二月の手錠

 

 

 

 

作者 片摩 廣

 

 

 

怪盗・・・世の中を苦しめ、富を得るお金持ちから、金品を盗み、

     貧しい人へ、分け与える正義の怪盗タンザナイト

     見た目は、青年から20歳、30歳前後に見える

     実際の年齢は、誰も知らない・・・

 

 

刑事・・・ベテラン刑事で、曲がった事が嫌いだけど、

     怪盗と巡り合い、何度交わう事で、

     少しずつ、歯車が狂い出して、葛藤する・・・

 

 

 

 

比率【1:1】

 

 

上演時間【40分】

 

 

 

※オンリーONEシナリオ2022、

 

 2月、テーマにしたシナリオです

 

 

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CAST

 

怪盗:

 

刑事:

 

 

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刑事:(N)「私は・・・、この運命を憎む・・・。どうして、貴方は・・・、私が一番、手に届かない存在なの・・・?」

       こんな気持ち、忘れなきゃいけない・・・。持つべきじゃない・・・。

       でも、一度、開け放たれた、心の扉は・・・、もう閉じれない・・・。貴方が憎い・・・。憎くてたまらない・・・。

       どうして、私の側に、現れたの・・・?」

 

 

 

 

怪盗:(N)「自分の信念を貫く為なら、誰を敵に回しても、例え、世の中から認められなくても、

       僕は、盗み続ける・・・。もう同じように、理不尽で苦しむ人達が、現れないように・・・、

       どんな手でも、使い、救って見せる・・・。

       例え、目の前に、愛した君が、立ち塞いでも・・・、開け放たれた扉は、必ず、僕自身の手で、封印する・・・。

       それで、一人でも苦しむ人達を救えるなら・・・」

 

 

 

 

刑事:(N)「そう・・・、私は・・・、」

 

 

 

怪盗:(N)「僕は・・・」

 

 

 

刑事:(N)「自分の信念を、貫き通す!」

 

 

 

怪盗:(N)「自分の信念を、貫き通す!」(同時に)

 

 

 

 

 

 

 

 

怪盗:「これで、何人目だ・・・。また、欲に塗れた金持ちによって、苦しめられ、追い詰められた人が、命を絶った・・・。

    僕は・・・、一体、あの時、どう手を差し伸べていれば良かった・・・!」

 

 

 

刑事:「そこまでよ、怪盗タンザナイト!」

 

 

 

怪盗:「このアジトを見つけるなんて、君、中々やるね・・・、名前は・・・?」

 

 

 

刑事:「怪盗に名乗る、名前は無い!」

 

 

 

怪盗:「・・・つれない返事だね」

 

 

 

刑事:「悪党に、思いやりなんて、要らないからよ!」

 

 

 

怪盗:「ふ~ん。・・・何だか寂しいね。僕は、今、この瞬間を長い間、待ちわびていたのに・・・」

 

 

 

刑事:「え・・・!? ・・・冗談はよして・・・」

 

 

 

怪盗:「ずっと、待って居たんだ。・・・僕を止めてくれる相手を。

    一目見て、君だとわかったよ。ねぇ、・・・これは運命だと信じる?」

 

 

 

刑事:「運命なんて、くだらない! 私は、自分の信念に従い、

    貴方を捕まえるのみ!」

 

 

 

怪盗:「それも悪くないね。でも、その後は、後悔しない?

    もう、気付いてるんでしょ? 君の心に芽生えた感情に」

 

 

 

刑事:「何を、言ってるの・・・?」

 

 

 

怪盗:「惚けるつもりだね。・・・君がそうしたいなら、そうすれば良い。

    でも、僕は、その感情を、必ず気付かせてあげるよ。

    だから、楽しみにしていてね」

 

 

 

刑事:「ふざけるのも、いい加減にして!」

 

 

 

怪盗:「怒ってばかりじゃ、僕を捕まえられないよ。

    それに、僕は、君の笑顔が見たいんだ。

    いつか、見せてよね! じゃあね!」

 

 

 

 

刑事:「あっ、待ちなさい! 止まらないと、撃つわよ! ・・・待てっ!!!

