Over and over

 

 

 

 

 

作者:ヒラマ コウ

 

 

 

 

 

登場人物

 

 

 

 

 

クロエ・アニストン:地球によく似た星の開発を、複数の無人ロボットと一緒に1人で行っている。

 

 

 

クロエA:クロエの前に現れたクロエそっくりの人物。

 

 

 

 

 

 

 

比率:【0:2】

 

 

 

上演時間:【40分】

 

 

 

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CAST 

 

 

 

クロエ:

 

 

 

クロエA:

 

 

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クロエ(M):「西暦2500年、地球は何百年と続いてきた環境破壊により、人々の住めない星になりつつあった。

        私は、会社の命令により、この地球に似た星を第2の地球にする為に、複数の無人ロボットと日々作業をしている。

        ロボット達以外は誰もいない土地。作業を始めて1年が経つが、この孤独な環境は私の精神を確実に蝕んでいる」

 

 

 

 

 

 

 

クロエ:「もう! 今日も地球への通信は通じない! 一体どうなってるのよ! 半年前は、ちゃんと通じたのに・・・。

     何かがおかしい・・・。お腹が空いたし・・・。何か食べよう・・・」

 

 

 

 

 

クロエ:「食料もそろそろ底をつく・・・。いつもなら、もうそろそろ、支援物資が専用ロケットによって届くはず。

     なのに、予定日を2週間も過ぎてる・・・。このまま私に飢え死にしろって言うのかしら!」

 

 

 

 

 

クロエ:「(溜息)今日の夕食はこれね・・・。固形のバーが1本にミネラルウォーター、荒んだ食事よね・・・。

     お腹いっぱいには程遠いけど、ぼやいても明日の作業は、なくなる訳じゃないし。そろそろ寝よう・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(住居の寝室で寝ているクロエだが不審な足音で目覚める)

 

 

 

 

 

 

クロエ:「誰!!!!」(枕元の銃を相手に構える)

 

 

 

クロエA:「待って! 撃たないで!」

 

 

 

クロエ:「貴方は誰!!! どうやって此処に侵入したの!?」

 

 

 

クロエA:「まずはその銃を降ろして! 話すと長くなるの・・・。真っ暗だし、まずは明かりをつけて」

 

 

 

クロエ:「わかった。だけど、変な事をしたら、容赦なく撃つわよ」

 

 

 

クロエA:「えぇ、それで良いわ」

 

 

 

 

 

(明かりを付けるとそこにはクロエに瓜二つの女が立っていた)

 

 

 

 

 

クロエ:「貴方は・・・誰・・・。私と同じ顔・・・」

 

 

 

クロエA:「驚くのも無理もないわね。私自身、今のこの状況に驚いてる。貴方の名前は?」

 

 

 

クロエ:「私は・・・クロエ。クロエ・アニストン・・・」

 

 

 

クロエA:「やはり・・・。私もクロエよ」

 

 

 

クロエ:「同じ顔に・・・同じ名前・・・。貴方は一体・・・?」

 

 

 

クロエA:「場所を変えない? まずは珈琲でも飲みましょう」

 

 

 

クロエ:「えぇ・・・。食堂はこっちよ・・・」

 

 

 

 

 

(食堂に移動する2人)

 

 

 

 

 

クロエA:「まぁまぁの味ね・・・。飲めないよりはマシだけど、地球のお店の煎りたての珈琲が懐かしい・・・。

      何よ、あまりジロジロ見ないで」

 

 

 

クロエ:「見れば見る程、私にそっくり・・・」

 

 

 

クロエA:「足にある傷も確認する? それか、腕にあるタトゥーでも良いわよ」(両方、クロエに見せる)

 

 

 

クロエ:「両方とも同じ・・・。一体どういう事・・・」

 

 

 

クロエA:「私は貴方のオリジナル。つまり貴方は、私のクローンって事よ」

 

 

 

クロエ:「まさか、そんな事・・・」

 

 

 

 

 

クロエA:「驚くのも無理は無いわね。私もまさかクローンが送られてきて、

      私のいない間に、此処で活動を始めてるとは思わなかった」

 

 

 

