擬態(仮)

 

 

作者 片摩 廣

 

 

 

 

 

 

 

登場人物

 

 

 

宮下 莉紗子(みやした りさこ)・・・最近、売れっ子の女優

                   映画の主役である刑事、岩端 美涼(いわはた みすず)役に抜擢される

 

 

羽角 侑祐(はすみ ゆうすけ)・・・売れっ子の俳優

                  宮下の出演する映画で、バディの刑事、君塚 利信(きみづか としのぶ)役に抜擢される

 

 

 

 

 

比率:【1:1】

 

 

上演時間:【50分】

 

 

 

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CAST

 

宮下 莉紗子:

 

羽角 侑祐:

 

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宮下(N):「擬態・・・。それは自らを外敵から、守る為に。

       又は、獲物を得る為に、生物が望んで進化した状態を一般的に差す・・・。

       では、私達、人間の場合は、どうだろうか?

       例えば、結婚・・・。結婚は、お互いを好きで、大恋愛の末に結婚するケース。

       お互いの印象を写真という視覚情報でしか得られない状態で、

       ホテルのロビー、又は、料亭で、お互いの事を探り合って、結婚にまで辿り着くケース。

       人間によって、方法は様々だろう。

       では、そんな私達の日常で、果たして私達は、私達のままで居るのだろうか?

       もしかしたら、知らない間に・・・・、擬態していて、

       その擬態の状態が・・・、一般的な自分の姿になってるのでは、無いだろうか・・・?

       ・・・そうだとしたら、今、こうして語っている私は・・・、どちらなの・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羽角:「宮下さん・・・。・・・難しい顔してますけど、どうかしましたか?」

 

 

 

宮下:「ねぇ、羽角君・・・」

 

 

 

羽角:「何ですか? 宮下さん」

 

 

 

宮下:「・・・今度の台本、何か難しいんだけど・・・。

    あ~あ、映画の主役に抜擢されたから、どんな役だろうって、期待してたのに・・・」

 

 

 

 

羽角:「またすぐ弱音を吐くんだから。・・・そんな暇があるなら、台本の読み込みに、集中してくださいよ・・・」

 

 

 

宮下:「・・・。ねぇ・・・、君塚君・・・。貴方は、解離性同一性障害は信じる・・・?」

 

 

 

羽角:「解離性同一性障害・・・。多重人格とも呼ばれていた神経症ですね。

    ・・・これまでにも、解離性同一性障害と診断された加害者の事件はありましたが、

    にわかに、信じられないと思いました・・・」

 

 

 

宮下:「それは、どうして・・・?」

 

 

 

羽角:「この世には、演技という物があります。従って、極めて演技力の高い人物で、

    尚且つ、頭脳明晰の犯人であれば・・・、騙しきる事も可能では無いでしょうか・・・」

 

 

 

宮下:「それも一理あるわね・・・」

 

 

 

羽角:「一理ですか?」

 

 

 

宮下:「ええ、そうよ。・・・こうは考えられないかしら?

    今回の事件の犯人は・・・、演技してる自分が、普段の自分で、

    ・・・本人も、それを疑う所か、信じ続けているの・・・」

 

 

 

 

羽角:「要するに、一種の自己暗示状態に、犯人はなっている・・・ですか?」

 

 

 

宮下:「そもそも自己暗示は、自身の欠点の矯正、緊張感を緩和するのに役立つわ。

    従って、ポジティブ思考の人間に向いてるのよ」

 

 

 

羽角:「じゃあ、もし、ネガティブ思考の人間が、強い自己暗示状態になって居たとしたら・・・」

 

 

 

宮下:「・・・その自己暗示の状態を、否定、又は、疑われでもしたら・・・、

    その相手に対しては、強い憎悪が、生まれるでしょうね・・・」

 

 

 

羽角:「自分は何々だと、信じ切ってるのですから・・・、可能性はありますね・・・」

 

 

 

宮下:「・・・君塚君。・・・こうしてる間にも、第二の殺人が起こるかもしれないわ。

    犯人の特定、急ぐわよ・・・!!!」

 

 

 

羽角:「はいっ!!! ・・・。・・・はい、カットです」

 

 

 

宮下:「・・・(深い溜息)・・・解離性同一性障害・・・ね・・・」

 

 

 

羽角:「あっ、宮下さん自身は、信じてないって顔ですね」

 

 

 

宮下:「・・・う~ん、身近に居れば、信じたくもなるけど・・・、テレビのドキュンメンタリーで観かけたり、

    ドラマ、映画でしかだから、今いち、ピンと来ないのよ~・・・。

    まっ、役者である私達が、言っちゃったら、御終いなんだけど・・・」

 

 

 

羽角:「そうですよ。僕達は、観てくれている視聴者に、夢とロマンス、時にはスリリングなども、

    提供する側なんですから・・・。もう少し、女優って意識、持ってください・・・」

 

 

 

宮下:「気を付けるわよ~。・・・ねぇ、明日の読み合わせは、何時からだっけ?」

 

 

 

