二月の手錠
作者 片摩 廣
怪盗・・・世の中を苦しめ、富を得るお金持ちから、金品を盗み、
貧しい人へ、分け与える正義の怪盗タンザナイト
見た目は、青年から20歳、30歳前後に見える
実際の年齢は、誰も知らない・・・
刑事・・・ベテラン刑事で、曲がった事が嫌いだけど、
怪盗と巡り合い、何度交わう事で、
少しずつ、歯車が狂い出して、葛藤する・・・
比率【1:1】
上演時間【40分】
※オンリーONEシナリオ2022、
2月、テーマにしたシナリオです
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CAST
怪盗:
刑事:
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刑事:(N)「私は・・・、この運命を憎む・・・。どうして、貴方は・・・、私が一番、手に届かない存在なの・・・?」
こんな気持ち、忘れなきゃいけない・・・。持つべきじゃない・・・。
でも、一度、開け放たれた、心の扉は・・・、もう閉じれない・・・。貴方が憎い・・・。憎くてたまらない・・・。
どうして、私の側に、現れたの・・・?」
怪盗:(N)「自分の信念を貫く為なら、誰を敵に回しても、例え、世の中から認められなくても、
僕は、盗み続ける・・・。もう同じように、理不尽で苦しむ人達が、現れないように・・・、
どんな手でも、使い、救って見せる・・・。
例え、目の前に、愛した君が、立ち塞いでも・・・、開け放たれた扉は、必ず、僕自身の手で、封印する・・・。
それで、一人でも苦しむ人達を救えるなら・・・」
刑事:(N)「そう・・・、私は・・・、」
怪盗:(N)「僕は・・・」
刑事:(N)「自分の信念を、貫き通す!」
怪盗:(N)「自分の信念を、貫き通す!」(同時に)
間
怪盗:「これで、何人目だ・・・。また、欲に塗れた金持ちによって、苦しめられ、追い詰められた人が、命を絶った・・・。
僕は・・・、一体、あの時、どう手を差し伸べていれば良かった・・・!」
刑事:「そこまでよ、怪盗タンザナイト!」
怪盗:「このアジトを見つけるなんて、君、中々やるね・・・、名前は・・・?」
刑事:「怪盗に名乗る、名前は無い!」
怪盗:「・・・つれない返事だね」
刑事:「悪党に、思いやりなんて、要らないからよ!」
怪盗:「ふ~ん。・・・何だか寂しいね。僕は、今、この瞬間を長い間、待ちわびていたのに・・・」
刑事:「え・・・!? ・・・冗談はよして・・・」
怪盗:「ずっと、待って居たんだ。・・・僕を止めてくれる相手を。
一目見て、君だとわかったよ。ねぇ、・・・これは運命だと信じる?」
刑事:「運命なんて、くだらない! 私は、自分の信念に従い、
貴方を捕まえるのみ!」
怪盗:「それも悪くないね。でも、その後は、後悔しない?
もう、気付いてるんでしょ? 君の心に芽生えた感情に」
刑事:「何を、言ってるの・・・?」
怪盗:「惚けるつもりだね。・・・君がそうしたいなら、そうすれば良い。
でも、僕は、その感情を、必ず気付かせてあげるよ。
だから、楽しみにしていてね」
刑事:「ふざけるのも、いい加減にして!」
怪盗:「怒ってばかりじゃ、僕を捕まえられないよ。
それに、僕は、君の笑顔が見たいんだ。
いつか、見せてよね! じゃあね!」
刑事:「あっ、待ちなさい! 止まらないと、撃つわよ! ・・・待てっ!!!
