恋はプライスレス

 

 

作者:ヒラマ コウ

 

 

 登場人物

 

アラン・ルナール・・・身分を隠して、エマに近づく。容姿端麗でお金持ち。だが実は・・・。

 

エマ・ローレン・・・夫とは離婚して、大富豪の愛人になってる。プリティー・ウーマンの映画が大好きで、

          あんな出会いに、憧れている。

 

 

比率:【1:1】

 

上演時間【30分】 

 

 

※劇中、プリティー・ウーマンのBGMを流すシーンがありますが、流しながらだと、

 より世界観を楽しんでいただけると、思います。

 

※2022年、7月7日、加筆修正

  

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CAST

 

アラン・ルナール:

 

エマ・ローレン:

 

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(ホテルのBARカウンター 1人、カクテルを飲んでるエマ)

 

 

 エマ(N):「憧れの世界・・・。

        誰もが夢見る、映画のような日常なんて、私には夢のまた夢・・・。現実の私は・・・」

 

 

 

アラン:「失礼・・・。隣、座って良いかい?」

 

 

エマ:「えぇ、構わないわよ」

 

 

アラン:「こんな時間に、ホテルのBARに居るなんて。誰かと待ち合わせ?」

 

 

エマ:「違うわ」

 

 

アラン:「じゃあ、男目的?」

 

 

エマ:「そうだとしたら、どうする?」

 

 

アラン:「僕で良ければ、喜んで、お相手するよ」

 

 

エマ:「まぁ、随分、手慣れているのね」

 

 

アラン:「君の方こそ」

 

 

エマ:「それで、本当に良いのかしら?」

 

 

アラン:「何がだい?」

 

 

エマ:「喜んでのくだりよ」

 

 

アラン:「良く無かったら・・・、君に、こうして、話しかけたりしてないさ」

 

 

エマ:「やっぱり、それ目的で近寄ったのね」

 

 

アラン:「いけない?」

 

 

エマ:「さぁ、どうかしら? 当ててみて」

 

 

アラン:「・・・僕に声を掛けられて、満更でもなさそう」

 

 

エマ:「貴方って面白い。だけどハズレよ」

 

 

アラン:「残念」

 

 

エマ:「本当はね・・・。約束すっぽかされたの。今夜ここで会う約束してたのに。

    だから、1人で飲んでたのよ」

 

 

アラン:「誰と会う約束してたんだい? 恋人と?」

 

 

エマ:「・・・愛人よ」

 

 

アラン:「へぇ・・・」

 

 

エマ:「私ね、大富豪の愛人なの。だけど、どうやら今夜で、その関係も、終わりだったみたいね」

 

 

アラン:「落ち込んでる?」

 

 

エマ:「お金持ちだったから、ちょっとはね~。

    でも・・・、彼ったらあっちは役立たずで、正直せいせいしたわ~」

 

 

アラン:「それなら、この後は時間は空いてるわけか」

 

 

エマ:「そうなるわね」

 

 

アラン:「それじゃあ、改めて今夜、僕と一晩どうだい?」

 

 

エマ:「本気で言ってる? 私、そこら辺の普通の男には、興味ないけど」

 

 

アラン:「それなら好都合。金なら、君が驚くほど持ってる。・・・駄目かい?」

 

 

エマ:「貴方の押しに負けたわ。良いわ。一晩、遊んであげる」

 

 

アラン:「決まりだな。それじゃあ、俺の部屋に・・・」

 

 

エマ:「その前に、貴方の名前、教えて。・・・まさか一晩だけだから、名前は良いだろうとか、言わないわよね?」

 

 

アラン:「あぁ、勿論、言わないさ。俺は、アラン・ルナール。君は?」

 

 

エマ:「エマ・ローレンよ。

    自己紹介も終わったし、早く行きましょう。

    ねぇ・・・、部屋まで、エスコートをお願い出来る?」

 

 

アラン:「勿論、喜んで」

 

 

 

 

 

 

 

(エレベーターで部屋に向かう。PHのボタンを押すアラン・ルナール)

