義理でも良いじゃないですか?

 

 

 

作者:ヒラマ コウ

 

 

 

 

登場人物

 

義人(よしと)・・・毎年、2月14日が大嫌いで仕方ない

       その理由とは・・・

 

 

理緒(りお)・・・義人の事が初めて会った時から気になり、バレンタインデーも近いし、アタックしようと思ってる

 

 

 

 

 

比率:【1:1】

 

 

上演時間:【30分】

 

 ※2021年、1月30日、加筆修正

 

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CAST

 

 

義人:

 

 

理緒:

 

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本編はここから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理緒(M):「私には・・・、好きな人がいます。とは言っても、片思いなのですが、初めて会った時から、その人を思うと、

       胸がドキドキして、どうしようもなくなります・・・。今日もまた、会いに来てしまいました・・・」

 

 

 

 

義人:「お客様、本日もありがとうございます」

 

 

理緒:「あっ・・・。その・・・」

 

 

義人:「最近、よくお見かけしますが、この展示が好きなのですか?」

 

 

理緒:「いえ・・・」

 

 

義人:「え? それでは、お嫌い・・・」

 

 

理緒:「大好きです!!!」

 

 

理緒(M):「貴方の事が・・・!!!! もう、目が合うだけで、どうにかなっちゃうくらい、

       大好きで、たまりません!!!

       あっ・・・、もう、お気づきかと思いますが、この部分は私の心の中の声で、

       彼には、聴こえてません。

       あ~、何で肝心の事になると、伝えられないのでしょう~!!!!

 

 

 

 

 

 

義人:「余程、好きなのですね。この展示」

 

 

理緒:「ええ。そうなんです・・・」

 

 

義人:「本日は、お客様も少ないので、ゆっくりご覧になって行ってくださいね」

 

 

理緒:「はい・・・」

 

 

義人:「それで、今日はどの来場特典にしますか?」

 

 

理緒:「それじゃあ、これでお願いします」

 

 

義人:「あっ、この色、俺も好きなんです。奇遇ですね」

 

 

理緒:「そうなんですね・・・」

 

 

理緒(M):「あの時の、会話の内容通り選んで良かった!盗み聞きするつもりはなかったのだけど・・・

       彼の仕事仲間との会話が聴こえて・・・、赤が好きと言ってたので、選んでみたのですが、正解でした!

          神様・・・。ありがとうございます・・・」

 

 

義人:「それでは、本日の来場特典です。どうぞ」

 

 

理緒:「ありがとうございます・・・」

 

 

義人:「それでは。ごゆっくりどうぞ」

 

 

 

 

 

 

理緒(M):「今日はこの前より、沢山、彼と話せました!!! 

       一日、良い日になりそうです! ラン♪ララン♪ララ~ン♪」

 

 

 

 

 

 

義人(M):「あの女性、最近よく来るな・・・。そんなにこの展示、良いのか? 到底、俺は好きになれね~。

          なんで、よりにも寄って、バレンタインデーにちなんだ展示なんだよ!

          どの絵も、ラブラブしやがって! しかも、来る大半はカップル連れ!

          どいつも、イチャイチャしやがって・・・。だからこの時期は嫌なんだよ!

          叶うなら、家に引きこもって、過ごしたいくらいだ・・・」

 

 

 

 

理緒:「あの~・・・」

 

 

 

義人(M):「第一、この名前で、どれだけ苦労したか・・・。小学生から大学まで、仲良くなった友達でさえ、

          バレンタインデーの時期になると、俺に決まって、こう言いやがる・・・。

          よ! 義人! 今年は何個、義理チョコもらえたんだ? 

       お前、本命は一生、貰えなさそうな名前で、気の毒だよな・・・!

          あ~!!! どいつもこいつも、馬鹿にしやがってぇぇぇ!!!」

 

 

 

理緒:「すみません・・・」

 

 

 

義人:「はい!!! 何か用ですか!!?」

 

 

 

理緒:「ひぃぃぃぃぃ・・・!!!」

 

 

義人:「あっ・・・すみません! 怒鳴ってしまって・・・」

 

 

理緒:「私こそ、声かけてごめんなさい・・・」 

 

 

義人:「お客様は悪くありませんよ。それで、どうされましたか?」

 

 

理緒:「展示されてる絵なのですが・・・」

 

 

義人:「絵がどうかされましたか?」

 

 

理緒:「傾いて・・・、気になる場所が、一カ所ありまして・・・」

 

 

義人:「そうでしたか。何処か案内してもらえますか?」

 

 

理緒:「はい」 

 

 

 

 

 

 

理緒:「此処の絵です・・・」

 

