作者：ヒラマ　コウ

 

 

比率　【０：１】 

 

上演時間　【５分】

 

 

 

 

 

覚えてますか？　あの日の事を・・・

 

 

初めは、何もかもがわからない事だらけで、

 

 

あなたに迷惑ばかりかけましたね

 

 

でも、そんな私を、あなたは、優しく微笑んで、

 

 

「良いんだよ」

 

 

と言ってくれて、とても嬉しかった・・・

 

 

私は、力の加減がわからず、あなたを傷つけた日もありましたね

 

 

そんな時でも、あなたは、怒らず、また

 

 

「良いんだよ」

 

 

と言いましたね

 

 

何故？　あなたは、そんなに優しいのですか？

 

 

理不尽な理由で、会社をクビになった時も、

 

 

「仕方ないね」

 

 

と、笑顔で答えましたよね

 

 

私は、あの時程、あなたの力になれたらと思った事はなかった・・・

 

 

 

あなたと出会う前の私は、

 

 

ずっと一人ぼっちで、薄暗い中から、

 

 

誰か助けてと叫んでました

 

 

でも、私の声は誰にも届かず、

 

 

そんな日々を繰り返す内に、

 

 

私は、誰か助けてと、叫ぶ気力もなくなり、

 

 

自分に死が近づいてる事を、感じました

 

 

けれども、どうする事も出来ず、ただ横たわっていると、

 

 

近くから、声が聞こえました

 

 

私は、最後の力を振り絞り、

 

 

「私は、ここにいるよ！」

 

 

と何度も叫びました

 

 

しかし、声は段々と遠のき、

 

 

私は、もう駄目だと思い、目を瞑りました

 

 

 

暫くして、何か温かいぬくもりを感じ、

 

 

目を開けると、

 

 

そこには、あなたが居ました

 

 

あなたは、必死に何度もこう言いましたね

 

 

「もう大丈夫だよ。頑張ったね」

 

と

 

そんなあなたに、私も

 

 

「助けてくれてありがとう」

 

 

と

 

伝えたら、

 

 

それが伝わったのか、あなたは、優しく微笑んだのが、嬉しかった・・・

 

 

 

あれから、数年が経ち、

 

 

お互い、年をとりましたね

 

 

私が、初めての妊娠で戸惑ってた時も、

 

 

あなたは、優しく

 

 

「大丈夫。何も心配いらないよ」

 

 

と、声をかけてくれたり、

 

 

私が子育てが上手くいかずに、イライラしてた時も、

 

 

「怒らなくて良いんだよ」

 

 

と

 

 

あなたは、私の前で、いつも優しく微笑んでくれましたね

 

 

 

子供達が、大人になって、

 

 

私の側から、離れ、

 

 

寂しさを感じてる時も、

 

 

「今まで、よく頑張ったね。偉いよ」

 

 

と、言ってくれて、

 

 

私は、どれだけ、助けられたか、あなたは気づいてますか？

 

 

 

沢山の優しい言葉と愛情をもらって、

 

 

私は、

 

 

とても幸せ者です

 

 

 

あなたと一緒にずっと居られたら良いのだけど、

 

 

わたしの人生は、もう終わりが近づいてるみたいです

 

 

耳も衰え、

 

 

あなたの優しい声も、聴こえづらくなったけど、

 

 

こうして、昔と変わらず、

 

 

私の側に居て、

 

 

頭を撫で、優しく微笑むあなたに、

 

 

私も、

 

 

「ありがとう・・・」

 

 

と伝えると、

 

 

あなたは、こういいましたね

 

 

「今までありがとう・・・。あなたに何度も、助けられ、支えられ、励まされた事は、忘れないよ・・・」

 

 

その言葉を聞いて、

 

 

私は、嬉しかった

 

 

あなたの力になれたらと、ずっと思ってたから、

 

 

ちゃんとあなたの、力になれてたのを知って、

 

 

嬉しかった・・・

 

 

私は、最後の力を振り絞り、

 

 

「私も、忘れないよ。ありがとう・・・」

 

 

と伝えると、

 

 

あなたは再び優しく微笑んで、

 

 

「ありがとう・・・。おやすみ・・・」

 

 

と、言いましたね

 

 

その言葉を聞いて、

 

 

安心した私は、

 

 

そっと、ゆっくり目を閉じました

 

 

 

あなたとまたいつの日か・・・

 

出会える日を、

 

夢みながら・・・

 

 

 

 

 

 

終わり