」
ススム:「駄目じゃないけど、ジンって僕とは違って、言いたい事、はっきり言えるからさ・・・。羨ましいよ・・・」
ジン:「何を言ってる。ススムだって言えるじゃないか」
ススム:「それは、大親友のジンにだけだよ・・・!
他の人にも、こうやって言いたい事、はっきり言えたら、こんなに苦労しないよ・・・」
ジン:「そうだったな・・・。まぁ、あれだ。・・・俺はどんな時だって、お前の味方だ。
お前がピンチの時は、真っ先に駆けつけてやる」
ススム:「ありがとう。ジン。・・・でも、その台詞は、将来、好きになった女性に取っておいてよ」
ジン:「どうしてだ?」
ススム:「あ~あ、これだからジンは、モテないんだよ・・・」
ジン:「モテなくて悪かったな! 俺にだって色々、事情ってもんがあるんだよ」
ススム:「事情って、どんな?」
ジン:「秘密だ。お前にだけは、死んでも教えてやらねぇよ」
ススム:「なんだよそれ~。・・・良いよ~だ。・・・そんな薄情なジンは、此処に置いてってやる!」
ジン:「また、あそこに行くのか?」
ススム:「うん・・・。何たってあそこは、僕の聖域だからね」
ジン:「あんな古臭い本屋がね~。
第一、街からも少し離れてるからか、人もいつも少ないし、あんなんで、商売が続けれるのかね・・・」
ススム:「そこが良いんだよ。・・・あの本屋はさ、何か僕に似てるんだ・・・」
ジン:「どの辺がだ?」
ススム:「・・・う~ん、あまり目立たない所?」
ジン:「確かに似てるかもな」
ススム:「だからかな~。凄く居心地が良いんだ・・・」
ジン:「なぁ、ススム・・・」
ススム:「何?」
ジン:「変わりたいと、思った事はねぇか?」
ススム:「う~ん。無いかな。・・・こうしてジンも居るし、十分幸せだよ」
ジン:「そうか・・・。・・・ススムが幸せなら、俺も幸せだ」
ススム:「何だよ、それ~。・・・あっ、そろそろ行くね。またね、ジン」
ジン:「おう。またな」
間
ススム(M):「やっぱり此処は落ち着くな~。・・・あっ、この漫画、やっとアニメ化するんだ。
・・・こんなに売れてるのに、一向にそんな気配無くて、心配だったけど、良かった~」
マイ:「・・・あの、その漫画・・・」
ススム(M):「えっ!? 何・・・。・・・もしかして、今、話しかけられた!?」
マイ:「えっと・・・。・・・聴こえてますか?」
ススム(M):「・・・僕の他には、お客が少し・・・。・・・きっと他の人にだよね・・・」
マイ:「無視しないでください・・・」
ススム(M):「嘘でしょ・・・。やっぱり僕にたいしてだ。・・・何か悪い事したのかな!?」
マイ:「あの、もしかして・・・」
ススム:「ご、ごめんなさい!?」
マイ:「え!?」
(本屋を飛び出すススム)
マイ:「・・・どうして・・・?」
間
ススム(M):「一体何なんだよ!? 何か悪い事した!? ・・・はぁ~、他にも新刊のチェック、したかったのにな~」
ジン:「おや、随分と早いご帰還だな。ススム」
ススム:「ジン・・・」
ジン:「どうした? 何か嫌な事でも、あったのか?」
ススム:「ジンはさ、スーパーヒーローみたいだよね・・・」
ジン:「おい、いきなりどうした? 本当、大丈夫か?」
ススム:「さっきさ、本屋で、いきなり女性に話しかけられたんだ・・・」
ジン:「へぇ~、それって、お前にしては快挙じゃねぇか!」
ススム:「茶化さないでよ・・・」
ジン:「悪い悪い。・・・でっ、話しかけられてどうなったんだよ? お前も話しかけたのか?」
ススム:「それがさ・・・、余りの突然だったから、・・・怖くなって逃げだしてきた・・・」
ジン:「はぁ!? 何だよそれ~! そこは、男なら思い切って、声かける所じゃねぇか!」
ススム:「そ、そんなの絶対、無理だって・・・! 僕は、ジンと違って、小心者だし・・・、勇気だってないし・・・」
ジン:「そんな事ねぇよ! お前は、誰よりも勇気があって、それに優しい男だ!」
ススム:「そこまで言うなら。・・・ジンも付いてきてよ」
ジン:「おいおい・・・」
ススム:「ジンが一緒に来てくれたら、僕、その女性に話しかけれるかも・・・」
ジン:「良いか。よく聞け。ススム。・・・俺は一緒に行ってやる事は、出来ねぇ」
ススム:「どうして!?」
ジン:「どうしてもだ! なぁ、ススム。・・・俺はお前の味方だけどよ。・・・これは余りにも情けねぇよ。
悪い事は言わねぇから、今からでも戻って、その女性に一言謝って来い」
ススム:「そんなの無理だって・・・」
ジン:「無理なんかじゃない。お前も男なんだ。男なら、勇気出してこい!」
ススム:「・・・でも」
ジン:「その女性も、もしかしたら、まだそこに居るかもしれないだろ」
ススム:「・・・わかったよ。・・・行ってくる」