・・・。・・・何なのよ・・・一体・・・。
怪盗タンザナイト、いつかこの手で、捕まえて見せる・・・」
間
怪盗:「・・・危なかった。
・・・あのアジトはもう使えないから、新たに探さなきゃ・・・。
それにしても、あの刑事・・・、真っ直ぐ、僕を見つめ続けてた・・・。
久方ぶりに、強敵の出現か~。面白くなりそう・・・。
今度は、いつ会えるだろう・・・。
ふっ、可笑しい・・・。僕の中にも、まだこんなにも、人としての感情が、残ってるなんてさ・・・。
こんな感情、あの時、捨てたはずなのに・・・」
刑事:「気付けば、刑事を目指していた・・・。きっかけは、幼い頃に父を強盗に殺されてから・・・。
幼い私は、ただただ無力で・・・。私を必死で守り、盾になり、刺されても、
仁王立ちで居る父の背中に・・・、私は・・・、強く誓った・・・。
いつか、この手で、・・・悪人を捕まえると・・・。
あれから、・・・数十年。今の私は、あの時の私に、誇れる存在となれたのだろうか・・・。
怪盗タンザナイトのような存在、私は認めるわけにはいかない!
例え、世の中に、義盗と呼ばれていても・・・、絶対に私の手で、捕まえる!
その為には、余計な感情など、捨て去るのみ・・・。
でも、どうしてなの? ・・・あの怪盗の言葉が、仕草が、心から消えない・・・。
・・・ん? これは・・・次の予告状・・・!」
怪盗:「・・・今宵、零時・・・、雪上に舞い降りた、女神。
スノー・ヴィーナスを、強欲に汚れた者から、救いに参上します。
怪盗タンザナイト」
刑事:「相変わらず、キザな予告状・・・。
・・・雪上に舞い降りた女神・・・。スノー・ヴィーナス。
新しく出来た、美術館の、記念セレモニーで、お披露目予定の、宝石ね・・・。
警備は、厳重な中、どうやって盗むつもりなのか、わからないけど、
今度こそ、この手で・・・」
間
怪盗:「うわ~・・・、いつも以上に、厳重な警備体制だ~。
それに、マスコミ関係も多い・・・。
・・・所詮、警察もメディアも、強欲な金持ち達の言いなりってわけね・・・。
さてと、どうやって侵入したものか・・・。・・・ん? あれは・・・」
刑事:「怪盗タンザナイト、一体、何処から現れるの・・・?
何処からでも、良い!
今日こそ、捕まえて見せる・・・!」
怪盗:「・・・どうしてあんなに、必死なんだ・・・。
何だか、飽きないから不思議だな~。
って・・・僕の馬鹿。・・・今は、そんな事、考えてる場合じゃないだろう・・・。
さて、どう侵入するべきか・・・」
刑事:「警備、ご苦労様。
・・・怪盗タンザナイトは、巧みな手で、今までも侵入して、盗んできてる。
くれぐれも、油断しないようにね!」
怪盗:「ふ~ん、表は刑事連中と、警官で溢れてる・・・。
一旦、隣の貸しビルの窓から侵入して・・・、
死角となってる場所から、ワイヤー撃ち込んで、移るとしよう・・・」
刑事:「予告状の時間まで、後、10分・・・」
怪盗:「予想通り、警備は美術館より手薄だ。
・・・これぐらいなら、簡単に通り抜けられる・・・っと・・・。
よし、クリアっ。・・・後は、死角になる部屋から美術館に・・・」
刑事:「待って居たわよ。怪盗タンザナイト」
怪盗:「げ!? どうして、君が此処に居るの・・・!
予想外過ぎて・・・、変な声、出ちゃったよ~!」
刑事:「そんなの簡単な事よ。
厳重な警備体制は、貴方を此方の貸しビルに、誘導するためのフェイク。
今回は、フェイクニュースを利用させてもらったわ。
貴方は、金持ちが大々的に、騒いだものだと思ってたみたいたけど。・・・違う?」
怪盗:「君の事、少し侮っていたようだ・・・。この僕を騙すなんて、やるね・・・!
フェイクニュース・・・。確かに人々は、より多くの者に、指示持つ存在の言葉には、
疑わず、信じて、拡散する傾向がある。この世に、絶対信じきれる物なんて、無いのにね・・・。
でも、知らない事から、起こる恐怖に耐えきれず、信じようと自らに暗示をかける。
わかってはいたけど、今回は、見事、騙されたよ・・・!