    ・・・。・・・何なのよ・・・一体・・・。

    怪盗タンザナイト、いつかこの手で、捕まえて見せる・・・」

 

 

 

 

 

 

怪盗:「・・・危なかった。

    ・・・あのアジトはもう使えないから、新たに探さなきゃ・・・。

    それにしても、あの刑事・・・、真っ直ぐ、僕を見つめ続けてた・・・。

    久方ぶりに、強敵の出現か~。面白くなりそう・・・。

    今度は、いつ会えるだろう・・・。

    ふっ、可笑しい・・・。僕の中にも、まだこんなにも、人としての感情が、残ってるなんてさ・・・。

    こんな感情、あの時、捨てたはずなのに・・・」

 

 

 

 

刑事:「気付けば、刑事を目指していた・・・。きっかけは、幼い頃に父を強盗に殺されてから・・・。

    幼い私は、ただただ無力で・・・。私を必死で守り、盾になり、刺されても、

    仁王立ちで居る父の背中に・・・、私は・・・、強く誓った・・・。

    いつか、この手で、・・・悪人を捕まえると・・・。

    あれから、・・・数十年。今の私は、あの時の私に、誇れる存在となれたのだろうか・・・。

    怪盗タンザナイトのような存在、私は認めるわけにはいかない!

    例え、世の中に、義盗と呼ばれていても・・・、絶対に私の手で、捕まえる!

    その為には、余計な感情など、捨て去るのみ・・・。

    でも、どうしてなの? ・・・あの怪盗の言葉が、仕草が、心から消えない・・・。

    ・・・ん? これは・・・次の予告状・・・!」

 

 

 

 

怪盗:「・・・今宵、零時・・・、雪上に舞い降りた、女神。

    スノー・ヴィーナスを、強欲に汚れた者から、救いに参上します。

    怪盗タンザナイト」

 

 

 

 

刑事:「相変わらず、キザな予告状・・・。

    ・・・雪上に舞い降りた女神・・・。スノー・ヴィーナス。

    新しく出来た、美術館の、記念セレモニーで、お披露目予定の、宝石ね・・・。

    警備は、厳重な中、どうやって盗むつもりなのか、わからないけど、

    今度こそ、この手で・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

怪盗:「うわ~・・・、いつも以上に、厳重な警備体制だ~。

    それに、マスコミ関係も多い・・・。

    ・・・所詮、警察もメディアも、強欲な金持ち達の言いなりってわけね・・・。

    さてと、どうやって侵入したものか・・・。・・・ん? あれは・・・」

 

 

 

 

刑事:「怪盗タンザナイト、一体、何処から現れるの・・・? 

    何処からでも、良い!

    今日こそ、捕まえて見せる・・・!」

 

 

 

怪盗:「・・・どうしてあんなに、必死なんだ・・・。

    何だか、飽きないから不思議だな~。

    って・・・僕の馬鹿。・・・今は、そんな事、考えてる場合じゃないだろう・・・。

    さて、どう侵入するべきか・・・」

 

 

 

刑事:「警備、ご苦労様。

    ・・・怪盗タンザナイトは、巧みな手で、今までも侵入して、盗んできてる。

    くれぐれも、油断しないようにね!」

 

 

 

 

怪盗:「ふ~ん、表は刑事連中と、警官で溢れてる・・・。

    一旦、隣の貸しビルの窓から侵入して・・・、

    死角となってる場所から、ワイヤー撃ち込んで、移るとしよう・・・」

 

 

 

 

刑事:「予告状の時間まで、後、10分・・・」

 

 

 

 

怪盗:「予想通り、警備は美術館より手薄だ。

    ・・・これぐらいなら、簡単に通り抜けられる・・・っと・・・。

    よし、クリアっ。・・・後は、死角になる部屋から美術館に・・・」

 

 

 

 

刑事:「待って居たわよ。怪盗タンザナイト」

 

 

 

 

怪盗:「げ!? どうして、君が此処に居るの・・・!

    予想外過ぎて・・・、変な声、出ちゃったよ~!」

 

 

 

刑事:「そんなの簡単な事よ。

    厳重な警備体制は、貴方を此方の貸しビルに、誘導するためのフェイク。

    今回は、フェイクニュースを利用させてもらったわ。

    貴方は、金持ちが大々的に、騒いだものだと思ってたみたいたけど。・・・違う?」

 

 

 

 

怪盗:「君の事、少し侮っていたようだ・・・。この僕を騙すなんて、やるね・・・!

    フェイクニュース・・・。確かに人々は、より多くの者に、指示持つ存在の言葉には、

    疑わず、信じて、拡散する傾向がある。この世に、絶対信じきれる物なんて、無いのにね・・・。

    でも、知らない事から、起こる恐怖に耐えきれず、信じようと自らに暗示をかける。

    わかってはいたけど、今回は、見事、騙されたよ・・・!

