ドタバタ・ガトーショコラ
作者:ヒラマ コウ
比率:【3:0】
上演時間:【30分】
登場キャラ
フローラ(♀)・・・言わずと知れたプレデター。中身は乙女
グレイシー(♀)・・・グレイと呼ばれる宇宙人。そして行動派女子
ジェイミー(♀)・・・13日の金曜日で有名なあの・・・。愛用のマチェットは切れ味抜群。ちょっと天然系女子
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CAST
フローラ:
グレイシー:
ジェイミー:
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2月14日は、女子の勝負の日ですよね。それは人間だけでなく、人間社会に密かに溶け込んでる彼女達も例外ではないようです。
この物語は、そんな彼女達3人のドキドキのバレンタインデー前日のお話です
(フローラのマンションの部屋)
フローラ:「ねぇ、今年もこの日がやってきたわよ! テンション上がるわよね!」
グレイシー:「別に・・・」
フローラ:「何でテンション低いのよ! 乙女でしょ! もっとキュンキュン、心ときめかせなさいよ!」
グレイシー:「そうは言ってもね~。ねぇ、ジェイミー」
ジェイミー:「私はどちらかと言うと、13日の夜に興奮する」
グレイシー:「そういって、またそこら辺のイケメンを追いかけ回すの止めてよね・・・」
ジェイミー:「だって・・・、恐怖に歪んだ表情で、逃げられたり、隠れられたりすると、キュンってなっちゃう!」
フローラ:「わかる! 私も上手く隠れてるイケメンを、森の中で探してる時が、
私のために逃げてくれてるって感じで、ときめいちゃう!」
グレイシー:「追っかけられてる相手は、見つからないように死に物狂いでしょうね・・・」
ジェイミー:「そんな事ないし。見つけられた時は決まって私をみんな見つめてくれるもん」
グレイシー:「それ恐怖で、固まってるだけだから」
フローラ:「えっ? ジェイミーずるい~。私の時は見つかったら、絶叫されるわよ!」
グレイシー:「あんたに見つかった後、何されるか想像したら、そりゃあ、絶叫もしたくなるわよ」
フローラ:「もうさっきから何よ。あんたこそ、タイプのイケメン見つけては、アブダクトして、
体内にインプラントしてるじゃない。
それに比べたら、まだ私達の方がましよ!」
グレイシー:「どこがましよ! あんたはインプラントどころか、皮剥いで吊るすじゃない!」
ジェイミー:「2人共、本当・・・野蛮なんだから・・・」
グレイシー:「あんたに言われたくない・・・」
フローラ:「血生臭い話はここまでよ! 今日はバレンタインのチョコを作る為に集まったのだから、
どんなチョコ作るか考えるわよ!」
グレイシー:「チョコね・・・。既製品で良いんじゃないの? 手作りより美味しいし」
フローラ:「それじゃ、好きな相手に気持ちは伝わらないわよ」
ジェイミー:「定番だと、ガトーショコラとか、トリュフチョコじゃない?」
フローラ:「う~ん。妥当なところかー。でもどうせなら、個性的でインパクトのあるチョコにしたいわよね」
グレイシー:「はい。これ」
フローラ:「え? これはなに?」
グレイシー:「私の作ったココアパウダー型ナノマシーン。これをチョコに混ぜたら、相手もたちまち好きになって・・・」
フローラ:「はい、ストップ! そんな異物混入チョコ、渡せないわよ!」
グレイシー:「食べた時の味も違和感ないように美味しくしあげてるのに・・・」
フローラ:「そういう問題じゃない・・・。ジェイミーは良い考えある?」
ジェイミー:「そうね~。相手の血肉となってと考えるなら、私の血液とちょっぴりの肉片を隠し味に・・・」
