華麗なる罠
作者:ヒラマ コウ
登場人物
ベン:チームのリーダー、世界の大富豪でもある。潜入やアジトからの指示を担当
マイク:みんなにアホと言われてるが、実は凄腕のハッカー
ケイト:感情を表に出すのが苦手。だけど計算と距離や深さを的確にわかる才能を持つ。
眼鏡に三つ編み。
ミッシェル:身体能力はチーム1。恵まれたボディーを利用して時には囮、時には潜入と巧みに
使いわけるオールラウンダー
ローガン:変装のスペシャリスト。ある時は警察官、ある時は銀行員、と毎回巧みに変装して
仲間をサポートする。
カルロス:裏カジノを数々経営する凄腕実業家。その手は沢山の死者の血で汚れていると言う噂も。
比率:【4:2】
上演時間:【70分】
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CAST
ベン:
マイク、ニュースキャスター:
ケイト:
ミッシェル、ウェイトレスA:
ローガン:
カルロス、従業員:
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本編はここから
(夜 B&Mカンパニー本社ビル屋上)
ベンの招集で集まるメンバー
ベン:「やあ、ローガン、ミッシェル」
ローガン:「いきなり呼び出して何事だ?」
ミッシェル:「そうよ、こんな急な呼び出し困るじゃないの!」
ベン:「今回集まってもらったのには、理由がある。それで急遽、呼び出したんだ」
ローガン:「どんな理由なんだ? 急遽ということは、重大なんだろうな?」
ベン:「あぁ」
ミッシェル:「理由を早く教えて」
ベン:「此処になぜ、俺達は集まってるかというと理由はこうだ!
チームの中に、裏切者がいて、そいつは俺達を嵌めようとしている!」
ローガン:「冗談はよしてくれよ! ベン、何事かと思って集まったら最初に言う言葉がそれかよ!」
ミッシェル:「ローガンの言う通りよ。私達の中に裏切者がいるなんて、冗談じゃないわ!」
ベン:「待つんだ2人共。話は最後まで聞いてくれ。俺は、そいつの正体を暴きたいだけじゃない。
なぜ、俺達を嵌めようとしてるのか理由が知りたいんだ」
ローガン:「確かに、俺達のチームが結成されて今年で2年・・・。ようやく形になって来て友情も芽生えて来たのに
そういう話を聞くと、今までの事も嘘に思えて来るな・・・」
ミッシェル:「待ってよ! 私達は最高のチームよ!
そりゃー、出会った頃はみんな自分の能力を過大評価し過ぎてぶつかったりもしたわ。
だけど、色々な苦難を乗り越えて・・・、私達、皆で上手くやってきたじゃない!」
ローガン:「それはそうだが・・・。ミッシェル、じゃあ、最近の失敗続きはどう説明するんだ?
この前の銀行を狙った時も、後一歩という所で失敗して、危なく捕まる所だったんだぞ」
ミッシェル:「それはそうだけど・・・、私達の中にその裏切者がいるなんて、なんか納得出来ない・・・」
ベン:「だからこそ、今日此処でそいつも呼んで、正体を暴くのさ」
ミッシェル:「どうやってよ? この2年間、そんな妨害行動を起こす様な素振りを見せたメンバーはいなかった。
そう簡単に正体を出すかしら?」
ローガン:「それにだ、そいつがもし、俺達に殺意や復讐心を持ってたら・・・どうする?
此処は見ての通り、高層ビルの屋上。爆破や火事なんか起こされたら
逃げ場なんて、何処にもないんだぜ!」
ベン:「それも想定内だ」
ミッシェル:「どう言う事? 私、死ぬのは嫌よ・・・。
・・・そうよ! ねえ、ヘリコプターとか用意してないの!?
爆破や火事が起きても、ビルの倒壊までは時間がかかるわ!
その間にヘリで・・・」
ベン:「ヘリは用意してない」
ミッシェル:「え? どうしてよ? それじゃあ私達、どうやって脱出するのよ!」
ベン:「それはまだ言えない」
ローガン:「なるほどな。お前のそういう所、嫌いじゃないぜ。
この俺達ですら今は信用出来ないんだな。だから脱出方法があっても教えられないんだろう。
そりゃーそうだよな。今ペラペラと喋って、見す見す逃げられたんじゃ、なんの意味も無いよな!」
ベン:「そういう事だ。それにまだメンバーが全員揃ってない。話は全員集まってからだ」
ミッシェル:「わかったわ・・・」
間
ケイト:「皆さん、早いんですね・・・。私、集合場所、間違えたりで、遅れちゃいました・・・」
ベン:「やあ、ケイト待ってたよ。・・・これで後は、マイクだけだな。
取りあえずみんな、立ち話もなんだから、用意したテーブルでワインでもどうだい?」
ローガン:「まさか・・・、毒や睡眠薬とか入れてないよな?」
ベン:「馬鹿だな。そんな姑息な手は考えて無いよ。良いから、みんな座ってくれ」
ケイト:「ローガンさん・・・。あの・・・毒や睡眠薬って・・・?」
ローガン:「俺達の此処、最近の失敗続きにはどうやら裏切者がいるみたいなんだよ」
ケイト:「え?」
ローガン:「その人物を暴くために、今日此処にみんな集められたってわけだ」
ベン:「説明ありがとう。ローガン」
ローガン:「どういたしまして」
ミッシェル:「そう言えば此処、他にお客さん、見かけなかったけど、ベン・・・、まさか?」
ベン:「察しが良いんだな。今日此処で、何が起こるかわからないから、貸切にしたよ」
ミッシェル:「このビル丸ごと全部!? はあ・・・、お金持ちのやることには本当、ついてけないわ・・・」
ベン:「褒め言葉をどうも」
ミッシェル:「皮肉もさらりと受け流し、言葉巧みに人を操って、本当女たらしよね」
ベン:「それはミッシェル、君が俺を恋人候補として、意識してるって捉えて良いのかな?」
ミッシェル:「さあ、どうかしら? 女は真実をそう簡単には語らない物よ」
ベン:「俺は、そういうミステリアスな部分も好きなんだけど?」
ミッシェル:「ありがとう。嬉しいわ」
マイク:「うわー、此処からの夜景って最高!」
ミッシェル:「馬鹿のおでましね」
ローガン:「そうだな」
ケイト:「ミッシェルさん、ローガンさん・・・」
ベン:「マイク、遅かったな! みんなもう集まってる。早く座ってくれないか?」
マイク:「えー! もう少しだけ、この夜景を観させてくれよ!
ベン:「この席からでも、十分に観れるよ。だからそんな所ではしゃいでないで早く来てくれ!」
マイク:「仕方ないなー! わかったよ! 今そっちに行く!」
マイク:「よっ…と! ・・・それで、こんな所に集めた理由はなんだい?
新しいターゲットの打ち合わせかい?」
ベン:「マイク、ちゃんと落ち着いて聞いてくれ。この前の銀行は覚えているよな?」
マイク:「ああ、あと一歩の所で失敗した銀行だよね? あれは本当、惜しかったよねー。
1千万ドルがパーでガッカリだよ!」
ベン:「この中に、その1千万ドルをパーにした奴がいるんだ」
マイク:「なんだって!?」
ミッシェル:「あ~あ、これよ。私、マイクのオーバーリアクションって嫌い」
ケイト:「ミッシェルさん・・・。マイクさん、私は好きですよ・・・。
私と違って、感情を表に出して・・・みんなとコミュニケーションがとれてますし・・・。
正直、羨ましいです・・・」
マイク:「ありがとう! ケイト! でも、褒めても何も出ないからね!」
ローガン:「はあ~、こんなアホなマイクだけど、ミッションの時になると、
どんな難攻不落な金庫や鍵でも、あっという間に開けちゃうんだから凄いよな~」
ベン:「その才能を見込んで、このチームに一番初めに引き抜いたんだ。俺の目に狂いは無かったのだが・・・。
此処まで、能天気だとは思わなかったよ」
マイク:「みんな、いくら僕がアホだからって、流石に傷つくんだからね!
でもまあ~、寝たら、す~ぐに忘れちゃうんだけどさ!」
ミッシェル:「それも一種の才能よね。あ~あ、私もマイクみたいだったら楽なのかしら~」
ローガン:「アホでもか?」
ミッシェル:「う~ん、その部分はいらないわね・・・」
ローガン:「だよな~」
マイク:「ちょっと2人共! 酷過ぎだよ~」
ベン:「マイク弄りはそこまでだ。こんなマイクでも、俺のパートナーなのは、変わらないし
大事に思ってるんだ。・・・まぁ、チームを結成するにあたって、色々・・・ぶつかったりもあったけど・・・」
マイク:「だって、せっかく作るなら最高のチームが良いよ! その為には、妥協はしたくなかったんだ!
ベンと、喧嘩したりもあったけど、そのおかげで、みんなともこうして出会えたし、
このチームを結成して、良かったよ!」
ミッシェル:「マイク・・・」
ローガン:「そうだな。・・・ベンとマイクのおかげで、俺達は今、こうして一緒に居られるんだよな」
ベン:「あぁ。最初にマイクと俺でチームを結成して、そこからミッシェル、ローガン、ケイトと増えて
2年が経つ。・・・正直、俺自身も疑いたくは無かったよ。
俺達の中に、裏切者がいるなんてさ・・・」
ミッシェル:「そうよね。ここ最近は失敗が続いたけど、1年くらい経つ頃は、本当、最高だったわよね!
