ウィークポイントは恋への急接近!?

 

 

作者 ヒラマ コウ

 

 

登場人物

 

イ・ジュオン・・・・横暴で何かとすぐ怒る嫌な主任。だけど一つだけ弱点があって・・・。実は高所恐怖症

 

 

ソン・ジュハ・・・物語の主人公。何かと主任にコキ使われる苦労人。妄想癖もあって妄想の中では、よく主任をコキ使ってる

 

 

比率:【1:1】

 

上演時間:【40分】 

 

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イ・ジュオン:

 

ソン・ジュハ:

 

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ジュオン:「ソン・ジュハ! ソン・ジュハはいるか!? おい! ソン・ジュハ!!!!」

 

 

 

ジュハ:「此処です! 此処に居ます!!!」

 

 

 

ジュオン:「遅い!!! 俺が呼んだら、10秒で来い!!! 良いな!!!」

 

 

 

ジュハ:「すみませんでした! でも主任、10秒は無理なので、せめて20秒で・・・」

 

 

 

ジュオン:「何だ? 口答えか? お前、一体何様だ? あぁん!!!」

 

 

ジュハ:「お言葉ですが、私は人間です! 万能なロボットじゃないので、出来る事も出来ない事もあります! 

     はっきり言って主任のそれは、パワハラに・・・」

 

 

 

ジュオン:「ソン・ジュハ。一つ良い事を教えてやる」

 

 

 

ジュハ:「なんでしょうか?」

 

 

ジュオン:「良いか? よく聞け。俺がやれと言った事には逆らうな。俺が黒といったら、白い物も黒なんだ。わかったか!!!」

 

 

 

ジュハ:「そんな横暴な!!!」

 

 

 

ジュオン:「口答えする暇あるなら、自分のデスクに戻って働け~!!!」

 

 

 

ジュハ:「はいいいいいいいいいい!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ジュハ(N):「私の名前はソン・ジュハ。ごく普通な一般的な女性で、これと言った特技もなし。

        強いて言うなら、ドラマに出てくるようなイケメンとの恋愛、結婚を夢見て毎日を過ごしてる。

        でも、現実は残酷。そんな出会いは皆無だし、それどころか、

        配属された部署の主任、イ・ジュオンは、見ての通りの厄介な性格で、

        私のストレスは溜まるばかりだ・・・」

 

 

 

 

 

ジュオン:「おい! ソン・ジュハ。・・・聞いてるのか? おい!!!」

 

 

 

ジュハ:「うわあああ!!! 何だ・・・。主任ですか・・・」

 

 

 

ジュオン:「その態度は何だ! 頼んでた資料は、出来てるのか?」

 

 

 

ジュハ:「えっ? そんなの初耳ですけど!?」

 

 

 

ジュオン:「お前は馬鹿か!? 付箋に、資料作り頼むって書いただろうが」

 

 

 

ジュハ:「付箋!? そんなの気付くわけ無いじゃないですか!!!」

 

 

 

ジュオン:「どうするんだ! 明日の早朝の会議に必要なんだぞ!」

 

 

 

ジュハ:「そんな事言われても・・・」

 

 

 

ジュオン:「何とか間に合わせろ。良いな!」

 

 

 

ジュハ:「そんな・・・。それじゃあ、このまま残業するしか・・・」

 

 

 

ジュオン:「なら残業しろ。俺はこの後、用事があるから、帰る」

 

 

 

ジュハ:「待ってください!!! 少しは手伝ってくださいよ!!!」

 

 

 

ジュオン:「それは、お前に任せた仕事だ。頼んだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

ジュハ:「これでラスト・・・。何とか終わった・・・。嘘・・・。もうこんな時間。

     はぁ~、帰って夕食の準備する気力ないし、何処かで食べてくか・・・」

 

 

 

 

(屋台で、主任の悪口言うジュハ)

 

 

 

 

ジュハ:「おじさん! オデンと、それとトッポキ、後、その海苔巻きもお願い!

     ねぇ、聞いてよ。今日は散々だったんだ。

     いつもの主任がさ、今日も無茶なことばっかり言って来て、

     そのおかげで、この時間まで、残業だったんだよ。

     大体、いっつも何かと、私にばかり狙いつけて、無茶な事ばかり言って来てさ、

     前世では、きっとあの主任と、敵対関係だったんじゃないかって思うのよね!

     あ~本当、ムカつく!!!! 

     地獄に落ちろって感じだよ!!!

     イ・ジュオンなんて、この世から消えてしまええええええええええええ!!!!」

 

 

 

 

ジュハ:「は~、スッキリした!!! おじさん! 気分いいから、ビールも追加ね!!!」

     ありがとう!!! じゃあ、乾~杯!!!

 

 

ジュオン:「ほう~。ソン・ジュハ。随分と、ご機嫌みたいだな・・・!」

 

 

 

ジュハ:「(ビールを吹き出す)・・・その声は、イ主任!!!?」

 

 

 

ジュオン:「誰が、無茶な事ばかりだって? それに、前世は敵対関係とかも、言ってたよな~」

 

 

 

ジュハ:「ええ。言いましたよ! でも、それが何なんですか! 

     大体、主任が悪いんですよ!

     私、一人に残業押し付けて、自分はさっさと帰っちゃうし!

     そんな状態なんだから、ストレスも溜まってるんです!!!

     これは、立派なストレス発散なんですから!

     第一、証拠も残ってませんよね!!!

     どうですか!?」

 

 

 

(ポケットからICレコーダー、出して再生するジュオン)

 

 

 

 

ジュハ:「前世では、きっとあの主任と、敵対関係だったんじゃないかって思うのよね!

     あ~本当、ムカつく!!!! 

     地獄に落ちろって感じだよ!!!