フローラ:「それ全然隠れて無いから! むしろ血の味の主張強すぎだから!」
ジェイミー:「え~。そうなの? じゃあ、ココアパウダーで・・・」
フローラ:「あんた達、ココアパウダーで何でもカバーできると思ってるんじゃないわよ! ココアパウダーにも限界があるから!」
グレイシー:「じゃあ、フローラ。あんたはどんなアイディアがあるのか言いなさいよ」
フローラ:「そうね~。例えば、渡して30分内に食べないと作動する時限型チョコ爆弾とか~」
グレイシー:「私のナノマシーンの方がまだましじゃない。相手、殺してどうするのよ!」
フローラ:「だってだって、早く食べてもらいたいじゃない! 明日食べるからとか言って、
2、3日くらいしてから食べる男子なんて論外よ」
グレイシー:「あんたに惚れられたら、相手、命がけね・・・」
ジェイミー:「ねぇ」
フローラ:「何? 良いアイディアでも浮かんだ?」
ジェイミー:「血液100ミリリットルなら、ココアパウダーでカバー出来そうじゃない?」
フローラ:「あんたはあんたで、まだそこで悩んでたのかい!!!」
ジェイミー:「だって、お菓子作りに、分量は大事だし・・・。う~ん、じゃあ・・・50ミリリットルはどう?」
フローラ:「血液から離れんかい!!!」
グレイシー:「フローラもジェイミーも面白い。2人でコンビ組みなさいよ。お笑いとして売れると思う」
ジェイミー:「有名になれる?」
グレイシー:「インパクトもあるしいけるいける」
フローラ:「絶対嫌よ! お笑いで有名になったら、婚期逃しちゃう!!!」
グレイシー:「婚期の前に色々超えるべきハードルがあるような・・・」
フローラ:「このままじゃ、気付いたらお笑いデビューしてそうだから、さっさとチョコ作りに入るわよ。
そうね・・・、やはり無難にガトーショコラにするわ
2人共、異議はないわね?」
グレイシーとジェイミー:「異議な~し」
フローラ:「じゃあ、そうと決まれば、まず材料の確認ね。
えっと・・・。チョコレートに卵、バター、砂糖、それに生クリームに薄力粉とココアパウダーね。色々いるわね~」
グレイシー:「生クリームか~。ちょっくら行ってくるね」
フローラ:「え? グレイシー何処行くの?」
(5分後)
グレイシー:「戻ったわよ」
フローラ:「おかえりなさ・・・い!? なんで牛が一緒にいるの!?」
グレイシー:「新鮮なミルクが良いと思って、北海道で生きの良さそうな牛をアブダクトしたわ」
フローラ:「新鮮過ぎるわよ!!! 返してらっしゃい!!!」
グレイシー:「嫌だ。キャロラインと離れたくない!」
フローラ:「アブダクトしたばかりの牛に名前つけるんじゃないわよ! それどう見てもハナコとかよ!!!」
グレイシー:「ちゃんと世話するから、お願い!!!」
フローラ:「・・・仕方ないわね。ちゃんと世話するのよ・・・」
グレイシー:「うん!」
フローラ:「あれ? そういえば、ジェイミーがいないわ」
グレイシー:「ジェイミーなら、私と同じタイミングで出てったけど?」
フローラ:「何か嫌な予感が・・・」
ジェイミー:「ただいま~。生きが良いし、やたらと暴れるから時間かかっちゃった・・・」
フローラ:「その暴れてる生き物は・・・もしかして・・・」
ジェイミー:「新鮮なにわとりよ」
フローラ:「どうしてあんた達はそうなの!? スーパーで材料買ってきなさいよ!!!」
グレイシー:「その手があったか~」
フローラ:「天然もここまで来ると、もはや狂気ね・・・。じゃあ、残りの材料は手分けして、揃えるわよ」
ジェイミー:「は~い」
(30分後)
フローラ:「ただいま~。みんな材料は揃ってる・・・って、部屋の中に木が!?」
ジェイミー:「お帰り~。スーパー行く途中に、立派なカカオ豆の木が生えてたから、つい」