 

 

クロエ:「私は、貴方のクローン・・・」

 

 

 

クロエA:「物分かりが早くて助かる。まぁ、いきなり此処から消えてとも言えないし、とりあえずは仲良くやりましょう」

 

 

 

クロエ:「待って! 私が貴方のクローンだと言う証拠はあるの?」

 

 

 

クロエA:「証拠は何も無いわ。だけど私には記憶がある。此処で生活してきた2年の記憶がね」

 

 

 

クロエ:「2年・・・。私は此処に来てまだ1年しか・・・」

 

 

 

クロエA:「ほら、その発言から考えても、貴方が私のクローンなのは確定した」

 

 

 

クロエ:「何で、今まで姿を現さなかったの・・・?」

 

 

 

クロエA:「それは・・・。外で作業中に大怪我をして、医療室に運ばれたまでは覚えてるのだけど、そこから先は覚えて無い。

      気付いたら、医療ポッドの中で・・・。外に出たら、さっきの状態ってわけ」

 

 

 

クロエ:「医療室に医療ポッドは1つのはずよ。私も1か月前に大怪我をして運ばれたけど、貴方は居なかった・・・」

 

 

 

クロエA:「貴方の知らない部屋があるかもって事ね。私はそこで目覚めた」

 

 

 

クロエ:「貴方の言ってる事が正しければ、そういう事になるわね」

 

 

 

クロエA:「ちょっと、私の事を疑うの? 私を疑うと言う事は、自分自身を疑う事にもなるのよ?」

 

 

 

クロエ:「私は、この目で確かめるまでは何も信じない。さぁ、その医療ポッドのある部屋に案内して」

 

 

 

クロエA:「本当、疑い深い・・・。こっちよ、付いてきて」

 

 

 

 

 

(クロエAに案内され辿り着いた部屋。だがそこには医療ポッドらしき物は無かった)

 

 

 

 

 

クロエA:「おかしい! 確かにこの部屋に、医療ポッドがあったはずよ!」

 

 

 

クロエ:「何も無いじゃない・・・」

 

 

 

クロエA:「嘘じゃない! 私はこの部屋で目覚めたの!」

 

 

 

クロエ:「じゃあ、その立派な医療ポッドは何処に消えたって言うの!」

 

 

 

クロエA:「それは・・・」

 

 

 

クロエ:「どうしたの? 答えて! 見た通りこの部屋には何も無い。ただの空間!

     何処を見ても動かした形跡も無い。つまりこういう事! 貴方の記憶は信用出来ない!」

 

 

 

クロエA:「そんなはずない。絶対にこの部屋にあるはず。もう一度周りを調べて・・・」

 

 

 

クロエ:「お好きにどうぞ! 正直、付き合ってらんない! 私は戻って寝るわ。じゃあね」

 

 

 

 

間 

 

 

 

 

 

クロエA:「私の見た医療ポッドは夢だと言うの・・・。いや、そんなわけない!

      あの目覚める前の感覚は、今もはっきりと覚えている。何処かにあるはず・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(一晩中、部屋を探し回ったが医療ポッドは見つからなかった。そして翌朝、食堂)

 

 

 

 

 

 

 

クロエA:「おかしい・・・。なんで見つからないの・・・。私の記憶には、はっきりとあるのに・・・」

 

 

 

クロエ:「酷い顔ね・・・。珈琲でも飲む?」

 

 

 

クロエA:「他の部屋と見間違えた可能性もあるっていうの・・・」

 

 

 

クロエ:「人が親切に聞いてるのに・・・。その様子じゃ、何も見つからなかったようね! 徹夜までしてご苦労様」

 

 

 

クロエA:「えぇ・・・何も見つからなかった!」(食堂に置いてあガラスのコップや食器を乱暴に床へと落とす)

 

 

 

クロエA:「どう! これで満足! どうせ、良い気味だとか思ってるんでしょう!」

 

 

 

クロエ:「ちょっと! 何するの! 私のお気に入りの食器類よ!」

 

 

 

クロエA:「知らない! どうせ、それも私のかも知れないんでしょ! 自分自身の物をどうしようと、勝手でしょう!」

 