     イ・ジュオンなんて、この世から消えてしまええええええええええええ!!!!」

 

 

 

 

ジュオン:「お前の言う証拠ってのは、これで十分だよな~」

 

 

 

ジュハ:「ええええええええ!!!! 録音してたんですか!?」

 

 

 

ジュオン:「いかなる時にも、対応できるようにな。俺も今回の事で、よ~くわかった。

      やはり、備えあれば、こういう状況でも、役に立つってのがな」

 

 

 

 

ジュハ:「すみません!!! 主任、ついお酒が入って、魔が差しただけで・・・」

 

 

 

ジュオン:「お酒は、この後、頼んだだけだよな。お前の頭脳は、嘘を付く事に関しては、

      ポンポンと出てくるみたいで、感心するよ!」    

 

 

 

 

ジュハ:「あの~、それでなんですが・・・」

 

 

 

ジュオン:「何だ?」

 

 

 

ジュハ:「この事は、報告とかはしませんよね・・・?」

 

 

 

ジュオン:「さぁ、どうだろうな・・・。それは、これからのお前の態度次第だと思うが・・・」

 

 

 

ジュハ:「何でもします! だから、今回の事は!!!」

 

 

 

ジュオン:「よ~し! わかった! じゃあ、明日から精々覚悟しとくんだな!」

 

 

 

 

ジュハ(N):「翌日から、その言葉の意味を痛いほど、知る羽目になったのだ・・・」

 

 

 

 

ジュオン:「おいっ、ソン・ジュハ!」

 

 

 

ジュハ:「はい! イ主任、何でしょうか!?」

 

 

 

ジュオン:「笑顔が怖い。席に戻ってやり直せ」

 

 

 

ジュハ:「はいっ!?」

 

 

 

ジュオン:「良いから、早くしろ」

 

 

 

ジュハ:「わかりました・・・」

 

 

 

ジュオン:「おいっ、ソン・ジュハ!!!」

 

 

 

ジュハ:「何でしょうか? イ主任」

 

 

ジュオン:「肩が凝ったから揉んでくれ」

 

 

ジュハ:「今ですか!?」

 

 

ジュオン:「今じゃなかったら、いつ揉むんだ。早く揉め」

 

 

ジュハ:「わかりました! ・・・こんな感じで良いですか?」

 

 

ジュオン:「お前、肩揉んだ事無いのか? 全然力弱い。もっと力込めろ!」

 

 

ジュハ(M):「何ですって。じゃあ、これなら、どうよ!」

 

 

ジュハ:「これくらいでしょう・・・か!!!!」

 

 

ジュオン:「ぐっ・・・」

 

 

ジュハ:「あ~ら、イ主任、どうされましたか? もしかして、これでも弱いですか?」

 

 

ジュオン:「そうだな。やっと効いて来た感じだ。でも、お前の腕力なんて、こんなもんだろ」

 

 

ジュハ:「いいえ・・・!!! まだ、余裕あるので、更に力込めます・・・ね!!!」

 

 

ジュオン:「ぐああああ・・・!」

 

 

ジュハ:「あらあら、イ主任、声なんて出して、みっともないですよ。それとも、これくらいの力で、

     ギブアップなされるんですか?」  

 

 

ジュオン(M):「この女・・・、これでもかって言うくらい、馬鹿力、出しやがって・・・。

         そっちがその気なら、こっちもこうだ!」

 

 

ジュオン:「そんなわけないだろう。まだまだ、余裕だ! あっ、でも俺ばかり揉んでもらってても、

      申し訳ないし、今度は俺が揉んでやるよ。お前も、肩凝ってるだろう!」

 

 

 

ジュハ(M):「そう、そう来るのね・・・。相当、効果あったらしいわね! でも、そうは行かないから!」

 

 

 

ジュハ:「そんな! 私なんかが、イ主任に肩揉んでもらうなんて、申し訳ないです!

     その気持ちだけ、受け取っておきますね。そんな優しい部分もあるなんて、

     私、今までイ主任の事、誤解してました。

     心入れ替えて、全身全霊で、肩揉ませていただきます・・・ね!!!」

 

 

 

ジュオン:「ぐあああああああ・・・!!!!」

 

 

 

ジュハ:「そんな叫んでまで、喜びを表現してくださるなんて、流石、イ主任!

     主任の鏡ですね!!!」

 

 

 

ジュオン:「そうだろう・・・! そうだろう・・・!」

 

 

 

ジュオン(M):「上手い事言って逃げやがって・・・!!! 覚えとけよ・・・!!! ぐあああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

(会社の休憩室)

 

 

 

ジュハ(M):「ふん! ざまあみろっての!!! あ~スッキリした~!!!

        それにしても、問題はあのICレコーダーか~。

        どうやって、奪ってやろうかしら・・・。

        あの証拠さえ、何とかなれば・・・」

 

 

 

 

(ジュハの妄想)

 

 

 

ジュハ:「イ・ジュオン! イ・ジュオン! 居ないの!?」

 

 

ジュオン:「はい! ソン主任、何でしょうか!?」

 

 

ジュハ:「あぁ、居たの。ただ、呼んだだけよ」

 

 

ジュオン:「そうですか・・・」

 

 

ジュハ:「あっ、ついでだから、お茶淹れて来て」

 

 

ジュオン:「ついで・・・」

 

 

ジュハ:「あら? 何か不満なの?」

 

 

ジュオン:「いえ、不満なんてあるわけ・・・ないじゃ・・・ないですか・・・!」

 

 

ジュハ:「なら、さっさと淹れて来て」

 

 

ジュオン:「わかりました・・・」

 

 

ジュハ:「あっ、待って」

 

 

ジュオン:「まだ何か?」

 

 

ジュハ:「笑顔、忘れずにね。後、この資料も、明日までに宜しく!」

 

 

ジュオン:「この量、全部ですか!?」

 