あらゆる銀行やカジノから、お金を奪って楽しかったわ!」
ローガン:「俺も同業者とは知らずに、最初に騙されたのがミッシェルだったな。
その見事なボディーと色気に、まんまと騙されたよ」
ミッシェル:「時には女を武器にするものよ。男って本当、単純よね・・・。色気のあるドレスを着て、
ただ一緒にダンスフロアーで踊って、微笑むだけで、コロリと騙されるんだから」
ローガン:「だが、俺の変装は見破れなかっただろ?」
ミッシェル:「そうね。正体を知った時には驚いたわ。あのダンディーなおじ様の正体が、
こんなに若いハンサムガイだったなんて」
ローガン:「変装は俺にとって、一種の美学なんだ。別の人物になって相手を騙す。
時には、ロマンチックにエスコートして、相手に極上の夢を見せてやるのさ」
ミッシェル:「ローガン、貴方ってロマンチストなのね」
ベン:「ローガンの変装技術は、間違いなく世界で一番だ。正直、俺のチームに入ってくれたのがビックリなくらいだよ」
ローガン:「そんな事ないぜ。俺は一目見て、面白そうだなと思ったから、チームに入ったのさ。
理由なんてそんなもので良いだろう?」
ベン:「それもそうだな。・・・そして、ケイトとの出会いは、図書館の前だったよな?
何かブツブツ言いながら歩いてて、おかしな子だなと思ったのが最初だった」
ケイト:「そうでしたね・・・。あれは・・・あの建物の距離とか高さを計算してました・・・」
ベン:「ケイトは生まれながらにして、目で見ただけで、その建物の構造、高さ、深さなどがわかってしまう
本当、驚くべき才能だよ。その才能のおかげで、的確に金庫のある位置まで、ルートを確保できる」
ケイト:「ベンさんの・・・お役に立てて嬉しいです。正直・・・最初はチームに入るか悩みました。
だけど・・・私は人とコミュニケーションをとるのが苦手で・・・
そんな自分が嫌で嫌で・・・変えたくて・・・、思い切って入りました・・・」
ローガン:「でもまあ、最初は驚いたよな。いくら話すのが苦手だと言っても、筆談からだったし」
ミッシェル:「あれには本当驚いたわ。この子、チームに入れて大丈夫なのって?」
ベン:「最初は俺も戸惑ったのは事実だ。だけどケイトも少しずつ打ち解けて話せるようになってくれた。本当、嬉しいよ」
ケイト:「ベンさん・・・。それもこれも、ベンさんや皆さんのおかげです。
私は・・・、この才能のせいで・・・小さい頃から変人扱いで虐められてきました・・・。
でも、今はこうして、皆さんの力に、少しでもなれるのが、嬉しいです」
マイク:「う~ん、ケイトはさ、もっと自分に自信を持てば良いんだよ!
ファッションとか髪型とか、それにメイクもしたら、見違えると思うだけどな~」
ミッシェル:「それもそうなのよね。眼鏡に三つ編みで内気な感じだけど、
体型は私と良い勝負が出来るくらい、ナイスバディーよ」
ケイト:「そんな、ミッシェルさん・・・。私なんて・・・そんな事無いですよ・・・。
でも、こんな素晴らしいチームに裏切者がいるなんて・・・信じられないです・・・」
ミッシェル:「それもそうよね・・・。ベン、いい加減、裏切者をピックアップしてくれないかしら?
昔話に花を咲かせるのも楽しいけど、このままじゃ、埒が明かないわ」
ベン:「じゃあ、そろそろ裏切者を探りますか」
ローガン:「それで、ベン、どうやってその裏切者を見つけるんだ?」
ベン:「それはこれからのお楽しみだ。それじゃあ、カジノ潜入のミッションを思い出してくれ。
あの時、なぜ失敗したか、ミッシェル覚えてるか?」
ミッシェル:「あの時は確か・・・」
【過去のカジノ潜入ミッション 夜 カルロス邸玄関前】
ローガン:「此処が今回の侵入するカジノか、でかいな・・・・」
ミッシェル:「どんな所でも変わらないわ。さぁ、行くわよ」
ローガン:「あぁ・・・」
間
従業員:「いらっしゃいませ、お客様、招待状を拝見致します」
ミッシェル:「招待状ですわね。それなら確か、主人に渡したと思うのですが・・・」
ローガン:「大丈夫、招待状なら此処にある。今日のパーティー楽しみにしてましたよ」
従業員:「確認いたしました。こちらがお客様のIDとなります。
このIDは、再発行は出来ませんので、くれぐれもお気を付けください。
それでは、どうぞ、中にお入りください」
ローガン:「どうも」
間
ミッシェル:「さすがマイクの作った招待状ね。怪しまれずに通れたわ」
ローガン:「そうだな。だが油断禁物だ。この建物、相当なセキュリティーがされている。
警報機が作動したら俺達、あっという間に警備に取り囲まれ、蜂の巣にされかねないぞ・・・」
(2人の会話を聞いていた諜報部チーム(大型バンの中))
マイク:「蜂の巣にされたら洒落にならないよね! でもお二人さんなら、華麗によけるだろうし、それも一度見て見たいかも!」
ベン:「マイク、冗談はそこまでだ。もしもの時の脱出ルートは確保しているのか?」
マイク:「僕を誰だと思ってんだい? いつも通り、データーで2人の端末に送ってるよ」
ベン:「というわけだ。聞こえてたな、ローガン、ミッシェル」
ミッシェル:「バッチリ聞こえてたわ。マイクのアホが、蜂の巣になるのを見たいと言ってたことも」
マイク:「あれ? 僕そんな事いったっけな~? 通信系のトラブルかな・・・。
よく聞こえないや・・・ (通信機のヘッドホンをわざと外しながら)
ミッシェル:「・・・ベン、マイクの通信機がおかしいみたいだから、伝言を頼めるかしら?」
ベン:「OK・・・」
ミッシェル:「じゃあ言うわ。K・I・L・L・Y・O・U、以上よ。お願いね」
ベン:「程々にな・・・」
ミッシェル:「わかってるわよ。じゃあ、次の作戦に入るから、引き続きサポートよろしくね」
ベン:「了解」
マイク:「ミッシェルの伝言、なんだって?」
ベン:「伝言は・・・、これだ」(紙に先の言葉を書きながら)
マイク:「あははは! ミッシェルらしいや! でもこれ、冗談だよね?」
ベン:「さあな。かなり怒ってたから、案外本気なのかもな。せいぜい、夜道には気をつけるんだな」
マイク:「もう! ベンまで冗談きついよ!」
(バンのドアが開く)
ケイト:「賑やかですね・・・」
ベン:「ケイト、お帰り。建物の構造はわかったか?」
ケイト:「はい。・・・地上2階、地下1階、計3階建てになってます・・・。今回のターゲットの金庫は地下にあります・・・。
先に伝えました通り、地下からの爆破などの潜入になります」
ベン:「やはり、そうなるか」
マイク:「そこで僕の出番ってわけだね。今回のシステムは中々に手ごわそうだけど面白そうだよ! 爆弾の方も任せといて!」
ケイト:「マイクさんって作戦をいつも楽しんでるのですね・・・。私はまだ、緊張してそれどころじゃ・・・」
マイク:「ケイトもそのうち慣れるさ! こんなのはテレビゲームと同じなんだから、気楽にいこうよ! 気楽にさ!