ジン:「お前なら絶対出来る。頑張れよ!」
間
(再び、本屋に戻るススム。店内に入ると、さっきの女性はまだそこに居た)
ススム(M):「はぁ~。ジンの言う通り・・・居るよ。・・・もしかしたらワンチャン、もう居ないかもって思ってたのに・・・」
マイ:「あっ・・・」
ススム(M):「・・・あれ、こっち見た。それに流石に、あの反応だと気付いたよね・・・。ど、どうしよう・・・」
マイ:「戻って来たんですね・・・」
ススム:「・・・」
マイ:「良かった・・・」
ススム:「え・・・?」
マイ:「あの・・・、さっきは、いきなり声かけて、ごめんなさい・・・」
ススム:「・・・こ、こちらこそ、ごめんなさい・・・」
マイ:「どうして、貴方も謝られるのですか?」
ススム:「さっき・・・、突然、店飛び出して、逃げちゃったから・・・」
マイ:「びっくりさせた私が悪かったんです。・・・怒ってませんよ」
ススム:「本当・・・?」
マイ:「はい・・・。・・・あの、その漫画・・・、お好きなんですか?」
ススム:「・・・好きだけど。・・・どうして?」
マイ:「貴方を見た時、こう思ったんです。・・・あっ、この人も、同志なんだって・・・」
ススム:「同志・・・?」
マイ:「その漫画、呼んでる時の貴方、凄く目が輝いてました。・・・それわかったから、つい嬉しくて、話しかけちゃって・・・」
ススム:「そうだったんだ・・・。君って、勇気があるんだね。・・・僕なんて初対面の人に声なんて・・・」
マイ:「・・・私も、こんな事、初めてですよ・・・」
ススム:「え・・・!? てっきり慣れてるのかと、思った・・・」
マイ:「慣れてるなんてそんな・・・! ・・・本当、全然ですよ・・・」
ススム:「・・・じゃあ、君もこの漫画に、勇気を貰ってだね」
マイ:「そうなるかも知れませんね・・・。
・・・あの、こんな事、嫌かもしれませんが・・・、良ければ、友達になって貰えませんか?」
ススム:「え?」
マイ:「周りにこの漫画、好きな人って居なくて・・・。・・・一緒に話せる人が欲しいなって思って・・・」
ススム:「・・・僕でも良いの?」
マイ:「はい」
ススム:「・・・後悔しない? ・・・僕、話し下手だし・・・、面白い事も言えないし・・・」
マイ:「・・・私も似た者同士です。・・・御迷惑ではないなら・・・」
ススム:「・・・わかった。良いよ。・・・でも、何かさ不思議。
・・・初めは何なの!? って思って身構えたり、怖かったけど・・・、今は、もう平気だ・・・」
マイ:「私も、そんな感じです・・・。・・・私達って案外、気が合うのかも知れないですね」
ススム:「かもしれないね。・・・あっ、いつもこの時間帯に来てるの?」
マイ:「・・・何か、昼間って好きじゃないから・・・。・・・人混みって苦手なんです・・・」
ススム:「あっ、同じだ。・・・僕も、昼間より、夜が好きなんだ~。
・・・夜ってさ・・・、こんな僕でも、周りの人間と同じように、普通に見える気がするんだ。
昼間は、みんな輝いてるようで、僕一人だけが、劣ってる気がして、好きじゃない・・・。
だからかな~。昼間に活躍してるヒーローより、夜に活躍するヒーローが好きなんだ・・・」
マイ:「その気持ち・・・、何だかわかります・・・。
この漫画の主人公みたいに、夜に人知れず、悪を倒し、活躍してるのってカッコいいですよね。
ダークヒーロってのとは、また違うと思うのですが・・・、何かこの漫画読んで、
より一層、夜の時間が好きになりました・・・」
ススム:「実際、漫画のように悪人が目の前に現れて出てきたら、パニックになって、大変だけどね・・・」
マイ:「違いありませんね・・・。ふふふ。・・・あっ、そろそろ帰らないと・・・」
ススム:「それもそうだね。僕はもう少し、他の新刊のチェックもしてから、帰ろうかな」
マイ:「じゃあ、また。・・・あの・・・!」
ススム:「何?」
マイ:「明日も、この時間に、来ますか?」
ススム:「明日は、ちょっと用事が・・・。・・・明後日の今日と同じ時間なら・・・」
マイ:「じゃあ、その日で良いです。・・・また、こうやって話したいです」
ススム:「わかった。じゃあ、また明後日ね」
マイ:「はい・・・! それじゃあ!」
間
(翌日。本屋での出来事をジンに話すススム)
ジン:「そいつは、良かったじゃないか。なっ、俺の言う通り、声かけて正解だっただろ?」
ススム:「ジンには、 なんだかんだ言っても、頭が下がらないな~」
ジン:「お前はお前のままで、良いんだよ」
ススム:「何だよそれ~。この前は、変わってみたいとは思った事が無いのか? なんて聞いて来たくせに」
ジン:「何気に根に持ってるな・・・。あの時は悪かったって!