きっと僕自身も、君という存在が現れて、焦って居たのかもね・・・」
刑事:「随分と潔いじゃない。・・・流石の怪盗タンザナイトも、今回は、観念したのかしら?」
怪盗:「・・・さぁ、どうだろうね~。
怪盗から、本心を盗み出したいのなら、君自身も、もっと素直になるしかないよ。
あれから数日・・・、君は、僕の事を、思い出したりしたかい?」
刑事:「可笑しな質問。そんな事、あるわけ無いわ」
怪盗:「その言葉・・・、もう一度、僕自身、見つめて、言ってみてよ。
馬鹿にしたふりして、わざと顔を背けて、応えるのは卑怯だ」
刑事:「・・・くっ」
怪盗:「あの時のように、真っ直ぐ見つめてくれないかい?」
刑事:「わかったわよ! ・・・そんな事、断じてあるわけ無いわ・・・!」
怪盗:「君は、中々に強情だね・・・。でも、今の態度でわかった!
その頑張りは、賞賛に値するよ。だから、僕も包み隠さず、伝えよう。
僕は、あれから数日・・・、君を忘れた事は無いよ」
刑事:「そんなの嘘よ・・・。流石、怪盗なだけあるわね。
そんなに、真っ直ぐ見つめて、心に思ってない言葉、口に出せるなんて」
怪盗:「どうして、君にこの言葉が、嘘だと言い切れるの?」
刑事:「それは・・・! 私が刑事だからよ・・・!」
貴方を例え、思い出したとしても・・・、
それは、好意からではなく、嫌悪からでしかないわ!
貴方を、好きになるなんて・・・、あるわけない・・・! ・・・くっ・・・!」
怪盗:「苦しそうだね・・・」
刑事:「うるさいっ! ・・・どうしてよ・・・!
何でこんなに、胸が苦しいの・・・!?
貴方の事なんて・・・、私は・・・!!!」
怪盗:「一度、開放された、心の扉は・・・、閉める事が困難だ。
そんな事、もうとっくに君も気付いたでしょ?
その苦しみから、開放されたいなら、素直になれば良い」
刑事:「惑わすのは、止めて・・・! ・・・私は、刑事・・・。刑事なのよ・・・!」
怪盗:「今の君じゃ・・・、決して僕は捕まえられない・・・。
もっと、素直になってね。・・・じゃあね・・・」
刑事:「待ちなさい・・・! ・・・私の馬鹿・・・! 早く追いかけなきゃ・・・!
でも、どうしてなの・・・! ・・・体が思うように動かない・・・!
何なのよ・・・!!!!」
怪盗:「・・・僕はどうしたんだ・・・。
何で、あんな事、口に出したんだ・・・。
・・・こんなんじゃ、・・・師匠に顔向けできない・・・。
・・・早く、スノー・ヴィーナスを救い出さなきゃ・・・」
刑事:「あっ! ・・・一瞬で、ワイヤーであんな遠くに・・・。
・・・感心してる場合じゃない。
早く、追いかけないと・・・!」
怪盗:「よしっ・・・侵入成功。
・・・中は、赤外線レーザーだらけで、床には、重力感知システム・・・。
金持ちは、考えることが、一緒だから、助かる・・・。
さてと、いつも通り、慎重に・・・。よし、クリア・・・。
これが・・・、スノー・ヴィーナス・・・。
名前の通り、雪上に舞い降りた女神のように・・・、清らかで、綺麗だ・・・。
待たせたね・・・。今、僕が此処から、救い出してあげるからね・・・。
君は、こんな汚れた場所には、相応しく・・・。
・・・ん? これは・・・!?」
怪盗:「くっ・・・! ・・・此処にも重力感知システム・・・!