難関を突破出来た時の心地良さったら! 本当たまらないよ~!」
ケイト:「はぁ・・・」
ベン:「そろそろ次の作戦の用意が完了した頃か。ローガン、準備は出来たか?」
ローガン:「相変わらずそっちのグループは、和気あいあいな雰囲気だな。用意しながら聴いてたよ」
ベン:「ひょっとして、羨ましいのか?」
ローガン:「別に羨ましくはない。俺はやっぱりこっちがあってる。
何と言っても、潜入して相手を巧みに騙し、上手く行った時の喜びは格別だからな!」
ケイト:「なんだか・・・、ローガンさんとマイクさんって似た者・・・」
ベン:「じゃあ! 次の作戦よろしくな!」(ケイトの口をおさえながら)
ローガン:「おい、ケイトが今、何か言いかけてなかったか?」
ベン:「そんな事無い! 気のせいだ!」
ローガン:「ならいいんだが・・・。じゃあ、また連絡する」
ベン:「ふぅ~」(通信機を外す)
ケイト:「ベンさん、私・・・、何か言ってはいけない事、言いましたか・・・?」
ベン:「あぁ・・・。ローガンはチームの中でも一番プライドが高いんだ。
だからマイクと同じとか、似てるって言われると、俺でも抑えきれない程に怒るから、気をつけてるのさ・・・」
ケイト:「そうでしたか・・・。そうとは知らずに、言いそうになりすみませんでした・・・」
ベン:「次から注意してくれたらいいよ。俺も本人には言えないが、ローガンとマイクは似てると思うし、気持ちはわかる・・・」
ケイト:「ありがとうございます・・・」
マイク:「僕はローガンと似てて嬉しいんだけど、言うと怒るから言えないの辛いよ~!」
ベン:「死にたくなければ、これからも言わない事だ」
マイク:「わかったよ~! ローガンの前では本音は言わない!」
ケイト:(笑う)
マイク:「ケイトが笑った~! ねぇ、今の面白かった?」
ケイト:「はい・・・! マイクさんのおかげで、なんだか緊張がとけました・・・」
マイク:「良かった~! 人間、笑顔が一番だよ! これからもその素敵な笑顔、見せてよね!」
ケイト:「はい・・・!」
ベン:「おしゃべりは此処までだ。そろそろ次の作戦にうつるぞ」
マイク:「OK!」
間
ミッシェル:「ターゲットに近付いたわ・・・」
ベン:「よくやった。・・・ケイト、ミッシェルのいる位置から金庫までの最短ルートは?」
ケイト:「ミッシェルさんのいるカジノホールは2階なので・・・、
まずは廊下を出て、5m程行った先にある扉を開けて階段を下りて、調理場へ下りてください。
その階段は1階のロビーにも出れますが、ほとんど調理スタッフしか使わないので、スムーズに下りれると思います。
調理場まで下りたら、ワインセラー、従業員食堂、監視室などがあるので、
他のスタッフに気づかれないように、慎重に動いてください。
地下の金庫は厳重に監視されてますが・・・、その隣の物置小屋は、監視カメラもありません」
ローガン:「その物置小屋から地下金庫にドリルで穴を開け、小型爆弾で爆破ってわけだな。
だが・・・、いくら小型爆弾とはいえ音は聴こえるんじゃないのか?」
ベン:「その点に関しては、マイクから説明する。・・・マイク、よろしく頼む」
マイク:「OK! 確かにそのままじゃ、音は丸聴こえだ!
だが、僕達は運が良い。1時間後に招待客を楽しませるガーデンパーティーが開催されるんだけど、
その時に花火も打ちあがるのさ! そのタイミングに合わせて、爆弾を爆破させれば!」
ローガン:「地下にいるスタッフ達も、花火が始まったとしか思わないわけだな!」
マイク:「そういう事~! その後は、僕の腕の見せ所だ!
監視室のPCをハッキングして、金庫室内の監視カメラを操作するから、
ローガンは10分以内に金庫の金を持ち出して逃げてよね」
ローガン:「わかった」
ミッシェル:「私はその間、ターゲットであるオーナーのカルロスを引き留めて置けば良いのね」
ベン:「あぁ、その通りだ」
ミッシェル:「私のボディーの虜にして、骨抜きにしてあげるわ」
ベン:「くれぐれも気をつけるんだぞ」
ローガン:「ベンの言う通りだ。カルロスと言えば、裏カジノを他にも経営して稼いでる凄腕だ。
奴を怒らせたら、ハドソン川の底に沈むなんて話も聞く・・・。
簡単に色仕掛けでは落ちないと思った方が良い・・・」
ミッシェル:「忠告ありがとうローガン。でも、危険な男程、魅力的で燃えるのよね。心配いらないわ。ちゃんと上手くやるから」
ローガン:「まったく・・・。とにかく、此処からは俺も本腰を入れますかね」
ベン:「2人共、頼んだぞ」
ケイト:「いよいよなんですね・・・」
マイク:「ケイトったら怖いの?」
ケイト:「怖くないって言ったら、嘘になります・・・」
マイク:「あの2人なら大丈夫だよ! いざとなれば、僕もサポートするし、ベンだっている。
ケイトの身が危険になる事はないよ。それにカルロス邸の警備達が、このバンを見つけるのはまず不可能だ。
ついでにいうと、今回の作戦の為に、防弾もアップグレードしてるから、此処は安全だよ!」
ケイト:「それなら心配はいりませんね・・・。ありがとうございます・・・。」
間
(カルロス邸パーティー会場。会場内にいるミッシェルの前にカルロスが挨拶しに来る)
カルロス:「ようこそ、我が屋敷へ。これはこれは、とても美しいお方だ・・・。是非とも、お名前を教えていただけますか?」
ミッシェル:「ソフィアよ。口がお上手ですこと・・・」
カルロス:「これは失礼・・・。貴方のような美しい女性には、中々巡り合えませんのでね」
ミッシェル:「そう言っておきながら、一体どれだけの女性を泣かせたのかしら?」
カルロス:「数多の星の数ほど」
ミッシェル:「貴方って危険な男なのね」
カルロス:「危険な香りのする男は、嫌いかね?」
ミッシェル:「いいえ・・・。好きなタイプよ」
カルロス:「それは、結構。まずは乾杯でもしょうじゃないか。おい、そこのウェイター!」
ウェイター(ローガン):「お呼びでしょうか、カルロス様」
カルロス:「こちらの綺麗な女性に、何か飲み物を持って来てくれ。何が良いかな?」
ミッシェル:「では、マティーニをいただけるかしら?」
ウェイター(ローガン):「かしこまりました」
カルロス:「私は、ブランデーを頼む」
ウェイター(ローガン):「かしこまりました。すぐにお持ち致します」
カルロス:「頼んだ。それにしてもマティーニを頼むとは、お酒が強いんだね。
マティーニは通称カクテルの王様だ。貴女はどうやら、王様が好きらしい」
ミッシェル:「王様を嫌いな女性はいませんわ。貴方は一体どんな王様なのかしら?」(カルロスの腰に手を回す)
カルロス:「それを知りたいのなら、もう少し時間を共に過ごすことになるが、良いのかね?」
ミッシェル:「望むところですわ」
ウェイター(ローガン):「お待たせ致しました。カルロス様、そちらのグラスはお下げして宜しいでしょうか?」
カルロス:「あぁ、頼む」
ウェイター(ローガン):「お客様、マティーニでございます」
ミッシェル:「あら、ありがとう。これは御礼よ、取っておいて」
ウェイター(ローガン):「ありがとうございます。それでは失礼致します」
カルロス:「では、今夜の2人のめぐり逢いに」
ミッシェル:「乾杯」
間
ベン:「上手く行ったか?」
ウェイター(ローガン):「俺を誰だと思ってる。バッチリ、ウェイターに変装して、カルロスの指紋付きのグラスを手に入れた」
ベン:「流石だな。マイクの渡した、指紋読み取り機に、グラスをセットしてくれ」
ウェイター(ローガン):「どのくらいで完了するんだ?」
マイク:「そんなに時間は取らせないと思うよ。3分くらいかな。じゃあ、さっさと始めるよ!」
ベン:「それで、ミッシェルの様子はどうだった?」
ウェイター(ローガン):「流石と言えば流石だが、あの男の腰に腕を回すとは、たいした女だよ、まったく・・・」
ベン:「安心は出来ないが、今は見守るしかないと言う事か・・・」
ケイト:「ミッシェルさん・・・」
間
カルロス:「今夜のパーティはいかがかね?」
ミッシェル:「各界の著名人が集まってて、賑やかで流石ですわ」
カルロス:「ただの欲にまみれた、意地汚い連中ばかりさ」
ミッシェル:「あら? その中に私も入るのかしら?」
カルロス:「いいや。今夜のゲストの中でも、一番に美しい」
ミッシェル:「嬉しいわ。ねぇ、少し酔いが回ったみたい・・・。何処か静かな場所に案内してくださる?」
カルロス:「良いですとも」
間
ウェイター(ローガン):「おい・・・、まだなのか?」
マイク:「後もう少し・・・」
ウエイター(ローガン):「・・・」
マイク:「よし! やっぱ僕は天才だね! こんな短時間で出来るのは僕が開発したこのマシーンの・・・」
ウェイター(ローガン):「御託は良いから、さっさと出しやがれ」
マイク:「まったく、これからが良い所だったのに・・・。今から指紋データーを転送するから、
機械から出てきたら、ローガンの手に貼り付けて。それで金庫の中の鍵はOKだよ」
ウェイター(ローガン):「これだな・・・。左手、右手どっちでも良いのか?」
マイク:「その指紋は左手の指のだから、左に付けないと駄目だよ!」
ウェイター(ローガン):「よし、装着したぞ」
マイク:「健闘を祈るよ! ローガン」