 

 

 

エマ:「最上階。本当に貴方、お金持ちなのね?」

 

 

アラン:「心の中では疑ってた? 正真正銘、君の大好きな、お金持ちだよ。

     ・・・今日から2週間、このホテルのペントハウスに泊ってる」

 

 

エマ:「そう・・・。・・・ねぇ、本当に私で良いの?」

 

 

アラン:「構わないよ。それに、駄目なら此処まで連れて来ない」

 

 

エマ:「それもそうね」

 

 

アラン:「さぁ、着いた。・・・この部屋だ」

 

 

(部屋のドアを開けるアラン)

 

 

アラン:「さぁ・・・、中に入って」

 

 

エマ:「・・・とても素敵な部屋ね」

 

 

アラン:「こっちに来て御覧。・・・バルコニーからの景色も、最高だよ」

 

 

エマ:「今、行くわ・・・。・・・本当、夜景が素敵ね」

 

 

アラン:「エマ、飲み物は何が良い?」

 

 

エマ:「シャンパンをお願い出来る?」

 

 

アラン:「オッケー」

 

 

エマ:「それと・・・、苺もお願い・・・」

 

 

アラン:「シャンパンと苺?」

 

 

エマ:「ええ。私ね、映画のプリティウーマンに憧れてたの。いつか、ジュリア・ロバーツみたいな体験したいなって・・・。

    そしたら貴方が現れて、ホテルの最上階のペントハウスに泊ってるんですもの。

    だから、この組み合わせは外せないわよ」

 

 

アラン:「それじゃあ、僕は、リチャード・ギアの代わりかい?」

 

 

エマ:「代わりにしては、若過ぎるし、色気がないけど満更でもないわ」

 

 

アラン:「こいつめ! 言ったな~!」

 

 

エマ:「ちょっと、止めてよ! くすぐらないで・・・! 私が悪かったわよ・・・!!!」

 

 

アラン:「わかれば良いんだ・・・!」

 

 

(部屋のチャイムが鳴る)

 

 

アラン:「どうやら、ルームサービスが届いたようだ。君はそこで待ってて」

 

 

エマ:「ええ、わかったわ」

 

 

 

 

アラン:「お待たせしました。姫君。ご希望のシャンパンと苺ですよ」

 

 

エマ:「姫君なんて止めてよ。私には合わないわ・・・」

 

 

アラン:「ジュリアロバーツに、憧れてるんだろう?」

 

 

エマ:「でも・・・」

 

 

アラン:「今夜は、憧れの世界を堪能すれば良いさ。ほらっ、口を開けて」

 

 

エマ:「・・・あ~ん」

 

 

アラン:「それと、このシャンパンも・・・」

 

 

エマ:「・・・(シャンパンを飲む)」

 

 

アラン:「どう? 憧れの世界のご感想は・・・?」

 

 

エマ:「最・・・高・・・。このまま、此処に住みたいくらいよ」

 

 

アラン:「本当に?」

 

 

エマ:「えぇ」

 

 

アラン:「それじゃあ、僕の恋人になってくれる?」

 

 

エマ:「それも、悪くないわね」

 

 

アラン:「本気で言ってる?」

 

 

エマ:「勿論・・・。アランは、私じゃ嫌かしら?」

 

 

アラン:「そんな訳ないだろう。・・・それじゃあ、今日から君は僕の恋人だ。良いね、エマ」

 

 

エマ:「本当は、プリティーウーマンみたいに、マンションの梯子に上って、告白されたかったけど、

    こういうシチューエーションでも許すわ。・・・よろしくね、アラン」

 

  

アラン:「素直じゃないね。でも、そういう部分が他の女性とは違って魅力的だ。

     さぁ・・・、何してる? ベッドにおいで」

 

 

エマ:「もう、エッチ」

 

 

アラン:「今日は何もしないよ。ほらっ早く」

 

 

エマ:「わかったわ」

 

 

アラン:「安心して。腕枕するだけだ」

 

 