まさか、持ち上げた瞬間、・・・銃で撃つシステムだなんて・・・。
今回の金持ちは・・・、殺人も・・・、厭わないのか・・・。
・・・くそっ・・・!」
刑事:「追いついたわよ! 怪盗タンザナイト!」
怪盗:「やぁ、待って居たよ。・・・刑事さん・・・」
刑事:「・・・どうしたの!? その傷・・・!?」
怪盗:「こんなの大した事無いさ。・・・ほんの掠り傷だ・・・。・・・くっ!!!」
刑事:「・・・良いから、傷口、見せて・・・!」
怪盗:「おいおい、何してるんだ・・・。僕は、君の敵じゃないか。
こんな千載一遇のチャンス・・・、逃して、どうするんだよ・・・。
この先、同じような事、起きるかわからないのに・・・」
刑事:「良いから、少し黙って! ・・・止血するわよ・・・。
痛むと思うけど・・・、我慢して・・・」
怪盗:「う・・・、ぐぁぁぁぁ・・・!」
刑事:「・・・よし、これで大丈夫。・・・後は、包帯を・・・」
怪盗:「・・・随分と、手際が良いな・・・」
刑事:「当たり前よ・・・。
・・・私達、刑事は、命がけの時もあるの・・・
これくらい、出来るわよ・・・。・・・どう?」
怪盗:「・・・だいぶ楽になったよ。・・・さぁ、それじゃあ、勝負の続きと行こうか」
刑事:「・・・いいえ、駄目よ・・・。そんなの私のプライドが許さない!
負傷した、貴方を、此処で捕まえても、・・・後できっと後悔する・・・」
怪盗:「・・・見逃すというのか? ・・・刑事、失格じゃないか・・・」
刑事:「始末書ものかも! でも、貴方をこのまま捕まえて、これから先、後悔するより、ずっと良い。
さぁ、早く逃げなさい! 防犯システムが作動したのよ。もうすぐ、警備も、仲間も集まる・・・」
怪盗:「・・・それなら、長居は無用だね・・・。・・・よし、なら、こうしよう!!!」
刑事:「ちょっと、いきなり何、するのよ!? 離して!」
怪盗:「良いから、僕に捕まって・・・! ・・・よしっ、脱出だ・・・!!!」
刑事:(N)「そう言って、私を抱きかかえると・・・、
瞬く間に、美術館から、怪盗タンザナイトは、ワイヤーで、脱出した・・・!
月夜の明かりに、照らされた街の中を、一緒に舞ったあの瞬間・・・、
私は、自分の気持ちに気付いてしまった・・・。
あの時、この気持ちに気付かなければ・・・、違った未来も選べただろう・・・。
でも、そうする事は、出来なかった・・・」
間
怪盗:「此処まで、来たら、もう大丈夫だ。
・・・ねぇ、もう離れて良いよ。
それとも、このままもう少し、掴まっていたい?」
刑事:「そんなわけないでしょ!? ・・・さぁ、早く行って・・・」
怪盗:「そうしたい所だけど・・・、まだ出来ない・・・。
流石に、一緒に抱きかかえては・・・、無茶だったみたいだ・・・」
刑事:「誰も頼んでないわよ! ・・・それに、私からしたら、余計なお世話よ。
職務放棄したと、今頃、思われて・・・」
怪盗:「そいつは、ごめんね。・・・でも、君ともう少し、一緒に居たかった。
どうしてだろうね・・・。君を見てると、僕は可笑しな行動ばかりしてしまう・・・。
こんなんじゃ、怪盗失格だね・・・全く・・・僕らしくない・・・」
刑事:「またそうやって、私を惑わす気ね・・・。そんな手には・・・」
怪盗:「どうしたんだい?」
刑事:「何でもないわよ・・・。・・・馬鹿・・・。
ねぇ・・・、どうして、スノー・ヴィーナス、盗まなかったの?」
怪盗:「そんなの簡単な事さ。
助けてもらったのに、盗んだのでは、フェアじゃないからね。
この傷が、癒えたら、また改めて、救い出しに行くよ」
刑事:「貴方も、律儀よね・・・。・・・わかったわ」
怪盗:「後ね、いきなり馬鹿呼ばわりは、流石に傷付くよ。
怪盗として、その理由、知りたくなるね」
刑事:「理由・・・!? 素直に教えれるなら、どんなに楽でしょうね・・・。
でも、教えたら・・・、その時、私達の関係は、終わってしまう・・・。
だから、本心は、隠し通すしかないのよ・・・」
怪盗:「君が隠し通すというなら・・・、僕は、それを例え何処に隠そうと、見つけ出す!」
刑事:「え・・・?」
怪盗:「だって、それが怪盗の役目だから・・・。
見つけ出すのが、難関な程に、挑みたくなるのさ」
刑事:「・・・その挑戦、受けて立つ。
でも・・・、一つ教えて・・・。
その見つけ出した本心が・・・、世の中から認められなくても・・・、
貴方は、後悔しない・・・?」
怪盗:「・・・さぁ、それは今はわからない・・・。
見つけ出してみないと、判断は出来ないね・・・。
だから、これからは・・・、僕も本気を出させて貰うよ!