 

ジュハ:「イ・ジュオン。良い事教えてあげる。私がやれと言った事は、死ぬ気でやるのみ! わかった!?」

 

 

ジュオン:「はいっ!!!!!!!!!!」

 

 

 

(ジュハの妄想終わり)

 

 

 

ジュハ:「なんて事も、夢じゃないかも・・・」

 

 

ジュオン:「随分と、楽しそうだな・・・」

 

 

ジュハ:「イ・ジュオン! お茶はまだなの? 早くしなさい!」

 

 

ジュオン:「あぁん? お前の為に、お茶だ・・・?」

 

 

ジュハ(M):「ヤバッ・・・。つい勢いで言っちゃったけど、本物だ~!!!」

 

 

ジュハ:「あっ、イ主任! お疲れ様です! いや~、いつも頑張ってる主任に、

     お茶でも淹れて差し上げようかなと思ってた所なんですよ~!!!」

 

 

ジュオン:「ほう~、それはちょうど良かった! ちょうど喉が渇いてたんだ」

 

 

ジュハ:「それは、良かった! じゃあ、急いで淹れてくるので、主任はデスクで待ってて・・・」

 

 

ジュオン:「まぁ、そんなに慌てなくても良い。いや、むしろ慌てた方が良いかもな~」

 

 

ジュハ:「え?」

 

 

ジュオン:「お茶は、お茶でも、タピオカミルクティーが飲みたいと思ってたんだ」

 

 

ジュハ:「でも、会社にはタピオカミルクティーなんて・・・」

 

 

ジュオン:「あるわけないよな~。じゃあ、問題だ。どうすれば良い?」

 

 

ジュハ:「そりゃあ、お店まで行って買ってくるしか・・・」

 

 

ジュオン:「正解。さぁ、休憩時間も残り10分だ。・・・わかったなら、とっとこ行ってこい!」

 

 

ジュハ:「そんな無茶ですって!!!」

 

 

ジュオン:「無茶なのは承知だ。あっ、もし1分でも送れるようなら、戻って来なくて良いぞ。

      その代り、あの録音は公開させてもらう」

 

 

ジュハ:「死ぬ気で、走って買ってきます!!!!!」

 

 

 

ジュオン:「ふっ。・・・面白い奴だ」

 

 

 

 

 

 

(ダッシュしてお店に向かうジュハ)

 

 

 

ジュハ(M):「ハア、ハア、ハア・・・。ただ妄想してただけなのに、何でこんな目に!!!

        何で、あんなタイミングよく現れるのよ~!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ジュオン:「ふむ。後、残り1分か・・・」

 

 

ジュハ:「ソン・ジュハ、只今、戻りましたっ!!!!!!! ご希望のタピオカミルクティーです!!!!」

 

 

ジュオン:「何だ。間に合ったのか」

 

 

ジュハ:「何だって何ですか!? そりゃあ、死ぬ気で間に合わせますよ!!!!」

 

 

ジュオン:「ご苦労。さぁ、仕事は山積みだ。さっさと仕事にかかれ」

 

 

ジュハ:「わかりましたよ!!!」

 

 

ジュオン:「あっ、待て。もう一つ仕事があった。・・・そこの蛍光灯、切れてるから取り換えてくれ」

 

 

ジュハ:「それくらい、男なんだから、自分でやってくださいよ!」

 

 

ジュオン:「俺は・・・! 急ぎの用事があって、それを片付けるのに、忙しいんだ!!!」

 

 

ジュハ:「タピオカミルクティー飲んで、のんびりしてるように、見えますが・・・?」

 

 

ジュオン:「うっさい・・・!!! これ飲んでから、やろうと思ってたんだ!!! つべこべ言わずに、やれ!!!」

 

 

ジュハ:「わかりましたよ・・・」

 

 

ジュハ(M):「何で私が、こんな事までしないといけないのよ・・・。あ~、こんな事ばかりじゃ、あのICレコーダー、

        奪えないよ~」

 

 

 

 

 

 

ジュハ(N):「主任のパワハラにも耐えながらも、毎日、妄想の中だけでは、主任をコキ使ってたけど、

        それでも、ストレスはどんどん溜まって、どうしようもなくなってたある日・・・」

 

 

 

 

ジュオン:「・・・ソン・ジュハ! ソン・ジュハ!!!」

 

 

ジュハ:「はい! はい! はい! はい!!!」

 

 

ジュオン:「返事を連呼してないで、さっさと来い!!!!」

 

 

ジュハ(M):「全く・・・。今度は、何だってのよ・・・」

 

 

ジュオン:「早くしろ!!!!」

 

 

ジュハ:「お呼びでしょうか。イ主任」

 

 

ジュオン:「明日、予定空けとけ」

 

 

ジュハ:「お言葉ですが主任、明日は私、お休みですが・・・」

 

 

ジュオン:「今度の企画で、オープンするレジャー施設の視察、俺とお前で行くことになったんだ・・・」

 

 

ジュハ:「はぁ!? 何で私と主任なんですか!?」

 

 

ジュオン:「他は、出勤で、俺とお前だけが、休みだったからだ!!!」

 

 

ジュハ:「そうだとしても、何でよりにもよって、主任となんか・・・」

 

 

ジュオン:「それはこっちの台詞だ!!! 何でお前と・・・。しかも・・・」

 

 

ジュハ:「しかも? 何ですか?」

 

 

ジュオン:「うっさい! うっさい! うっさ~い!!!! 良いか、とにかく明日、会社に8時に来い!!! 良いな!!!」

 

 

ジュハ:「わかりましたよ~」

 

 

ジュハ(M):「・・・何なのよ。・・・もう・・・。せっかく気分転換しようと思ったのに・・・!!!」

 

 

 

 

(翌日、会社前、時間通り到着するジュハ)