エマ:「貴方って紳士なのね。・・・腕枕、大好きよ」

 

 

アラン:「それは良かった。明日は、君の服を買いに行こう。

     気に入ったお店の服、いくらでも買っても良いよ」

 

 

エマ:「本当に?」

 

 

アラン:「あぁ。映画のような世界に、憧れだったんだろう?」

 

 

エマ:「えぇ。嬉しいわ。・・・アラン、大好き・・・」

 

 

アラン:「それじゃあ、明日に備えて、そろそろ寝よう。・・・おやすみ、エマ」

 

 

エマ:「おやすみ、アラン・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(翌朝、ペントハウス ベッドルーム 内線のコールが鳴る)

 

 

 

 

エマ:「う~ん・・・。誰よ、こんな朝早くに・・・。

    ・・・はい。・・・え? この部屋代? 

    それは、連れのアランが・・・。

    ・・・彼、ここに昨日から泊ってるんですよね? ・・・えっ!? どういう事!?

    ・・・はぁっ!? 早朝にチェックアウトされて、支払いは、私がする!? 

    ・・・意味がわからないわよ・・・。

    ・・・えっ!? 待って・・・!!! 私は、この部屋に呼ばれただけで・・・。

    そんなああああ・・・!!!」

 

 

エマ:「これって、もしかして・・・、私、まんまと騙されたの? 

    アラン・ルナーーーーーール!!!!!」

 

 

 

 

 

 

アラン:「畜生・・・。あの女、大富豪の愛人と言ってた割には、財布にたいした額、入ってねぇじゃないか・・・。

     仕方ない・・・。次のターゲット探すか~」

 

 

 

エマ:「もう・・・! アランめ~・・・。一体、何処に行ったのかしら? 

    結局、私のカードで払ったけど、見つけたら、タダじゃおかないんだから!!!」

 

 

 

アラン:「・・・おっ、あの女。良い身なりしてるじゃねぇか~。

     後ろからは、よくわからないが、相当な美人でお金持ちと見た!

     昨日は、散々だったし・・・、

     次のターゲットは、あいつにするか。ちょっと、そこのお嬢さん、もしかして1人・・・?」

 

 

 

エマ:「えっ、私? そうだけど・・・」

 

 

アラン:「あっ・・・。やばっ・・・」

 

 

エマ:「貴方は・・・、アラン!!!」

 

 

アラン(M):「なんでよりにも寄って、出くわすんだよ。今日もついてないな~・・・」

 

 

エマ:「ちょっと、待ちなさい! 貴方に話があるのよ!!!」

 

 

アラン:「待つわけ無いだろ! バカ女~!!! へへっ、じゃあな!!!」

 

 

エマ:「あったまきた! そうだ、このバッグ・・・!? これでも・・・、喰らえ~!!!!」

   (持ってたバッグをアランめがけて投げつける)

 

 

アラン:「ぐへっ!」

 

 

エマ:「よしっ、ビンゴ!!!」

 

 

アラン:「いてててて・・・。おいっ、こら! 何てことしやがる! 危ねぇじゃねえか!!!」

 

 

エマ:「自業自得よ! それより、私のお金返して!!!」

 

 

アラン:「はぁ? 何のこと言ってる?」

 

 

エマ:「惚けても無駄よ! 私の財布から、お金を抜き取ったでしょ? ちゃんと返して!」

 

 

アラン:「そんなの、もう無い」

 

 

エマ:「どういう事よ」

 

 

アラン:「この服を買うのに使っちまったよ」

 

 

エマ:「人のお金で、勝手に何してるのよ!」

 

 

アラン:「うるさい! 昨夜、良い夢を見させてやったじゃねぇか! 