怪盗タンザナイトとして、今、君に予告状を送ろう!
何れ、貴方の隠し閉ざした心の扉の中に眠る・・・、
本心と言う名の宝石・・・、必ず奪いに参上します・・・!
怪盗タンザナイト」
刑事:「・・・予告状、確かに受け取った・・・。
私は、全力で守り抜き・・・、貴方をこの手で、捕まえる。
覚悟しなさい・・・。怪盗タンザナイト・・・!」
怪盗:「・・・望む所だよ。・・・あのさ・・・」
刑事:「まだ、何かあるの?」
怪盗:「君は、自分の事が怖くなったりしない?」
刑事:「え?」
怪盗:「僕は、正直、怖いんだ・・・。
師匠から譲り受けた、この仮面を付けて・・・、
怪盗タンザナイトになると、時々、こう思うんだ・・・。
目的の為なら・・・、邪魔する者は、排除しなければって・・・」
刑事:「そんな・・・。貴方は、怪盗でも義盗でしょ・・・?
どうして、そう思うの?」
怪盗:「僕にもわからない・・・。
でも、世の中の悲鳴が、聴こえるんだ・・・!
その悲鳴を、僕は無視する事なんて出来ない・・・!
どんな手段を用いても、救わないといけないと思うんだ・・・!」
刑事:「それなら、怪盗タンザナイトを・・・!」
怪盗:「怪盗タンザナイトが、居なくなれば・・・、
苦しむ人達は、追い込まれて、全て無くすだけだ・・・。
・・・そんな事は、絶対に許せない・・・!」
刑事:「そう・・・」
怪盗:「敵であるはずの君に、こんな話をするとはね・・・。
でも、そういう理由だから・・・、
次に、出会った時には、僕も容赦はしないよ! じゃあね・・・!」
刑事:(N)「私にそう言うと、瞬く間にその場から去った・・・。
どうして私達は・・・、刑事と怪盗として、巡り合ったのだろう・・・。
永遠に解けない回答を、探しながら、新たな予告状が届くのを待って居た・・・。
そして、季節は、雪も降り積もる二月・・・、
貴方と、私の・・・、運命の日がやって来た・・・」
刑事:「・・・これは、怪盗タンザナイトからの、予告状・・・」
怪盗:「予告状。
今宵、零時、救いきれなかった、雪上に舞い降りた、女神。
スノー・ヴィーナスを、強欲に汚れた者から、救いに参上します
怪盗タンザナイト」
刑事:「・・・待って居たわよ。・・・あれから、数か月・・・。
貴方からの、この予告状を・・・。待ち続けた・・・。
私は、刑事・・・。今度こそ、必ず・・・!」
間
怪盗:「ふ~、警備員も、学習しないね・・・。
やぁ、待たせたね。・・・スノー・ヴィーナス。
今、此処から、救い出してあげるよ・・・。
おっと・・・、そう何度も、同じ手には、引っかからないよ・・・。
他の罠も、・・・油断しなければ、僕にとっては、無意味・・・。
覚えとくが良い! 強欲に塗れた金持ち達よ。
・・・僕は、お前達のような存在は、決して許さない・・・。
・・・今まで、人々を苦しめた分、今度は自らの過ちを悔いながら、過ごすが良い・・・!