でも、安心した。・・・この前より、お前、明るくなったみたいでさ」
ススム:「それは、ジンのお陰だよ。・・・ありがとう」
ジン:「よせよせ、照れるっての! あっ、所で、連絡先とかは交換したのか?」
ススム:「ああああああああああああ!!!!」
ジン:「その反応からすると、忘れたみたいだな・・・。・・・はぁ~。もう一言、アドバイスしとくべきだったか~」
ススム:「明日会うから、その時、訊いてみるよ」
ジン:「おっ、少しは男気、出てきたじゃねぇか」
ススム:「僕だって、やる時はやるのさ。ねぇ、今度、その子、紹介するね。ジンにも会って欲しいんだ」
ジン:「ほう~。それは嬉しい誘いだな。でも、止めとく」
ススム:「どうしてさ?」
ジン:「お前もまだまだだな・・・。そんな良い雰囲気に、これからなるかも知れないって所に、
入ってなんか行けねぇよ。第一だ。・・・その女性が、俺を見て、万が一惚れたりなんてしたら、
それこそ、修羅場の始まりだからな~。そんなのは、ごめんだ~」
ススム:「はぁ!? それは幾なんでも有り得ないって! ジン、そんなんだから、女性にモテないんだよ!」
ジン:「こいつは、一本取られたな! ・・・なぁ、ススム。良い機会だ。・・・この出会い、大切にしろよ」
ススム:「言われなくても、わかってるよ」
ジン:「また、進展あったら、教えてくれ。じゃあな」
ススム:「またね。ジン」
(明後日の夜、本屋で一足先に待っているジン。少しして、マイがやって来る)
マイ:「こんばんわ。あっ・・・、もしかして、早く来てました?」
ススム:「少しだけね」
マイ:「遅れてすみません・・・。実は、。ひょっとしたら、来ないかもって思う気持ちも、心の中であったので、
店内、入ろうか迷ってました。でも、勇気出して入って、姿、見かけた時、ホッとしました。
約束守ってくれて、嬉しいです」
ススム:「僕もさ、君と会えるの楽しみな反面、同じような考えもあったから、居てもたっても居られなくなって、
早く来ちゃった・・・。僕達、もっとお互い、信じないといけないね・・・」
マイ:「そのようですね・・・。あっ、何か良い新刊、ありましたか?」
ススム:「幾つかあるけど、君ってどんなジャンルが・・・」
マイ:「マイです」
ススム:「え?」
マイ:「私の名前、マイです。・・・貴方の名前も教えてもらえますか?」
ススム:「・・・ススムだよ。・・・ありきたりな名前だし・・・、僕って後ろ向きと言うか、劣ってる事ばかりだから、
正直、名前に負けてるんだよね・・・」
マイ:「そんな事ないと思います。良い名前だと思いますよ」
ススム:「良いよお世辞は。・・・それよりさっきの質問に戻るけど・・・、どんなジャンルが好き?」
マイ:「何でも好きになったら、読んじゃいます・・・」
ススム:「これといったジャンルはないって事か。じゃあ、この漫画なんてどう?」
マイ:「殺人ゲーム系ですか。・・・ヒーロー系とは違う面白さ有りますよね。
・・・首謀者は誰なんだろうって、考え出すと、そればかりリピートしちゃって、
寝られなかったり・・・」
ススム:「その様子からすると、嫌いではないんだね。じゃあ、オススメだよ。一回読んでみて」
マイ:「今すぐ、買ってきます!」
ススム:「え!? そんなすぐじゃなくて良いよ! 漫画アプリにも、試し読みとかもあるし、それ読んでからでも」
マイ:「ススムさんが、私に初めてオススメしてくれた漫画ですから、買って読みたいんです! ・・・駄目ですか?」
ススム:「うっ・・・」
マイ:「どうかしました?」
ススム:「な、何でもない! 気持ちはわかったから、買ってきて」
マイ:「はいっ! ありがとうございます」
ススム:「・・・」
間
マイ:「お待たせしました」
ススム:「・・・マイさんってさ、真っ直ぐだよね・・・。こう決めたら、じっとしてられないっていうか・・・」
マイ:「・・・この性格、厄介なんですよ。・・・失敗する事も多くて」
ススム:「それでも、何か良いな~。・・・僕なんか、いつも慎重になり過ぎて、面白そうだなって思っても、
もしかしたらって思っちゃうから、・・・結局、試し読みしてからなんだよね・・・」
マイ:「慎重なのは良い事ですよ。私達って、足したらちょうど良い塩梅になりそうですね」
ススム:「ちょうど良い塩梅か・・・。・・・よしっ、決めた」
マイ:「どうかしました?」
ススム:「良かったら、マイさんのオススメも教えて」
マイ:「良いですよ。・・・何か嬉しい」
ススム:「え?」
マイ:「あっ、いや、・・・こういうのも憧れてたので・・・。
じゃあ、ススムさんの好きなジャンル・・・」
ススム:「気に入ったら何でも」
マイ:「え?」
ススム:「俺も、マイさんと同じって事」
マイ:「そうなんですね! じゃあ、どうしようかな~。・・・あっ、この漫画なんてどうですか?」
ススム:「カフェ飯?」
マイ:「はいっ。主人公の女の子が、カフェで周りの目を気にせず、