ウェイター(ローガン):「ありがとうよ。怪しまれるから、また着いたら連絡する」
マイク:「了解。・・・ローガンは物置小屋に向かったよ」
ベン:「今の所、順調だな」
マイク:「だね~」
ケイト:「あの・・・、やっぱりミッシェルさんの事が気になります。私も潜入してきて良いですか・・・?」
ベン:「駄目だ。君は建物の中を確認するのに、一度侵入してもらっている。再度侵入して、誰かに見つかったりしたら
大変なことになる」
ケイト:「でも・・・、何か嫌な予感がするんです・・・」
ベン:「嫌な予感・・・?」
マイク:「女の感ってやつかい?」
ケイト:「はい・・・」
マイク:「ふ~ん、ベン、どうする?」
ベン:「リスクを増やすわけにはいかない。悪いがケイト、此処で待機だ」
ケイト:「わかりました・・・」
間
カルロス:「気分は良くなったかね?」
ミッシェル:「ええ。それにしても見事な庭園ですわね」
カルロス:「気に入っていただけたみたいで何よりだ。此処は私もお気に入りでね。
今夜みたいに、月が綺麗な時には、素敵な女性と、一緒に過ごしたくなるんだよ」
ミッシェル:「ねぇ・・・、私と月、どっちが綺麗かしら?」
カルロス:「これは困った質問だ・・・」
ミッシェル:「困る・・・? どうしてかしら?」
カルロス:「私には、どちらの美もそれぞれの良さがあって選べない」
ミッシェル:「まぁ、本当いじわるね・・・。じゃあ、これならどうかしら?」(カルロスの目の前に立ち、月を見えなくする)
カルロス:「これは参ったな・・・」
ミッシェル:「ねぇ、王様。私だけを見て」
カルロス:「・・・」
ミッシェル:「そう言う困った顔も素敵よ」
カルロス:「君は美しいが、何処か私に似ている」
ミッシェル:「何処がかしら?」
カルロス:「危険な所がだよ」
ミッシェル:「危険な女は嫌い?」
カルロス:「いいや。むしろ好きだ」
ミッシェル:「嬉しいわ。今夜は離さないでね」
カルロス:「あぁ」
間
ウェイター(ローガン):「此処が監視室か・・・。中は~、警備員が4人・・・。
倒せない人数では無いが、見つからないに、越したことはないな。
目的地である物置小屋は、この先か・・・」
ケイト:「ローガンさん、その先には先程もお伝えしたように、従業員食堂とワインセラーもあります。
今の時間は休憩してる人はいないと思いますが、
ワインセラーには、スタッフがいる可能性があります。くれぐれも気を付けてください・・・」
ウェイター(ローガン):「わかった。俺の変装は、そう簡単にはバレないから安心しな」
ケイト:「はい・・・」
ウェイター(ローガン):「従業員食堂には誰もいないみたいだな・・・。さて、ワインセラーに向かうか」
ウェイトレスA:「ちょっと、そこの貴方! こっちに来てくれない?」
ウェイター(ローガン):「・・・なんでしょうか?」
ウェイトレスA:「来客に出すワインが足りないのよ。運ぶのを手伝ってくれない?」
ウェイター(ローガン):「すみません、休憩時間をもらったばかりなんですが・・・」
ウェイトレスA:「そうなの、なら仕方ないわね。他の人に頼むわ。まだまだ今夜は忙しいからね。
しっかり休憩しとくのよ!」
ウェイター(ローガン):「わかりました」
ウェイトレスA:「じゃあね。まったく・・・これだけこき使われても給料安いんだから、やってられないわ・・・」
間
ケイト:「大丈夫でしたか?」
ウェイター(ローガン):「問題ない。さてと、此処が目的地だな。周りには誰もいないみたいだし、今が入るにはチャンスだな」
マイク:「ローガン、目的地に着いた?」
ウェイター(ローガン):「ああ、中は物でごちゃごちゃしてるし、最悪な場所だよ。マイク、この壁で良いのか?」
マイク:「方角的にもあってるよ。僕の渡したドリルで、ドカーン! と、大きい穴を開けちゃってよ!」
ウェイター(ローガン):「大きい穴と言ってもな・・・。このドリル、だいぶコンパクトだぞ。こんなんで、本当に大丈夫なのか?」
マイク:「僕の発明なんだよ! 問題無いに決まってるじゃん! 音も最小限に抑えたし、安心して使ってよ」
ウェイター(ローガン):「安心ね・・・。じゃあ、試してみますか。よっと・・・」(ドリルのスイッチを入れる)
マイク:「持ち手の疲れも、軽減してるから快適でしょ?」
ウェイター(ローガン):「・・・お前の開発したマシーンにしては、快適だし順調だな」
マイク:「お前のは、余計だよ。ローガン」
ウェイター(ローガン):「悪い、口が滑った。ドカーンと大きい穴を開けたいのは山々だが、まだしばらく時間かかりそうだ・・・」
ベン:「了解。ローガンは、引き続き作業を続けてくれ。ただし人がいつ入って来るかわからないから油断はするなよ」
ウェイター(ローガン):「あぁ、わかってるさ」
ベン:「ミッシェル、そっちはどうだ? ・・・おい、聴こえているのか?」
ミッシェル:「聴こえてるわよ。今、カルロスの書斎にいるわ。これからお楽しみタイムなんだから、邪魔しないでよね」
マイク:「ミッシェルったら大胆! 化けの皮がはがれないようにね!」
ミッシェル:「マイク・・・、覚えておきなさい・・・!」
マイク:「ひええええええ・・・!」
ウェイター(ローガン):「ミッシェル、こっちは準備完了だ。あまり無茶するなよ」
ミッシェル:「無茶したらどうする?」
ウェイター(ローガン):「おい、こんな時にふざけてる場合か! お前にもしもの事があったら、俺は・・・」
ミッシェル:「本当、根性無しね・・・」
ウェイター(ローガン):「・・・」
ミッシェル:「カルロスが戻って来たから通信切るわよ。また連絡するわ」
ウェイター(ローガン):「無事でいてくれよ・・・。ミッシェル・・・」
間
ケイト:「あの・・・」
マイク:「どうしたの? ケイト」
ケイト:「私、なんだかさっきから息苦しくて・・・」
マイク:「それって・・・」
ベン:「このバンの空調、そろそろ改善した方が良いかもしれないな・・・」
マイク:「うん・・・そうだね。次はそうする・・・。ごめんね、ケイト」
ケイト:「いいえ。・・・私、少し外の空気、吸ってきます・・・」
ベン:「わかった・・・。でも、くれぐれも気を付けるんだぞ」
ケイト:「わかりました・・・」
(バンの外に出るケイト)
マイク:「ケイト、大丈夫かな・・・?」
ベン:「大丈夫だ。少し、外の空気吸ったら良くなるさ。」
マイク:「なら、良いんだけど・・・」
間
カルロス:「待たせてすまないね。少し、急用の電話が入ったんだ」
ミッシェル:「あら? じゃあ、行ってしまうの?」
カルロス:「いいや・・・。部下達に後始末を任せたから大丈夫だ」
ミッシェル:「後始末・・・?」
カルロス:「君には関係の無い事だ。それより、此処まで付いて来たという事は、良いのかね?」
ミッシェル:「もう、野暮なことは聞かないで頂戴」
カルロス:「結構。奥にベッドがある。行こうか」
ミッシェル:「ええ」
間
カルロス:「それで、どうして君は、この私に近付いたのかね?」
ミッシェル:「あら? 何か企んで、貴方に近付いたと思ってるのかしら? そう考えてるなら、間違いよ。
私は貴方のその容姿と、危険な香りに惹かれただけですもの」
カルロス:「ほう・・・。それは嬉しい限りだね。今までにもこの私に惹かれて、近付いて来た女は数知れない。
その中でも、君は特別に美しくて綺麗だ」
ミッシェル:「お世辞でも嬉しいわ。それで、今までの女性はどうしたのかしら?
貴方の愛人としてペントハウスで暮らしてるのかしら?
それとも豪邸を与えて、住まわしているとか・・・?」
カルロス:「殺したよ」
ミッシェル:「・・・殺した?」
カルロス:「どうした? 顔色が悪いな。君は、この私の危険な香りに惹かれたのだろう?
殺したくらいで、何をそんなに警戒するのだい?」
ミッシェル:「少し驚いただけよ。どうして殺したのかしら?」
カルロス:「簡単な事だ。ある女は私を裏切り、裏でこそこそと金品を盗んだり、
薬を売り捌いたり、手癖が悪かったからね。ハドソン川の底に、沈んでもらったよ」
ミッシェル:「・・・」
カルロス:「またある女は、私の身の回りを探り、他のマフィアに情報を流していたからね、
クレー射撃の的になってもらったよ。特注で人の重さでも飛ばせる装置を作らせたのだが、あれは最高だった!
他にも、アーチェリーの的にした事もあるが、すぐに殺してはつまらないからね、
その女の時は、最初は右手、次は左足、その次は左肩を・・・」
ミッシェル:「もう結構よ! 貴方の凄さはわかったわ・・・」
カルロス:「まだまだこれからが良い所なのだが、あまり怖がらしても嫌われそうだ。
だけど、覚えておいてくれたまえ。この私を怒らせ、万が一、裏切るようなことがあれば、
その時は、例外なく私の目の前から消えてもらう事になるのを」
ミッシェル:「肝に銘じておくわ・・・」
カルロス:「物分かりの良い方で良かった。さてと、気分を変えて楽しむとしよう。絶世の美女が目の前にいるのだから」
ミッシェル:「お手柔らかに頼むわ。痛いのは・・・」
カルロス:「痛みも快楽なのを知らないのかね。月夜に照らし出され、美しく輝く肌を、真っ赤に染めてみたくなる」
ミッシェル:「真っ赤に・・・。縄で縛るつもりかしら?」
カルロス:「それも良いが、別の機会にしよう。ふふふ、怖いかい?