    きっと僕自身も、君という存在が現れて、焦って居たのかもね・・・」

 

 

 

 

刑事:「随分と潔いじゃない。・・・流石の怪盗タンザナイトも、今回は、観念したのかしら?」

 

 

 

怪盗:「・・・さぁ、どうだろうね~。

    怪盗から、本心を盗み出したいのなら、君自身も、もっと素直になるしかないよ。

    あれから数日・・・、君は、僕の事を、思い出したりしたかい?」

 

 

 

刑事:「可笑しな質問。そんな事、あるわけ無いわ」

 

 

 

怪盗:「その言葉・・・、もう一度、僕自身、見つめて、言ってみてよ。

    馬鹿にしたふりして、わざと顔を背けて、応えるのは卑怯だ」

 

 

 

刑事:「・・・くっ」

 

 

 

怪盗:「あの時のように、真っ直ぐ見つめてくれないかい?」

 

 

 

刑事:「わかったわよ! ・・・そんな事、断じてあるわけ無いわ・・・!」

 

 

 

怪盗:「君は、中々に強情だね・・・。でも、今の態度でわかった!

    その頑張りは、賞賛に値するよ。だから、僕も包み隠さず、伝えよう。

    僕は、あれから数日・・・、君を忘れた事は無いよ」

 

 

 

 

刑事:「そんなの嘘よ・・・。流石、怪盗なだけあるわね。

    そんなに、真っ直ぐ見つめて、心に思ってない言葉、口に出せるなんて」

 

 

 

 

怪盗:「どうして、君にこの言葉が、嘘だと言い切れるの?」

 

 

 

 

刑事:「それは・・・! 私が刑事だからよ・・・!」

    貴方を例え、思い出したとしても・・・、

    それは、好意からではなく、嫌悪からでしかないわ!

    貴方を、好きになるなんて・・・、あるわけない・・・! ・・・くっ・・・!」

 

 

 

 

怪盗:「苦しそうだね・・・」

 

 

 

刑事:「うるさいっ! ・・・どうしてよ・・・!

    何でこんなに、胸が苦しいの・・・!?

    貴方の事なんて・・・、私は・・・!!!」

 

 

 

怪盗:「一度、開放された、心の扉は・・・、閉める事が困難だ。

    そんな事、もうとっくに君も気付いたでしょ?

    その苦しみから、開放されたいなら、素直になれば良い」

 

 

 

 

刑事:「惑わすのは、止めて・・・! ・・・私は、刑事・・・。刑事なのよ・・・!」

 

 

 

 

怪盗:「今の君じゃ・・・、決して僕は捕まえられない・・・。

    もっと、素直になってね。・・・じゃあね・・・」

 

 

 

刑事:「待ちなさい・・・! ・・・私の馬鹿・・・! 早く追いかけなきゃ・・・!

    でも、どうしてなの・・・! ・・・体が思うように動かない・・・!

    何なのよ・・・!!!!」

 

 

 

 

 

怪盗:「・・・僕はどうしたんだ・・・。

    何で、あんな事、口に出したんだ・・・。

    ・・・こんなんじゃ、・・・師匠に顔向けできない・・・。

    ・・・早く、スノー・ヴィーナスを救い出さなきゃ・・・」

 

 

 

 

 

刑事:「あっ! ・・・一瞬で、ワイヤーであんな遠くに・・・。

    ・・・感心してる場合じゃない。

    早く、追いかけないと・・・!」

 

 

 

 

怪盗:「よしっ・・・侵入成功。

    ・・・中は、赤外線レーザーだらけで、床には、重力感知システム・・・。

    金持ちは、考えることが、一緒だから、助かる・・・。

    さてと、いつも通り、慎重に・・・。よし、クリア・・・。

    これが・・・、スノー・ヴィーナス・・・。

    名前の通り、雪上に舞い降りた女神のように・・・、清らかで、綺麗だ・・・。

    待たせたね・・・。今、僕が此処から、救い出してあげるからね・・・。

    君は、こんな汚れた場所には、相応しく・・・。

    ・・・ん? これは・・・!?」

 

 

 

怪盗:「くっ・・・! ・・・此処にも重力感知システム・・・!