羽角:「言ってる傍からこれだよ・・・。・・・明日は、午後1時から、読み合わせです」

 

 

 

宮下:「そうだった、そうだった・・・。忘れない内に、スマホのカレンダーに記入しなきゃ・・・」

 

 

 

羽角:「良い加減、宮下さんも、手帳、持つようにしたら、どうですか?」

 

 

 

宮下:「・・・(溜息)・・・マネージャーにも、永遠と言われてるから、もうそろそろ、観念するしかないのかな~・・・」

 

 

 

羽角:「どうして、そんなに手帳、持つのが嫌なんです?」

 

 

 

宮下:「だって・・・、私ったら、すぐ物を落としたり、何処かに置いてきて、忘れちゃうのよね~・・・」

 

 

 

羽角:「うわ・・・。女優としては致命的だ・・・」

 

 

 

宮下:「うるさい・・・! ・・・(溜息)・・・だから、いざ手帳、持ったとして・・・、

    ・・・重要なスケジュールが、ぎっしりと書かれた手帳、落としたなんて事になったら・・・」

 

 

 

羽角:「一躍、ニュース番組のトップ、飾るでしょうね・・・」

 

 

 

宮下:「でしょう!? ・・・だから、こうして落とす可能性が低いスマホの、スケジュール機能にしてるのよ・・・」

 

 

 

羽角:「まっ、落とすのも大問題ですけど、・・・スマホの場合だと、ハッキング・・・」

 

 

 

宮下:「うっ」

 

 

 

羽角:「情報漏洩」

 

 

 

宮下:「うっ!」

 

 

 

羽角:「挙句の果てには、俳優と過ごした一夜のプライベイト写真の流出・・・」

 

 

 

宮下:「うううううううううう!!!! って、何よ・・・、プライベイト写真って・・・?」

 

 

 

羽角:「最近、人気、急上昇の・・・、宮下 莉紗子さんなら、そんな写真も・・・」

 

 

 

宮下:「絶対、無いから! 何よ・・・、私を何だと思ってんのよ・・・。失礼しちゃうわ・・・!」

 

 

 

羽角:「・・・あくまでも、例えですよ・・・。でも、そんな危険性もあるのですから、

    余り、スマホを過信しないでくださいよ・・・」

 

 

 

宮下:「肝に銘じとくわよ・・・。・・・え、もう、こんな時間・・・。

    ねぇ、この後、空いてる?」

 

 

 

羽角:「・・・またいつもの居酒屋ですか?」

 

 

 

宮下:「へへへ、当たり。・・・今夜は、冷えた生ビールで、喉、潤したいのよ~。ねぇ~、行こうよ~」

 

 

 

羽角:「生憎ですが・・・、今夜は予定があるのでお断りします・・・」

 

 

 

宮下:「え~、残念・・・。・・・でも、良い! 一人でも、飲みに行くから! それじゃあ、お疲れ様~!!」

 

 

 

羽角:「あっ! 明日、大事な読み合わせ、初日なんですから、飲み過ぎないでくださいよ!」

 

 

 

宮下:「分かってるわよ~!!!」

 

 

 

羽角:「・・・」

 

 

 

 

 

 

 

宮下:「・・・解離性同一性障害。・・・もし、身近の人が、そうなったら・・・、

    私は、どうすれば・・・。・・・ま~、起こるか分からない事に、

    悩んでても、仕方無いわよ・・・。難しい事は、一先ず忘れて、ビール、ビール~・・・」

 

 

 

 

(翌日)

 

 

 

 

 

羽角:「・・・被験者NO.11の行動を確認・・・。極めて特殊な状況下であるが、

    大変、興味深い事例でもあるので、観察は引き続き続行・・・」

 

 

 

宮下:「君塚君・・・。それは・・・?」

 

 

 

羽角:「あっ・・・。・・・岩端さん・・・、おはようございます。

    これは、加害者の入所していた、更生施設の資料です・・・」

 

 

 

宮下:「・・・観察・・・。・・・表向きは、社会復帰を目的とする更生施設だけど・・・」

 

 

 

羽角:「裏では、非合法の人体実験を、秘密裏に行っていたようです・・・」

 

 

 

宮下:「ターゲットとされた人間は、どんな人物だったのかしら?」

 

 

 

羽角:「はい、資料によりますと・・・、主に公園で生活を余儀なくされたホームレス達を、対象にしていたようです」

 

 

 

宮下:「なるほど・・・。ホームレスなら、非人道的な実験を繰り返して、万が一、死に至らしめてしまったとしても・・・」

 

 

 

羽角:「ええ・・・。親族達も・・・、探す可能性は、極めて少ないでしょうね・・・」

 

 

 

宮下:「更生施設の運営者は、こう記者達に答えてたわ。

    ・・・税金も払わないで、国の御荷物達を、どうしようが私達の勝手じゃないか。

    むしろ、私達は、国の為に、慈善事業を行ってる側だ。非難される筋合いはない・・・」

 

 

 