 

義人:「あ~・・・、確かに傾いてますね・・・。額縁には触れないようにと、書いてるのですが、

    それでも、触れてしまう、お客様っているんですよね・・・。

    教えてもらい、助かりました。

    助かりついでで、申し訳ないのですが、絵を照らす照明も調整したいので、

    少し、手伝っていただけますか?」

 

 

 

理緒:「私で良ければ・・・」

 

 

義人:「ありがとうございます。急いで、脚立を取ってきますので、少し待っててください。すぐ戻りますから!」

 

 

理緒:「はい・・・」

 

 

理緒(M):「神様、ありがとうございます! このチャンスに、彼ともっと仲良くなりたいですし、会話をいっぱいしたいです!

       それで、お互いを知って・・・、行く行くは、お茶とか、食事にも、行く仲になったり・・・。

        あっ、でも・・・、こんな見た目も、冴えない私では、好きになってもらえない可能性も・・・。

       ・・・現実は、そんなに甘くありませんよね・・・。はぁ~・・・」

 

  

 

 

 

 

 

義人:「お待たせしました」

 

 

理緒:「・・・」

 

 

義人:「どうかされましたか? もしかして、この後、予定とかありましたか?」

 

 

理緒:「予定はないです・・・」

 

 

義人:「そうですか。それでは、少し手伝いお願いします」

 

 

理緒:「はい」

 

 

義人:「脚立に上がってる間、抑えててもらえますか?」

 

 

理緒:「こうですか?」

 

 

義人:「良い感じです。では、暫くそのまま、お願いします」

 

 

 

 

 

 

理緒(M):「沈黙の時間・・・。こういう時ってどんな会話をしたら・・・」

 

 

 

義人:「・・・」

 

 

理緒(M):「今日は晴天ですよね! あ~、これでは・・・普通ですし・・・。

       今、付き合っている女性はいますか? ・・・って、私の馬鹿! 

       そんなストレートに、訊けるわけないでしょう!

       あっ、でも、気になるのは、気になりますし、思い切って訊くのも・・・

       あ~、私は、どうしたら良いのでしょう・・・!!!」

 

 

 

義人:「こんな感じかな・・・。お客様、もう抑えてなくて良いですよ。ありがとうございました」

 

 

理緒:「お役にたてましたでしょうか・・・?」

 

 

義人:「はい。大変、助かりました。 あっ・・・、少し待っててください!」

 

 

 

 

 

 

理緒(M):「結局なにも会話出来なかったです・・・。本当、私って意気地なし・・・。

       これでは、告白どころか、友達にもなれません・・・」

 

 

 

 

義人:「お待たせしました。あの、手を出してもらえますか?」

 

 

理緒:「手ですか・・・?」

 

 

義人:「はい、これ」

 

 

理緒:「これって・・・、ネット予約でないと、手に入らない限定特典・・・・」

 

 

義人:「今日のお詫びと、先程、手伝って頂いたお礼です。良いですか?

    これは、俺と貴方だけの秘密です。

    本当に今日は助かりました。またのご来場、お待ちしてますね」

 

 

理緒:「はい・・・。それでは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

理緒(M):「これって、夢なのでしょうか? 私の手を彼が触れて、ぎゅっと握りしめてくれました・・・。

       駄目です・・・。予想外の出来事過ぎて、これ以上、何も考えられないくらい、幸せです・・・

 

 

 

 

 

 

 

理緒(N):「そんな夢のような出来事も、あっという間に過ぎまして、今夜はバレンタインデー前夜です。

       私は彼に思い切って、手作りチョコを作って渡そうと、奮闘していました」

 

 

 

理緒:「こんなものでしょうか! 初めて作ったにしては、上手に出来たみたいです。

    後は、彼の大好きな赤い色のリボンで、綺麗にラッピングして、完成です!

    でも、問題は・・・、どうやって渡せば良いのでしょう・・・。

    つい勢いで、用意しましたけど、それが問題なの忘れてました!!!

    とりあえず・・・、寝て起きてから、考える事にしましょう・・・」

 

 

 

 

(バレンタインデー当日)

 

 

 

 

義人(M):「ついにこの時が来てしまった・・・。魔の行事、バレンタインデー!

       街がカップルだらけになり、ラブラブモードになる日!

       俺の働いてる美術館も、それは例外でなく、館内のあちらこちらで、

       イチャイチャが見せつけられる地獄の日・・・。

       はあ~。仕事休みたい・・・。

       なんで、このくそ忙しい日に、同僚はインフルエンザで倒れるんだよ!