 

 

 

ジュオン:「・・・」

 

 

ジュハ:「主任、おはようございます」

 

 

ジュオン:「何が暢気におはようございますだ! 遅い!!!」

 

 

ジュハ:「遅くなんかないですよ。ほらっ、時計見てください! ちゃんと8時ちょうどですよ!!!」

 

 

ジュオン:「お前はアホか!!! こういう時の集合は、遅くても10分前には、到着しとくもんなんだ!!!!」

 

 

ジュハ:「たかが、10分遅かっただけじゃないですか・・・!!!」

 

 

ジュオン:「10分もだ!!! それに、俺は30分前から到着してるってのに・・・」

 

 

ジュハ:「7時半ですか!? 主任、それはいくら何でも早すぎですって」

 

 

ジュオン:「社会人なら、これくらい当たり前だ!!!!」

 

 

ジュハ:「いいえ、それは早すぎです!!!」

 

 

ジュオン:「全く!!! お前はなんでいつもいつも俺をイラつかせる!!! あっ・・・いかん。時間の無駄だ。

      さぁ、向かうぞ。早く乗れ」

 

 

ジュハ:「これって、主任の自家用車?」

 

 

ジュオン:「それがどうした?」

 

 

ジュハ:「随分、良い車に乗ってるなって思って」

 

 

ジュオン:「くだらない詮索する暇あるなら、さっさとシートベルトしろ!」

 

 

ジュハ:「は~い」

 

 

ジュオン:「出発するぞ」

 

 

ジュハ:「安全運転でお願いします。主任と事故って死ぬなんて真っ平なんで」

 

 

ジュオン:「ふんっ!」

 

 

ジュハ:「急発進しないでください!!! いやああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

(レジャー施設に到着する)

 

 

 

ジュオン:「おいっ、いつまでぐったりしてるんだ。さっさと降りる準備しろ」

 

 

ジュハ:「そんな事言ったって・・・。主任の運転、酷過ぎて・・・車酔い・・・」

 

 

ジュオン:「どこぞの誰かさんが、言わなくても良い事、言ったからだ!

      俺は、先方に挨拶してくるから、お前はそこのベンチでも座って待ってろ」

 

 

ジュハ:「わかりました・・・」

 

 

ジュオン:「良いか? 勝手に先に進んだり、ふらふらどっか行くなよ。わかったな?」

 

 

ジュハ:「子供じゃないんだから、しませんって。ほらっ、先方待ってますよ。行った行った」

 

 

ジュオン:「そんな事わかってる! 大人しく待ってろよ!」

 

 

ジュハ:「は~い」

 

 

ジュハ(M):「全く・・・。いちいちうるさいんだから。誰が、勝手にふらふら行くもんですかっての・・・。

        ふ~ん、大型ショッピングモールだけでなく、遊園地も隣接されてるんだ。

        これなら、親子連れも楽しめそう・・・。

        あああああ!!! 何あの乗り物!!!! 楽しそう!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ジュオン:「待たせたな。先方も気分大丈夫かって心配してくれて、水用意してくれたぞ・・・って、居ない・・・

      あの馬鹿。何処に行ったんだ・・・!!!」

 

 

 

ジュハ:「イ主任~!!!! こっちです!!!」

 

 

 

ジュオン:「全く!!! 遊びで来てるわけじゃないんだ!!! 少しは大人しく・・・」

 

 

ジュハ:「どうしました? 主任?」

 

 

ジュオン:「何でもない!」

 

 

ジュハ:「それより、見てくださいよ!!! この施設の遊園地、絶叫マシーンだらけなんですよ!!!!

     私、絶叫マシーンって、大大大好きなんですよ~!!!

     ねぇ~、主任、これ、乗れないんですか!?」

 

 

 

ジュオン:「オープン前なんだ。乗れるわけないだろ・・・。全く仕事って事、少しは・・・」

 

 

(ジュオンのスマホが鳴る)

 

 

 

ジュハ:「主任、携帯鳴ってますよ」

 

 

ジュオン:「それくらいわかってる! ・・・もしもし。・・・あっ、これはこれは先程はどうも!

      えっ・・・? それは、本当ですか・・・!? ・・・あっ、いや・・・。

      でも・・・、そちらの御迷惑になるのでは?

      ・・・いえ!!! そういう意味ではなく、流石にオープン前なのでって意味です・・・。

      ・・・そうですか。・・・はい。・・・ありがとうございます・・・。

      ・・・それでは、お言葉に、甘えさせていただきます・・・。では、失礼します・・・」

 

 

 

ジュハ:「先方からですか?」

 

 

 

ジュオン:「遊園地、特別に開放したので、思う存分、楽しんで行きなさいだと・・・」

 

 

ジュハ:「本当ですか!? やった~!!!! 最近、ストレス溜まってばっかで、発散したかったんですよね!!!

     そうと決まれば、あれ乗りましょう!!! 主任!!!」

 

 

 

ジュオン:「あれに乗るのか・・・!? 一番初めに!?」

 

 

 

ジュハ:「えっ? だって、あんなに楽しそうじゃないですか!!!! 見てくださいあの速さ!!!」

 

 

ジュオン:「速さ・・・」

 

 

ジュハ:「それに、あの連続、三回転!!!」

 

 

ジュオン:「三回転・・・」

 

 

ジュハ:「それに、連続ツイスト!!!!」

 

 

ジュオン:「連続ツイスト・・・」

 

 

ジュハ:「極めつけは、あのなんて言っても凄い高さ!!!!」

 

 

ジュオン:「高、高、高、高さ・・・!!?」

 

 

ジュハ:「どうしました? 主任?」

 

 

ジュオン:「何でもないっ!!!」

 

 

ジュハ:「あんな物凄い高さから、急降下するなんて!!! 早く乗りたいです!!!