    まさか、持ち上げた瞬間、・・・銃で撃つシステムだなんて・・・。

    今回の金持ちは・・・、殺人も・・・、厭わないのか・・・。

    ・・・くそっ・・・!」

 

 

 

 

刑事:「追いついたわよ! 怪盗タンザナイト!」

 

 

 

 

怪盗:「やぁ、待って居たよ。・・・刑事さん・・・」

 

 

 

刑事:「・・・どうしたの!? その傷・・・!?」

 

 

 

怪盗:「こんなの大した事無いさ。・・・ほんの掠り傷だ・・・。・・・くっ!!!」

 

 

 

刑事:「・・・良いから、傷口、見せて・・・!」

 

 

 

怪盗:「おいおい、何してるんだ・・・。僕は、君の敵じゃないか。

    こんな千載一遇のチャンス・・・、逃して、どうするんだよ・・・。

    この先、同じような事、起きるかわからないのに・・・」

 

 

 

刑事:「良いから、少し黙って! ・・・止血するわよ・・・。

    痛むと思うけど・・・、我慢して・・・」

 

 

 

怪盗:「う・・・、ぐぁぁぁぁ・・・!」

 

 

 

刑事:「・・・よし、これで大丈夫。・・・後は、包帯を・・・」

 

 

 

怪盗:「・・・随分と、手際が良いな・・・」

 

 

 

刑事:「当たり前よ・・・。

    ・・・私達、刑事は、命がけの時もあるの・・・

    これくらい、出来るわよ・・・。・・・どう?」

 

 

 

怪盗:「・・・だいぶ楽になったよ。・・・さぁ、それじゃあ、勝負の続きと行こうか」

 

 

 

刑事:「・・・いいえ、駄目よ・・・。そんなの私のプライドが許さない!

    負傷した、貴方を、此処で捕まえても、・・・後できっと後悔する・・・」

 

 

 

怪盗:「・・・見逃すというのか? ・・・刑事、失格じゃないか・・・」

 

 

 

刑事:「始末書ものかも! でも、貴方をこのまま捕まえて、これから先、後悔するより、ずっと良い。

    さぁ、早く逃げなさい! 防犯システムが作動したのよ。もうすぐ、警備も、仲間も集まる・・・」

 

 

 

怪盗:「・・・それなら、長居は無用だね・・・。・・・よし、なら、こうしよう!!!」

 

 

 

刑事:「ちょっと、いきなり何、するのよ!? 離して!」

 

 

 

怪盗:「良いから、僕に捕まって・・・! ・・・よしっ、脱出だ・・・!!!」

 

 

 

刑事:(N)「そう言って、私を抱きかかえると・・・、

       瞬く間に、美術館から、怪盗タンザナイトは、ワイヤーで、脱出した・・・!

       月夜の明かりに、照らされた街の中を、一緒に舞ったあの瞬間・・・、

       私は、自分の気持ちに気付いてしまった・・・。

       あの時、この気持ちに気付かなければ・・・、違った未来も選べただろう・・・。

       でも、そうする事は、出来なかった・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

怪盗:「此処まで、来たら、もう大丈夫だ。

    ・・・ねぇ、もう離れて良いよ。

    それとも、このままもう少し、掴まっていたい?」

 

 

 

刑事:「そんなわけないでしょ!? ・・・さぁ、早く行って・・・」

 

 

 

 

怪盗:「そうしたい所だけど・・・、まだ出来ない・・・。

    流石に、一緒に抱きかかえては・・・、無茶だったみたいだ・・・」

 

 

 

刑事:「誰も頼んでないわよ! ・・・それに、私からしたら、余計なお世話よ。

    職務放棄したと、今頃、思われて・・・」

 

 

 

怪盗:「そいつは、ごめんね。・・・でも、君ともう少し、一緒に居たかった。

    どうしてだろうね・・・。君を見てると、僕は可笑しな行動ばかりしてしまう・・・。

    こんなんじゃ、怪盗失格だね・・・全く・・・僕らしくない・・・」

 

 

 

刑事:「またそうやって、私を惑わす気ね・・・。そんな手には・・・」

 

 

 

怪盗:「どうしたんだい?」

 

 

 

刑事:「何でもないわよ・・・。・・・馬鹿・・・。

    ねぇ・・・、どうして、スノー・ヴィーナス、盗まなかったの?」

 

 

 

怪盗:「そんなの簡単な事さ。

    助けてもらったのに、盗んだのでは、フェアじゃないからね。

    この傷が、癒えたら、また改めて、救い出しに行くよ」

 

 

 

刑事:「貴方も、律儀よね・・・。・・・わかったわ」

 

 

 

怪盗:「後ね、いきなり馬鹿呼ばわりは、流石に傷付くよ。

    怪盗として、その理由、知りたくなるね」

 

 

 

刑事:「理由・・・!? 素直に教えれるなら、どんなに楽でしょうね・・・。

    でも、教えたら・・・、その時、私達の関係は、終わってしまう・・・。

    だから、本心は、隠し通すしかないのよ・・・」

 