羽角:「・・・国の御荷物ですか・・・。

    幾らホームレス達は、住居が無いとしても・・・、人権はあるはずです。・・・酷い・・・」

 

 

 

宮下:「羽角君・・・」

 

 

 

羽角:「・・・(溜息)・・・今、良い所だったじゃないですか・・・。どうして、止めたんですか?」

 

 

 

宮下:「・・・何となく。・・・ねぇ、羽角君、本当に酷いと思って、演技してる・・・?」

 

 

 

羽角:「勿論ですよ!」

 

 

 

宮下:「そう・・・。それなら、私の気のせいかも。ごめんね、読み合わせの途中で、止めちゃって・・・」

 

 

 

羽角:「・・・。・・・本当ですよ」

 

 

 

宮下:「・・・何だろう・・・。今日の羽角君・・・。違和感があるのよ」

 

 

 

羽角:「違和感ですか? ・・・。・・・もしかして、気付いちゃいましたか・・・?」

 

 

 

宮下:「え? どういう意味?」

 

 

 

羽角:「・・・」

 

 

 

宮下:「黙ってちゃ分からないよ。何かあった?」

 

 

 

羽角:「実は・・・」

 

 

 

宮下:「・・・」

 

 

 

羽角:「・・・実は、今日の占い・・・。最下位で・・・。気分転換に、服屋に行ったんです。

    そしたら、そこの店員の態度が、最悪で・・・、あっ・・・、今日はアンラッキーデーなんだって・・・。

    だからと言い訳したら、俳優失格になるのですが・・・、宮下さんに、止めて貰えて、目が覚めました・・・」

 

 

 

宮下:「占いの悪い結果ね・・・。必ず、当たる訳ないって、思っていても、気になるよね・・・。

    でも、私達はプロなんだから、割り切らないと駄目よ・・・。分かった?」

 

 

 

 

羽角:「昨日と、立場が逆ですね・・・」

 

 

 

宮下:「あっ、本当だ・・・。要するに、羽角君も、俳優として、まだ修業が足りないって事ね。

    ・・・私ね・・・、死ぬその瞬間まで、女優をやっていたいの・・・。

    舞台の途中・・・、又は、映画の撮影中に・・・、不慮の死を迎えたいのよ・・・。

    そして、翌日の新聞、ニュースの見出しはこうよ!

    名女優、宮下 莉紗子。・・・死ぬ、その瞬間まで、役を演じ切る!!!

    あ~、そして、国中の私のファンは・・・、悲しみに明け暮れるの・・・!!」

 

 

 

羽角:「俳優の鏡ですね・・・。

    ・・・僕は・・・、愛する恋人・・・、妻達に看取られながら、最後を迎えたいです・・・」

 

 

 

宮下:「非現実的な願いね・・・。第一に、羽角君には、彼女が居ないじゃない?」

 

 

 

羽角:「彼女は居ませんけど・・・、片思いしてる人は、居ますよ・・・」

 

 

 

宮下:「何よ初耳! ねぇ、そんな相手居るなら、私に紹介しなさいよ!」

 

 

 

羽角:「・・・紹介、出来る相手なら、とっくの昔に、そうしてますよ・・・。

    ・・・でも、待てよ。・・・そっか・・・、物は試しに・・・」

 

 

 

宮下:「あっ、何か良い突破作でも、思い付いた?」

 

 

 

羽角:「はい、宮下さんのお陰で。・・・ただ、少々、リスクも伴うかもしれないので、

    ・・・成功、願っていてください・・・」

 

 

 

宮下:「リスクも伴う恋・・・。何だか、ロマンチック! 羽角君、全力で、応援するね!!!」

 

 

 

 

 

 

 

(翌日)

 

 

 

羽角:「・・・初めての試みの為、この先、何が起こるか予測不能・・・。

    だが、成功すれば、この国の更なる発展に繋がる、世紀に残る偉大な実験になるだろう・・・。

    ・・・ふぅ~・・・」

 

 

 

 

宮下:「・・・あっ、此処に居たんだ・・・。探したんだから・・・」

 

 

 

羽角:「少し、離席してただけですが、もう寂しくなったんですか?」

 

 

 

宮下:「だって、羽角君・・・。あっ、また良い間違っちゃった。

    ・・・侑祐とは、一秒たりとも、離れたくないんだもん・・・」

 

 

 

羽角:「嬉しいですけど・・・、こう、いつも一緒だと、息が詰まりますよ・・・」

 

 

 

宮下:「ごめんね・・・、気を付ける・・・。あっ・・・、また台本、読み直してたんだ・・・。

    そんなに読み込まなくても、侑祐なら大丈夫だよ。

    ねぇ・・・、私達、いつ婚約発表する?