その少し怯えながらも、この私を見つめている表情も堪らない・・・」
ミッシェル:「貴方は、か弱い女性をこうして押さえつけて、無理やり抱くのが好きなのかしら?
あまり良い趣味とは言えないけど・・・、強引な男も好きよ」
カルロス:「時と場合によるさ。優しく丁寧に抱く時もあるが、今宵は満月、こういう日は血がどうしても騒ぐのだよ」
ミッシェル:「まるで獣ね・・・」
カルロス:「獣のように、本能のままに、お互いを深く知るのも良いだろう?」
ミッシェル:「そうね・・・。熱い夜を楽しみましょう」
間
(その時、カルロスの部屋の電話が鳴る)
カルロス:「これからだと言うのに・・・、無粋な電話だ。少し失礼するよ」
ミッシェル:「ええ」
カルロス:「私だ。一体何事だ。緊急の用なのか? 何・・・、それは本当なのか?
・・・わかった。・・・そちらに向かう。・・・どうすれば良いのか?
決まってるだろう。見つけ次第・・・、殺せ。・・・いや待て、やはり生け捕りにしろ。
私、自ら拷問する。他の部下にも伝えるんだ。良いな!」
ミッシェル(M):「まさか、ローガンが見つかったの!? このままじゃこの私も・・・」
カルロス:「待たせてすまない。急用が出来たから、少し待っていてくれないか?」
ミッシェル:「どうかしたのかしら?」
カルロス:「気にすることは無い。1時間程で戻ってくるから、ゆっくり寛いでいてくれたまえ。
くれぐれも、外に出たりしないように。何が起きても、責任はとれないからね」
ミッシェル:「物騒ね・・・。ええ、此処にいるわ」
カルロス:「約束だよ。じゃあ、1時間後に」
(カルロス、部屋から出て行ったのを確認して行動するミッシェル)
ミッシェル:「ローガン、聴こえてる? 何かそっちであったの? ・・・ちょっと、聴こえてるの?
カルロスに電話があったのだけど、生け捕りにしろとか電話で伝えてたわ。
・・・そちらは無事なの? ・・・なぜ返事がないの? ・・・おかしいわ」
ミッシェル:「ベン、マイク、聴こえてる!? ・・・どうして誰も応答しないの!?
こうしてはいられないわ! ローガンを探さないと・・・。
確か、予定通りだと、地下室にいるはずよね。急がなくちゃ! 無事でいてよ・・・ローガン!」
間
ベン:「どうだ、ローガン、ちゃんと穴は開きそうか?」
ローガン:「もう少し時間はかかりそうだが、予定の時間までには、何とかなりそうだ」
ベン:「そうか。引き続き、よろしく頼む」
ローガン:「あぁ」
マイク:「花火の時間まで残り30分弱か~。次はいよいよ、僕の開発した、威力抜群の小型爆弾の出番だね」
ローガン:「それについてなんだがな・・・、本当に俺は近くにいて、大丈夫なのか?」
マイク:「この僕を信じてよ。設置した半径2m以内に近付かなければ、無事なんだから」
ローガン:「万が一って事があったらの話だ。もし、この爆弾で死ぬような事があったら、化けて出てやるからな」
マイク:「ん~、その時は、有名なエクソシストに頼んで退治してもらうから、遠慮せずに出てきて良いよ!」
ローガン:「なんだと!?」
ベン:「ローガン、今回に関しては、マイクの勝ちだな」
ローガン:「マイクに負けるなんて・・・俺のプライドが・・・」
マイク:「ねぇ、それどういう意味で言ってるの!?」
ローガン:「おまけに、わかってないとは・・・。俺の完敗だよ・・・」
マイク:「まぁ良いや! やった! ローガンに勝った! 今夜は良い事ありそうだな~」
ベン:「はしゃぐのも程々にな。これ以上浮かれていると、ローガンが落ち込んで使い物にならなくなる・・・」
ローガン:「俺はそこまで落ちぶれていない! 覚えとけよ、マイク、次は俺が勝つ!」
マイク:「望むところだよ!」
ベン:「似た者同士だな・・・」(小声)
ローガン:「そんな事より、ケイトとミッシェルはどうしたんだ? こういう話題をしたら、真っ先に反応したり、
突っ込んできたりするはずなのに」
ベン:「ケイトは気分が悪くなって、外に出てるよ。・・・それにしても随分と遅いな。
マイク! ちょっと様子を見て来てくれ」
マイク:「わかった。見てくる」
ベン:「ミッシェルも一体、どうしたんだ・・・。そろそろ連絡をしてきても・・・」
マイク:「ねぇベン! ケイトいなくなってるよ!」
ベン:「どういう事だ!?」
マイク:「もしかして、ミッシェルの所に向かったんじゃ?」
ベン:「あれ程、駄目だと念を押したのに・・・。おい、ミッシェル、聴こえるか?
ん? どうしたミッシェル!?」
マイク:「反応がないの?」
ベン:「おかしい・・・。ローガン、ミッシェルと連絡が取れない・・・。
それと、ケイトもミッシェルを心配して、そちらに向かったようだ・・・」
ローガン:「嫌な予感が的中したって事か? ・・・どうする? このまま作業を続けるか?
それとも、2人を探しに行くか?」
ベン:「・・・」
ローガン:「どうしたベン・・・? お前の判断を待ってるんだ!」
ベン:「そのまま、作業を続けてくれ」
ローガン:「ミッシェルとケイトはどうするんだ!? ・・・まさか見殺しにでもするって言うのか?」
ベン:「ミッシェルもケイトも馬鹿じゃない。何かあった時は、何かしらの方法で連絡してくるはずだ」
ローガン:「それもそうだけどよ・・・。もし連絡が取れない状態になってたら・・・」
マイク:「拷問されてたりとか? もし僕がそんな状態になったら、ローガンもベンも助けてくれるよね?」
ローガン:「馬鹿野郎! 縁起でもないことを言ってるんじゃねえよ! 俺達はかけがえのないチームだ!
誰一人でも欠ける事は許されねえ! そうだろベン?」
ベン:「その通りだ! ミッシェルの身に何か起きてたとしても、慌てて動いては、敵の思う壺だ。
冷静になって、チャンスを待つんだ。安心しろ・・・、ミッシェルもケイトも無事に助ける」
マイク:「ごめんよ・・・、ベン、ローガン。それで、僕は何をすれば良いんだい?」
ベン:「マイクは、ミッシェルとケイトとの連絡手段を考えてくれ。お前なら何か良い案は浮かぶだろう?」
マイク:「うん、わかった。僕に任せて!」
ローガン:「頼りにしてるぞマイク! ・・・ベン、俺はこのまま作業を続ければ良いんだな?」
ベン:「あぁ。ただし、少々予定変更だ。ローガンは作業を続けつつ、いつでも脱出する準備はしておいてくれ。
あくまで予測だが、ミッシェルとケイトは、そちらに合流する可能性もある」
ローガン:「わかった。ミッシェルとケイトが合流した時は、また知らせる」
ベン:「頼んだぞ。お金も大事だが、もっと大事なのは、お前達の命だ。無事にこちらに戻って来てくれ!」
ローガン:「言われなくてもそうするさ。無事でいてくれよ。ミッシェル! ケイト!」
間
ケイト:「ミッシェルさんが心配で嘘をついて、飛び出してきちゃったけど・・・、やはり戻らないと駄目よね・・・。
だけど、私だけあまり役にたってないのも、申し訳ないし・・・、それに私ったら駄目ね・・・。
通信機も置いて来ちゃって・・・。本当にどうしたら・・・。
そうだ・・・。確か、ローガンさんは地下室で作業をしてるはず。
ローガンさんと合流すれば、ベンさん達にも連絡がとれる・・・。急がないと・・・」
間
ミッシェル:「それにしても厳重な警戒ね・・・。下手に動くと、簡単に見つかってしまいそう・・・。
部下の数は、このフロアだけでも20人弱って所かしら・・・?