 

 

怪盗:「君が隠し通すというなら・・・、僕は、それを例え何処に隠そうと、見つけ出す!」

 

 

 

刑事:「え・・・?」

 

 

 

怪盗:「だって、それが怪盗の役目だから・・・。

    見つけ出すのが、難関な程に、挑みたくなるのさ」

 

 

 

刑事:「・・・その挑戦、受けて立つ。

    でも・・・、一つ教えて・・・。

    その見つけ出した本心が・・・、世の中から認められなくても・・・、

    貴方は、後悔しない・・・?」

 

 

 

 

怪盗:「・・・さぁ、それは今はわからない・・・。

    見つけ出してみないと、判断は出来ないね・・・。

    だから、これからは・・・、僕も本気を出させて貰うよ!

    怪盗タンザナイトとして、今、君に予告状を送ろう!

    何れ、貴方の隠し閉ざした心の扉の中に眠る・・・、

    本心と言う名の宝石・・・、必ず奪いに参上します・・・!

    怪盗タンザナイト」

 

 

 

 

刑事:「・・・予告状、確かに受け取った・・・。

    私は、全力で守り抜き・・・、貴方をこの手で、捕まえる。

    覚悟しなさい・・・。怪盗タンザナイト・・・!」

 

 

 

 

怪盗:「・・・望む所だよ。・・・あのさ・・・」

 

 

 

刑事:「まだ、何かあるの?」

 

 

 

怪盗:「君は、自分の事が怖くなったりしない?」

 

 

刑事:「え?」

 

 

怪盗:「僕は、正直、怖いんだ・・・。

    師匠から譲り受けた、この仮面を付けて・・・、

    怪盗タンザナイトになると、時々、こう思うんだ・・・。

    目的の為なら・・・、邪魔する者は、排除しなければって・・・」

 

 

刑事:「そんな・・・。貴方は、怪盗でも義盗でしょ・・・?

    どうして、そう思うの?」

 

 

怪盗:「僕にもわからない・・・。

    でも、世の中の悲鳴が、聴こえるんだ・・・!

    その悲鳴を、僕は無視する事なんて出来ない・・・!

    どんな手段を用いても、救わないといけないと思うんだ・・・!」

 

 

 

刑事:「それなら、怪盗タンザナイトを・・・!」

 

 

 

怪盗:「怪盗タンザナイトが、居なくなれば・・・、

    苦しむ人達は、追い込まれて、全て無くすだけだ・・・。

    ・・・そんな事は、絶対に許せない・・・!」

 

 

 

刑事:「そう・・・」

 

 

 

怪盗:「敵であるはずの君に、こんな話をするとはね・・・。

    でも、そういう理由だから・・・、

    次に、出会った時には、僕も容赦はしないよ! じゃあね・・・!」

 

 

 

 

刑事:(N)「私にそう言うと、瞬く間にその場から去った・・・。

       どうして私達は・・・、刑事と怪盗として、巡り合ったのだろう・・・。

       永遠に解けない回答を、探しながら、新たな予告状が届くのを待って居た・・・。

       そして、季節は、雪も降り積もる二月・・・、

       貴方と、私の・・・、運命の日がやって来た・・・」

 

 

 

刑事:「・・・これは、怪盗タンザナイトからの、予告状・・・」

 

 

 

 

怪盗:「予告状。

    今宵、零時、救いきれなかった、雪上に舞い降りた、女神。

    スノー・ヴィーナスを、強欲に汚れた者から、救いに参上します

    怪盗タンザナイト」

 

 

 

 

刑事:「・・・待って居たわよ。・・・あれから、数か月・・・。

    貴方からの、この予告状を・・・。待ち続けた・・・。

    私は、刑事・・・。今度こそ、必ず・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪盗:「ふ~、警備員も、学習しないね・・・。

    やぁ、待たせたね。・・・スノー・ヴィーナス。

    今、此処から、救い出してあげるよ・・・。

    おっと・・・、そう何度も、同じ手には、引っかからないよ・・・。

    他の罠も、・・・油断しなければ、僕にとっては、無意味・・・。

    覚えとくが良い! 強欲に塗れた金持ち達よ。

    ・・・僕は、お前達のような存在は、決して許さない・・・。

    ・・・今まで、人々を苦しめた分、今度は自らの過ちを悔いながら、過ごすが良い・・・!