 

 

クロエ:「だからと言って、壊す事ないでしょう! どれも大切だったのよ!」

 

 

 

クロエA:「そんな物が大切・・・? この立派な食器類も、結局は支援物資じゃない! 変わりはいくらでも頼めば手に入るわ!」

 

 

 

クロエ:「支援物資の届く予定日から、2週間も経っているの・・・」

 

 

 

クロエA:「2週間ですって・・・? 地球との連絡はどうなってるの? まさか定期連絡をしてないんじゃ・・・」

 

 

 

クロエ:「地球との連絡は、半年前から途絶えたわ。初めは通信機の故障や、太陽フレアによる電波障害かと思った。

     だけど、何度調べても原因は不明で、私は直すのを諦めた」

 

 

 

クロエA:「なんで、そこで諦めるの! じゃあ、何? 貴方は今日までの半年の間、直すのも諦めて、

      のうのうと、生きてきたって言うの?

 

 

 

クロエ:「何よその言い方! じゃあ、他にどんな方法があったっていうの! それとも、貴方になら、直せたとでも言うの?」

 

 

 

クロエA:「少なくとも貴方と違って、努力はしたと思う」

 

 

 

クロエ:「そう、じゃあ、そこまで言うんだったら、証明して! 工具はそっちの倉庫にある。

     どれでも好きな物を持って行って!」

 

 

 

クロエA:「ねぇ、何処へ行くの?」

 

 

 

クロエ:「貴方の顔を見て、話てるだけでムカつくから、私は外で作業してくるだけ! せいぜいその立派な頭脳で通信機直しなさい!」

 

 

 

クロエA:「手伝う気は無いってわけね・・・。流石は私ね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(食堂を後にするクロエとクロエA クロエは外に作業へ、クロエAは通信機のある通信室に移動する)

 

 

 

 

 

 

 

クロエ:「何なの! あいつ! 私自身なんかもしれないけど、私はあんな怒りっぽくない!

     ・・・なんて堅い岩なの!

     ねぇ、そこの作業中のロボット! こっちに来て手伝って!

     あぁ違う違う、貴方じゃない・・・。そっちの貴方よ・・・!

     早くこっちに来て手伝って! まったく、朝から災難続きよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエA:「通信施設に入るのも久しぶり・・・。私は、あの大事故から1年近く眠ってたのね・・・。

      そう考えると、此処に来て3年か・・・。考えに耽(ふけ)てても何も始まらない。作業を始めなきゃ」

 

 

 

 

 

(通信機の下に潜り込み、中の回路を確認する)

 

      

 

 

 

クロエA:「何よ、やけに狭いわね・・・。これは長時間だと手がつりそう・・・。

      よしっ、こっちの回路は異常なし、何処も焼け焦げた形跡も無い・・・。

      続いて、そっちの回路は・・・ん? これも異常なし・・・。

      可笑しい・・・。何処も壊れてる形跡が無いけど、どういう事・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(それぞれ作業を終えて、コミュニティルームへ向かうクロエとクロエA)

 

 

 

 

 

 

 

クロエ:「ねぇ、随分時間がかかったじゃない? 流石、私ね!」

 

 

 

クロエA:「今は皮肉を聞きたい気分じゃない・・・」

 

 

 

クロエ:「それで、通信機は直ったの? 頭脳明晰なもう一人の私!」

 

 

 

クロエA:「・・・」

 

 

 

クロエ:「ん? どうしたの? だんまり? さっさと質問に答えなさい!」

 

 

 

クロエA:「ごめんなさい・・・。今朝の食堂での事は、私が悪かったわ・・・。一睡もしてなくて、頭がどうかしてた。

      大人げない態度をとって、ごめんなさい・・・」

 

 

 

クロエ:「・・・いきなり、そう素直になられても、対応に困るじゃない。・・・私も悪かった。

     立て続けに予想外のことが起きて、

     イライラしてた。其の上、私と瓜二つの貴方が現れて、お前はクローンだと言われた日には・・・

     怒鳴りたくもなるわ・・・」

 

 

 

 

 