     こっちは、これでも本当は足りないくらいなんだよ!!!」

 

 

エマ:「なんですって・・・!」

 

 

アラン:「さぁ、用は済んだだろう。早く開放してくれ」

 

 

エマ:「いいえ、まだよ」

 

 

アラン:「この期に及んで、まだ何か俺にさせる気か?」

 

 

エマ:「私と付き合って。それで、盗んだお金はチャラにしてあげるわ!」

 

 

アラン:「どういう事だ?」

 

 

エマ:「詳しくは、今夜、22時に昨日のホテルのBARで話すわ。・・・良い、必ず来なさいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

(ホテルのBAR、エマを待つアラン)

 

 

 

アラン(M):「・・・約束通り来てみたのは良いが・・・。一体、エマは俺をどうする気だ・・・。

        ・・・う~ん、まだ来てない見たいだし、今からでも帰るか・・・」

 

 

エマ:「あら、ちゃんと約束通り来るなんて、偉いわね」

 

 

アラン:「・・・当たり前だろう。・・・それで、俺に何させる気だ?」

 

 

エマ:「貴方には、復讐の手伝いをしてもらいたいの」

 

 

アラン:「復讐だと?」

 

 

エマ:「私を捨てた大富豪によ」

 

 

アラン:「・・・女って怖えええ」

 

 

エマ:「褒め言葉、ありがとう」

 

 

アラン:「それで、具体的には何をすれば良いんだ?」

 

 

エマ:「その大富豪の前で、私といちゃついて頂戴。・・・勿論、演技でよ」

 

 

アラン:「そんな事して、どうなるんだ? その大富豪と、またよりを戻す気か?」

 

 

エマ:「それはまだわからないけど・・・。彼が貴方に嫉妬してくれたら、それもあり得るかもね」

 

 

アラン:「嫉妬ね~・・・。こんな身なりの俺に、嫉妬する金持ちなんて、居るかね~・・・」

 

 

エマ:「う~ん、黒ジャケットにデニムのパンツ・・・。

    今の貴方のままでは、駄目ね・・・。良いわ。私に付いてきて」

 

 

アラン:「おいっ、何処に行く気だ?」

 

 

 

エマ:「決まってるじゃない。貴方を変身させる為の買い物よ」

 

 

 

アラン:「変身だと?」

 

 

 

 

(BGM プリティーウーマンのテーマ)

 

 

 

 

エマ:「ほ~ら、何してるの! 早く来て!」

 

 

アラン:「なんだか楽しそうだな~」

 

 

エマ:「あら、わかる~?」

 

 

アラン:「さっきからお前、気持ち悪いほど、笑顔だからな」

 

 

エマ:「当然よ~。これって、憧れのプリティーウーマンみたいな展開だし、腕がなるわ~!」

 

 

アラン:「あの映画だと、男が女に服を買ってるじゃねぇか・・・」

 

 

エマ:「細かい事は気にしないの! さぁ、まずは、このお店に入るわよ!」

 

 

アラン:「おいっ、このお店は、いくらなんでも敷居が高いんじゃ・・・」

 

 

エマ:「大丈夫よ! 私に任せて頂戴」

 

 

 

(店内に入り、店員に声をかけるエマ)

 

 

 

エマ:「ねぇ、彼に似会う服をお願い出来る? ・・・えっ? 似合うかどうかわからない・・・?

    ・・・そう、来れよ、来れ・・・。(小声)

    そうねぇ~、お金は厭わないわ! このお店にある、高い服で、彼に似合うものを全部、持ってきて!」

 

 

アラン:「おいっ、それはいくら何でも・・・」

 

 

 

エマ:「貴方は黙ってて」

 

 

アラン:「・・・」

 

 

エマ:「ありがとう~。じゃあ、片っ端から、彼に着させて」

 

 

アラン:「どれから着れば良いんだ?」

 

 

エマ:「気に入ったものを着れば良いだけよ」

 

 

アラン:「そうは言ってもな~・・・」

 

 

エマ:「しょうがないわね。それじゃあ、ジャケットはこれに、スラックスはこれ。

    シャツはそうね~、これなんか良さそう。あとネクタイは・・・、うん、これを付けてみて」

 

 

アラン:「わかったよ・・・」

 

 

エマ:「着替えたら、一度見せてよね」

 

 

 