    マスコミも驚くよね・・・! 何て言っても、今、売れっ子の・・・」

 

 

 

羽角:「・・・(溜息)」

 

 

 

宮下:「どうしたの・・・?」

 

 

 

羽角:「何でもありません・・・。最近、仕事続きで、疲れただけです・・・」

 

 

 

宮下:「あっ、それなら、肩、揉んであげようか?」

 

 

 

羽角:「別に良いですよ・・・」

 

 

 

宮下:「もう、恋人同士なのに、遠慮なんかしないで!」

 

 

 

羽角:「すみません・・・」

 

 

 

宮下:「あ~、随分、凝ってますね、お客さん・・・。最近、仕事、忙しいんですか?」

 

 

 

羽角:「ええ・・・」

 

 

 

宮下:「でも・・・、成功してる時なんて、どの職業も同じですよ・・・。今が辛抱の時です」

 

 

 

羽角:「・・・人間は、業の深い生き物です・・・。願いが実現して、嬉しいはずなのに・・・。

    素直に喜べない所か・・・、空しく思うなんて・・・。あんなに・・・、待ち望んでたはずなのに・・・」

 

 

 

 

宮下:「自身の欲に、飲み込まれるな・・・。・・・私のいつも言ってる事じゃない。忘れたの? 君塚君?」

 

 

 

羽角:「え? ・・・ええ、そうでしたね・・・。岩端さん・・・」

 

 

 

宮下:「・・・はい、マッサージ、終わり。・・・駄目よ、もう少し、肩の力、抜かなくちゃ・・・。

    見える真相も、見えなくなるんだから・・・」

 

 

 

羽角:「・・・。・・・岩端さんは、マッサージ、上手ですね・・・」

 

 

 

宮下:「それなら、刑事を辞めて、いっその事、マッサージ師になれるかしら?」

 

 

 

羽角:「岩端さんなら・・・、きっと・・・、何でも、天職に出来ますよ・・・」

 

 

 

宮下:「天職なら、もう見つけてるわ・・・。私の天職は・・・、貴方の奥さんよ・・・」

 

 

 

羽角:「・・・あの、宮下さん。・・・台詞、間違ってますよ」

 

 

 

宮下:「いいえ、間違ってないわ。・・・私の夢は・・・、貴方と一緒になる事・・・。

    それ以外は、望まないの・・・。だって、それが・・・、私の・・・」

 

 

 

羽角:「・・・。宮下さん、落ち着いて・・・」

 

 

 

宮下:「え? 誰よ、その人・・・。・・・私は、岩端 美涼よ。・・・そして、私は刑事・・・。

    ・・・いや、違う・・・。・・・私は、君塚君の奥さん・・・」

 

 

 

 

羽角:「(舌打ち)」

 

 

 

宮下:「・・・あっ、何処に行くの? 羽角・・・、君塚君・・・?」

 

 

 

 

羽角:「宮下さん・・・」

 

 

 

宮下:「何? ・・・あっ・・・」

 

 

 

羽角:「安心してください。ただの麻酔です・・・。大人しく眠ってください」

 

 

 

 

宮下:「羽角・・・君・・・」

 

 

 

 

 

 

 

羽角:「眠ったようですね・・・。・・・コンピューター・・・、データー、フルアクセス・・・」

 

 

 

ナビ:「・・・データーフルアクセスには、施設の責任者名が必要です」

 

 

 

羽角:「・・・施設責任者・・・、羽角 侑祐・・・」

 

 

 

ナビ:「・・・承認しました・・・」

 

 

 

羽角:「以下の処置を、被験者NO.11に、直ちに実行・・・」

 

 

 

ナビ:「被験者NO.11の刷り込みの一部を、変更前に戻します。

    本当に、実行して宜しいですか・・・?」

 

 

 

羽角:「あぁ・・・、構わない・・・」

 

 

 

ナビ:「責任者の承認を確認しました。これより、プログラムを実行します。

    プログラム完了の推定時刻は、翌日の午後2時頃です」

 

 

 

 

羽角:「くそっ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

(翌日)

 

 

 

宮下:「・・・あれ? 私、いつの間にか眠ってた・・・?」

 

 

 

羽角:「ええ・・・。余程、疲れていたんでしょうね・・・。とは言っても、ほんの20分くらいですけど・・・」

 

 

 

宮下:「そっか・・・」

 

 

 

羽角:「読み合わせ、中断しますか・・・?」

 

 

 

宮下:「うん・・・、少し休憩しようか・・・。ねぇ・・・、羽角君・・・」

 

 

 

羽角:「何ですか? 宮下さん・・・」

 

 

 

宮下:「夢の中でね・・・、私、羽角君と付き合ってたの・・・。

    そんな事、信じられないよね・・・?」

 

 

 

羽角:「・・・僕と宮下さんが付き合う・・・。まさに夢ですね・・・。

    第一、僕には、昨日、話したように、片思いの相手が・・・」

 

 

 

宮下:「ねぇ・・・、それって、もしかして、私・・・?」

 

 

 

羽角:「はぁ? それは幾ら何でも、自惚れ過ぎです。いいえ、・・・違いますよ」

 

 

 

宮下:「な~んだ、残念・・・。・・・羽角君なら、付き合ってあげても良いかなって、思ったのに・・・」

 

 

 

羽角:「それは、本心から言ってます?」

 

 

 