それにしても、ダクトの中って最低・・・。狭いし、暗いし・・・。
ローガンの安否が気になるけど、地下室に行くのは時間がかかりそう・・・。
どうしたら・・・。ん? 此処は調理場? 調理師は1人しかいないわね。
・・・そうだ! 良い事を思いついた!」
間
ケイト:「地下室に行くには、この階段を下りていけばいいみたい・・・。よし、誰もいない・・・。
後は、ローガンさんのいる所へ・・・。待って・・・誰か近づいてくる・・・。どうしたら・・・。
迷ってちゃ駄目・・・。こういう時こそ、しっかりしなくちゃ・・・。
50m・・・、30m・・・、10m・・・、1m・・・、よし、今だ!! えいっ!!!」
ミッシェル:「キャッ!」
ケイト:「その声は、ミッシェルさん!?」
ミッシェル:「ケイトなの? 貴方、どうして此処にいるの!?」
ケイト:「すみません・・・。ミッシェルさんの事が心配で、探しにきました・・・」
ミッシェル:「心配は嬉しいけど・・・、その恰好はなに?」
ケイト:「これですか? これはロッカールームに居たウェイトレスの服をお借りしました・・・。
ミッシェルさんこそ、その恰好はどうしたのですか・・・?」
ミッシェル:「話せば長くなるんだけど・・・、私も似たような方法で手に入れたわ。そんな事よりケイト、
貴方の通信機、貸して頂戴? 私のはどうやら壊れたみたいなのよ・・・」
ケイト:「それが・・・私も通信機を持ってくるの忘れちゃって・・・」
ミッシェル:「そうなの? ・・・調理師に、ウェイトレス。この格好なら、怪しまれずにローガンと合流できそうね。
とにかく時間がないわ。何があったかは向かいながら話す。行きましょう!」
ケイト:「わかりました・・・」
間
ミッシェル:「と言うわけよ。・・・何が起きたのかの話はこれで終わり。・・・此処はもう危険だわ。
早くローガンと合流して、この屋敷から脱出しないと・・・」
ケイト:「そのカルロスという人物に見つかったら・・・、私達は・・・」
ミッシェル:「大丈夫よ・・・。必ず無事に脱出して見せるわ・・・」
ケイト:「そうですね・・・」
間
ローガン:「よし、穴は開いた! 後は、この爆弾なんだが・・・、ん? 誰か近付いてくる・・・」
ベン:「ミッシェルとケイトか?」
ローガン:「わからないが、1人だけの足音じゃないようだ・・・」
ベン:「どちらにしろ、何処か隠れられる場所はあるか?」
ローガン:「大きな箱があるし、そこに隠れる。もしもの時は、強行突破して脱出する」
ベン:「・・・気をつけるんだぞ」
ローガン:「あぁ」
間
ケイト:「着きました。此処です・・・」
ミッシェル:「ケイト、間違いないの?」
ケイト:「はい・・・」
ミッシェル:「薄暗くて、よくわからないわ・・・。とにかく、静かに進むわよ」
ケイト:「・・・わかりました」
間
ローガン:「調理師とウェイター・・・、何か取りに来たって所か・・・。
2人ならなんとかなるか・・・。悪いが少しの間、寝ててもらう。よし・・・今だ!!!!」
ケイト:「キャッ!!!!」
ミッシェル:「ケイト! 大丈夫!?」
ローガン:「ん? ケイトだと!?」
ミッシェル:「その声はローガンね・・・? 一体どういうつもり!」
ローガン:「悪い! てっきり此処の従業員だと思って、少し寝てもらおうと思ってだな・・・」
ミッシェル:「いくら薄暗いとはいえ、確認してから行動に移しなさいよ! ちょっと、ケイト、大丈夫?」
ケイト:「驚いて・・・、お尻を打ちましたが・・・、平気です・・・」
ミッシェル:「良かったわ。さぁ、ローガンにも合流出来たし、早く脱出するわよ」
ローガン:「脱出ってどういう事だ? やはり何かあったのか?」
ミッシェル:「色々大変だったのよ。通信機も壊れちゃうし、ローガン、貴方の通信機貸して頂戴!」
ローガン:「あぁ・・・」
ミッシェル:「ちょっとマイク!? 聞いてるなら返事なさい!」
(通信機から聴こえてくる、ミッシェルの声に怯えるマイク)
マイク:「ひえええええええ!!! ベン、ミッシェルが激怒してるよ・・・! 僕どうしたら良いの!?」
ベン:「今回ばかりは、素直に謝るのが一番だろうな」
マイク:「他人事(ひとごと)だと思って・・・」
ベン:「早く出てやれ。時間が経てば経つほど、後が怖いぞ」
マイク:「はぁ・・・。こちら、マイク、怒鳴らなくても聴こえてるよ」
ミッシェル:「やっと出たわね! これは一体、どういう事なのかしら? 私の通信機がどうして肝心の時に壊れたりするの!?」
マイク:「それは僕にもわからないよ・・・」
ミッシェル:「わからないってどういう事よ! 作ったのはマイク、貴方自身でしょ!?」
マイク:「わからない物はわからないよ・・・! それに、ミッシェルの扱い方が乱暴だったかもしれないし・・・」
ミッシェル:「なんですって!? ちょっとマイク! 私の扱いのどこが乱暴なのかしら!?」
ケイト:「ミッシェルさん・・・! 声が大きくなってますよ・・・」
ローガン:「ケイト、触らぬ神に祟りなしって日本の言葉知ってるか? 今はそっとしておくのが一番だ。
怒り心頭で俺達の声は聴こえてない・・・」
ケイト:「わかりました・・・」
ミッシェル:「マイク!? どこら辺が乱暴なのかはっきり言いなさい!? 返答次第では・・・ただではおかないわよ!?」
マイク:「ひえええええええええ・・・」
ベン:「自業自得だな・・・」
マイク:「そんな事言ってないで、助けてよ~!!!!」
ベン:「仕方ない・・・。おい、ミッシェル、そこまでにしておくんだ!」
ミッシェル:「ベン! 邪魔しないで! マイクを出して頂戴!」
ベン:「そのマイクだが・・・、涙目で怯えながら、ごめんって言ってるよ」
ミッシェル:「謝ればいいって問題じゃないんだから! 私がどれだけ酷い目にあったのかわかるの!?」
ベン:「それに関しては、俺からも謝る・・・。すまなかった・・・」
ミッシェル:「ベン・・・。わかった・・・。今回は許すわ・・・。私も怒り過ぎたと思うし・・・」
ベン:「ありがとう。じゃあ、何があったのか教えてくれるか?」
ミッシェル:「実は・・・」
カルロス:「その必要はないよ! 君達!」
ミッシェル:「カルロス!?」
カルロス:「随分とまぁ、身勝手な事をしてくれたものだね。私の大事な屋敷で・・・」
ミッシェル:「・・・どうして此処がわかったの?」
カルロス:「簡単な事さ。私は用心深くてね、君の体に小型の発信機を付けさせてもらっただけさ」
ミッシェル:「いつの間に・・・」
カルロス:「気になるのかい? じゃあ教えてあげよう。ベッドで君を押さえつけて、首筋にキスをした時に・・・」
ローガン:「この糞野郎が!!!」(カルロスの顔面目掛けてパンチする)
カルロス:「おっと!、いきなり殴ろうとするとは危ないじゃないか? 随分と血の気の多いお仲間だね。
それとも・・・、ただのお仲間じゃないのかな?」(綺麗にかわす)
ローガン:「どういう意味だ!」
カルロス:「言葉通りさ。君は彼女の恋人なのかい? それなら悪いね。君の大事な彼女はこの私が・・・」
ローガン:「その汚い口をさっさと閉じやがれ!!!」(再び殴ろうとする)
カルロス:「やれやれ懲りないね。いい加減、身の程をわきまえたまえ!!!」(殴ろうと突進したローガンを蹴り倒す)
ローガン:「グハッ・・・!!!!」
ミッシェル:「ローガン!!!」
カルロス:「これでも武術にもたけていてね。負けた事は無いんだ。彼は私の蹴りを食らって当分は立てないだろう。
さて、君達のボスと話せるかな?」
ミッシェル:「・・・」
カルロス:「どうした? 愛しの彼が、もっと酷い目に合うのを見たいのかい?
それとも、そこで震えてるもう一人の仲間を・・・」
ミッシェル:「わかったわ!!! これ以上、乱暴はしないで・・・。 ごめんなさい・・・ベン・・・」
ベン:「良いんだ。・・・カルロスに代わってくれ・・・」
(カルロスに通信機を渡すミッシェル)
カルロス:「初めまして、君がボスなのかい? 随分とお仲間は好き勝手してくれたものだ。
この落とし前は、どうつけてくれるのかね?」
ベン:「落とし前? それを言うなら、お前こそ、俺の大事な仲間に酷いことして、ただで済むと思ってるのか?」
カルロス:「言うじゃないか! この状況下で、そこまで堂々としていられるとは・・・。君も中々やるね。
だが、その余裕もどこまでもつか、試してみても良いかね?」
ベン:「試す? 一体何をする気だ・・・?」
カルロス:「そうだな。此処に君の仲間は3人いる。だから少しずつ、痛みを与えていくなんてのはどうだい?