アラン:「あぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

エマ:「さてと、後は時計ね・・・。ねぇ、この時計を見せてくれるかしら?」

 

 

 

アラン(M):「エマの野郎・・・本当に金あるのか~? はっ!? もしかして、全部、この前の仕返しなんじゃ・・・。

        このカーテンを開けたら、いなくなって・・・。・・・うわあああああ~!」

 

 

エマ:「何よ! 時間かかってるから、ちゃんと着替えてるかどうか、覗いただけよ」

 

 

 

アラン:「おう・・・」

 

 

エマ:「どうしたのよ?」

 

 

アラン:「何でもない」

 

 

エマ:「そう。じゃあ、早くしてよね」

 

 

 

アラン(M):「なんだ、俺の思い過ごしか・・・」

 

 

 

 

エマ:「やっとね。どう? 着心地は?」

 

 

アラン:「悪くない・・・。似合ってるかは別だがな・・・」

 

 

エマ:「ふ~ん、思ってたより悪くないわね・・・。似合ってるわよ」

 

 

アラン:「それなら良かった・・・」

 

エマ:「それじゃあ、これに決まりね。後の購入した物は、私の家に届けるように手配済だから、

    ・・・さぁ、次に行くわよ」

 

 

 

アラン:「次って?」

 

 

エマ:「お腹が空いたでしょ? ランチにしましょう」

 

 

 

アラン:「なぁ・・・」

 

 

エマ:「何かしら?」

 

 

アラン:「いいや、何でもない・・・」

 

 

 

 

 

エマ:「・・・もう少し、自信を持って歩きなさいよ」

 

 

アラン:「こんなに高級なスーツ、着た事がないから戸惑ってるだけだ・・・」

 

 

エマ:「・・・周りを見てなさい。皆、貴方の事、気になって仕方ないみたいよ」

 

 

アラン:「それって、似合ってないって事じゃ・・・」

 

 

エマ:「さぁ、それはどうかしら・・・。着いたわ。・・・このお店よ」

 

 

アラン:「おいっ、見るからに高級そうなお店じゃないか・・・」

 

 

エマ:「そう? 良いから入るわよ」

 

 

アラン:「・・・」

 

 

 

(店員に席に案内されるエマとアラン)

 

 

エマ:「この席ね、ありがとう。・・・どうしたの? 早く座って」 

 

 

アラン:「あぁ・・・」

 

 

エマ:「メニュー、ありがとう。

    ・・・そうね~、私は、キャビアとロブスターと、それとシャンパン、お願い。アランは?」

 

 

アラン:「同じもので良い」

 

 

エマ:「そう。じゃあ、彼にも同じ物で。・・・えぇ、お願いね」

 

 

アラン:「なぁ・・・」

 

 

エマ:「何?」

 

 

アラン:「さっきの服屋といい、このお店といい、お金は大丈夫なのか?」

 

 

エマ:「なんだ、そんな事。心配しなくても大丈夫よ。

    彼からもらったお金だけど・・・、私ね。ほとんど、貯金してたの。

    だから、この際、パ~ッと使っちゃおうかなって!」

 

 

 

アラン:「それで、こんなに豪勢に・・・」

 

 

 

エマ:「気にしなくて良いのよ。貴方のおかげで、リチャードギアの気分も味わえたし、感謝してるわ」

 

 

アラン:「それなら良いけど。・・・それで、肝心の復讐だが、いつ決行するんだ?」

 

 

エマ:「2日後よ。彼、前に話してたのよね。この前とは違うホテルで、パーティーを開くって。

    そこに進入して、貴方の事、彼に見せつけてやるわ~」

 

 

アラン:「本当に俺で良いのか?」

 

 

エマ:「えぇ。貴方は容姿端麗だし、文句ないわよ」

 

 

アラン:「そうか・・・」

 

 

 

 

エマ:「どうもありがとう。見て~。どの料理も美味しそうよ。さぁ、食べましょ。

    それじゃあ~、成功を祈って、乾杯」

 

 

アラン:「乾杯・・・」

 

 