    ・・・さらばだ・・・。はははははは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

怪盗:「よし・・・、此処まで、逃げてきたら大丈夫。

    ・・・。

    これで、準備は整った・・・。

    ・・・スノー・ヴィーナス。・・・苦しんでる人々の為に、

    君の事、使わせて貰うよ・・・」

 

 

 

 

刑事:「そこまでよ! 怪盗タンザナイト!」

 

 

 

 

怪盗:「ん? ・・・随分と、来るのが遅かったじゃないか・・・。

    スノー・ヴィーナスは、もう僕の物・・・。

    この宝石があれば、苦しんでる人々を救い出す事が出来る・・・。

    その邪魔をすると言うのなら、例え君でも容赦はしない・・・!」

 

 

 

 

刑事:「・・・望む所よ。・・・ねぇ、怪盗タンザナイト。

    今から・・・私と勝負しましょう。

    貴方が・・・、隠した本心、見つけ出せたなら・・・、

    その宝石は貴方にあげる。どうかしら?」

 

 

 

怪盗:「勿論、その勝負、受けて立つよ!」

 

 

 

 

刑事:「そう・・・。それなら、勝負よ! 怪盗タンザナイト!」

 

 

 

怪盗:「君は、隠したと言ってるけど、

    それは、嘘なんだろう・・・?」

 

 

 

刑事:「嘘・・・?」

 

 

 

怪盗:「君の中には、二つの心があって、今も葛藤している。

    僕に見つけ出されたい心と・・・、

    決して、見つけ出して欲しくない心・・・。

    あれから、数か月、期間をあげたのに・・・、

    君は、まだ決断、出来ないんだね」

 

 

 

刑事:「・・・この数か月、何度も何度も、自分に問いかけた・・・。

    でも・・・、その度に・・・、胸は苦しみ・・・。

    ・・・気付くと、貴方の事ばかり、考えていた・・・。

    どうして、貴方と、こういう形で、巡り合ったのだろう・・・。

    お互いの立場が、違うなら、私達はきっと上手く・・・!」

 

 

 

怪盗:「・・・こんなにも、君を苦しませるなんて・・・。

    君に取って、最初に言われた通り、僕は悪党でしかないようだ・・・。

    悪党は、悪党らしく、最後まで、その役目を全うしなきゃね・・・」

 

 

 

刑事:「何を、言っているの・・・?」

 

 

 

怪盗:「本当は、この真実は、伝えないでおこうと思った。

    伝えれば、全て終わるとわかっていたから・・・」

 

 

 

刑事:「真実・・・? 貴方も、隠してたと言うの?」

 

 

 

怪盗:「その通りだよ。

    ・・・あのアジトで、君と、再び出会った瞬間から、これは、僕達に課せられた運命だとわかった・・・」

 

 

 

 

刑事:「再び・・・? 私達は、あの場で巡り合ったのよ・・・」

 

 

 

怪盗:「そうじゃないんだ。・・・僕達は、もっと前に、巡り合ってたんだよ。

    ・・・その巡り合いは、君にとっては、最悪の場でしかなかった・・・」

 

 

 

刑事:「まさか・・・!? 嫌・・・、そんなの・・・貴方が考えた嘘・・・。

    第一、数十年前の事よ・・・。・・・信じられない・・・!」

 

 

 

怪盗:「僕は、怪盗だよ・・・。年齢を誤魔化す事は、造作もない事だよ・・・。

    ・・・あの日は、僕にとっても、最悪な日だった・・・。

    強欲な金持ちから、全て奪われ・・・、すぐ明日の生活も、保障されてなく、絶望しかなかった・・・。

    そんな時、僕の目の前に、楽しそうに歩いた親子が見えて・・・、

    僕は・・・、気付けば、その親子の父親を、持っていたバタフライナイフで、刺していた・・・。

    ただ、君達、親子が、羨ましかったんだ・・・。僕の持ってない幸せを、手にしていて・・・」

 

 

 

刑事:「・・・嘘! ・・・お願い・・・、嘘なんでしょ!?