・・・さらばだ・・・。はははははは!」
間
怪盗:「よし・・・、此処まで、逃げてきたら大丈夫。
・・・。
これで、準備は整った・・・。
・・・スノー・ヴィーナス。・・・苦しんでる人々の為に、
君の事、使わせて貰うよ・・・」
刑事:「そこまでよ! 怪盗タンザナイト!」
怪盗:「ん? ・・・随分と、来るのが遅かったじゃないか・・・。
スノー・ヴィーナスは、もう僕の物・・・。
この宝石があれば、苦しんでる人々を救い出す事が出来る・・・。
その邪魔をすると言うのなら、例え君でも容赦はしない・・・!」
刑事:「・・・望む所よ。・・・ねぇ、怪盗タンザナイト。
今から・・・私と勝負しましょう。
貴方が・・・、隠した本心、見つけ出せたなら・・・、
その宝石は貴方にあげる。どうかしら?」
怪盗:「勿論、その勝負、受けて立つよ!」
刑事:「そう・・・。それなら、勝負よ! 怪盗タンザナイト!」
怪盗:「君は、隠したと言ってるけど、
それは、嘘なんだろう・・・?」
刑事:「嘘・・・?」
怪盗:「君の中には、二つの心があって、今も葛藤している。
僕に見つけ出されたい心と・・・、
決して、見つけ出して欲しくない心・・・。
あれから、数か月、期間をあげたのに・・・、
君は、まだ決断、出来ないんだね」
刑事:「・・・この数か月、何度も何度も、自分に問いかけた・・・。
でも・・・、その度に・・・、胸は苦しみ・・・。
・・・気付くと、貴方の事ばかり、考えていた・・・。
どうして、貴方と、こういう形で、巡り合ったのだろう・・・。
お互いの立場が、違うなら、私達はきっと上手く・・・!」
怪盗:「・・・こんなにも、君を苦しませるなんて・・・。
君に取って、最初に言われた通り、僕は悪党でしかないようだ・・・。
悪党は、悪党らしく、最後まで、その役目を全うしなきゃね・・・」
刑事:「何を、言っているの・・・?」
怪盗:「本当は、この真実は、伝えないでおこうと思った。
伝えれば、全て終わるとわかっていたから・・・」
刑事:「真実・・・? 貴方も、隠してたと言うの?」
怪盗:「その通りだよ。
・・・あのアジトで、君と、再び出会った瞬間から、これは、僕達に課せられた運命だとわかった・・・」
刑事:「再び・・・? 私達は、あの場で巡り合ったのよ・・・」
怪盗:「そうじゃないんだ。・・・僕達は、もっと前に、巡り合ってたんだよ。
・・・その巡り合いは、君にとっては、最悪の場でしかなかった・・・」
刑事:「まさか・・・!? 嫌・・・、そんなの・・・貴方が考えた嘘・・・。
第一、数十年前の事よ・・・。・・・信じられない・・・!」
怪盗:「僕は、怪盗だよ・・・。年齢を誤魔化す事は、造作もない事だよ・・・。
・・・あの日は、僕にとっても、最悪な日だった・・・。
強欲な金持ちから、全て奪われ・・・、すぐ明日の生活も、保障されてなく、絶望しかなかった・・・。
そんな時、僕の目の前に、楽しそうに歩いた親子が見えて・・・、
僕は・・・、気付けば、その親子の父親を、持っていたバタフライナイフで、刺していた・・・。
ただ、君達、親子が、羨ましかったんだ・・・。僕の持ってない幸せを、手にしていて・・・」
刑事:「・・・嘘! ・・・お願い・・・、嘘なんでしょ!?