エマ:「美味しい・・・。このロブスターも、シャンパンも最・・・高・・・。

    ねぇ・・・、私ってそんなに魅力ないかしら?」

 

 

アラン:「いきなりどうしたんだ!?」

 

 

エマ:「ふふっ、少し酔ったみたい・・・。ねぇ、ちゃんと答えて」

 

 

アラン:「・・・とても魅力的だよ」

 

 

エマ:「本当に?」

 

 

アラン:「あぁ・・・」

 

 

エマ:「私も、貴方の事が好きよ・・・」

 

 

アラン:「え?」

 

 

エマ:「こんな私の為に、嫌々でも協力してくれる所よ。・・・そんな男性、今まで居なかった・・・」

 

 

アラン:「復讐に手を貸す男なんて、そう居ないよな~・・・」

 

 

エマ:「ええ。だからアラン、貴方は特別よ・・・」

 

 

アラン:「嘘でも嬉しいよ」

 

 

エマ:「嘘じゃないわ。貴方となら・・・、私・・・」

 

 

アラン:「エマ・・・」

 

 

エマ:「・・・悪酔いしちゃったわね。もう出ましょう」

 

 

 

 

 

 

(川沿い、お洒落な街頭が立ち並ぶ中、手すりにつかまり、川を眺めるエマ)

 

 

 

アラン:「大丈夫か?」

 

 

エマ:「平気よ。風にあたったお陰で、酔いも覚めてきたわ。ねぇ~、今夜は月が綺麗ね~」

 

 

アラン:「君も綺麗だ・・・」

 

 

エマ:「え? 何か言った?」

 

 

アラン:「何でもないよ」

 

 

エマ:「そう。いよいよ明日ね・・・。何だか緊張しちゃう・・・」

 

 

アラン:「緊張?」

 

 

エマ:「だって、彼とよりを戻せるかどうかわからないし・・・」

 

 

アラン:「やはり、よりは戻したいのか?」

 

 

エマ:「それはね~・・・。今あるお金も、底つきちゃうだろうし。

    それに私の憧れなのよ・・・。・・・お金持ちとの結婚は・・・」

 

 

アラン:「結婚っていっても、相手は奥さんがいるんだろう? いくらなんでも・・・」

 

 

エマ:「彼ね、私に言ったの。今の奥さんとは別れて、私と一緒になるって」

 

 

アラン:「でも、この前、すっぽかされたんだろう。その夢は叶わないんじゃ?」

 

 

エマ:「何か事情があるのかもしれないし」

 

 

アラン:「ただ、飽きただけだとしたら?」

 

 

エマ:「それでも、彼にもう一度会って話がしたいの。彼、何もかもパーフェクトなのよ。お金持ちだし、容姿も端麗で・・・」

 

 

アラン:「そうか・・・」

 

 

エマ:「どうかした?」

 

 

アラン:「すまない・・・。明日の為に今夜は、もう帰るよ」

 

 

エマ:「ねぇ、もう少し良いじゃない?」

 

 

アラン:「悪い・・・」

 

 

エマ:「そう、わかったわ。明日、ちゃんと待ち合わせ場所に来てよね。

    バックれたら、許さないんだから~」

 

 

アラン:「あぁ。ちゃんと行くよ・・・」

 

 

エマ:「良かった~。それじゃあ、明日の夜にね、アラン」

 

 

アラン:「おやすみ・・・、エマ・・・」

 

 

 

 

アラン(M):「騙して盗む側だったのに・・・。いつの間にか俺が盗まれてるとはな・・・。

        でも・・・、この思いはきっと・・・」

 

  

 

 

(ホテル、パーティ会場)

 

 

エマ:「アラン! こっちよ~。もう、遅かったじゃない!」

 

 

アラン:「悪い。髪のセットに、時間がかかった」

 

 

エマ:「ふ~ん、時間かけただけあるわね。似合ってるわよ」

 

 

アラン:「それはどうも。それで、どうすれば良い?」

 

 

エマ:「そうね~。・・・腕を組んで」

 

 

