ダリアに愛を・・・

 

作者 ヒラマ コウ

 

 

登場人物

 

 

フリードリッヒ:街から遠く離れた城に住んでいるヴァンパイア

 

ジェニー:ヴァンパイアを狩るハンター

 

 

比率【1:1】

 

上演時間【30分】

 

 

オンリー0NEシナリオ2022

 

9月、【ダリアの花】テーマにしたシナリオ

 

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CAST

 

フリードリッヒ:

 

ジェニー:

 

 

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【満月の夜 ジェニーは街から遠く離れた地にある城に辿り着く】

 

 

 

ジェニー:「此処が、依頼された吸血鬼の住む城か・・・。見るからに不気味な雰囲気だ・・・。

      私は、ジェニー! 貴様ら、吸血鬼を葬る者だ! 早くこの門を開き、私と戦え!!!」

 

 

 

フリードリッヒ:「・・・こんな辺鄙な城に、わざわざ街から、訪れる者がいるとは・・・。

         人間よ・・・。悪い事は言わない。その命が惜しければ、さっさと立ち去るが良い・・・」

 

 

ジェニー:「断る! ハンターが、討伐もしないで、帰るわけには行かぬのだ」

 

 

フリードリッヒ:「ふむ・・・、最近、巷を騒がせてるハンターか。

         よもや千年も生きている身としては、

         時には、こんな余興も欲しくなる物だ・・・。

         ・・・我は、神に感謝しようではないか!!!」

 

 

ジェニー:「噂に違わぬ、糞野郎で良かったよ。これで遠慮なくお前を殺す事が出来る!!!」

 

 

 

フリードリッヒ:「まぁ、待て、人間よ。折角の記念すべき夜だ。思う存分、楽しもうではないか。

         僕(しもべ)達よ! 音楽を響かせろ! それと客人にワインの用意もだ!」

 

 

ジェニー(M):「こいつのペースに飲まれては駄目だ・・・。早く任務を・・・」

 

 

フリードリッヒ:「ふむ、その恰好は、晩餐に相応しくない。そうだな・・・。(手を2回叩く)

         ・・・僕よ、ご苦労・・・。さあ、これを着たまえ・・・」

 

 

ジェニー:「これは、何の真似だ・・・」

 

 

フリードリッヒ:「お前の為に、特別に用意したドレスだ・・・。これで少しは、淑女らしく見える。感謝したまえ」

 

 

ジェニー:「感謝するわけない・・・。これは、我が家に代々受け継がれるドレスだ・・・。どうして、お前が持ってる!?」

 

 

フリードリッヒ:「お前は、その答えを確かめに来たんであろう? 

         ジェニー。・・・いや、こう呼んだ方が良いか。・・・我が娘よ」

 

 

 

ジェニー:「違う・・・。お前は、私の父なんかじゃない・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「その禍々しきオーラが証拠だ。

         ・・・ふむ、ヴァンパイアとしての能力が開花して、間もないわけか。

         それでは、さぞかし喉の渇きも抑えるのも、難しいだろう・・・。

         遠慮しないで、これを、飲み干すが良い・・・」

 

 

ジェニー:「・・・それは、・・・くっ・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「今のお前にとっては、抗うのが難しい程の・・・、最高級品の人間の血だ。

         ほら、飲みたくて仕方ないだろう?」

 

 

 

ジェニー:「私は、ヴァンパイアなんかには・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「どうして、お前は人間である事に、そんなにこだわる?

         人間など、己の欲望のままに行動する、卑しき生き物ではないか!

         意見が違えれば、戦争を起こし、お互いを傷つけあい・・・、

         周りと違えば、皆で異端者と呼び、処刑する・・・。

         数百年の間、人間は同じ事の繰り返しだ・・・。

         歪んだ正義の名の元に、魔女狩りで、罪のない人間を焼き殺し・・・、

         我らヴァンパイアも、化け物と恐れ、滅ぼそうとする・・・。

         違うかね?」

 

 

 

ジェニー:「・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「お前の血の半分は、我が眷属の血。それなら、わかるだろう?