フローラ:「ついで、木なんて持ってくるんじゃないわよ!」
ジェイミー:「だって~、マチェットを新調したから試し切りしたくて・・・」
フローラ:「切れ味の良さがわかって、よかったわね・・・」
ジェイミー:「うん!」
フローラ:「次に~。そこの銀色に発光してるあんた! それは何!?」
グレイシー:「えっ? 何ってサトウキビ」
フローラ:「そうよね・・・。やはりどう見てもサトウキビよね。それが何でここにこんなに束になってあるのかな~?」
グレイシー:「近所のスーパーに私の宇宙船じゃ、近すぎて、上手く着けないのよね・・・。何度かチャレンジしたのだけど、
通り過ぎちゃうから、イライラしてたら、良い事思いついちゃって、それで沖縄まで行ってきたわけ」
フローラ:「それで、サトウキビね・・・」
グレイシー:「ほら、私ってオーガニックが好きじゃない? 素材はどうせならこだわりたいのよ」
フローラ:「こだわるのは勝手だけど、この騒ぎ、どうするのよ! テレビで沖縄に突如、ミステリーサークルが出来たって、
どのチャンネルも騒いでるわよ!!!」
グレイシー:「やだ! 私ったら有名人になれるかも~」
フローラ:「はぁ~。頭痛がしてきた・・・。もう何でも良いわ。早く作るわよ」
ジェイミー:「じゃあ、私、材料入れる係」
フローラ:「良いわよ。じゃあ、レシピ通り入れるのよ」
ジェイミー:「はーい」
フローラ:「えっと、まずはチョコレートを細かく刻むか~。ジェイミーお願い!」
ジェイミー:「細かく刻めば良いの?」
フローラ:「そうよ」
ジェイミー:「腕がなるわ~」
フローラ:「ちょっと待って。その手に持ってるのは何?」
ジェイミー:「何って、切れ味の良いマチェット」
フローラ:「お願いだから、包丁を使って」
ジェイミー:「は~い」
グレイシー:「前途多難ね・・・」
フローラ:「そう思うなら、手伝って」
グレイシー:「仕方ないわね・・・。何をすればいいの?」
フローラ:「そうね~。ジェイミーが刻んだチョコを湯煎にかけてくれる?」
グレイシー:「地味な作業・・・。どうせなら、手っ取り早く私の開発した、この熱光線銃で」
フローラ:「はい、没収。その銃で、前、この地域にクレーター作った事件、忘れてないわよ・・・」
グレイシー:「まだ覚えてたのね・・・」
フローラ:「覚えてるわよ。もみ消すのに、どれだけ時間かかったか~」
グレイシー:「御近所の目撃者をアブダクトしては、インプラントして、記憶操作したっけ~。本当、あの頃は若かったよね~」
フローラ:「あんな面倒は二度とごめんよ。ちゃんと普通に湯煎で溶かして」
グレイシー:「は~い」
フローラ:「私はその間に、卵白と砂糖でメレンゲ作ったり、バターとか砂糖を混ぜて準備するわ。
湯煎が終わったら、ジェイミーに言って」
グレイシー:「わかった」
フローラ:「ふ~、ガトーショコラって結構大変ね・・・。でも愛情込めて、頑張らなきゃ!
そして気になってるあのイケメン君に渡して・・・その後は・・・」
グレイシー:「こんなもんか~。ジェイミー、次の作業お願い」
ジェイミー:「は~い。次は、湯煎して溶かしたチョコに生クリーム。そしてちょっぴりの私の血と肉片を・・・」
フローラ:「待たんかい! 何がちょっぴりの血と肉片よ! あんた、まだ諦めて無かったの?」
ジェイミー:「テヘッ♪」
フローラ:「テヘッ♪で済むか!!! まったく・・・油断も隙もあったもんじゃないわ・・・。気を取り直して、
作って混ぜた材料にメレンゲを2、3回にわけて混ぜて合わせ、
型に流し込んだら、オーブンで、25分程、焼くと・・・」
ジェイミー:「焼き上がりが楽しみ」
グレイシー:「楽しみね~。・・・あっ、でも生焼けとかになったり、焼き過ぎたりしないかな~?