簡単に死なれては面白くないからね・・・。じわじわと、断末魔の叫びをあげながら、1人ずつ消えてもらう。
どうだい? 愉快なショーだと思わないかい?」
ベン:「そんな事したら、お前も殺してやる・・・!」
カルロス:「指示するだけのリーダーが、この私に勝てるとお思いかね。そこで黙って、聞いていれば良いさ。
大事な仲間の悲鳴をな!!!」
ベン:「くっ・・・」
間
カルロス:「さてと、誰から叫んでもらおうか? そこの怯えてる眼鏡の女にでもするか・・・
さぞかし、甘美な悲鳴を聞かせてくれそうだ!」
ケイト:「わわわわ・・・私は・・・」
カルロス:「どうした? 怯えて声が上手く出せないのかい? なら、もっと声が出るようにしてあげるよ!」
ケイト:「お願いですから・・・助けて・・・」
カルロス:「簡単に楽になろうなんて甘すぎる。さぁ、存分に良い声を聞かせておくれ!」
ケイト:「嫌だ・・・。近寄らないで・・・」
カルロス:「さぁ!!!!」
ケイト:「いやあああああ!!!!」
ミッシェル:「待ちなさい! カルロス! 最初は私からにしなさい!」
カルロス:「ほう。たいした度胸じゃないか。良いだろう。こっちに来るんだ」
ローガン:「ミッシェル、駄目だ・・・。最初は俺が・・・」
ミッシェル:「ローガン、黙って聞いて。私が何とか時間を作るわ・・・。その隙に貴方は、ケイトを連れて脱出して」
ローガン:「馬鹿を言うな・・・。他に何か方法が・・・」
ミッシェル:「私なら大丈夫。何とか無事に切り抜けるわ。だけどもし、駄目だった時は・・・。
私の為に、綺麗なお墓でも建てて頂戴・・・。海が見える崖の側が良いわ」
ローガン:「お前を失ったら、俺は・・・」
ミッシェル:「しっかりしなさい! 私の惚れた男だったら、最後まで弱気を見せないで・・・。
そんな姿なんて見たくないわ・・・」
ローガン:「ミッシェル・・・俺もお前の事が・・・」
ミッシェル:「そこから先はいわないで・・・」
ローガン:「だが・・・」
ミッシェル:「ローガン、後の事は頼んだわよ」
ローガン:「ミッシェル・・・」
カルロス:「何をしてるんだ! 早く来い!!!」
ミッシェル:「わかったわ! 今、行く! じゃあね・・・。ローガン」
(ミッシェルはカルロスの方に歩いて行く
どうする事も出来なくて下を向いているローガン
その時、マイクの声が聴こえる)
間
マイク:「あー、あー、落ち込んでる暇はないよ。ローガン。僕の声が聴こえてたら、何か返事くれないかな?」
ローガン:「マイク!? お前、どうやって通信してるんだ!?」(小声)
マイク:「こんな事もあるかと思って、ローガンが寝ている隙に、奥歯にちょっとした通信機をね」
ローガン:「お前って奴は・・・」
マイク:「褒めるのは戻ってきてからにしてよね。今は時間は無いんだ。これから言う事を聞いて。
近くに僕の渡したドリルはあるかい?」
ローガン:「あぁ、蹴り飛ばされた近くにある」
マイク:「良かった! じゃあ、何とかなるよ。良い? そのドリルを拾って、カルロスの近くまで突進して。
そして、その瞬間に、ドリルの黄色のボタンを押して投げて!
そしたら、辺りは眩しい光りに包まれるから、その隙に二人を連れて逃げるんだ!
良い? チャンスは一度っきり・・・。健闘を祈るよ・・・」
ローガン:「あぁ、わかった・・・。それにしても、そんな機能まで付いてたのかよ・・・」
マイク:「どんな時でも想定してね」
ローガン:「流石だよ。・・・マイク」
マイク:「時間がないよ。早く!」
ローガン:「あぁ!」
間
ミッシェル:「カルロス、ケイトから早く離れなさい!」
カルロス:「威勢がいいね。そんな強気な君も堪らなく美しい。さぁ、早くおいで」
ミッシェル:「わかったわ・・・」
ミッシェル(M)「ローガン、ケイトを連れて無事に脱出してね・・・」
ローガン:「伏せるんだ! ミッシェル、ケイト!!!!」
ミッシェル:「ローガン!?」
ローガン:「カ・ル・ロ・ス!!! これでも喰らいやがれ!!! えいっ!!!!」(ドリルのボタンを押して投げる)
カルロス:「くたばり損ないめ・・・。余程さきに死にたいようだな・・・」
(発光して凄まじい光を出すドリル)
カルロス:「何だ! この強烈な光は!? ぐわっ!!! 目が!!!!! 目が!!!!」
ローガン:「よし! 上手く行った! ミッシェル、ケイト、脱出するぞ!!!」
ケイト:「はい・・・!」
ミッシェル:「ええ!!!」
カルロス:「よくもこの私の目を・・・。生かして帰さん!!! 聴こえるか警備室!!!
ただちにカジノホールの強化シャッターを、1つ残らず下ろすんだ!!!
そして、侵入者を見つけ次第、全員殺せえええ!!!!」
間
(現在 夜 B&Mカンパニー本社ビルの屋上)
ミッシェル:「今、思い出してもゾッとするわ・・・。
あの後、カルロスの追っ手が、次から次と出てきて、必死に脱出をしたから、
ベン達と合流するまでに、ローガンやケイトともはぐれちゃったのよね・・・」
ローガン:「合流場所に行くまで、お前達が無事に逃げられたか冷や冷やしたぜ・・・」
ケイト:「私もです・・・。お二人が無事に逃げて来られて、安心しました・・・」
マイク:「本当、皆、無事で万々歳だよね!」
ベン:「・・・」
ローガン:「ベン、黙りこんで、どうしたんだ?」
ベン:「いや、俺達を裏切ってる犯人は、本当、みんなの信頼を得てるんだなと思って、感心してた・・・」
マイク:「その話なんだけどさ、本当に僕達の中に裏切者はいるのかい?」
ベン:「・・・あぁ、いる。今も俺達を騙し続けてるよ」
ミッシェル:「ベン、そろそろ話したらどう? 誰が裏切者なのか」
ベン:「そうだな・・・。このままじゃ、同じ失敗を繰り返すだろうし・・・。
俺は待ってたんだけどな。自ら裏切者だと名乗って、改心してくれるのを・・・。
だけど、それもどうやら叶わないようだ」
ベン「なぁ・・・そうだろ? ケイト」
ローガン、ミッシェル、マイク:「えっ!?」
ケイト:「ベンさん、何を言ってるんです・・・。冗談は止めてください・・・」
マイク:「そうだよ! ベン。それはいくら何でもあるわけ無いよ!」
ローガン:「ベン。ケイトは俺達の中で、一番気も弱いし、裏切る要素なんてあるわけないだろ・・・」
ケイト:「ローガンさんの言う通りです・・・。私が・・・、皆さんを裏切るなんて・・・」
ベン:「それがあるんだよ。ミッシェルが何故、あのカルロスの屋敷に無事侵入して、出て来られたか・・・。
それは、ケイトがカルロスと仲間だからだよ。・・・そうだよなケイト?」
ケイト:「そんな・・・。違います・・・」
マイク:「もう止めようよ! やっぱりさ、僕達の中に裏切者なんていないんじゃないの?
・・・それもベンの勘違いなんじゃ?」
ローガン:「俺もやっぱりこん中に裏切者がいるんて信じられねぇよ・・・」
ミッシェル:「ベン。・・・確かに、一番気弱なケイトがあの後、どうやって脱出したかは気になってたけど、
カルロスと仲間なのは、私も信じられないわ!」
ローガン:「ミッシェルの言う通りだ。 カルロスと仲間? そんなの嘘だよなケイト!?」
ケイト:「ローガンさん・・・、私を信じてください・・・! 私・・・、初めて会った時から・・・、
ローガンさんの事・・・、あっはははは!!!」
ローガン:「ケイト・・・」
ケイト:「もう駄目! 堪えるの限界・・・。
本当は、なんて惚れやすくて、騙されやすくて、そして単純なんだって思ってたわ!」
ローガン:「なんだと!?」
マイク:「ケイト・・・。君が、裏切ってた犯人だなんて・・・そんなの嘘だよね?」
ケイト:「本当よ」
マイク:「そんな・・・」
ケイト「犯人じゃないって一生懸命、誤魔化そうと演技したけど・・・、
みんな私の為に必死で可笑しすぎて・・・。笑いがこらえ切れなかったわ・・・。
ローガン、貴方って正直、顏は結構好みだったんだけど、私、単純な男はタイプじゃないのよね!
清純とか気弱なフリをしたら、男って本当、簡単に騙されるんだから単純でつまらない!」
ローガン:「それがお前の本性か・・・」
ケイト:「ええそうよ。それにしてもベン、私が裏切者でカルロスと仲間だって、いつ気付いたのかしら?」
ベン:「それは、君のその特殊能力だよ。初めは凄い能力だと思った。
だが・・・、よくよく考えてみたら、わかったのさ。その能力のからくりが・・・」
ケイト:「へぇ~、説明してもらえる?」
ベン:「その特殊能力を成り立たすには、内部に協力者が必要だってね・・・。そこからは君の行動をマークしていたよ。
案の定、あの時、君は俺とマイクに嘘を付き、バンから離れて、カルロスの屋敷に侵入した。
さも、ミッシェルやローガンを心配するのを装ってな」
ケイト:「全部お見通しってわけ。あ~あ、この能力に関しては良い線いってると思ったのに、失敗しちゃった・・・」
ミッシェル:「ケイト、貴方、一体?」
ケイト:「バレてるんなら、こんな窮屈で、ダサい格好は、脱いじゃって良いかしら?
こんな服と髪型、はっきり言って、私の趣味じゃないのよね・・・」
(変装と眼鏡、ウィッグをとって、身軽で動きやすい格好になるケイト)
ケイト:「あ~! スッキリした~!」
ケイト「ねぇ、ミッシェル、貴方、言ったわよね。体型は私と良い勝負って・・・。
あの言葉聞いた時、正直はぁ!? って思ってた。
私の方が、スタイル良いのに、何、この女は言ってんだってね!」
ミッシェル:「あの時、そんな事思ってたのね・・・。よくもまあ、あんな変装で騙してくれたわね・・・!