         我らの仲間も、どれ程、人間の偏見だけで忌み嫌われ、

         殺されてきたのか・・・。人間は、我らの敵だ・・・」

 

 

 

ジェニー:「それは、違う・・・。人間の中にも、優しい心を持っている者も居る。

      現に私は、お前と母が愛して産まれたのだろう?」

 

 

 

フリードリッヒ:「あはははははははは!」

 

 

 

ジェニー:「何がおかしい・・・?」

 

 

フリードリッヒ:「お前の母親など、愛した覚えはない」

 

 

 

ジェニー:「なら、私はどうして産まれたのだ・・・。何の為に?」

 

 

 

フリードリッヒ:「・・・あれは、雪の日だった。我と人間の争いが長い間、続き、

         このままでは、国は滅びると考えた人間は、一人の女性を、我が生贄に捧げた。

         その女性は、自分の運命を嘆き、何日も騒ぎ続け、やがて我に交渉してきたのだ。

         貴方との子供を産みます。どうか、その産まれてくる子を私の代わりにと・・・」

 

 

 

ジェニー:「・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「言葉も出ぬか。まぁ、無理もない。

         ・・・その女性は、暫くして、お前を産み、私に託した。

         そして、住んでいた国を捨て、違う国へと逃げたのだ」

 

 

 

ジェニー:「それなら、私を育てた母は何者なんだ?」

 

 

 

フリードリッヒ:「間違いなく、お前の母親だ。・・・まだ幼かったから、覚えてないだろうが、

         お前は、6歳まで、この我が城で暮らしたのだ」

 

 

ジェニー:「馬鹿な・・・。そんな記憶、覚えていない・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「無理もない。お前が6歳になった頃、我が城に侵入した人間達によって、

         酷い怪我をしたお前は、それ以降、心を閉ざしてしまった・・・。

         我は、苦渋の決断をして、お前の記憶を封印し、

         他所の国へと逃げた母親を探し、力を使い、従わせたのだ。

         お前を、育てるようにと・・・。

         我は、その時、心に誓ったのだ。いつか、人間を滅ぼし、

         我が娘である、お前を取り戻すと・・・」

 

 

 

ジェニー:「そんな事・・・・、信じれるわけがない・・・。卑しきヴァンパイアめ!」

 

 

 

フリードリッヒ:「長き年月が、お前を本来あるべき姿とは、違う化け物にしたようだ。

         それさえ、飲み干せば、お前は、今の苦しみから解放されるのだ・・・。さぁ、早く・・・」

 

 

 

ジェニー:「私は・・・、愛する父と母に育てられ、幸せだったんだ・・・。

      なのに、母が亡くなった日・・・、悲しみで我を失った私は・・・、私は・・・!

      嘆き悲しんでる父の首に、牙をかけて、殺した・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「耐えきれぬ悲しみが、お前を覚醒させたのだ! 

         あの女性も、最後まで、我の役に立ったんだ。光栄であろう!」

 

 

 

ジェニー:「うるさい! 黙れ!!!」

 

 

 

フリードリッヒ:「そう、興奮するではない。

         ・・・所詮、人間など、我らの為の贄に過ぎない生き物だ。

         寿命も我らより、短く、欠陥だらけではないか・・・」

 

 

 

ジェニー:「黙れ、黙れ!!!」

 

 

 

フリードリッヒ:「覚醒したばかりで、混乱してるのだろう。一晩、休んで今後の生き方を考えるが良い・・・。我が娘よ・・・」

 

 

 

 

ジェニー:「私は人間だ・・・。・・・吸血鬼になんてなりたくない・・・」

 

 

 

【過去 ジェニー5歳】

 

 

 

フリードリッヒ:「・・・またそこで、泣いていたのか?」

 

 

ジェニー:「パパ・・・、ママは何処・・・?」

 

 

フリードリッヒ:「・・・お前のママは、もうこの城には居ない」

 

 

ジェニー:「じゃあ、何処に行ったの・・・?」

 

 

フリードリッヒ:「遥か遠くにだよ・・・」

 

 

ジェニー:「ママは、いつ戻ってくるの・・・?」

 

 

フリードリッヒ:「・・・」

 

 

ジェニー:「黙ってたら、わからないよ~・・・」

 

 

フリードリッヒ:「・・・ジェニー、よく聞きなさい。・・・此処から、外の庭が見えるかい?」

 

 

ジェニー:「うん・・・。白いお花がいっぱい咲いてるね・・・」

 

 

フリードリッヒ:「ママは、私にこう言い残したのだ。あの白い花で、ジェニーに花占いをしてもらってと・・・」

 

 

ジェニー:「花占い・・・?」

 

 

フリードリッヒ:「あぁ、そうだ・・・。この庭に咲いてる花、全て花占いし終わったら、ママはこの城に戻ってくると、

         約束したのだ・・・。だから、ジェニーは、ちゃんと最後まで、花占い出来るかい?」

 