宮下:「本心かと言われたら、本心かも・・・。でも・・・、よく分かんない・・・。

    でも、これだけは確かよ・・・! 私と羽角君は気が合う!!」

 

 

 

羽角:「そう思ってるだけかも、知れませんよ・・・」

 

 

 

宮下:「ううん、そうじゃない。気が合うから、こうして・・・」

 

 

 

羽角:「兎に角・・・、僕と宮下さんが付き合うなんて、絶対に無いですから!」

 

 

 

宮下:「そんなに否定しないでよ・・・。何か、一方的に振られたみたいで、ショック・・・」

 

 

 

羽角:「・・・宮下さんには、僕よりもっと優しくて、素敵な人が見つかりますよ・・・」

 

 

 

宮下:「・・・当たり前じゃない! 私は今、売れっ子の女優なのよ! その内に・・・、君塚君よりも・・・!!」

 

 

 

羽角:「ぷっ・・・、宮下さん、怒りで、俺の名前、間違えてますよ・・・!」

 

 

 

宮下:「じゃなくて! 羽角君よりも、良い男、見つけて結婚するんだから・・・! 覚悟しておく事ね・・・!!」

 

 

 

羽角:「ええ・・・、覚悟しておきます・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(翌日)

 

 

 

 

羽角:「経過報告。・・・被験者NO.11は、若干の不具合が発生しているが、僕に対しての、愛情は、完全に抹消・・・。

    ・・・いや、違う・・・。訂正する・・・。

    僕に対しての、愛情は、フォーマットしたにも関わらず、一部、夢の内容として、残っている為・・・、

    今まで施して来た多数の人格の刷り込みによる、副作用の可能性も考えられる・・・。

    よって、これ以上、可笑しな状態が続く場合は・・・、

    被験者N0.11の廃棄も・・・、・・・廃棄も・・・。・・・くそっ・・・」

 

 

 

 

宮下:「おはよう・・・。君塚君・・・。朝から残念な知らせよ・・・。第二の殺人が発生したわ・・・」

 

 

 

羽角:「ついにですか・・・」

 

 

 

宮下:「・・・犯人は、その資料に書いてある通り、実験で刷り込まれた多数の人格に、翻弄されてるようね・・・」

 

 

 

羽角:「・・・犯人を楽にしてあげるには、どうしたら良いでしょうか・・・」

 

 

 

宮下:「そうね・・・。これ以上、犯罪を重ねないように、一刻も早く、逮捕する事かしら・・・」

 

 

 

羽角:「逮捕さえすれば・・・、犯人は、救われるんでしょうか・・・」

 

 

 

宮下:「逮捕した先は、私には分からない・・・。でも、これだけは言えるわ・・・。

    犯人は、今も苦しんでる・・・」

 

 

 

羽角:「え・・・?」

 

 

 

宮下:「当たり前じゃない。だって、自身の中に、複数の人格が居るのよ・・・。私なら耐えられない・・・」

 

 

 

羽角:「僕の考えは違います・・・」

 

 

 

宮下:「・・・え?」

 

 

 

羽角:「・・・犯人は、施設で施された刷り込みを、受け入れている。

    受け入れた上で・・・、その人格達は・・・、いつもの自分自身だと納得をさせて、共存する道を選んだ・・・」

 

 

 

宮下:「共存ですって!? 非人道的な実験によって、刷り込まれた人格よ!!

    それなら、犯人は苦しむ所か、自ら殺人を楽しんでるって言いたいの!?」

 

 

 

羽角:「そうです・・・。犯人は望んで、殺人を行ってます・・・」

 

 

 

宮下:「信じられない・・・。でも、その仮説が正しいとしたら・・・、私は犯人を絶対に許せない・・・。

    絶対に、この手で、捕まえて見せる!!!」

 

 

 

 

羽角:「・・・。・・・はい、カットです・・・」

 

 

 

 

宮下:「(溜息)・・・読めば読む程・・・、難しくなるわね・・・。

    ・・・犯人が望んで、殺人を繰り返す・・・か・・・」

 

 

 

羽角:「・・・犯人にとっては、非日常的ではなくて、当たり前の日常だったんですよ・・・。

    現実が何もかも、上手くいかなくて・・・、どうしようもなくて・・・。

    ・・・最後に辿り着いた手段が・・・殺人だった・・・」

 

 

 

宮下:「あっ・・・、もう、ネタバレ禁止!!! 私、まだ最後の展開、読んでないんだから・・・」

 

 

 

羽角:「ごめんなさい・・・」

 

 

 

宮下:「最後に辿り着いた手段が・・・、殺人ね・・・。犯人は、余程、追い込まれてたんだろうな~・・・」

 

 

 

羽角:「そうでしょうね・・・」

 

 

 

宮下:「・・・でも、展開的に面白くなってきたわよ・・・。いよいよ、犯人を追い詰めて行くのね・・・」

 

 

 

羽角:「・・・宮下さんは、今回、女刑事役で抜擢されましたけど・・・。

    もし、今回、抜擢された役が・・・、犯人側だとしたら・・・、宮下さんは・・・、演じたいと思いましたか・・・?」

 

 

 

 

宮下:「解離性同一性障害になった犯人役・・・。・・・う~ん、難しい役だと思うけど・・・、

    犯人役も、面白そうだと思った・・・!