クロエA:「それもそうね・・・。今はどっちが本物で、どっちがクローンかなんて、言い争いしてる場合じゃない。

      救援物資も届かない今・・・生き残る事を考えないと行けないわね・・・。残っている食料は、どのくらいあるの?」

 

 

 

クロエ:「貯蔵庫に缶詰がいくつか・・・。それに飲料水、この固形バーも含めるのなら、1ヵ月持つか、持たないかかしら。

     ただし、あくまで1人だった時の計算だから、実際はもっと早くに、なくなるだろうけど」

 

 

 

クロエA:「私が増えたから?」

 

 

 

クロエ:「その通りよ。貴方の分も含めて計算し直すと・・・ざっと2週間か、下手したら1週間かもしれない・・・」

 

 

 

クロエA:「それまでに支援物資が到着しないと、私達は死ぬのね・・・」

 

 

 

クロエ:「すぐには死なないとは思うけど、動く気力すらなくなり、やがて死ぬのは確実よ」

 

 

 

クロエA:「少しでも日にちを伸ばすためにも、残りの食料と飲料水は平等に分け合いましょう。良い?」

 

 

 

クロエ:「それしか方法が無いのでしょ。えぇ、それで良い。じゃあ、早速今夜の夕食を分けるわよ。

     固形バー1本に、飲料水1本、それに今夜は豪華よ。豆のスープの缶詰」

 

 

 

クロエA:「これが豪華だなんて・・・。早く地球に戻って、ステーキとカリカリベーコンに

      フライドポテトとか、お腹一杯食べたい」

 

 

 

クロエ:「私はフライドチキンを食べたすぐ後に、冷たいビールで喉を潤したい」

 

 

 

クロエA:「ねぇ私達、地球に戻れるの? 会社は私達を見たらどう思う? クローンが存在している事に

      私達が気付いたのを知ったら、最悪の場合、処分されたりしない?」

 

 

 

クロエ:「可能性はあるわね。自分達のクローンがいることは、此処に来る前に一度も伝えられなかった事から考えても、

     会社にとっては機密情報扱いでしょうね」

 

 

 

クロエA:「だとしたらどうするの? 戻る時には、専用の宇宙船がやってくる。中にはきっと会社の連中も乗ってるはず。

      バレたら、その場で抹殺されるかもしれない」

 

 

 

クロエ:「あくまで可能性に過ぎないでしょ。今は通信機を直し、会社に連絡するのが最優先よ。

     わかったら、体力温存のためにも寝なきゃ。貴方の部屋をこっちに用意したわ」

 

 

 

クロエA:「わかったわ。私は明日もう一度、通信室で通信機を直してみる」

 

 

 

クロエ:「私も今度は手伝う。2人で確認したら、見つけれなかった原因も見つかる可能性もあるし。

     朝食食べたら作業開始よ。じゃあ、また明日ね」

 

 

 

クロエA:「おやすみ、クロエ。なんか自分自身に言うなんて不思議な感覚よ」

 

 

 

クロエ:「本当そうね。おやすみ、クロエ」

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエA:「ここが私の部屋。前まで使ってた私の部屋は、今はあいつが使ってる。複雑な気分よ・・・」

 

 

 

クロエA(M):「会社の連中は、私達をちゃんと見分けられるの・・・? もし、私じゃなく、あいつが選ばれたら、

         その時、私はどうなるの? 殺されるのかしら・・・? 嫌、こんなところで死にたくない・・・!

         助かる道は、私が本物だと言う事をどう伝えるか。それには・・・」

 

 

 

 

 

 

 

クロエ(M):「私はクローン・・・。あいつには、私より前の記憶がある。それだけで、本物と決めつけるには乱暴だけど、

        今は他に方法はない。もし、このまま本物と実証する事が出来ないまま、あいつの言う通り、

        会社の連中に殺されそうになったら、どう切り抜ければ良いの・・・。

        あいつなら、言葉巧みに理由を言って、会社の連中を説得するでしょうね。

        だけど・・・2人共、生き残させるなんて可能性は、どう考えても低い・・・。

        いざという時は、覚悟を決めるしか無いわね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(2日目の昼、食堂に集まるクロエとクロエA)