お洒落なランチとか、ケーキを豪快に食べる所が、何か読んでると、前向きな気持ちになれるんです!」
ススム:「へ~。お洒落なカフェとかだと、女性って、まずは写真撮って、映えるよねって、言い合ってるイメージだから、
面白そうかも」
マイ:「架空ではなくて、実際にあるお店ばかりなんですよ。・・・だからいつか私も、行ってみたいな~って・・・」
ススム:「ひょっとして・・・、マイさんってお洒落なカフェ、行った事は無いの?」
マイ:「お、お洒落なカフェなんて・・・、私には似合いません・・・。
周りの目ばかり気になっちゃうし、きっと耐えられないです・・・。
ススムさんは、一人でも行けるのですか?」
ススム:「あ~、・・・僕も無理かも・・・」
マイ:「・・・あのっ!」
ススム:「ん?」
マイ:「あっ! いえ・・・、何でもないです・・・」
ススム:「何? どうしたの?」
マイ:「・・・言いたい事、忘れちゃいました・・・」
ススム:「そう・・・。・・・じゃあ、この漫画、買ってくるね」
マイ:「はい、待ってます」
間
ススム:「お待たせ」
マイ:「お帰りなさい」
ススム:「お互いのオススメ漫画、教え合うなんて、初めてだけど、何かこういうの良いね」
マイ:「楽しいですよね!」
ススム:「うん!」
マイ:「・・・じゃあ、そろそろ。帰りましょうか。・・・次はいつ・・・」
ススム:「あっ! そうだ!」
マイ:「どうかしました?」
ススム:「・・・良ければ、連絡先、交換しない?」
マイ:「あっ・・・。それもそうですね。・・・はい、良いですよ」
ススム:「良かった。・・・じゃあ、早速」
間
マイ:「連絡先、交換出来ましたね。これで、いつでも会えたりも・・・」
ススム:「え?」
マイ:「あっ! いや、会えないかもって不安はなくなるって意味ですよ!?」
ススム:「それもそうだね! じゃあ、次会う日は、後で連絡するね」
マイ:「わかりました。待ってます」
間
(翌日、ジンに進展を報告するススム)
ススム:「とまぁ、こんな感じで・・・。・・・無事に連絡先、交換出来たよ」
ジン:「へ~。思ってたより順調だな。・・・となると、こりゃあ、次のステップに進めるかもな~」
ススム:「次のステップって?」
ジン:「そりゃあ、決まってるだろ! 意気投合した男女がする事って言ったら、デートだよデート!」
ススム:「で、デート!? ・・・それは、幾ら何でも早すぎるって!?」
ジン:「そんな事ないって。話を聞く限りだと、そのマイって子も、お前に好意を持ち始めてる。
鉄は熱い内に打てって言うだろ。こういうのは、勢いも大事なんだよ!」
ススム:「でも・・・。デートってたって、何処に誘えば・・・」
ジン:「お前も、鈍感なんだな・・・。・・・よ~く思い出してみろ。・・・俺にさっき話し聞かせた内容を。
そこに、答えがあるよ」
ススム:「話した内容って・・・。・・・あっ、もしかして」
ジン:「どうやら気付いたようだな。・・・今、お前が考えるその場所だ」
ススム:「待ってよ! ・・・その場所って言ったって、僕も・・・」
ジン:「だからこそ、誘うんだよ。・・・初めて同志なんだ。・・・必ず上手くいく。
俺を信じろ」
ススム:「もし、上手くいかなかったら、後で覚えてろよ」
ジン:「あぁ。その時は、殴るなり好きにして良い。でっ、今度はいつ会うんだ?」
ススム:「明日の夜。・・・あ~折角、楽しみにしてたのに、ジンのせいで、変に緊張してきた~」
ジン:「そんなススムを見れて、俺は楽しいけどな!」
ススム:「何だよ。ジンの意地悪!」
ジン:「おいおい、そりゃねぇだろ・・・。俺は、大親友の恋の応援の為に、必死になってるのに」
ススム:「それも有難いけどさ、ジン自身の事も、もっと考えてよ。ジンにも、ちゃんと幸せになって欲しい・・・」
ジン:「ススム・・・。・・・ありがとうな。俺の事は、心配しなくて大丈夫だ。ちゃんと幸せになるさ」
ススム:「なら良いけど。約束だよ」
ジン:「あぁ。約束だ」
ススム:「じゃあ、そろそろ行くね」
ジン:「良い報告、期待してるからな」
間
(翌日の夜、いつもの本屋)
マイ:「ススムさん」
ススム:「こんばんわ。・・・あっ、マイさんのオススメの漫画、面白かったよ」
マイ:「良かったです。私も、ススムさんのオススメの漫画、気に入りました」
ススム:「良かった~。・・・続きだけどさ・・・」
マイ:「はい」
ススム:「買い揃えてるから、家にあるのだけど・・・、今度、会える時に全巻、貸そうか?」
マイ:「本当ですか!? 嬉しい! じゃあ、私も、全巻持ってるので、今度、持ってきますね」
ススム:「ありがとう! 何だかんだ。2巻が気になってさ・・・。買うか迷ってたよ~」
マイ:「私もです。・・・じゃあ、また次会える日は、連絡で・・・」
ススム:「その事なんだけど・・・」
マイ:「どうかしました?」
ススム:「もし、マイさんさえ良ければ、・・・この漫画に出てるお洒落なカフェ、二人で行ってみるなんて、どうかなって・・・」