    だから、名女優になる為のハードルだと思って、チャレンジしてたかな~」

 

 

 

羽角:「今の発言は・・・、本当ですか・・・?」

 

 

 

宮下:「どうしたの? 急に怖い顔して・・・。・・・え? 冗談なら、止めてよ・・・」

 

 

 

羽角:「質問です。宮下さんは・・・、今、幸せですか・・・?」

 

 

 

宮下:「何よ、急に・・・。幸せよ・・・。だって、子供の頃から、憧れていた女優になれたんだもの・・・」

 

 

 

羽角:「それは本当に・・・、貴方自身が憧れていた夢ですか・・・?」

 

 

 

宮下:「ええ、そうよ・・・。どうして、そんな事、聞くの・・・?」

 

 

 

羽角:「本当ですか? 心の底では、女優には憧れてなかった。これは、私の夢じゃない! と、思ってませんか!?」

 

 

 

宮下:「思ってないわよ!!! 痛い・・・。お願い、手を離して・・・」

 

 

 

羽角:「・・・」

 

 

 

宮下:「羽角君・・・?」

 

 

 

羽角:「それなら良いんです・・・。すみません、変な事、聞いて・・・」

 

 

 

宮下:「今日の羽角君・・・。何か変だよ・・・」

 

 

 

羽角:「・・・少し、君塚 利信として、入り込み過ぎたようです・・・。

    役が抜け切れてないので・・・、少し、頭を冷やして来ます・・・」

 

 

 

宮下:「わかった。・・・羽角君」

 

 

 

羽角:「何ですか・・・?」

 

 

 

宮下:「・・・今日の演技は、迫真に迫っていて、良かったよ・・・。明日も、読み合わせ、宜しくね・・・」

 

 

 

羽角:「ありがとうございます・・・」

 

 

 

 

宮下(N):「そう一言、私に告げると、羽角君は、部屋から出て行った・・・。

       どうしてだろう・・・。その時の彼は・・・、何だかとても辛そうに見えた・・・。

       それはそうと・・・、最近、何故だか知らないけど・・・、読み合わせが終わった後は、酷い頭痛に襲われる・・・。

       少し・・・、頑張り過ぎだろうか・・・。今日は早く休もう・・・」

 

 

 

 

 

(翌日)

 

 

 

 

羽角:「・・・経過報告。

    ・・・被験者NO.11に、施した刷り込みは・・・、不安要素もあったが、どうやら安定に向かっているようだ・・・。

    この施設での社会復帰プログラムは・・・、・・・今回で終了とする・・・。

    引き続き・・・、そちらの施設で、次のプロセスに移ってくれ・・・と・・・。

    ・・・(溜息)。・・・今日で、僕の役目は終わる・・・。

    ・・・役目を達成したはずなのに・・・、どうして、空しいんだ・・・」

 

 

 

 

宮下:「・・・おはよう・・・。羽角君・・・」

 

 

 

羽角:「おはようございます。宮下さん・・・。今日は、随分、寝坊したんですね・・・。

    もしかして、昨日、寝付けませんでした・・・?」

 

 

 

宮下:「うん・・・。何だか頭、痛くてね・・・」

 

 

 

羽角:「風邪ですか? 

    あっ、今、インフルエンザも流行ってますから、長引くようなら、ちゃんと病院に、行ってくださいね・・・」

 

 

 

宮下:「・・・ううう・・・ううう・・・」

 

 

 

羽角:「・・・ほら、そんなに痛いなら、やはり病院に・・・」

 

 

 

宮下:「病院なら、行かなくて良いわよ・・・」

 

 

 

羽角:「え・・・?」

 

 

 

宮下:「だって・・・、此処が病院みたいな物よね・・・。

    ねぇ、そうでしょう? 羽角 侑祐・・・先生!!!」(隠し持っていたフォークで、背中を刺す)

 

 

 

羽角:「(痛みで絶叫)!!!」

 

 

 

宮下:「あ~、やっぱ良いわ~!!! この感覚・・・、久しぶりだ~!!!」

 

 

 

羽角:「宮下さん・・・、いきなり何するんです・・・!!! 痛いじゃないですか・・・」

 

 

 

宮下:「羽角先生・・・、いつまで、お芝居を続ける気なの?