    私の本心に、気付いて考えた、嘘なのよね・・・?」

 

 

 

 

怪盗:「嘘なら、どんなに良かった事か・・・。

    ・・・でも、今話した内容は、紛れもない真実だ・・・。

    僕は・・・、数十年前・・・、君の父親を殺し、逃げた悪党だよ・・・」

 

 

 

 

刑事:「嘘、言わないでえええ・・・!!!! これ以上、そんな嘘付くなら、容赦はしないわよ・・・!!!」

 

 

 

怪盗:「どうするって言うんだい?」

 

 

 

刑事:「貴方を、この銃で、撃つ・・・!」

 

 

 

怪盗:「それで、君の気が済むなら・・・、それで構わない・・・。

    あのアジトで、君に真っ直ぐな目で、見つめられた瞬間・・・、

    父親の後ろで、怯え泣きながらも、僕を見つめ、睨んでいた君を、思い出したんだ・・・。

    ・・・あの後も、生きる為ならと、罪を犯した・・・。

    そんな日々と、ニュースで取り上げられ、警察に追われる日々に、疲れて・・・、

    死のうとした時、師匠に出会ったんだ・・・。

    師匠は、僕の懺悔を、ただ黙って、聴き続けた・・・。

    決して、怒る事も、批判したりもせず、僕が喋り終わるまで・・・。

    そして、聴き終わった後に、僕にこう告げた・・・。

    今までの日々、償いたいなら、私から、全てを学びなさいと・・・。

    それからは、必死に学び・・・、僕は仮面を譲り受け、怪盗となった・・・」

 

 

 

 

刑事:「・・・もう良い。・・・お願い、黙って・・・!」

 

 

 

 

怪盗:「僕は、怪盗タンザナイトとして、強欲に塗れた金持ちから、

    苦しむ人々を、救い続けてきた・・・。

    それは、これからもずっと、続けないと、また誰かが苦しみ、命を落とすかもしれない・・・。

    その為には、これからも、手段は選ばない・・・。

    そう信じて、突き進んだはずなのに・・・」

 

 

 

 

刑事:「・・・これ以上、先は言わないで・・・! 言ったら私達は・・・」

 

 

 

 

怪盗:「僕は、あの美術館で、君を好きになってしまった・・・!

    この思いは、隠し続けなければいけなかった・・・。

    悪党と、正義の恋なんて・・・、誰にも祝福されない・・・。

    気付かれたら、お終いとわかっていたはずなのに・・・。

    あの夜の出来事は・・・、楽しくて・・・。

    このまま、真実を知らない君と、ずっと上手く、過ごしたかった・・・。

    でも、駄目なんだ・・・! ・・・君を思えば思う程・・・、

    僕の中の怪盗は・・・、君を排除しろと・・・、囁く・・・!

    このままだと・・・、僕は・・・、君を・・・殺して・・・!!!」

 

 

 

 

刑事:「どうして、隠し通さなかったのよ・・・! 貴方、怪盗でしょ・・・!?

    ・・・私は・・・、貴方のせいで、こんなにも、苦しんだのよ・・・。

    父親を、理不尽に殺され、憎くて、憎くて、たまらないはずなのに・・・。

    ・・・それなのに、・・・私も・・・、貴方を好きになってしまった・・・!

    こんな思いするなら、もっと早くに、真実を教えて欲しかった・・・!」

 

 

 

怪盗:「・・・君の心の扉の中に、隠されてた本心・・・。

    どうやら・・・怪盗である僕が盗み出したようだね・・・。

    勝負は、僕の勝ちだ・・・。さぁ、そこを退いて・・・。

    退かないと、例え君であろうと、容赦はしない・・・!!!」

 

 

 

刑事:「・・・私は、父の背中に誓った・・・。

    いつか、この手で、父の仇を討つって・・・!

    その為に、厳しい訓練も、乗り越えて、刑事になったの・・・!

    例え、好きになった人だとしても・・・、私は刑事として、貴方を捕まえる・・・!」

 

 

 

怪盗:「怪盗と刑事・・・。何処までもその因縁は、断ち切れないようだね・・・。

    残念だよ・・・。僕も自分の信念を、貫く為に・・・。

    此処で、君に捕まるわけにはいかない・・・。さぁ、勝負だ・・・、刑事さん!!!」

 

 

 

 

刑事:「ええ! 怪盗、タンザナイト・・・!!!」

 

 

 

(お互い、銃を撃つ)

 

 

 SE:銃声

 

 

 

怪盗:「ぐふっ・・・!!!」

 

 

 

刑事:「怪盗、タンザナイト・・・!!!」

 

 

 

怪盗:「・・・流石、刑事だ・・・。見事、命中したね・・・。僕の・・・、負けだ・・・」

 

 

 

刑事:「・・・これ、空砲じゃない!? 私を騙したのね・・・!?」

 

 

 

怪盗:「僕は、怪盗だよ・・・。・・・騙すなら、君には決して負けないよ・・・。・・・ぐはっ・・・!」

 

 

 

刑事:「しっかりしなさい・・・! こんな終わり方・・・! 認めない・・・!!! 今、止血を・・・!」

 