マイ:「えっ? 私と・・・?」
ススム:「うん・・・」
マイ:「・・・少し、考えさせてもらって良いですか?」
ススム:「・・・わかった。じゃあ、返事はいつも通り、携帯で待ってる」
マイ:「じゃあ、私、急用思い出したので、今日は帰りますね」
ススム:「うん・・・。気を付けてね」
マイ:「ススムさんも、あまり遅くならないで、帰ってくださいね。じゃあ、また・・・」
間
(翌日、一人で落ち込んでるススムにジンが話しかける)
ジン:「どうしたんだ? そんな暗い顏して・・・」
ススム:「僕、駄目だったかも・・・」
ジン:「駄目って、デートの事か? ちゃんと誘ったんだよな?」
ススム:「あぁ、誘った。・・・緊張したけど、僕なりに頑張って、勇気出して、言ったよ。
でも、・・・少し考えさせてもらって良いですか? って言われてさ~」
ジン:「あ~。・・・そりゃあ、まぁ、なんだ・・・。・・・それって、その場で断ることが、気まずいから、
後で、時間経ってから、断られるパターンかもってわけか・・・」
ススム:「そんなはっきりと言わないでよ~。はぁ~」
ジン:「おいおい、そんな深いため息、するなよ。一緒に幸せまで逃げちまうって。
でも、まぁ、お前なりに、頑張ったんだ。
結果は駄目だったとしても、今までのお前とは違って、前進してるんだ。
ほら、ちゃんと胸張れ!」
ススム:「他人事だと思って・・・」
(その時、ススムのスマホの着信音が鳴る)
ジン:「おっ、ススム。スマホ見ないのか? ひょっとしたら、そのマイって子からかもよ」
ススム:「見れるわけないだろ・・・。その通りなんだから・・・」
ジン:「おい、ススム。・・・スマホの着信音、その子、専用ってわけか・・・」
ススム:「すぐ気付けるようにだよ・・・。はぁ~」
ジン:「いつまで、そうして溜息ばかりついてる気だ。駄目な時は駄目なだけだ。
潔く届いた返事、見て見ろよ。
じゃないと、俺がお前の代わりに、読んでやるからな~」
ススム:「はぁ~。わかったよ。・・・読めば良いんだろ。読めば・・・」
(スマホを手に取り、マイからの返事を読むススム)
ジン:「その調子、その調子」
間
ススム:「・・・」
ジン:「でっ、返事はなんだって?」
ススム:「・・・」
ジン:「おいっ、フリーズしてないで、結果を教えろよ。・・・もしかして、駄目だったのか?」
ススム:「・・・」
ジン:「そっか。やっぱり駄目だったか・・・。よし、俺も男だ! おい、ススム、俺の事、一発殴って・・・」
ススム:「オッケーだって・・・」
ジン:「オッケー? てことは、なんだ! つまり!」
ススム:「一緒に行きましょうだって」
ジン:「おい! ススム~! 良かったな~!!! これで、お前も彼女持ちだ~!!!」
ススム:「それは幾らなんでも、早すぎるって!?」
ジン:「そんな事ねぇよ! いや~、良かった。これで俺も一安心だ」
ススム:「え? どういう意味?」
ジン:「俺にもしもの事があっても、ススム、お前はもう大丈夫って事さ」
ススム:「ジン、何処か行っちゃうの? 俺を置いて?」
ジン:「違う。もしもの時の話だ。・・・でも、本当、良かったな。ススム!」
ススム:「うん! ・・・ジン、ありがとうね。・・・ジンがいなかったら、こう上手く行かなかった・・・。
やっぱりジンは、僕のスーパーヒーローだ」
ジン:「何だよそれ?」
ススム:「僕が落ち込んだり、どうしようもない気持ちの時は、誰よりも早く来てくれて、
こうして側に居てくれる。本当、感謝してる」
ジン:「ススム。よく聞け。これからは、守られてばかりでなく、お前も守る側にもなるかもしれねぇんだ。
もっと強くなれ。そしていつか、俺を超えて見せろ。それが、俺の願いだ」
ススム:「僕にジンが超えられるかな・・・」
ジン:「お前なら必ず超えられる。安心しろ。俺が保証してやる。
・・・よしっ、じゃあ記念すべき、デート第一弾の為に、作戦会議だ!」
ススム:「うん!」
間
(デートの日、当日。待ち合わせの時間より早く到着したススムは緊張していた)
ススム(M):「いよいよだ~。ジンからのアドバイス通り、準備はしたけど、大丈夫かな・・・。
ううん、ネガティブな感情に囚われたら駄目だ。
ちゃんとマイに、僕の気持ち伝えなきゃ・・・」
マイ:「ススム・・・。早かったんだ」
ススム:「そんな事ないよ。今、着いたところ。何かいつものと雰囲気違って見えるけど、
そんなマイも、良いね・・・」
マイ:「気持ち悪い・・・」(小声)
ススム:「え? 今何か言った・・・?」
マイ:「聴こえなかったようだから、もう一度、言うね。
ススム、あんた、気持ち悪い」
ススム:「何で・・・?」
マイ:「何で・・・? そんなの自分の姿、見てみたら、わかるでしょ? 何そのセンス悪い紙袋・・・。
はぁ~。正直、ガッカリ。というか、幻滅した・・・。
ねぇ、ススム。大事な事だから、よ~く聞いてね。