でも、私の勘も外れてなかったようね。
それにしても見事だったわ。カルロスの屋敷に貴女がいた時も、
私達のことが心配で命がけで侵入してくれたと思ってたのに、それすらも嘘だったなんてね!」
ケイト:「貴方達の為に命をかける? 馬鹿を言わないで! そんなのごめんよ! それに、騙される方が頭たりないのよ!
さてと、気弱なフリも飽きたし、そろそろ仕上げといこうかしら」
ケイト「出てらっしゃい!!! カルロス!!!!」
ローガン:「カルロスだと? この屋上に隠れているのか?」
ケイト:「馬鹿も此処まで行くと気の毒ね。姿を表してあげて、カルロス!!!!」
(ケイトの言葉のあとに、ビルのすぐ下からヘリコプターの音がして、カルロスが現れる)
ミッシェル:「この音はヘリコプター・・・!」
ローガン:「カルロス・・・」
カルロス:「久しぶりだね君達・・・。この日をどれだけ待ったか、わかるかね・・・。
お前達への復讐をしたくて、指折り待っていたよ!」
ミッシェル:「カルロス・・・!」
カルロス:「ソフィア・・・。いや、ミッシェル! 随分と酷いじゃないか・・・。
私を騙して、屋敷を滅茶苦茶にしてくれて・・・。
君には個人的に、たっぷりとお仕置きをしたいところだよ!」
ミッシェル:「それはお断りするわ!」
カルロス:「相変わらず、つれないね・・・」
ベン:「カルロス! こうして顔を合わせるのは初めてだな」
カルロス:「お前がベンか・・・。ケイトから色々、話は聞いてるよ。
うちのケイトが、随分と世話になったね」
ベン:「それほどでも無いさ! 所で、今日のパーティーには、お前は招待した覚えはない。
さっさとこの場から、退場してもらおうか!」
カルロス:「招かざる客ってわけか・・・。それは失礼した。だが、このまま素直に引き下がるとでも思ったかね!」
ベン:「一体、何をする気だ?」
カルロス:「日頃の御礼を兼ねて、今日は此処で、君達には死んでもらおう。この用意したミサイルでね!
銃弾の雨で、少しずつ殺して、甘美な悲鳴を楽しむのも考えたが、少々、私も忙しくなってね・・・。
これなら、痛みを感じる事無く、死ねるのだから、あの世でせいぜい、感謝してくれたまえ!!!」
ローガン:「おいおい! 冗談じゃねぇぞ! あんなの撃たれた日には、俺達、死んじまうじゃねえか!」
ミッシェル:「此処はビルの屋上、逃げる時間はないわね・・・。
だけど、カルロス、それじゃあ、ケイトも巻き添えになるわよ。良いのかしら?」
カルロス:「巻き添え? その女が、お前と一緒に心中するように見えるのかね? 後ろを見てみるがいい!」
(ベン達がカルロスに集中してる間に、ケイトはパラシュートを身に着けて、飛び降りようとしている)
ケイト:「ちょっとカルロス! 貴方、どっちの味方かしら? 颯爽とこの場から脱出しようと思ってたのに、
教えるなんて酷いじゃない!」
カルロス:「それはそれは失礼」
ローガン:「ケイト!!! 待ちやがれ!!!」
ケイト:「あら~、何かしらローガン? 貴方のプレイボーイっぷりも、嫌いじゃなかったけど、
飽きちゃったし、そろそろ私は、お暇させてもらうわ。ミッシェルとあの世でお幸せにねローガン!
あっははははは!!!」
(笑いながら、ケイト、夜の空へダイビングして退場)
カルロス:「別れは無事に済んだようだし、私もそろそろ、お暇させてもらうよ。
諸君、地獄で仲良く過ごしたまえ!
さらばだ!
よし! 良いぞ、発射しろ!!!」
(ミサイルの発射を部下に命令して、ビルに向かって、ミサイルが発射される)
マイク:「うわあああああ!!! ミサイルが来ちゃう! 死ぬのなんて嫌だよおおおお!!!」
ローガン:「おいっ、そんな事言ってる場合か! 早く逃げるぞ!!!」
ミッシェル:「ええ!!! ちょっと何してるの!? ベン!!!」
ベン:「あぁ!!! とにかく、みんな走るんだ!!!!」
(ヘリからのミサイルでビル屋上は大破
その光景をヘリの中からカルロスは満足した表情で見ながら、ヘリは遠くに去っていく)
間
(数時間後、TVのニュースでは、さっきのビル爆破のニュースが流れていた)
ニュースキャスター:「今朝のニュースです。昨夜、B&Mカンパニー本社ビル、屋上で爆発がありました。犯人は未だ不明。
ビルのオーナーであるベン氏も、昨夜から行方不明になっており、
爆発の被害に巻き込まれた可能性もあると警察は現場検証を続けています。続きまして・・・」
(そのニュースをベッドで観てるケイトとカルロス)
ケイト:「どうやら上手く行ったみたいね。ねぇカルロス、これで邪魔者はいなくなったんだし、
そろそろ次の獲物にとりかかりましょう」
カルロス:「それもそうだな・・・。だが、その前に、君ともう少し、こうしていたいのだが、良いかね?」
ケイト:「もう仕方ないわね・・・。少しだけよ・・・」
カルロス:「連中も、あの世で後悔してるだろう。この私達に、歯向かった事をな」
ケイト:「貴方のそういう容赦ない所が、私は好きよ」
カルロス:「一体、何を企んでいる・・・。ケイト」
ケイト:「別に、企んでないわよ。素直にそう思ってるだけ」
カルロス:「どうだか・・・。とにかく、次の獲物も、この調子で頼むよ」
ケイト:「ええ。わかってるわ」
間
(街中から離れた森林にあるコテージ)
ローガン:「世間では、この前のビルの爆破のニュースで、もちきりだな・・・」
ミッシェル:「それはそうよ。なんたって、世界に誇る、一大カンパニーの本社ビルの屋上が吹っ飛んだんだから」
ローガン:「それもそうか・・・。それにしても、俺達よく生きていたよな・・・」
ベン:「カルロスがミサイルまで考えてるとは思わなかったから、ギリギリだったが・・・、
念の為に、パラシュートを用意して置いて正解だった」
ミッシェル:「本当にね・・・。マイクなんか、怖がって叫びまくってて、うるさかったわ・・・」
ローガン:「違いない。それで、その張本人は何処に行ったんだ?」
ベン:「マイクなら、買い出しに行ったよ。此処に潜伏してる間の食料やその他諸々をね」
ローガン:「その他という事は、このまま引き下がる気は、ないってことだな?」
ベン:「決まってるだろ。きっちりと受けた礼は返さないとな」
ミッシェル:「ええ! このままでは、終わらせないわ」
ローガン:「あぁ! それでこそ、俺らのリーダーだ! それで、次の作戦は考えてるのか?」
ベン:「あぁ・・・。次の作戦は・・・」
間
(誰かと電話をしているケイト)
ケイト:「・・・もしもし、そろそろかかってくると思ってたわ。そちらの準備はどう?」
マイク:「あぁ・・・。順調だよ。そっちはどうだい? ・・・ケイト」
ケイト:「えぇ・・・。順調といえば順調だけど、カルロスはそろそろお払い箱かしら。
いい加減、うっとおしくなってきたわ・・・」
マイク:「あんなにベタベタしてたのに、女はやはり怖いな・・・」
ケイト:「貴方こそ、仲良くしてるのに、こんな事してて、人の事いえないんじゃない?」
マイク:「俺の場合は違うよケイト。楽しんでるのさ・・・。この手でベンが、もがき苦しむ姿を見るのをね・・・」
ケイト:「一体・・・、貴方とベンに何があったの?」
マイク:「それは、いくら君でも言えないね・・・。それと、俺の邪魔をするのなら、その時は君も・・・、殺すからね。
それだけは、忘れずにに覚えておいて」
ケイト:「相変わらず、おっかない人ね・・・。じゃあ、一つだけ質問いいかしら?」
マイク:「一応聞いてあげるよ。なんだい?」
ケイト:「そんなに恨んでるなら、どうしてベンの側で、手助けしたり、危険な目にあったりするの?」
マイク:「それは簡単だよ。俺はベンを殺したいほど、憎んでると同時に、とても大好きなんだ・・・!
だから、もっと側にいて、彼が喜んだり、苦しんだり、悲しんだりしてる所を、近くで見ていたいのさ・・・!」
ケイト:「貴方って相当、性格が歪んでるわね・・・」
マイク:「それほどでもないさ」
ケイト:「まぁ、良いわ。これからも良いビジネスパートナーとして、よろしくねマイク。じゃあね」
マイク:「あぁ・・・。またね・・・。ケイト」
間
マイク:「・・・あの女もあと何回か、利用したら、その後の処理は考えないといけないな・・・。
まったく、世の中、面倒な事ばかりだよ・・・。
さ~て、仲間の元に戻るとしますか。
今度は、俺をどう楽しませてくれるか、お手並み拝見だよ」
マイク:「憎くて、愛しくて、堪らない・・・ベン!」
(ベンの写真に向けて、銃を撃つマイク)
終わり
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