     早く、乗りに行きましょう!!!!」

 

 

 

ジュオン:「悪いが、お前一人で乗って来い・・・。俺は腹の調子が悪くてな・・・」

 

 

ジュハ:「え? 今朝からそんな感じに見えませんでしたけど・・・」

 

 

ジュオン:「急性の腹痛だ!!! いや~! 残念だな~! これで腹痛さえなければ、乗って思う存分、楽しむんだが・・・、

      いや、本当、残念だ・・・!!!!」

 

 

 

ジュハ(M):「腹痛って感じに見えないんだけど・・・。もしかして、乗るのが嫌とか・・・?

        まさか、そんなわけないよね・・・。ん? いや待て、そう言えばこの前も、

        蛍光灯、取り換えてとか、頼んでくるし・・・ひょっとしたら・・・!」

 

 

 

 

ジュオン:「さぁ、何してる。さっさと乗って来い。俺は此処で待ってるから」

 

 

 

ジュハ:「イ主任。ひょっとして、ジェットコースターが怖いんですか?」

 

 

 

ジュオン:「馬鹿言うな!!! 良い年して、ジェットコースターが怖いわけあるか!!!

                        俺は腹痛で仕方なく、此処で待つことにしたんだ!」

 

 

 

ジュハ:「でもでも、私には、いつも死ぬ気で頑張れ!!! とか言ってるのに、自分は腹痛ってだけで、

     乗らないっておかしくないですか? しかも、先方のご厚意で特別に、こうして開いていただいてるのに、

     それを乗らないなんて、社会人として、どうなんでしょう・・・」

 

 

 

ジュオン:「それは、そうだが・・・。・・・先方も無理してまで乗れとまでは・・・」

 

 

 

ジュハ:「もしかしたら、後日、乗り物の感想、聞かれるかもしれませんよ」

 

 

 

ジュオン:「うっ」

 

 

 

ジュハ:「それなのに、腹痛で乗って無いので、感想は言えませんなんて言ったら、

     誠意が無いと思われ、この企画も、別の会社に・・・!」

 

 

 

ジュオン:「だあああああああああ!!!! ぐだぐだと遠回しに言いやがって!!!

                        そこまで言うなら、乗ってやろうじゃねぇ~か!!!!

      こんなジェットコースターの一つや二つ、怖くなんて、無いってんだよ!!!」

 

 

 

ジュハ:「それでこそ主任です!!! さっ、そうと決まれば乗りに行きましょう!!!!」

 

 

 

 

(ジェットコースター乗り場)

 

 

 

ジュオン:「おいっ、スタッフ。このレバー、ちゃんと止まってんだろうな?」

 

 

ジュハ:「そんなに心配しなくても・・・、ほらっ、ちゃんと止まってますよ」

 

 

ジュオン:「うっさい! 念の為に確認しただけだ!!!」

 

 

ジュハ:「さっ、いよいよですね。・・・あっ、動き出した!!!!」

 

 

ジュオン:「・・・」

 

 

ジュハ:「ねぇ、主任。見てください!!! 主任の車があんな小さいですよ!!!」

 

 

ジュオン:「あぁ! そうだな!!!」

 

 

ジュハ:「って、全然見て無いじゃないですか! ほらっ、街も遙か遠くまで見えて絶景ですよ!!!」

 

 

ジュオン:「ひいっ!」

 

 

ジュハ:「そろそろ、頂上ですよ!」

 

 

ジュオン:「嘘だろっ!」

 

 

ジュハ:「本当ですって! さぁ、いよいよ落下ですよ!!!!」

 

 

ジュオン:「待て待て待てっ!」

 

 

ジュハ:「ヤッホーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

 

ジュオン:「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

ジュハ:「きゃああああああああ!!!! このG、最高!!!!!!!!!!!」

 

 

ジュオン:「いやああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

ジュハ:「主任!!!! 今度は3回転ですよ!!!!!!」

 

 

ジュオン:「嫌だ、嫌だ、嫌・・・ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

ジュハ:「ひゃっほーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

 

 

ジュオン:「うわあああああ!!!!!! うわあああああああ!!!! うわああああああああ!!!!!」

 

 

ジュハ:「今度は連続ツイスト!!!!!!!」

 

 

ジュオン:「ぐへええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」

 

 

ジュハ:「主任!!!! もうすぐラストですよ!!!!! あの高さから急降下したら、どうなるんでしょうね!!!!!」

 

 

ジュオン:「よせ、よせ、よせええええええええええ!!!! 」

 

 

ジュハ:「いよいよですよ!!!!!

                    いやあああああ!!!! 楽しいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

 

ジュオン:「うわあああああああああああ!!!!!! 降ろしてくれええええええええええええええええ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ジュハ:「あ~!!!!!!!!!! もうなんて最高のジェットコースター!!!!! 

                    ねぇ、主任! もう一度、乗りましょう!!!!!」

 

 

ジュオン:「・・・」

 

 

ジュハ:「何、黙ってるんですか? イ主任? ・・・えっ、気絶してる!!!! ちょっと!!! 主任、大丈夫ですか!!!