私の本心に、気付いて考えた、嘘なのよね・・・?」
怪盗:「嘘なら、どんなに良かった事か・・・。
・・・でも、今話した内容は、紛れもない真実だ・・・。
僕は・・・、数十年前・・・、君の父親を殺し、逃げた悪党だよ・・・」
刑事:「嘘、言わないでえええ・・・!!!! これ以上、そんな嘘付くなら、容赦はしないわよ・・・!!!」
怪盗:「どうするって言うんだい?」
刑事:「貴方を、この銃で、撃つ・・・!」
怪盗:「それで、君の気が済むなら・・・、それで構わない・・・。
あのアジトで、君に真っ直ぐな目で、見つめられた瞬間・・・、
父親の後ろで、怯え泣きながらも、僕を見つめ、睨んでいた君を、思い出したんだ・・・。
・・・あの後も、生きる為ならと、罪を犯した・・・。
そんな日々と、ニュースで取り上げられ、警察に追われる日々に、疲れて・・・、
死のうとした時、師匠に出会ったんだ・・・。
師匠は、僕の懺悔を、ただ黙って、聴き続けた・・・。
決して、怒る事も、批判したりもせず、僕が喋り終わるまで・・・。
そして、聴き終わった後に、僕にこう告げた・・・。
今までの日々、償いたいなら、私から、全てを学びなさいと・・・。
それからは、必死に学び・・・、僕は仮面を譲り受け、怪盗となった・・・」
刑事:「・・・もう良い。・・・お願い、黙って・・・!」
怪盗:「僕は、怪盗タンザナイトとして、強欲に塗れた金持ちから、
苦しむ人々を、救い続けてきた・・・。
それは、これからもずっと、続けないと、また誰かが苦しみ、命を落とすかもしれない・・・。
その為には、これからも、手段は選ばない・・・。
そう信じて、突き進んだはずなのに・・・」
刑事:「・・・これ以上、先は言わないで・・・! 言ったら私達は・・・」
怪盗:「僕は、あの美術館で、君を好きになってしまった・・・!
この思いは、隠し続けなければいけなかった・・・。
悪党と、正義の恋なんて・・・、誰にも祝福されない・・・。
気付かれたら、お終いとわかっていたはずなのに・・・。
あの夜の出来事は・・・、楽しくて・・・。
このまま、真実を知らない君と、ずっと上手く、過ごしたかった・・・。
でも、駄目なんだ・・・! ・・・君を思えば思う程・・・、
僕の中の怪盗は・・・、君を排除しろと・・・、囁く・・・!
このままだと・・・、僕は・・・、君を・・・殺して・・・!!!」
刑事:「どうして、隠し通さなかったのよ・・・! 貴方、怪盗でしょ・・・!?
・・・私は・・・、貴方のせいで、こんなにも、苦しんだのよ・・・。
父親を、理不尽に殺され、憎くて、憎くて、たまらないはずなのに・・・。
・・・それなのに、・・・私も・・・、貴方を好きになってしまった・・・!
こんな思いするなら、もっと早くに、真実を教えて欲しかった・・・!」
怪盗:「・・・君の心の扉の中に、隠されてた本心・・・。
どうやら・・・怪盗である僕が盗み出したようだね・・・。
勝負は、僕の勝ちだ・・・。さぁ、そこを退いて・・・。
退かないと、例え君であろうと、容赦はしない・・・!!!」
刑事:「・・・私は、父の背中に誓った・・・。
いつか、この手で、父の仇を討つって・・・!
その為に、厳しい訓練も、乗り越えて、刑事になったの・・・!