アラン:「わかった。お次は?」

 

 

エマ:「彼が気付くくらいの場所に座って・・・、楽しくお喋りって感じかしら」

 

 

アラン:「仰せのままに。お姫様」

 

 

 

 

 

(ソファーに二人で腰掛ける)

 

 

エマ:「良いわ~。思惑通り・・・、彼、こっちを気にしだしてる」

 

 

アラン:「無事に、作戦成功ってわけね」

 

 

エマ:「ええ。何か飲みましょう。何が良い?」

 

 

アラン:「それじゃあ・・・、シャンパンと苺で」

 

 

エマ:「それって?」

 

 

アラン:「君の憧れの組み合わせ、俺も体験してみたくなった。・・・駄目かい?」

 

 

エマ:「わかったわ。取ってくるから待ってて」

 

 

アラン:「あぁ。頼む・・・」

 

 

 

 

アラン(M):「彼がそうなのか・・・。俺とは違って、華やかな世界の住人だな・・・。

        俺は、どれだけ着飾っても、貧乏な盗人・・・。

        あいつなら、彼女を本当に幸せに出来るのかもな・・・。」

 

 

 

エマ:「お待たせ。それじゃあ、乾杯しましょう」

 

 

アラン:「あぁ、そうしよう」

 

 

エマ:「今夜の成功に・・・」

 

 

アラン:「乾杯・・・」

 

 

エマ:「どう?」

 

 

アラン:「苺の甘酸っぱさが、シャンパンに合って、美味しいよ」

 

 

エマ:「そうでしょう! この幸せな気分がわかってもらえて嬉しいわ、アラン!」

 

 

アラン:「俺もだよ。なぁ・・・」

 

 

エマ:「待って! 彼、こっちに来る。作戦が成功したのね。

    ごめんなさい・・・、私、行って来るわね。

    アラン、成功を祈ってて・・・」

 

 

アラン:「あぁ、成功した暁には、シャンパンと苺で祝杯だな」

 

 

エマ:「えぇ」

 

 

 

 

 

 

アラン(M):「行かないでくれ・・・。エマ・・・。

        彼の前では、そんな笑顔を見せるんだな・・・。

        止めろ・・・。そんな顔で彼を見つめないでくれ・・・。

        彼女の笑顔は、昨日まで俺だけのものだったんだ・・・。

        何で喜んでる? もしかして成功したのか・・・? 嫌だ・・・これ以上は、耐えられない・・・」

 

 

 

 

 

 

エマ:「ねぇ! アラン、聞いて! 彼ね! ・・・え? アラン? 何処行ったの? 

    ねえ、アラン・・・、一体、何処に行ったのよ~。

    ん? ・・・これは、手紙・・・? ・・・エマへ・・・」

 

 

 

アラン(M):「・・・何も言わずに、勝手にいなくなってすまない・・・。

        でも、俺はあのまま、君の喜ぶ顔は見ていられなかった・・・。

        僕らの出会いは、決して良いものではなかったと思う・・・。

           君と2日間、一緒に過ごしてる内に、俺は君の事を、徐々に好きになっていった・・・。

           そんな事、君は全然、気付いてなかったと思うけど・・・。

        だから、あのまま、彼と君が幸せそうに笑ってるのを、見る事が出来なかった・・・。

           こんな我儘な俺を許してくれ・・・。

           俺は、金持ちを狙って、お金を盗む盗人・・・。

        お金も無いし、まともな職業にもついてない・・・。

        君には、彼の方が相応しい。彼ならきっと君を幸せにする事が出来るはずだ・・・。

           最後に・・・、君の幸せだけは、遠くから祈らせてくれ・・・。

        さようなら・・・エマ・・・・。・・・アラン・ルナール」

 

 

 

エマ:「そんな・・・。アランが・・・私の事、好きだったなんて・・・。

    この胸の痛みはなに・・・。嘘・・・、私も、もしかして・・・」

 

 

 

 

 

(初めに出会ったホテルのBAR)

 

 

 