    ・・・もう、貴方から施された刷り込みは・・・、消えた・・・。

    いや、違うわね。・・・刷り込みなんて、最初から無かった・・・。そう、これは私自身なのよ・・・」

 

 

 

羽角:「何を言ってるんですか・・・、宮下さん・・・」

 

 

 

宮下:「さっきから、宮下、宮下、うるさいわね!!! 私の名前は・・・、古橋 絵理(ふるはし えり)よ!!!」

 

 

 

羽角:「馬鹿な・・・!!! その名前は・・・!?」

 

 

 

宮下:「ええ、そうよ・・・。私の本当の名前・・・。・・・ちゃんと、思い出したんだから!!!」(手を突き刺す)

 

 

 

羽角:「(痛みで絶叫)!!!!」

 

 

 

宮下:「名前だけじゃなくて、私自身の事もね!!!」

 

 

 

羽角:「馬鹿な真似は、寄してください・・・」

 

 

 

宮下:「・・・馬鹿な真似ね・・・。ねぇ、羽角先生・・・、背中と左手に、フォーク刺さったまんまで、今、どんな気持ち?」

 

 

 

羽角:「・・・カットです・・・」

 

 

 

宮下:「・・・お芝居じゃないんだから、もう止まらないわよ!! 

    今まで、よくも私の事、玩具にしてくれたわね・・・。

    覚悟しなさい・・・!!!」

 

 

 

羽角:「カット、カット、カット、カット、カット!!」

 

 

 

宮下:「カット、カット、うるさいわよ!!! 右手も・・・、こうしてあげる!!!」(右手も突き刺す)

 

 

 

 

羽角:「(痛みで絶叫)!!!!」

 

 

 

 

宮下:「良い叫び声じゃない!!! あ~ら、今度は、両手にフォークが刺さってる!!!

    あっははははは!!!!!

    まるで、ユダに裏切られて、磔にされたイエス・キリストのようね・・・!!!

    両手が痛んで、仕方ないでしょう!? 私の人格を散々、弄んだ罪よ!!!」

 

 

 

羽角:「ふはははっ・・・。・・・君自身も、楽しんでたじゃありませんか・・・。

    宮下 莉紗子・・・、岩端 美涼としての・・・、人生を・・・。

    自身を、女優、宮下 莉紗子だと疑いもしないで・・・、岩端 美涼役も、楽しんでいた・・・。

    ・・・その全てが、刷り込みによる人格プログラムとも知らずに・・・」

 

 

 

宮下:「いいえ!!! 違うわ!!! 私は、この施設には、強制的に連れてこられたの!!!

    そして嫌がる私に・・・、お前達は、怪しげな実験を繰り返した・・・。

    ・・・そのたびに私は、酷い頭痛・・・、吐き気に襲われ続けて、苦しんだの!!!」

 

 

 

羽角:「掃除するのに苦労しましたよ・・・」

 

 

 

宮下:「自業自得よ!! あ~・・・、何処まで話ったっけ・・・。

    ・・・苦しみ続けた私は・・・、やがて、自ら、こう思うようになった・・・。

    これは、私じゃない・・・。別の何者かだって・・・。

    こうして、苦痛に耐えてるのは・・・、私じゃない・・・。そう・・・、別人だって・・・」

 

 

 

羽角:「・・・生物には、生命の危機を感じると、擬態して逃れようとする生き物も居ます・・・。

    僕は・・・、それが人間でも、可能なのか確かめたかったんですよ・・・。

    貴女のように・・・、この国の御荷物になった人間を使って・・・。

    ・・・今まで、幾度と失敗を繰り返しては・・・、処分して来ましたが・・・、

    被験者NO.11・・・、貴女は、大変、優秀な研究成果を見せてくれましたよ!!! 

    そうだ!! 今度の刷り込みは・・・、弁護士も良いかも知れないですね!! 

    今より、強力に刷り込んであげますよ!! なんせ六法全書、丸ごとですからね~!!!

    ただ・・・、貴女の脳が、その膨大な情報量に、耐えれるかは分かりませんが・・・。あっははははは!!!!」

 

 

 

宮下:「ふざけるな!!! ふざけるな!!! ふざけるな~!!!

    これ以上、弄ばれて、堪るもんか!!!

    でも、残念だったわね・・・!!!

    ・・・この実験は、貴方の死によって、失敗だったと、世の中に証明される事になる・・・!!!

    貴方の、今までの悪事と一緒にね!!!!」

 

 

 

羽角:「さぁ、それはどうでしょう・・・!!」

 

 

 

宮下:「随分と強気なのね・・・。これから、殺されるのが、怖くないのかしら!?」

 

 

 

羽角:「幾ら僕でも、死ぬのは怖いですよ・・・。

    でも・・・、貴女の発言で、実現しない部分もあるから・・・、強気になってるだけです・・・。

    それと、もう一つ、貴女に伝えておきますね・・・」

 

 

 

宮下:「何よ・・・」

 

 

 

羽角:「僕は・・・、・・・宮下 莉紗子の事が・・・、大好きです・・・」

 

 

 

宮下:「・・・え? ・・・ふん。・・・今更、遅いのよ・・・」

 

 

 

羽角:「いいえ、遅くないです・・・。・・・これで、僕の勝ちです・・・」

 

 

 

宮下:「何を訳の分からない事を・・・。

    それじゃあ、これから、貴方を少しずつ、バラバラに解体していくわね!!!

    初めは両足、その次は指の一本ずつ!!! そして両方の腕も・・・!!」

 

 

羽角:「くっ・・・」

 

 

 

宮下:「怖いわよね~!!! でも、安心して!!!