     主任~!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

(ベンチで目を覚ますジュオン)

 

 

 

ジュオン:「・・・うっ。・・・回転が。・・・回転が。・・・はっ!!!!」

 

 

ジュハ:「あっ、起きた。イ主任、大丈夫ですか?」

 

 

ジュオン:「気絶してたのか・・・」

 

 

ジュハ:「もう・・・。まさか、気絶するなんて思ってもみませんでしたよ! へ~、主任にも苦手なものってあったんですね!」

 

 

ジュオン:「うっさい・・・!!!」

 

 

ジュハ:「でも意外でした。何でも上手く出来ちゃうのに、こんな弱点があるなんて」

 

 

ジュオン:「小さい頃・・・、親とプールに行った時だった。・・・俺は当時7歳くらいだったのに、

      根性がつくからって、無理やり高台から、飛び込みさせられたんだ・・・。

      それ以来、その時の恐怖が蘇って、高い所が苦手になった・・・」

 

 

 

ジュハ:「ジェットコースターは、わからなくもないですが、脚立はそんなに高くないじゃないですか・・・」

 

 

ジュオン:「馬鹿野郎・・・!!! あの高さでも、もし落下したらと思うと・・・怖くてどうしようもなく・・・」

 

 

ジュハ:「そこまでなんですね・・・。じゃあ、ジェットコースターは、想像以上に怖かったんでしょうね・・・」

 

 

ジュオン:「生まれて初めて乗った・・・。あんな恐ろしい乗り物。何でみんな好きなんだ・・・!!!」

 

 

ジュハ:「何かすみませんでした。・・・ひょっとしたら、高所恐怖症なんかなって思ってたけど、

     私もストレス溜まってたし、発散と逆襲にって・・・。つい・・・」

 

 

 

ジュオン:「・・・」

 

 

 

ジュハ:「お詫びに今夜の夕食は、私が奢ります」

 

 

ジュオン:「そこまでしなくて良い・・・」

 

 

ジュハ:「そうは行きません! このままじゃ、何か悪いままだし・・・、奢らせてください!!!」

 

 

ジュオン:「お前・・・。本当、変な奴だな・・・」

 

 

ジュハ:「それに関しては否定しません。・・・何かとあると妄想したりもするし。

     例え、変でも世の中、渡り歩いていけてるんです。

     高所恐怖症であっても、大丈夫ですよ!」

 

 

ジュオン:「わかったような口、聞きやがって」

 

 

ジュハ:「あっ、・・・でも、まだジェットコースター残ってるけど、どうしましょう・・・!」

 

 

ジュオン:「どうせ、他のも乗りたくて仕方ないんだろ」

 

 

ジュハ:「ばれてましたか・・・」

 

 

ジュオン:「俺の事は、良いから、乗って来い。しっかり先方に感想伝えないといけないしな」

 

 

ジュハ:「そうですね。・・・あっ、でもその前に・・・。ちょっと待っててください!!!」

 

 

ジュオン:「・・・何処に行くにしても、騒がしい奴だな・・・」

 

 

 

 

 

ジュハ:「戻りました。・・・はいっ、これ」

 

 

ジュオン:「これは・・・」

 

 

ジュハ:「ソフトクリームです。・・・それ食べて、待っててください。急いで、他のも乗ってくるので。

     じゃあ、後ほど」

 

 

 

ジュオン:「あいつ・・・。優しい部分もあるんだな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

ジュハ:「只今、戻りました!」

 

 

ジュオン:「ちゃんと全部、乗って来たのか?」

 

 

ジュハ:「安心してください! ちゃんと忘れず乗ったので、いつでも感想も言えます」

 

 

ジュオン:「そうか! ・・・ありがとう」(小声)

 

 

ジュハ:「日も暮れてきましたし、そろそろ行きますか」

 

 

ジュオン:「どんな食事、奢ってくれるのか楽しみだ」

 

 

ジュハ:「そんな・・・。あんま期待しないでください。たいして高い物は奢れませんから・・・」

 

 

ジュオン:「バ~カ。そんなの言われなくても、わかってる。さっさと案内しろ」

 

 

ジュハ:「は~~い」

 

 

 

 

ジュオン:「此処がそうなのか?」

 

 

ジュハ:「はい」

 

 

ジュオン:「ソン・ジュハ・・・。お前のセンスは期待してなかったが、これは・・・」

 

 

ジュハ:「私の家にケチつけないでください」

 

 

ジュオン:「はぁ!? お前の家!?」

 

 

ジュハ:「はい。さっさと中、入ってください」

 

 

ジュオン:「・・・邪魔する」

 

 

ジュハ:「用意するんで、待っててください」

 

 

ジュオン:「あぁ・・・」

 

 

ジュオン(M):「一体、何が出てくるんだ・・・」

 

 

ジュハ:「お待たせしました」

 

 

ジュオン:「おい! 待て!」

 

 

ジュハ:「何ですか?」

 

 

ジュオン:「これ、どう見ても即席麺だよな!?」

 

 

ジュハ:「見ての通りですよ。あっ、煮えるまで、もう少し待ってくださいね」

 

 

ジュオン:「お前、いつもこんな物ばかり食べてるのか?」

 

 

ジュハ:「割と多いですよ。簡単だし早いし。えっ? 主任は食べたりしないのですか?」

 

 

ジュオン:「俺は、あまり食べない」

 

 

ジュハ:「そうなんですか。じゃあ、こんな食べ方とかも知らなさそうですし、今回は主任に権利譲ります。はいっ」

 

 

ジュオン:「鍋のふたがどうした?」

 

 

ジュハ:「それを皿替わりにして、食べるんです」

 

 

ジュオン:「はぁ!? お皿とか無いのか?」

 

 

ジュハ:「洗い物増えるんで、それで食べてください。それに、その食べ方、美味しいんですよ」

 

 

ジュオン:「本当にか?」

 

 

ジュハ:「本当ですってば。・・・さぁ、そろそろ頃合いですよ。じゃあ、主任、召し上がれ」

 

 

ジュオン:「あぁ・・・」

 

 

ジュハ:「どうですか・・・?」

 

 

ジュオン:「・・・悪くない」

 

 

ジュハ:「良かったです!!! さっ、どんどん食べて食べて」

 

 

 

 

ジュオン:「お前、美味しそうに食べるんだな」

 

 

ジュハ:「当たり前じゃないですか。・・・ふぅ~、馳走様でした」

 

 

ジュオン:「さて、俺は帰るとする」

 