 

ジェニー:「うん! ママからのお願いなら、ジェニー、頑張る・・・!」

 

 

 

フリードリッヒ:「良い子だ・・・。それじゃあ、明日から・・・」

 

 

ジェニー:「一日でも、早くママに帰って来て欲しいもん! ジェニー、今から花占いしてくるね!」

 

 

フリードリッヒ:「暗くなる前に、城に戻るのだよ・・・」

 

 

ジェニー:「は~~い!」(庭に駆けていく)

 

 

フリードリッヒ:「ジェニー・・・、すまない・・・」

 

 

 

 

ジェニー:「・・・ママとの約束。・・・こんなに数えきれないくらい咲いてるけど、平気だもん・・・!

      ・・・よ~し! ・・・ママは私の事、好き・・・、嫌い・・・、好き・・・、嫌い・・・、好き・・・」

 

 

 

【過去 終わり 庭に咲く白いダリアを見て、当時を思い出していたジェニー】

 

 

 

ジェニー:「我ながら、あの吸血鬼の言葉を信じて、健気に数えていたものだな・・・。

      ・・・(ダリアの花を一枚、手にする)

      ・・・母さんと父さんは、私の事が好き・・・、嫌い・・・、好き・・・、嫌い・・・、好き・・・、嫌い・・・。

      ふっ・・・、何を今更・・・。馬鹿馬鹿しい・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「此処に居たのか・・・」

 

 

 

ジェニー:「何しに来た・・・?」

 

 

フリードリッヒ:「城内に、お前の姿が見えなかったから、探しに来たのだ・・・。

         おや、その花は・・・」

 

 

ジェニー:「ちっ・・・」(慌てて後ろに隠す)

 

 

 

フリードリッヒ:「そのダリアの花を見ると、お前が小さい頃を思い出す・・・」

 

 

 

ジェニー:「感傷に浸ってんじゃね~よ。糞吸血鬼! 私は、お前のお陰で、1年もの間、

      母さんがこの城に戻ってくると信じて、毎日、花占いを続けてたんだ・・・。

      雨の日も、雪の降る寒い日も、一日たりとも休まずに、ただひたすらに、戻ってくると信じて・・・!」

 

 

 

フリードリッヒ:「お前の怒りもわかる・・・。だが、あの時は、ああするしか手が無かったのだ・・・」

 

 

 

ジェニー:「黙れ!!! どんなに辛い日々だったか、お前に分かるのか・・・!?」

 

 

 

フリードリッヒ:「城の窓から、毎日、見ていた・・・。お前の必死な姿を見るたびに、

         胸が痛んだのだ・・・」

 

 

 

ジェニー:「なら、何故!!! そんな私に、温かい手の一つも、差し出さなかった・・・!!?」

 

 

 

フリードリッヒ:「・・・怖かったのだ・・・。お前に嘘を知られるのが・・・。

         どんなに待っても、お前の母は戻らないと・・・、あの時の私には伝える勇気がなかったのだ・・・。

         愚かな父を・・・、許してくれ・・・」

 

 

 

ジェニー:「この期に及んで、父親づらするな!!! お前は、私に愛情の一つも、与えてなんか・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「・・・与えていたのだ・・・」

 

 

 

ジェニー:「嘘だ・・・!!!」

 

 

 

フリードリッヒ:「嘘ではない・・・!!! お前は覚えてないだろうが、6歳の誕生日に、

         私は・・・、お前に、沢山の愛情を・・・」

 

 

ジェニー:「黙れ・・・、黙れ・・・!!! そんな戯言、聞きたくもない・・・!!!」

 

 

 

フリードリッヒ:「お前の為に、記憶を封印したのだが・・・、仕方あるまい・・・。

         ・・・真実をお前に伝えよう・・・」(ジェニーの頭に、手をあてる)

 

 

ジェニー:「何をする!!! 私に触るな!!! よせ・・・、止めろ・・・!!! ・・・ああああああ・・・!!!」

 

 

 

 

【過去 ジェニー 6歳の誕生日、当日】

 

 

 

ジェニー:「・・・ママは私の事が、好き・・・、嫌い・・・、好き・・・、嫌い・・・、好き・・・、嫌い・・・。

      あっ・・・。・・・ようし、もう一度・・・。

      ママは私の事が、好き・・・、嫌い・・・、好き・・・、嫌い・・・、好き・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「ジェニー、そろそろ城に入りなさい」