もう金輪際、私の前に現れたり、連絡して来ないで。顔もみたくないっていうか、私の周りから消えて。じゃあね」
ススム:「え? 待って・・・。マイ・・・」
マイ:「本当、気持ち悪い・・・」
(そう言い残すとススムの前から去るマイ。今起きた事が理解できず、その場から暫く動けず立ち止まってたススム)
ススム:「・・・僕の何がいけなかったの・・・。マイ・・・。どうして・・・」
間
(翌日、ジンに一部始終、起きた事を話すススム)
ジン:「昨夜の話は以上か? ススム・・・」
ススム:「うん・・・」
ジン:「一体、どういう事なんだ・・・」
ススム:「僕にも、訳がわからないよ・・・。・・・ジンのアドバイス通り、いつもより服装も気を使ったし、髪型だって・・・」
ジン:「あぁ。・・・いつものお前より、ずっと良い。自信持て・・・」
ススム:「自信なんて持てるわけないよ・・・」
ジン:「ススム・・・」
ススム:「マイ、紙袋みて、不機嫌そうな顔してた・・・」
ジン:「幾ら何でも、紙袋、一つで・・・。他に何か考えられる理由、ないのか?」
ススム:「・・・そんなのわからないよ。・・・ねぇ、ジン。・・・僕、どうしたら良いの・・・?」
ジン:「悪い事は言わねぇ。・・・そんな女、忘れてしまえ。・・・この先、もっとお前にあった良い子が現れる」
ススム:「変な慰めはよして。・・・どうせ僕なんか、人を好きになる事も、好かれる事も、無理だったんだよ・・・」
ジン:「ススム・・・」
ススム:「ごめん・・・。何か疲れとれないから、帰るね・・・」
ジン:「一人で平気か・・・?」
ススム:「うん、大丈夫だよ・・・。心配してくれて、ありがとう。ジン。・・・またね」
ジン:「あぁ・・・。またな。ススム・・・」
(家に帰宅途中、マイの幻聴に囚われるススム)
マイ:「あんたって、気持ち悪い・・・」
ススム:「止めてよ・・・」
マイ:「もう二度と現れないで」
ススム:「もう、わかったよ・・・」
マイ:「そんなんだから、モテないのよ。この非モテ野郎」
ススム:「酷い事、言わないで・・・!」
マイ:「何であんたなんかに、好意もとうとしたんだろう・・・」
ススム:「お願いだから・・・」
マイ:「気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い・・・!!!」
ススム:「もう、止めてぇええええええ!!!!!」
マイ:「そうやって、一生、逃げ続けなさいよ。・・・負け犬・・・」
ススム:「はぁ、はぁ・・・。止めて・・・」
マイ:「(嘲笑い続ける)」
間
(数週間後、ただならぬ雰囲気のススムを見て、心配するジン)
ジン:「大丈夫か・・・? ススム・・・?」
ススム:「あ~、ジン。今、何か言った?」
ジン:「おいおい、本当に大丈夫か・・・?」
ススム:「大丈夫・・・だよ。・・・心配しないで。・・・マイの声が聴こえるだけだから・・・」
ジン:「どういう意味だ?」
マイ:「気持ち悪い・・・」
ススム:「ほらっ、今の聴こえた・・・? マイの声がさ・・・」
ジン:「おいっ! しっかりしろ! ススム。・・・マイの声なんて、聴こえなかった!
それは、ただの幻聴だ!」
ススム:「そんな事無いよ・・・。マイはいつもすぐ側に居るんだ・・・」
ジン:「そんなの幻だ! 目を覚ませ! ススム!!!」
マイ:「あんた、気持ち悪い・・・。本当、気持ち悪いよ・・・」
ススム:「ほらっ! また聴こえた! ごめんね・・・! マイ・・・! 気持ち悪くてごめんね・・・!」
ジン:「このままじゃ、ススムが可笑しくなる一方だ・・・。どうすれば・・・」
ススム:「心配しなくて、大丈夫だよ・・・。ジン。・・・もうすぐ何もかも終わるから・・・」
ジン:「どういう意味だ? ススム!」
ススム:「すぐわかるよ・・・。ふふふっ・・・」
間
(その夜、ススムは数週間かけてマイの尾行を続けていた。そしてついに考えてた事を決行しようと、後を付けていた)
マイ:「・・・もう、こんな時間・・・。・・・急いで帰らなくちゃ・・・」
(遠くから、その様子を見て呟くススム)
ススム:「マイ・・・。もうすぐだよ・・・」
間
マイ:「この公園、薄暗くて怖い・・・。でも、早く帰らないと行けないし、此処の階段、降りた方が早いし、通っちゃおう・・・」
ススム:「ねぇ、マイ・・・」
(背後から、いきなり声かけられ驚き振り向いた瞬間、ススムに階段から突き落とされるマイ)
マイ:「え!? スス・・・ム? きゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ススム:「・・・」
間
(階段から落ちて、全身を強く打ち、階段の下で、血だらけで倒れるマイ。そこにゆっくり階段を下りて、マイの目の前に立つススム)
マイ:「ススム・・・。何で・・・? ・・・私は・・・」
(何かを言い残して、死ぬマイ)
ススム:「バイバイ・・・。・・・マイ・・・」
間
(暫くその場で立ち尽くすススムに、背後から声がかけられる)