       ぼやいてても仕方ない。出勤しよう・・・」

 

 

 

 

 

 

 

理緒:「ううん・・・今、何時ですか? えっ・・・嘘!!! ・・・やばいです!!! もう、お昼の3時過ぎてます!!!

    何でよりにもよって・・・、こんな時に寝坊するのでしょう~!

    急いで支度して、向かわないと・・・!」

 

 

 

 

義人(M):「予想通りカップルだらけで、館内はラブラブな雰囲気だし・・・。早く帰りてぇ~。

       それにしても、今日はあのお客様、来てないな。流石にバレンタインデーだし、用事あるんだろうな~」

 

 

 

 

理緒(M):「どうして、こんな時に限って、電車が遅延してるのですか! それに・・・ちょっと、そこのお方!

       さっきから、彼女のヒールが私の足を踏んでます・・・! もの凄く痛いです・・・!

       早く、気付いてください・・・!

       時間無いですし、痛いですし、なんて最悪な、バレンタインデーなんでしょう・・・!」

 

 

 

 

 

 

義人(M):「はぁ~。いつも以上に長く感じたけど、後、30分で閉館だ~。とうとう来なかったな・・・。あのお客様・・・」

 

 

理緒:「す、すみませえええええええん!!! まだ、入場できますでしょうか!!!」

 

 

義人(M):「あのお客様だ。それにしても、こんなギリギリの時間になってまで、観たい展示なのか・・・?」

 

 

義人:「はい。あまり時間はありませんが、入場は出来ますよ」

 

 

理緒:「良かったです~」

 

 

義人:「ですが、今日の来場特典は、もう無くなりました」

 

 

理緒:「全然、構いません! ・・・その代わりと言ってはなんですが・・・」

 

 

義人:「え? 代わり・・・?」

 

 

理緒(M):「これはチャンスなのかもしれないです! 勇気を振り絞って、伝えなくては・・・!」

 

 

義人:「・・・」

 

 

理緒:「あの・・・、良ければ、一緒に・・・、展示を見て回ってもらえませんか!!!」

 

 

義人:「俺とですか?」

 

 

理緒:「はい・・・!!!」

 

 

義人:「・・・」

 

 

理緒:「駄目ですか・・・?」

 

 

義人:「・・・わかりました。俺で良ければ、別に良いですよ

 

 

理緒:「ありがとうございます!!!」

 

 

 

 

 

 

理緒(M):「勇気を出して誘って、一緒に観て回れて、嬉しいのですが・・・。

       さっきから、見事に会話がありません・・・! 無言です・・・!

       ひょっとして、まずかったのでしょうか・・・。

       一人であの時は、舞い上がってて、気付きませんでしたけど、

       これは、流石に図々しかったのかも、しれませんね・・・。 一体、どうしたら・・・」

 

 

義人(M):「それにしても、変なお客様だな~。なんで俺と観て回りたかったのか、わけわからね~。

       さっきから、ずっと無言だし・・・。

       あれ? これって、もしかして、俺から話さないといけないパターン?

       舞い上がってたから、向こうから色々、話しかけてくれると思ってたけど、

       そうじゃないし・・・、正直、めんどくさくなってきた・・・」

 

 

 

理緒:「・・・」

 

 

義人:「・・・」

 

 

 

義人(M):「残り30分で帰れるところだったのに・・・。俺は今、何をしてるんだ・・・?

 

        ・・・そうだ。ある程度、観て回ったら、

       そろそろ閉館時間ですので・・・と、言って、適当に切り上げようっと!

 

 

理緒:「あの・・・」

 

 

義人(M):「おっ、やっと向こうから、話しかけてきた。何、話す気だ?」

 

 

理緒:「今日って、バレンタインデーですよね・・・。唐突な質問なのですが、チョコって・・・、お好きですか?」

 

 

義人:「大嫌いです!!!」

 

 

理緒:「えっ・・・?」

 

 

義人(M):「やっべ・・・。つい条件反射で、嫌いと言っちゃったよ・・・。

       流石にまずいよな・・・。

       展示内容も、バレンタインデーだし・・・」

 

 

理緒:「チョコ、嫌いなのですか・・・?」

 

 

義人:「まぁ・・・、好きと嫌いでいうと、嫌いというか・・・」

 

 

理緒:「何か理由があるのですか?」

 

 

義人:「いや、何というか・・・」

 

 

義人(M):「何でそこで、食いついてくんだよ! そうなんですね・・・で、終わらせろよ!