 

 

 

ジェニー:「はい、パパ・・・。・・・はぁ~・・・」(息を吐いて、凍えた手を温める)

 

 

 

フリードリッヒ:「こんなに、手を冷たくして・・・。もう少し、ゆっくり数えてみてはどうだい?」

 

 

 

ジェニー:「それじゃ、ママは早く戻って来ないもん・・・。寒いけど・・・、我慢して続ける・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「・・・お前なら、そう言うと思ったよ・・・」

 

 

 

ジェニー:「え・・・?」

 

 

フリードリッヒ:「いつも頑張っているジェニーに、パパからプレゼントだ。・・・さぁ、開けてごらん」

 

 

ジェニー:「うん・・・。・・・うわぁ~、白い手袋だ~!!! パパ、ありがとう!!!」

 

 

フリードリッヒ:「気に入ったようだな・・・。なぁ、ジェニー・・・」

 

 

ジェニー:「何? パパ・・・」

 

 

フリードリッヒ:「今日は、お前の6歳の誕生日だ。だから、プレゼントはそれだけじゃないんだ」

 

 

ジェニー:「え・・・?」

 

 

フリードリッヒ:「お前の部屋に行けばわかるよ。さぁ、今日は此処までにして、部屋に戻ろう」

 

 

ジェニー:「うん!」

 

 

 

 

 

 

フリードリッヒ:「さぁ、部屋の前に到着だ。おっと、ジェニー・・・、部屋に入る前に目を瞑ってごらん」

 

 

 

ジェニー:「どうして・・・?」

 

 

 

フリードリッヒ:「良いから、さぁ、早く・・・」

 

 

 

ジェニー:「は~い。これで良い?」

 

 

フリードリッヒ:「良い子だ。・・・じゃあ、そのまま真っすぐ歩いておいで」

 

 

ジェニー:「うん・・・」

 

 

フリードリッヒ:「そうそう、そのまま真っすぐ・・・」

 

 

ジェニー:「もう、目を開けて良い・・・?」

 

 

フリードリッヒ:「・・・よし、目を開けて良いよ」

 

 

ジェニー:「うわああああああ!!!! 大きなケーキだ~!!!!」

 

 

フリードリッヒ:「ジェニー、お前の為の誕生日ケーキだ」

 

 

ジェニー:「本当に!?」

 

 

フリードリッヒ:「あぁ、全部、お前の物だよ。さぁ、椅子に座って」

 

 

ジェニー:「うん!」

 

 

フリードリッヒ:「良いかい、ジェニー。・・・誕生日には、何かお願い事をするんだ。

         さぁ、願い事を行ってごらん」

 

 

ジェニー:「何でも良いの・・・?」

 

 

フリードリッヒ:「良いよ」

 

 

ジェニー:「・・・じゃあね~、・・・一日も早くママが戻ってきますように・・・」

 

 

フリードリッヒ:「・・・」

 

 

ジェニー:「後、もう一つ・・・」

 

 

フリードリッヒ:「え・・・?」

 

 

ジェニー:「・・・パパが、今日みたいに、ずっと・・・、優しいパパでありますように・・・」

 

 

フリードリッヒ:「ジェニー・・・」

 

 

ジェニー:「今日のパパ、ジェニー、大好きだよ・・・! これからも、優しいパパでいてね・・・!」

 

 

フリードリッヒ:「・・・あぁ・・・、勿論だ・・・。パパは、ずっと優しいパパでいるからね・・・」

 

 

ジェニー:「えへへ、約束だよ・・・!」

 

 

フリードリッヒ:「あぁ・・・。さぁ、折角のケーキなんだ。いっぱい、お食べ・・・」

 

 

ジェニー:「うん・・・!!!」

 

 

 

 

 

 

ジェニー:「・・・パパ、もう食べられないよ~・・・」

 

 

フリードリッヒ:「こらこら・・・、寝むいのなら、ちゃんとベッドに入って、おやすみ」

 

 

ジェニー:「は~い・・・。ねぇ、パパ・・・」

 

 

フリードリッヒ:「何だい? ジェニー」

 

 

ジェニー:「ジェニー・・・、明日から、頑張るから・・・。ちゃんと、見ていてね・・・」

 

 

フリードリッヒ:「あぁ、ちゃんと見てるよ。・・・おやすみ、ジェニー」

 

 

ジェニー:「おやすみなさい・・・、パパ・・・」

 

 

 

 

フリードリッヒ:「・・・お前との幸せは、これから始まるのだと思っていた・・・。

         だが・・・、無情にも、私を滅ぼそうとするハンター達が、城に攻め込んできたのだ・・・。

         城に火を放ち、庭に咲いていたダリアの花も・・・、燃えていった・・・。

         私は、必死にハンター達と戦った・・・。だが・・・」

 

 

 

 

ジェニー:「パパ・・・!!! ママとの約束の花が・・・、全部、燃えちゃうよ・・・!!!