 

ジュハ:「主任、心配しないでください」

 

 

ジュオン:「何がだ?」

 

 

ジュハ:「高所恐怖症の事は、会社の皆には内緒にしとくので」

 

 

ジュオン:「・・・」

 

 

ジュハ:「どうかしましたか?」

 

 

ジュオン:「何でもない・・・。そうしてくれ。じゃあな」

 

 

ジュハ:「本当、素直じゃないんだから。はぁ~、また明日からいつもの仕事か~」

 

 

 

 

 

ジュハ:「おはようございます!」

 

 

ジュオン:「ソン・ジュハ!」

 

 

ジュハ:「はい! 主任」

 

 

ジュオン:「ちょっと来い」

 

 

ジュハ(M):「出勤早々、呼び出し!? 今度は何よ・・・」

 

 

ジュオン:「此処なら、誰も居ないな・・・」

 

 

ジュハ:「はい」

 

 

ジュオン:「お前、飛行機乗れるか?」

 

 

ジュハ:「え? 普通に乗れますけど・・・」

 

 

ジュオン:「よし、合格だ。明日、済州島(チェジュトウ)行くから、準備しとけ。

                        今回は1泊する事になるから、着替えも用意しとけよ」

 

 

ジュハ:「どうして私が・・・?」

 

 

ジュオン:「俺の高所恐怖症、知ってるのはお前だけだ。・・・俺が、万が一気絶した時のフォロー頼む」

 

 

ジュハ:「イ主任、飛行機も駄目なんですか!?」

 

 

ジュオン:「駄目に決まってるだろう・・・!!! あんな空高く飛んで、もし何かあって、墜落したらどうするんだ・・・。

      あ~、悪夢だ。これまで、フェリーで行ってたのに、何で今回は飛行機なんだ・・・」

 

 

ジュハ:「そんなに嫌なら、フェリーで・・・」

 

 

ジュオン:「それが出来たら苦労しない!!! 今回は先方の計らいで、飛行機に決まったんだ・・・!!!」

 

 

ジュハ:「それは断れないですね・・・」

 

 

ジュオン:「そうだろう・・・!!! だから、やもなくお前を連れて行くんだ! じゃあ、明日、家に迎えに行く

      要件は以上だ。仕事に戻れ」

 

 

 

ジュハ:「わかりました」

 

 

 

ジュハ(M):「一難去ってまた一難。今度は何が待ち受けてるのよう・・・!!!」

 

 

 

ジュハ(N):「翌日。飛行機に間に合うように、家に着いた主任は、私を乗せ、空港へと車を走り出す。

                 走行中も、主任の顔は青ざめていた」

 

 

 

ジュハ(M):「この調子で、大丈夫なのかな・・・。はぁ~」

 

 

 

ジュハ(N):「空港に辿り着くと、主任と私は、手続きを済ませ、搭乗ゲートに向かった」

 

 

 

ジュオン:「欠航になれ。欠航になれ。欠航になれ。欠航になれ・・・」

 

 

 

ジュハ(N):「搭乗を待つ間も、主任はぶつくさと呪文のように繰り返していた」

 

 

 

ジュハ:「イ主任、落ち着いてください。そんな言葉、繰り返しても、飛行機は欠航になりませんよ!」

 

 

ジュオン:「そんな事わかってる!? ・・・ただじっと待ってたら、気がおかしくなりそうなんだ・・・!」

 

 

ジュハ:「間違えても、フライトした後、おもらしとかしないでくださいね」

 

 

ジュオン:「保障は出来ん」

 

 

ジュハ:「はぁ~・・・・。あっ、ほら、搭乗時間ですよ。行きましょう」

 

 

ジュオン:「あ~、死刑台に上る時って、囚人はこんな気分なんだろうな・・・。絶望って2文字が浮かんでる・・・」

 

 

ジュハ:「ほらっ、他のお客さんも、主任の青ざめた顔みて、心配してますよ・・・!」

 

 

ジュオン:「他人の事なんか知るか! 勝手に心配させとけ!」

 

 

ジュハ:「えっと、席は・・・。此処だ。・・・ほらっ、主任は窓際ですよ」

 

 

ジュオン:「窓際!? ・・・おいっ席変われ!!!」

 

 

ジュハ:「無理です。諦めて、座って下さい。ほらっ、シートベルトしめて」

 

 

ジュオン:「何で俺がこんな目に・・・」

 

 

ジュハ:「いつまで、嘆いてるんですか。・・・動き出したので、滑走路に向かいますよ」

 

 

ジュオン:「いちいち説明しなくても、わかってる!」

 

 

ジュハ:「主任、離陸する前は、かなり衝撃が来ますが、飛び立てば、それも落ち着くので、我慢です」

 

 

ジュオン:「・・・神様。どうか俺を守ってください・・・」

 

 

ジュハ:「いよいよですよ」

 

 

ジュオン:「・・・無理だ。・・・やっぱり俺はフェリーで行く。降ろしてくれ・・・!」

 

 

ジュハ:「イ・ジュオン! いい加減、覚悟決めなさい!!! 男でしょ!!!」

 

 

ジュオン:「この状況で、呼び捨てか!?」

 

 

ジュハ:「そんな事はどうでも良い!!! 私がついて、こうして手も握ってあげる! だから信用しろ! わかった!?」

 

 

ジュオン:「ぐっ・・・。わかった・・・!」

 

 

ジュハ:「よろしい」

 

 

ジュオン:「・・・」

 

 

ジュハ:「ほらっ。無事、離陸できたようですよ」

 

 

ジュオン:「そうだな。・・・何だ、飛行機なんて、たいした事ないんだな・・・!」

 

 

 