    少しずつ、あんたが苦しんでるのを、楽しみながら、殺してあげるから!!!

    ・・・。・・・それじゃあ、始めるわよ! 

    ・・・今までの事、後悔しながら、死んで行きな!!! 羽角 侑祐!!!」

 

 

 

 

羽角:「ひひっ」(不敵な笑い)

 

 

 

 

 

長い間

 

 

 

 

羽角:「・・・。・・・。・・・はい、カット!!! お疲れ様でした・・・!!」

 

 

 

宮下:「・・・」

 

 

 

羽角:「・・・あの、終わりですよ・・・?」

 

 

 

宮下:「ぷは~・・・。・・・長かった・・・。もう、この台本、長過ぎだし、難しいし、疲れたよ~・・・」

 

 

 

羽角:「・・・お疲れ様です・・・。宮下さん・・・」

 

 

 

宮下:「・・・そっか、犯人は・・・、岩端 美涼だったのね・・・。

    ・・・私は別に、犯人が居るんだと思ってたわよ・・・」

 

 

 

 

羽角:「犯人である岩端 美涼は・・・、きっとバディである君塚 利信に、止めて欲しかったのでは、無いでしょうか・・・?」

 

 

 

宮下:「え?」

 

 

 

羽角:「岩端 美涼は、刑事である事に抑圧され続け・・・、少しずつ、精神が病んでいった。

    やがて・・・、その感情は・・・、犯人に対しての憧れに変わっていき・・・、

    自らも望んで、殺人を行い始めた・・・。さも、当たり前の日常のように・・・」

 

 

 

宮下:「・・・なるほど・・・。・・・奥が深いわね・・・。

    ・・・ねぇ、羽角君・・・、この後、時間はある・・・?」

 

 

 

 

羽角:「また、いつもの居酒屋ですか・・・?」

 

 

 

 

宮下:「当たり!!! ねぇ、今日は付き合って・・・!! お願~い!!」

 

 

 

 

羽角:「仕方ありませんね・・・。着替えたら行くので、外で待っていて下さい」

 

 

 

宮下:「ありがとう!! ・・・あっ、それと!!」

 

 

 

羽角:「何ですか?」

 

 

 

宮下:「明日からの撮影、宜しくね!!」

 

 

 

羽角:「ええ、宜しくお願いします」

 

 

 

宮下:「エヘヘ・・・。じゃあ、また後でね。・・・ビールが私を呼んでいる~・・・」

 

 

 

 

 

 

 

羽角:「・・・(溜息)。・・・結果報告。・・・被験者NO.11、古橋 絵理。

    職業、元刑事・・・。刑事職務中の精神的ストレスの増大化により・・・連続無差別殺人を起こす。

    その後、逮捕され、裁判所の判決により、無期懲役を言い渡され服役していたが・・・、

    収監先で、暴行事件を多発させる・・・。

    余りに酷い態度の為、秘密裏に、我社の社会復帰施設に搬送され、更生プログラムを受ける事になる・・・。

    ・・・施設の責任者である、羽角 侑祐の実験によって・・・、女優、宮下 莉紗子として、人格を刷り込まれ・・・、

    プログラムは、順調に進んでると思われたが・・・、プログラム終了の直後・・・。

    被験者は、元の人格を取り戻し・・・、そして、羽角 侑祐を、いたぶりながら殺害・・・。

    その後・・・、暫く暴れていたが・・・、やがて沈黙する・・・。

    現在、被験者は、宮下 莉紗子の人格に戻り、今は安定している・・・。

    ・・・この後の、被験者の処遇は・・・、次期、施設の責任者に、任せる事とする・・・。

    ・・・報告者・・・、羽角 裕二・・・と・・・」

 

 

 

 

 

羽角:「・・・(溜息)・・・双子の兄さんの後処理なんて最悪・・・

    ・・・本当、馬鹿だよね~・・・。

    刷り込みに・・・、自身の恋愛感情、組み込むなんて・・・。

    ・・・まぁ、でも・・・、無理も無いか・・・!

    ・・・被験者NO.11、古橋 絵理は・・・、初恋の相手に、そっくりだったんだから・・・!!

    それにしても・・・、プログラム名が、擬態(仮)・・・。

    はぁ~、昔から、兄さん、センスが無かったもんな~・・・。

    安心してよ、兄さん・・・。兄さんの、この施設は、俺が、ちゃんと引き継ぐからさ・・・。

    それと、褒めてあげるよ・・・。最後に、大好きってキーワードで、被験者に刷り込み、完了した勇気をね・・・。

    さ~てと、もう少し・・・、兄さんが残した、この台本で・・・、茶番を楽しみますか・・・。ふふふ・・・ははは・・・」

 

 

 

 

 

 

宮下:「・・・私の名前は、宮下 莉紗子・・・。職業は・・・、そう、女優よ・・・。ふふっ・・・」

 

 

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

※途中に出てくるナビは、宮下 莉紗子が兼ねてください