 

 

 

フリードリッヒ:「待ちなさい!!! ジェニー!!! 行っては駄目だ!!!」

 

 

 

ジェニー:「きゃあああああ!!! 熱いよ・・・!!! パパ、助けて!!!」

 

 

 

フリードリッヒ:「ジェニー・・・!!!! くそっ!!! お前等!!! 絶対に許さん!!!

         一人残らず・・・、我が牙の餌食になるが良い!!!」

 

 

 

 

 

 

フリードリッヒ:「・・・戦いの末、私は、ハンター達を倒すことが出来た・・・。

         だが・・・、お前は・・・、燃え盛るダリアの花を守ろうと・・・、大怪我をしてしまった・・・」

 

 

 

ジェニー:「・・・パパ・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「ジェニー・・・。すまなかった・・・」

 

 

 

ジェニー:「パパは・・・、悪くないよ・・・。・・・見て・・・、一輪だけ・・・、守る事が出来たんだよ・・・。

      これで・・・、ママ・・・、ちゃんと、帰って来るかな・・・?」

 

 

 

フリードリッヒ:「あぁ・・・。お前がこんなになってまで、守ったんだ・・・。ママも必ず、帰って来る・・・。

         だから・・・、少し、目を閉じなさい・・・」

 

 

 

ジェニー:「うん・・・。ありがとう・・・。パパ・・・」

 

 

 

 

 

 

フリードリッヒ:「そうして、私は、お前の記憶を封印し、話した通り、お前をあいつの元に置いて来たのだ・・・」

 

 

 

ジェニー:「・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「お前には、人間の世界で、平和に暮らして欲しいとも願った・・・。

         だが・・・、我が眷属の血に目覚めたのなら・・・、仕方あるまい・・・。

         これからは、私がお前を、命をかけて守る・・・」

 

 

 

ジェニー:「・・・一人にしてくれ・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「・・・ジェニー・・・」

 

 

 

ジェニー:「・・・お願いだ・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「・・・わかった。好きにするが良い・・・」

 

 

 

 

 

ジェニー:「・・・私は、ヴァンパイア・・・。

      ・・・私は、これから先・・・、どうしたら・・・」

 

 

 

ジェニー:「そういえば・・・、この花は、あの時に一輪を残して、燃えたはず・・・。

      なのに・・・、どうして、こんなにも沢山・・・。まさか・・・」

 

 

 

 

 

【城の庭 沢山の白いダリアが咲いている】

 

 

フリードリッヒ:「・・・天国から、見えているか? あの時に、燃え尽きそうになった、

         このダリアの花も・・・、今では、こんなにも沢山に育った・・・。

         そう・・・、お前がこの城で、唯一、心の安らぎにしていた花だ・・・。

         お前は、私の事を恐れ、嫌っていたのは分かっていた・・・。

         そんなお前に、私は・・・、こんな事しか、出来なかった・・・」

 

 

 

ジェニー:「・・・母さんは、死ぬ時に・・・、私にこう言い残した・・・。

      ・・・もし、願いが届くなら・・・、もう一度、沢山のこの白いダリアの花を見たかったと・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「・・・」

 

 

 

ジェニー:「お前は・・・、いいや・・・、父さんが母さんに伝えようとした愛は・・・、

      ちゃんと、母さんに伝わってる・・・」

 

 

 

フリードリッヒ:「ジェニー・・・」

 

 

 

ジェニー:「白いダリアの花言葉は・・・、感謝・・・、豊かな愛情・・・。

      母さんに、私を産んでくれて、ありがとうって・・・、伝えようとしたんだろう・・・?」

 

 

 

フリードリッヒ:「・・・」

 

 

 

ジェニー:「黙ってちゃわからないだろう・・・。

      ・・・不器用な愛を・・・、私にも、与えてくれて、ありがとう・・・。父さん・・・」

 

 

 

 

 

 

終わり