マイ:「よくも・・・、殺したな・・・」
ススム:「うわああああ!!! マイ!!! そんな!?」
マイ:「ススム・・・。あんたを道連れに・・・、するまで・・・、成仏出来ない・・・」
ススム:「ごめん・・・! でも! 仕方なかったんだ! あのままじゃ、僕が・・・! 僕が・・・!」
マイ:「(笑い出す)」
ススム:「・・・マイ?」
マイ:「ススム・・・。あんたって、本当、最高・・・」
ススム:「どういう事・・・?」
シズル:「・・・私は・・・、シズル。・・・そこで、複雑な顔で死んでるマイの・・・、双子の妹よ」
ススム:「双子・・・?」
シズル:「ええ、そう。・・・ねぇ、ススム。あんたって、本当、お姉ちゃんの事、大、大、大好きだったんだね~。
お姉ちゃんもさ、あんたの事、大好きでたまらなかったんだよ~」
ススム:「え・・・? じゃあ、どうして・・・?」
シズル:「あんたって本当、鈍いわね・・・。つまりこういう事。あの時、あんたを絶交したマイは、お姉ちゃんじゃなく、
私、シズルでした~!」
ススム:「嘘だ・・・。じゃあ、マイは・・・?」
シズル:「本当のお姉ちゃんは、私がコーヒーに入れた睡眠薬で、あの時は家で、ぐっすり眠ってたわ。
起きてからの、お姉ちゃんったら、最高に良い顔してた~。
顔面蒼白になって、おどおどしちゃって、側で見てたけど、痛かった~」
ススム:「・・・」
シズル:「それだけじゃないのよね。お姉ちゃんったら、慌てて、あんたに連絡しようとしたから、
私、こう言ったの。・・・お姉ちゃん、そんなに必死になって、痛い女に思われるから、
相手から、連絡来るの待った方が良いって」
ススム:「そんな細工を・・・。・・・それで、本当のマイからも連絡も無かったのか・・・」
シズル:「お姉ちゃんったら、私の言う事、信じちゃって、この数週間、今のあんたと同じように、疑心暗鬼にかられていたわ。
そんなお姉ちゃんを、励ますの大変だったのよ~。でも、まさか・・・、殺しちゃうとわね~」
ススム:「お前が、そう仕向けたんだろう・・・」
シズル:「それは考えすぎ! 誰も殺して欲しいとまでは、思わなかったわよ! まっ、邪魔な存在ではあったけど・・・」
ススム:「実の姉が邪魔・・・?」
シズル:「あんたには、一生わからないだろうな~。双子として、生まれた私の苦しみなんて~。
折角の機会だし、教えてあげる。
私ね、いつもお姉ちゃんと比べられてた。・・・お姉ちゃんが何をしても上手くいかず、鈍くさいから、
そのしわ寄せはいつも妹の私だった。・・・親も、駄目なお姉ちゃんより、私ばかり厳しく躾たり、
勉強も強制して来て、本当、毎日、毎日、考える事は、自立して一人暮らししたいって事ばかり。
ずっと耐えて、耐え抜いて、やっと一人暮らしも出来て、これで自由になれたと思った。それなのに・・・。
事もあろうか、お姉ちゃんが私の住んでる部屋にやってきたのよ。どうして? と考える間もなく、
親から、電話が来て、こう言われたわ。お姉ちゃん、一人じゃ心配だし、あんた一緒に住みなさいって。
その時、思った! あ~、私は一生、この姉から、逃げられないんだって・・・」
ススム:「それだけの理由で、僕とマイを・・・」
シズル:「今、それだけの理由って言った!? ふざけないでよ! それだけじゃないわ!
そんな何しても駄目なお姉ちゃんなのに、何故か男にはモテたのよ!
それが私にとって、どんなに惨めかわかる?」
ススム:「そんなのただの逆恨みじゃないか」
シズル:「逆恨みだけじゃないわ。私の大好きだった人も、お姉ちゃんを紹介した事で、
いつの間にか、仲良くなって、挙句の果てには、私より、お姉ちゃんを好きになった。
そんな付き合っては、別れを繰り返すお姉ちゃんの尻ぬぐいは、私・・・。
地獄の日々よ・・・。それなのに、今度もまたいつの間にか、あんたと良い関係になってたから、
いい加減、うんざりして、あの計画を実行したってわけ」
ススム:「マイは、それでも一生懸命・・・」
シズル:「一生懸命、恋してれば、身内に迷惑かけても良いってわけ? ふざけるのもいい加減にしてよ!
まぁ、でも良いか。・・・そんな苦悩する日々も、今日で終わったんだから。
本当、感謝してるわ。ススム」
ススム:「・・・こんなの全部、夢だ・・・」
シズル:「何現実逃避しようとしてるのよ。しっかり目の前の現状、見なさいよ!
そこで死んでるお姉ちゃんは、今、さっきあんたが、その階段の上から、突き落としたの!
これは、紛れもない現実よ!」
ススム:「嘘だ・・・。何で僕ばかり、こんな目に合うの・・・。早く夢から覚めて・・・」
シズル:「あんたって本当、気持ち悪い・・・。この鈍感! ノロマ! クズ!!!
あんたなんて、この世に居ない方が良いんじゃない?」
ススム:「もう止めて・・・。止めてよ・・・」
シズル:「嫌だ! 止めない! 散々、お姉ちゃんに苦しめられて、ストレス溜まってたんだ。少しくらい、あんたで解消させてよ!