例え、好きになった人だとしても・・・、私は刑事として、貴方を捕まえる・・・!」
怪盗:「怪盗と刑事・・・。何処までもその因縁は、断ち切れないようだね・・・。
残念だよ・・・。僕も自分の信念を、貫く為に・・・。
此処で、君に捕まるわけにはいかない・・・。さぁ、勝負だ・・・、刑事さん!!!」
刑事:「ええ! 怪盗、タンザナイト・・・!!!」
(お互い、銃を撃つ)
SE:銃声
怪盗:「ぐふっ・・・!!!」
刑事:「怪盗、タンザナイト・・・!!!」
怪盗:「・・・流石、刑事だ・・・。見事、命中したね・・・。僕の・・・、負けだ・・・」
刑事:「・・・これ、空砲じゃない!? 私を騙したのね・・・!?」
怪盗:「僕は、怪盗だよ・・・。・・・騙すなら、君には決して負けないよ・・・。・・・ぐはっ・・・!」
刑事:「しっかりしなさい・・・! こんな終わり方・・・! 認めない・・・!!! 今、止血を・・・!」
怪盗:「・・・その必要はない・・・。それに、もう手遅れだ・・・」
刑事:「どうしてよ・・・!?」
怪盗:「君が来る前に、遅効性の毒薬をね・・・。・・・幾ら刑事とは言え・・・、
僕への気持ちで・・・、致命傷を与えられない時も、あるだろうから・・・、
念には念を入れたのさ・・・」
刑事:「何で、そんな馬鹿な事、したのよ・・・!!!?」
怪盗:「・・・どうしても、君への罪を償いたかった・・・。
いつか、こんな日が来ると思っていた・・・。
自分の犯した罪を償う日が・・・!」
刑事:「駄目よ・・・。これ以上、喋らないで・・・。
今、すぐ救急車を・・・!」
怪盗:「本当に、すまない事をした・・・。
・・・君を好きになる内に・・・、
もう一人の僕は、君を排除しなければと・・・、
日に日に、強くなり・・・、もう、制御する事が出来なかった・・・。
このまま、君を殺してしまったら・・・、
僕は、怪盗ではなく、怪物になりさがってしまう・・・。
だから、そんな僕を、君に止めて欲しかった・・・」
刑事:「そこまでして私の事、守るなんて・・・、貴方、馬鹿よ・・・!
・・・貴方は・・・、今までの罪を償って・・・、
最後も・・・、立派な怪盗として・・・、誇りを守り抜いた・・・。
私も・・・、貴方を、許す・・・。だから・・・!!!」
怪盗:「ありがとう・・・。
・・・もう一つ、我儘を・・・、言っていいかい・・・?」
刑事:「どんな・・・?」
怪盗:「好きになった君から、貰いたいんだ・・・。・・・その手錠を・・・。
僕を・・・、君の手で・・・、逮捕して・・・」
刑事:「逮捕より・・・、まずは病院に・・・!!!」
怪盗:「・・・もうすぐ・・・、日付も変わって・・・。14日になる・・・」
刑事:「まさか、貴方、最初から・・・!?」
怪盗:「・・・(咳)・・・お願いだ・・・。もう、時間がない・・・。早く・・・」
刑事:「怪盗タンザナイト・・・。
数々の窃盗、及び、殺人を犯した罪で・・・、逮捕します・・・!」
怪盗:「ありがとう・・・。・・・○○○・・・」
刑事:「え・・・!? ・・・どうして私の名前・・・」
怪盗:「惚れた女の・・・、名前、知らないわけないだろう・・・。
最後に、人としての心に・・・、気付かせてくれて・・・、ありがとう・・・」
刑事:「まだ・・・、死なないで・・・。盗んだ、私の心・・・、返しなさいよ・・・。
ねぇ! 怪盗、タンザナイト・・・!!!」
間
刑事:(N)「スノー・ヴィーナス、窃盗事件から、1年が経過した・・・。
私は・・・、色々と考え、ある決断をした、その決意はと言うと・・・」
刑事:「予告状。
今宵、雪原に、凛とした美しさで、佇むスミレのように、光輝く。
ウィンター・アメシスト。
強欲なる者から、救い出す為、参上します・・・!
怪盗タンザナイト」
刑事:(N)「私は・・・、貴方のやり遂げようとした正義を信念に、闇夜を駆け抜け、盗み続ける・・・」
刑事:「私の名前は、怪盗タンザナイト。
今宵も、理不尽な思いで、苦しむ人々を助ける為・・・、
お前達、強欲な金持ちに勝負を挑む!
首を洗って、待って居なさい・・・!」
刑事:(N)「華麗に盗み、苦しむ人々を救ってきた、貴方の背中に、いつか追いつき・・・、
そして、一人でも多くの苦しむ人々を・・・救うために・・・、私は盗み続ける・・・!」
終わり
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※この台本は、オンリーONEシナリオ2022の企画で、
2月、テーマにしたシナリオです
オンリーONEシナリオ2022への参加は、
Twitter、イベントアカウント、【@only2022one】、
確認後、リプもしくは、DMにて、受け付けておりますので、
お気軽に、御参加くださいませ
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