 

 

怪盗:「・・・その必要はない・・・。それに、もう手遅れだ・・・」

 

 

 

刑事:「どうしてよ・・・!?」

 

 

 

怪盗:「君が来る前に、遅効性の毒薬をね・・・。・・・幾ら刑事とは言え・・・、

    僕への気持ちで・・・、致命傷を与えられない時も、あるだろうから・・・、

    念には念を入れたのさ・・・」

 

 

 

刑事:「何で、そんな馬鹿な事、したのよ・・・!!!?」

 

 

 

怪盗:「・・・どうしても、君への罪を償いたかった・・・。

    いつか、こんな日が来ると思っていた・・・。

    自分の犯した罪を償う日が・・・!」

 

 

 

刑事:「駄目よ・・・。これ以上、喋らないで・・・。

    今、すぐ救急車を・・・!」

 

 

 

怪盗:「本当に、すまない事をした・・・。

    ・・・君を好きになる内に・・・、

    もう一人の僕は、君を排除しなければと・・・、

    日に日に、強くなり・・・、もう、制御する事が出来なかった・・・。

    このまま、君を殺してしまったら・・・、

    僕は、怪盗ではなく、怪物になりさがってしまう・・・。

    だから、そんな僕を、君に止めて欲しかった・・・」

 

 

 

刑事:「そこまでして私の事、守るなんて・・・、貴方、馬鹿よ・・・!

    ・・・貴方は・・・、今までの罪を償って・・・、

    最後も・・・、立派な怪盗として・・・、誇りを守り抜いた・・・。

    私も・・・、貴方を、許す・・・。だから・・・!!!」

 

 

 

怪盗:「ありがとう・・・。

    ・・・もう一つ、我儘を・・・、言っていいかい・・・?」

 

 

 

刑事:「どんな・・・?」

 

 

 

怪盗:「好きになった君から、貰いたいんだ・・・。・・・その手錠を・・・。

    僕を・・・、君の手で・・・、逮捕して・・・」

 

 

刑事:「逮捕より・・・、まずは病院に・・・!!!」

 

 

 

怪盗:「・・・もうすぐ・・・、日付も変わって・・・。14日になる・・・」

 

 

刑事:「まさか、貴方、最初から・・・!?」

 

 

 

怪盗:「・・・(咳)・・・お願いだ・・・。もう、時間がない・・・。早く・・・」

 

 

 

刑事:「怪盗タンザナイト・・・。

    数々の窃盗、及び、殺人を犯した罪で・・・、逮捕します・・・!」

 

 

怪盗:「ありがとう・・・。・・・○○○・・・」

 

 

 

刑事:「え・・・!? ・・・どうして私の名前・・・」

 

 

 

怪盗:「惚れた女の・・・、名前、知らないわけないだろう・・・。

    最後に、人としての心に・・・、気付かせてくれて・・・、ありがとう・・・」

 

 

 

 

刑事:「まだ・・・、死なないで・・・。盗んだ、私の心・・・、返しなさいよ・・・。

    ねぇ! 怪盗、タンザナイト・・・!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

刑事:(N)「スノー・ヴィーナス、窃盗事件から、1年が経過した・・・。

       私は・・・、色々と考え、ある決断をした、その決意はと言うと・・・」

 

 

 

 

刑事:「予告状。

    今宵、雪原に、凛とした美しさで、佇むスミレのように、光輝く。

    ウィンター・アメシスト。

    強欲なる者から、救い出す為、参上します・・・!

    怪盗タンザナイト」

 

 

 

 

刑事:(N)「私は・・・、貴方のやり遂げようとした正義を信念に、闇夜を駆け抜け、盗み続ける・・・」

    

 

 

刑事:「私の名前は、怪盗タンザナイト。

    今宵も、理不尽な思いで、苦しむ人々を助ける為・・・、

    お前達、強欲な金持ちに勝負を挑む!

    首を洗って、待って居なさい・・・!」

 

 

 

刑事:(N)「華麗に盗み、苦しむ人々を救ってきた、貴方の背中に、いつか追いつき・・・、

       そして、一人でも多くの苦しむ人々を・・・救うために・・・、私は盗み続ける・・・!」

 

 

 

 

 

 

終わり

 

 

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※この台本は、オンリーONEシナリオ2022の企画で、

 

 2月、テーマにしたシナリオです

 

 

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 Twitter、イベントアカウント、【@only2022one】、

 

 確認後、リプもしくは、DMにて、受け付けておりますので、

 

 お気軽に、御参加くださいませ

 

 

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