どうせ、あんたなんて、そんな価値しか無いんだから!!! ほら、地面にうずくまってないで、
ちゃんとこっち見ろよ! あんたの大好きなお姉ちゃんと同じ顔と声なんだからさ!!!」
ススム:「もう嫌だ・・・!!! 助けに来てよ!!!! ジンっ!!!」
シズル:「はぁ? 誰だよ? 助けを呼んだって、誰も・・・」
ジン:「あんたさ、いい加減、その辺にしといてくれよ」
シズル:「何!?」
ススム:「ジン・・・。来てくれたんだ・・・。怖かったよ~」
ジン:「すまないな・・・。もう少し、早く駆けつけたかったが、時間かかっちまった・・・。
これじゃあ、正義のヒーロー、失格だな・・・」
ススム:「ジン・・・」
シズル:「ちょっと何なのよ? これ。意味わからない!」
ジン:「うるさい! 少し黙ってろ! 今は、お前とじゃなく、ススムと話してんだよ・・・」
シズル:「・・・」
ススム:「ジン・・・。助けに来てくれて、ありがとう・・・」
ジン:「礼なんて良いから、お前は少し、寝てろ。良いな」
ススム:「うん・・・。ありがとう・・・。ジン・・・」
間
ジン:「あんたさ・・・。随分と大事な親友を酷い目に合わせたみたいだな~。
ススムはさ、蝉と一緒なんだ。長い年月を耐え忍んで、
世間から、周りの人間から、劣ってると馬鹿にされても、
それでも、こんなの慣れたし平気だと、明るく振る舞って・・・。
ずっと、地上に出るのを夢見て待っていた。
そんなこいつでも、やっと地上に出れるチャンスを得て、
俺とは別の心を許せる、本当のパートナーが現れたと思ったさ。
なのに、1週間も経たず、その希望は、失われた・・・。お前のせいでな・・・。
なぁ、あんた、この落とし前、どう取ってくれるんだ・・・?」
シズル:「落とし前? それはこっちの台詞。・・・でも、驚いた。そう、そう言う理由だったんだ。あんた達って・・・」
ジン:「おい、これ以上、余計な事は、喋らせねぇよ」
シズル:「へぇ~。喋ったら、どうするの?」
ジン:「決まってる。こうするだけさ・・・!」
間
ススム:「・・・ジン。・・・何してるの? 何だか体が重い・・・」
ジン:「おう、ススム。目が覚めちまったか。悪いな・・・。ちょっと取り込み中だ・・・」
ススム:「・・・ジン、何でその女の首、絞めてるの!?」
ジン:「何でって? 決まってるだろ。お前を散々、傷つけたからだよ!」
ススム:「でも、ジンにまで、そんな事、して欲しくない! お願いだから止めて!!!」
ジン:「本当、ススム。お前は優しいな。俺なんか比べ物にならねぇくらいにさ!」
ススム:「そんな事、どうでも良いよ! お願いだから!!!」
ジン:「生憎だが、そのお願いは聞けないな。・・・なぁ、あんたもそう思うだろ!?」
シズル:「この・・・、人・・・殺し・・・。・・・あんた達、何なのよ・・・!」
ジン:「俺は・・・、ススムの大親友だ・・・!」
ススム(M):「このままじゃ、ジンがこの人、殺しちゃう・・・! 止めないと!!!
ん! ・・・何で? どうして・・・体に力、入らないの・・・!?
このままじゃ!!! 動け!!! 動いてよ!!!」
ジン:「ススム。お前は何も心配しなくて良い。もうすぐ、何もかも終わる・・・!」
ススム:「ジン・・・!!!」
シズル:「苦しい・・・。誰か・・・。助けて・・・!!!」
ジン:「・・・往生際が悪いな。・・・これでお終いだ・・・」
シズル:「あんた達・・・。・・・狂ってる・・・」
間
ジン:「最高の褒め言葉、ありがとうよ・・・」
ススム:「どうして・・・? 何で殺したの・・・?」
ジン:「これが一番、最善だったんだ」
ススム:「そんな・・・。・・・違う、こんなの本当のジンじゃない・・・。これはきっと悪い夢だ・・・。夢に決まってる・・・」
ジン:「ススム・・・」
ススム:「夢なら、目覚めたら、・・・。元の優しいジンに会え・・・る・・・」
ジン:「あぁ・・・。・・・おやすみ。・・・ススム」
間
(ススムの部屋。目が覚めるとそこにはジンが居た)
ススム:「・・・此処は何処? ・・・あれ? ・・・僕の部屋だ・・・」
ジン:「ススム。大丈夫か・・・?」
ススム:「ジン・・・。どうして居るの・・・?」
ジン:「まだ寝ぼけてるのか? お前が呼んだからだろ・・・。何事かって、心配してきてやったのに、暢気に寝てやがって・・・」
ススム:「そうだったっけ・・・? ねぇ、ジン・・・。僕、怖い夢見たんだ・・・」
ジン:「へ~。・・・どんな夢だ?」
ススム:「・・・ジンが、マイそっくりの女性を首絞めて・・・、殺しちゃう夢・・・」
ジン:「何だ? その可笑しい夢・・・?」
ススム:「・・・その時のジン、凄く怖かった・・・」
ジン:「おいおい、勝手に殺人者にして、その言葉はねぇよ・・・」
ススム:「ごめんね・・・。でも、良かった。・・・あれは怖い夢だったんだ」
ジン:「・・・あぁ。・・・夢だ。・・・例え夢の中でも、必ず駆けつけて、俺が守ってやる。
だから、安心しろ」
ススム:「ありがとうね。ジン。・・・でも、あんな怖いジンは、もう嫌だな・・・」
ジン:「悪かったな。夢の中の俺に、ちゃんと言い聞かせておくよ」
ススム:「うん。そうしてくれると助かる。・・・ごめんね。まだ少し眠いや・・・」
ジン:「俺の事は、良いから、もう少し寝ておけ。起きたら、また話そうな」
ススム:「うん。・・・約束だよ。・・・ジン」
ジン:「あぁ。・・・約束だ。・・・ススム」
間
ジン:「ススム。お前は、何も知らなくて良いんだ。
その役割は、スーパーヒーローの俺が全部引き受ける。これから先も、ずっとな・・・」
終わり
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