ジュハ(N):「主任はそんな事を言っていたが、握った手から、主任の震えは伝わってきて

       怖がってるのはすぐにわかった。でも、それを悟られないように、強がりながらも、

       必死に耐えてる姿をみて、なんか可愛く思えた。

       飛行機は順調に済州島に到着した」

 

 

 

 

ジュオン:「無事に到着したいたいだな」

 

 

ジュハ:「そうですね。ねっ、主任」

 

 

ジュオン:「何だ?」

 

 

ジュハ:「主任も、可愛い所、あるんですね!」

 

 

ジュオン:「どういう意味だ!?」

 

 

ジュハ:「内緒で~す!」

 

 

ジュハ(N):「その後、仕事は順調に進み商談も無事成功した。先方に説明してる時の主任は、

        さっきまで、飛行機を怖がってた姿とは、まるで別人で、

        むしろ、ちょっとカッコイイとさえ思ってしまった」

 

 

 

ジュハ:「商談、お疲れ様です」

 

 

ジュオン:「あぁ。お前も勉強になっただろう」

 

 

ジュハ:「はい。・・・あっ、主任、この近くに観光スポットあるんですが、折角だし、行きませんか?」

 

 

ジュオン:「仕事で来たんだぞ」

 

 

ジュハ:「ちょっとくらい良いじゃないですか」

 

 

ジュオン:「・・・そんな目で見るな。・・・わかった。ちょっとだけだぞ」

 

 

ジュハ:「やった!!!」

 

 

 

 

 

ジュハ:「着きました。此処です」

 

 

ジュオン:「ゲッ!? これって・・・」

 

 

ジュハ:「見ての通り、灯台です。さっ、上りましょう!」

 

 

ジュオン:「俺への嫌がらせか!?」

 

 

ジュハ:「違います!!! 此処からの景色って凄い綺麗らしいですよ!!!

                    そんな景色見れたら、もしかしたら、主任の高所恐怖症も治るかもって思ったんです・・・」

 

 

ジュオン:「俺の為にか・・・?」

 

 

ジュハ:「はい。・・・駄目ですか・・・?」

 

 

ジュオン:「・・・そこまで言うなら、上ってやる」

 

 

ジュハ:「主任!!!!」

 

 

ジュオン:「だああああ!!!! 抱きつくな!!!」

 

 

ジュハ:「何か嬉しくてつい!!! さっ、行きましょう」

 

 

ジュオン:「あぁ」

 

 

 

ジュハ:「ほらっ、主任、頑張って」

 

 

ジュオン:「焦らすな!」

 

 

 

 

ジュハ:「うわあああああああ!!!! 綺麗!!!! ねっ!!! 主任」

 

 

ジュオン:「こいつは・・・見事だ!!!!」

 

 

ジュハ:「ねっ? 来て良かったでしょ!!!」

 

 

ジュオン:「あぁ!!!」

 

 

ジュハ:「結構高いですけど、主任、平気そうですね」

 

 

ジュオン:「お前のおかげかもな。・・・ありがとうな。俺の為に・・・」

 

 

ジュハ:「礼なんて良いですよ」

 

 

ジュオン:「礼か・・・。・・・俺から、出来る事って言ったらこんな事くらいかもな」

 

 

ジュハ:「それって、ICレコーダー。・・・主任ったら、済州島に来てまで、私の弱みを・・・」

 

 

ジュオン:「そうじゃない。これは、こうするんだ。・・・えいっ!!!!!」

 

 

ジュハ:「あああああああああああ!!!! 何してるんですか!!!!」

 

 

ジュオン:「良いんだ」

 

 

ジュハ:「でも、それじゃ私が悪口言ってた証拠が・・・」

 

 

ジュオン:「あんなもの、もう要らない。・・・お前の事、俺は誤解してたようだ。いつも何考えてるか

      わからない感じでぼ~っとしてたり、真面目に仕事してないように、俺には見えてた・・・。

      でも、それはただの決めつけだった。・・・本当のお前は、気配りも出来て、優しい、良い奴だってな」

 

 

 

ジュハ:「イ主任・・・」

 

 

ジュオン:「許してくれるか?」

 

 

ジュハ:「私も悪い部分あったし、今回は許してあげます。・・・ねっ、イ主任・・・」

 

 

ジュオン:「何だ?」

 

 

ジュハ:「私達って、案外良いパートナーになれそうな気がしませんか?」

 

 

ジュオン:「パートナーだ!?」

 

 

ジュハ:「ほらっ、イ主任って、よくよく見たらイケメンなのと、思わぬ弱点もあって、

     それがまた普段と違って、ギャップ萌えっていうか・・・惚れたっていうか・・・。

     その眼鏡も、いっその事、コンタクトにした方が、もっとカッコよく・・・」

 

 

 

ジュオン:「ふっ・・・。・・・さぁ、下らない事いってないで、ホテルに向かうぞ」

 

 

ジュハ:「あっ、今笑った」

 

 

ジュオン:「笑ってない。気のせいだ!」

 

 

ジュハ:「絶対笑ってましたって!!! ちぇっ、満更でもない癖に!!!」

 

 

ジュオン:「ソン・ジュハ!!!」

 

 

ジュハ:「はいっ!!!! はっ!!! いつもの条件反射で返事しちゃった・・・!!!」

 

 

ジュオン:「やっぱりお前、面白いな。まっ、なんだ。これからも末永く、宜しくな!」

 

 

ジュハ:「えっ? それってどう言う意味でですか!?」

 

 

ジュオン:「さぁな!!!」

 

 

ジュハ:「教えてくださいよ!!! イ主任!!!!!」

 

 

ジュオン:「教えるわけないだろ!!!」

 

 

ジュハ:「待ってくださいよ!!!! 主任!!!!」

 

 

ジュハ(N):「2人がその後、どうなったかは・・・、またいつか。話せる日が来るかも・・・」

 

 

 

 

終わり