       あ~なんか、段々と、腹が立ってきた・・・!」

 

 

理緒:「あの~・・・チョコが嫌いと言う事は、今回の展示内容は・・・」

 

 

義人:「ええ、大っ嫌いですよ!!!」

 

 

理緒:「そうですよね・・・」

 

 

義人:「さっきから、何なんだよ!? チョコやら、バレンタインデーと連呼しやがって!

    俺は、一年で、この行事が・・・、一番~、大っ嫌いなんだよ!

    なのに、しつこく訊いてきやがって!

    第一、なんでお前は、俺にチョコ好きって訊いてくるんだよ?

    そんなの、お前の生活に全然関係ない・・・」

 

 

理緒:「関係なくありません!!!」

 

 

義人:「・・・え?」

 

 

理緒:「私は・・・。貴方の事が好きです・・・!!! 大好きなんです!!!

    初めて、ここで会った時から、ずっと大好きでした!

    貴方に会えると思って、毎日、どんなに忙しくても、時間を作って通ってました・・・!」

 

 

義人:「・・・」

 

 

 

理緒:「それだけじゃないです! この前、手伝いを頼まれて、1人喜んだり、

    2人だけの秘密と言われて、予想以上の出来事で嬉しくなって、

    帰りの電車の中で、笑顔のままだったり・・・。

    挙句の果てには、渡せるかも分からないのに、手作りチョコまで作って、

    貴方の好きな赤い色で、綺麗にラッピングしたり・・・」

 

 

義人:「赤い色・・・? どうして、君が知ってるの?」

 

 

 

理緒:「それは・・・、偶然、会話が聴こえて来て・・・」

 

 

義人:「・・・」

 

 

理緒:「とにかく! 私は、貴方の事が、大好きなんです!!!

    一人で、舞い上がって、気持ち悪いと思ったかもしれないですが、

    それでも、私は・・・、貴方に、好きな気持ちを、

    ちゃんと今日、伝えたかったんです・・・。

    以上です・・・」

 

 

 

理緒:「以上です・・・」

 

 

 

 

 

 

義人:「いや、なんか勢い、凄かった~・・・。

    ・・・そんなに俺の事、好きなんだ。

 

 

理緒:「はい・・・」

 

 

義人:「俺さ、さっきも言った通り、このバレンタインデーって行事が、一番嫌いだった・・・。

    その理由だけど、話しても良い?」

 

 

理緒:「はい、聞きたいです」

 

 

義人:「俺、昔っから、自分の名前がバレンタインデーとチョコに関係あることから、クラスメイトや

    友達に、この時期になると、毎年、弄られてたんだ・・・。

    しかも、小学生~大学生まで・・・。

    だから、大人になってからも、このバレンタインデーだけは、どうしても好きになれなかった・・・」

 

 

 

理緒:「理緒:そんなに、長い間、弄られたら・・・、そう、なりますよね・・・。

    良かったら、貴方の名前、教えてもらえますか・・・?」

 

 

 

義人:「良いけど・・・、絶対笑わないって、誓える?」

 

 

理緒:「約束します」

 

 

義人:「わかった・・・。俺の名前は、義人。義理チョコの義だから、

    お前は、本命チョコなんて、一生もらえないだろうなって、ずっと弄られてきたよ・・・」

 

 

理緒:「そうなんですね・・・」(優しく笑う)

 

 

義人:「あっ。笑わないって、約束じゃなかった?」

 

 

理緒:「違うんです。嬉しくて、つい」

 

義人:「嬉しいって? どうして?」

 

理緒:「・・・私達って、今こうして出会うために、お互い名前を、付けてもらったのかなって・・・。

    義理でも良いじゃないですか?」

 

義人:「え?」

 

理緒:「私の名前は・・・、理緒です。義理チョコの理です。

    お互いの名前を合わせると、義理になりますよね。だから、嬉しくて笑ったんです」

 

 

義人:「それでか・・・」

 

 

理緒:「はい・・・。

       だから・・・、これからは、もう本命チョコは、

     一生、貰えないなんて、言われる心配も、ありませんよ」

 

 

 

義人:「義人:・・・。あの、良かったら、さっき言ってた、

    俺の為に、作った・・・、手作りチョコ、貰って良いかな?」

 

 

理緒:「勿論です・・・!

    義理チョコですが良いですか?」(満面の笑顔で)

 

 

義人:「あぁ。勿論。大歓迎だよ! 理緒」

 

 

理緒:「・・・はいっ・・・!!!」

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

作者あとがき

 

バレンタインデーということで、どうしても何か書きたいなと思い書きました。

人間のバレンタインデーの台本は初めてですが、いかがでしたでしょうか?

演じていただけた時に、良ければ感想を教えてもらえたら嬉しいです。

この2人の行く末は、またいつか別のお話で・・・。