エマ:「ねぇ、お願いがあるの。この前、一緒にいた彼がもし、また此処に来たら、

    その時は、この手紙を渡して欲しいの・・・。

    ええ、渡すだけで良いわ。お願いね・・・」

 

  

エマ:「アラン・・・」

 

 

(3年後 エマのマンション)

 

 

エマ(M):「今日で、あれから3年・・・。私は取り返しのつかない事をした・・・。

       お金よりも、もっと大事なものが、すぐ近くにあったのに・・・。

       私は、目の前のお金に目が眩み・・・、それに、気付く事が出来なかった・・・。

       これじゃあ、憧れのジュリア・ロバーツみたいには、なれなくて当然よね・・・」

      

 

 

(その時、エマのマンションの外から、車のクラクションが鳴る)

 

 

 

エマ(M):「車のクラクション? このマンションの誰かを迎えに来たのかしら・・・」

 

 

 

アラン:「エマ!!!!!! エマ・ローレン!!! いたら返事をしてくれ!!!!」

 

 

 

エマ(M):「あの声は・・・アラン・・・!?」

 

 

 

アラン:「エマ・ローレン!!! 居ないのか? ・・・やはり、遅すぎたようだ・・・。

     運転手・・・、すまない・・・、車を出してくれ!」

 

 

エマ:「待って!!! 行かないで!!!」

 

 

アラン:「エマ・・・!!!」

 

 

エマ:「アラン・・・!」

 

 

アラン:「もう二度と、会えないと思った・・・」

 

 

エマ:「私もよ・・・。・・・この車はどうしたの・・・? それにその恰好・・・」

 

 

アラン:「この車、この服も、俺のだ・・・。・・・手紙・・・読んだよ。嬉しかった・・・」

 

 

エマ:「えっ? いつ読んだの?」

 

 

アラン:「君と別れてから、1週間後」

 

 

エマ:「1週間? それじゃあ、どうして、もっと早くに迎えに来なかったのよ・・・!

    この3年間・・・、私がどんな気持ちでいたか・・・」

 

 

アラン:「それは・・・。君に相応しい男になるまで、会わないと心に誓ったからだよ・・・」

 

 

エマ:「それって?」

 

 

アラン:「あの時の俺は、自信も地位もお金も・・・、何もなかった・・・。

     だから、あの手紙を読んでからは、死ぬ気で頑張ったんだよ・・・。

     そうして、やっと今日、君を迎えに行く決心が出来たんだ・・・」

 

 

エマ:「それじゃあ・・・」

 

 

アラン:「長い間、待たせてすまなかった・・・。

     でも、今の俺は君を幸せにする事が出来る。

     まだ、俺を好きでいてくれるなら・・・、この花束と、これを受け取ってくれないか?」

 

 

 

エマ:「これって・・・エンゲージリング・・・」

 

 

(片膝をついて、エマに伝えるアラン)

 

 

アラン:「エマ・ローレン、これから先の人生・・・。

     俺と一緒に、過ごしてくれないか? 

     今度は俺が、プリティーウーマンのリチャード・ギアのように・・・、

     君の服も、住む場所も買ってあげたい・・・。一生、君に不自由な思いはさせないよ・・・。

     結婚しよう・・・エマ」

 

 

エマ:「馬鹿・・・。・・・服も、住む場所も、貴方となら何処でも良いの・・・。

    例えこの先、お金持ちじゃ無くなっても・・・、一生、私が側に居てあげる・・・。

    ・・・結婚しましょう・・・アラン。

    もう、二度と私を悲しませたり、1人にしないで・・・」

 

 

アラン:「あぁ、約束するよ。エマ。・・・さぁ、指を出して・・・」(指輪を薬指にはめる)

 

 

 

エマ:「ええ・・・、アラン・・・」

 

 

 

  

  

(プリティーウーマンのBGM)

 

 

 

エマ(N):「憧れの世界・・・。

       それは、決して夢物語なんかじゃない。

          そう、次の主人公は、きっと・・・、この物語を知った、貴女の番だから・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

END