お菓子作りって火加減も難しいし・・・」
フローラ:「それなら大丈夫よ。私の熱センサーで、温度の加減はばっちりわかるわ」
ジェイミー:「流石、フローラね。私もそんな女子力が欲しい!」
フローラ:「何言ってるのよ。ジェイミーこそ、何処に隠れてても、見つけ出す女子力があるじゃない」
ジェイミー:「そういえばそっか~。私達って、女子力高い系女子ね~」
フローラ:「ね~」
グレイシー:「あんた達のそれを、女子力と呼べるかは謎だと思う・・・」
ジェイミー:「もう~、1人だけ女子力低いからって、拗ねないの~」
グレイシー:「別に拗ねてない」
フローラ:「2人共、仲良いんだから。それより、もう、焼きあがるわよ」
ジェイミー:「う~ん、良い匂い~」
フローラ:「後は、冷まして、綺麗にラッピングしたら、準備は完了ね。冷ましてる間、暇だし、どうしよっか・・・」
ジェイミー:「それなら、それぞれの憧れるイケメンとのシチュエーションを言い合うのはどう?」
フローラ:「良いわね~。じゃあ、私から行くわよ。そうね、最近知ったのだけど、鼻かじキッスとかされてみたいわ~!」
ジェイミー:「やだ! それ超されてみたい~!」
フローラ:「でしょでしょ! 素敵よね~」
グレイシー:「あんた達、2人共マスクじゃない・・・」
フローラ&ジェイミー:「あっ・・・」
グレイシー:「憧れるのはわかるけど、マスク取らないと、キッスなんて無理よ・・・」
フローラ:「・・・」
ジェイミー:「・・・」
グレイシー:「まずそこに気付きなさいよ・・・。まったく・・・」
フローラ:「気を取り直していくわよ。じゃあ、次はジェイミーの憧れるシチュエーション教えて」
ジェイミー:「私は、定番中の定番だけど、イケメンからの壁ドンがされたいな~」
フローラ:「それも良いわね。イケメンから壁ドンなんてされたら、私、気絶しちゃうわ~」
ジェイミー:「私も~」
グレイシー:「壁ドンは私も憧れるかも~」
フローラ:「いや、あんたは無理」
グレイシー:「どうしてよ~」
フローラ:「あんたの背じゃ、壁ドンにならないわよ・・・」
グレイシー:「あっ・・・」
フローラ:「可哀想だけど、諦めなさい・・・。その分、私達がイケメンに壁ドンされるわ~」
グレイシー:「やだやだ! 私も壁ドンされたい~! イケメンと密着してみたい!」 (部屋内で暴れだす)
フローラ:「仕方ないわね~。ジェイミー、行くわよ」
ジェイミー:「OK! あれね! せ~」
フローラ:「のっ!!!」
グレイシー:「はっ、この状態は・・・」 (フローラとジェイミーに手をもたれ、持ち上げられてる)
フローラ:「人間に捕獲される宇宙人」
グレイシー:「やっぱり! やだ。早くおろして~」
フローラ:「壁ドンは諦める?」
グレイシー:「諦めるから、早く下ろして~」
フローラ:「よろしい」
ジェイミー:「ねぇ、私、肝心な事に気付いちゃった。このガトーショコラ、どうやって、イケメンに渡す?」
グレイシー:「それは、私ならアブダクトして、拘束してから・・・」
フローラ:「ストップ! それじゃ、好きです! 言ってもイケメンに伝わらないわよ・・・」
グレイシー:「じゃあ、フローラはどうやって渡すの?」
フローラ:「正面向かって渡すのは、緊張するから、物陰に隠れて~。相手の背後に回り込んで~、
それから吊るして~、身動き取れない状態になったら、
好きですと言って渡すわ~。あ~でも、イケメンと真正面に見つめ合ったら、
恥ずかしくて、自爆を遂行しちゃうかも~」
グレイシー:「あんたもイケメンも、命がけのプレゼントになるわね・・・」
ジェイミー:「2人共、それじゃ駄目よ~」
グレイシー:「ジェイミーは、どう渡すのよ?」
ジェイミー:「私は~、まずイケメン君に気付かれないように、湖の中から出てこっそり近付いて~」
フローラ:「湖から出てきた段階で、イケメン君、みんな逃げるんじゃない?」
ジェイミー:「あっ・・・。じゃあ、背後から近づいて、片手でイケメン君握りしめて~、空いてる手でガトーショコラを~」
グレイシー:「片手で握りしめて持ち上げた段階で、イケメン君、気絶してそう・・・」
ジェイミー:「・・・」
フローラ:「結局、私達、バレンタインデーにイケメン君に渡すこと出来ないって事ね~」
グレイシー:「そうなるね~。どうする? このガトーショコラ」
ジェイミー:「渡せないなら、自分達で食べる! もう太っても気にしない!」
フローラ:「それもそうね~。じゃあ、ここはプレデターを観ながら・・・」
グレイシー:「ゴリマッチョしか出ないじゃない! それよりも、Xファイルを観ながら・・・」
ジェイミー:「モルダーしかイケメンいないじゃない! それよりもジェイソンを・・・」
フローラ:「もう! これじゃあ、いつまでも決まらないわよ! こうなったら全部観ましょう!」
グレイシー:「それもそうね」
ジェイミー:「異議なーし」
フローラ(N):「こうして、私達のバレンタインデー作戦は、仲良く協力して作ったガトーショコラを食べながら、
映画を観て終わりましたとさ。めでたしめでたし」
終わり
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