 

 

 

 

 

クロエA:「また固形バー・・・。他に食べる物は無いの? パンとかフルーツとか?」

 

 

 

クロエ:「缶詰は夕飯の時だけよ。そんな物があれば、とっくの昔に出してるに決まってるでしょ。

     それに遅刻よ! 今は昼過ぎ。朝に集合って言ったでしょ・・・」

 

 

 

クロエA:「仕方ないじゃない。その前は徹夜だったんだから。少しは多めにみて。しかし、同じものばかりだと、

      やっぱり、飽きるわね・・・」

 

 

 

クロエ:「地球に戻るまでの我慢よ。辛抱して。食べたら、早速作業に取り掛かるわよ。私達には、愚図愚図している時間は無いんだから」

 

 

 

クロエA:「わかった」

 

 

 

 

 

 

 

(食事を終えて通信室に向かうクロエとクロエA)

 

 

 

 

 

クロエ:「そこのスパナ取って。それと、そこの電動ドリルも」

 

 

 

クロエA:「どれ? これかしら?」

 

 

 

クロエ:「それじゃない。その横に、置いてあるスパナ」

 

 

 

クロエA:「えっと・・・あった! これね。ほらっ。・・・それにしても、分解までする事は、無いんじゃないの?」

 

 

 

クロエ:「何処が原因で、動かないのかわからないんだから。1つずつ分解して、確認するしか無いでしょ」

 

 

 

クロエA:「それもそうだけど、それだとどれくらいで、確認作業は終わるの?」

 

 

 

クロエ:「順調に作業を続けて・・・2日ね」

 

 

 

クロエA:「・・・それまでに、原因が見つかる事を私は祈る・・・。ねぇ、昨日の話の続きなんだけど、

      本当に会社の連中は、私達の存在を生かすと思う?」

 

 

 

クロエ:「正直、わからない・・・。私達の存在は、会社にとって、どのくらいの地位にあるかにもよるだろうけど、

     パーセンテージで表すと、70%くらいでしょうね」

 

 

 

クロエA:「70%・・・。それは会社の連中が、私達を生かしておかないって確率?」

 

 

 

クロエ:「えぇ、その通りよ」

 

 

 

クロエA:「残りの30%の確率は、ちゃんと考えているの?」

 

 

 

クロエ:「・・・」

 

 

 

クロエA:「何を今考えてるの? 当てましょうか? 残りの30%の生存確率は、まだ考えていない。どう?」

 

 

 

クロエ:「そういう貴方は、何か考えているの? この逃げ場のない状況で、どう2人で無事に脱出するの?」

 

 

 

クロエA:「会社の迎えの宇宙船を乗っ取る。その為には、私達も、ちょいとしんどい肉体労働が待ってるけど」

 

 

 

クロエ:「肉体労働? 会社の連中を腕力でなんとかするって言うの? その作戦は、無謀過ぎるんじゃない?」

 

 

 

クロエA:「それしか考えつく方法は無いわ。人間、生きる為なら何でも出来る物よ」

 

 

 

クロエ:「人を殺すことに、何も抵抗は無いの?」

 

 

 

クロエA:「クローンを密かに作り出してる会社の連中よ? 非人道的行為だし、同情する価値も無い。

      そんな連中、殺して当たり前なのよ」

 

 

 

クロエ:「私も、貴方のはずなんだけど、そういう考えを持つところ、怖さを感じる」

 

 

 

クロエA:「そこが本物と、クローンの違いなのかもしれないわね」

 

 

 

クロエ:「笑えないジョークね。どう? 何か見つかった?」

 

 

 

クロエA:「駄目。何処も異常なし。綺麗なものよ。そっちはどう?」

 

 

 

クロエ:「こっちも異常なし。何で通信機が使えないのか、見当もつかない」

 

 

 

クロエA:「どうする、作業続ける?」

 

 

 

クロエ:「えぇ、後3時間程、作業して見つからなかったら、今日の作業は終わり。また明日続きをやりましょう」

 

 

 

クロエA:「もし、原因が見つかったら?」

 

 

 

クロエ:「そりゃあ、原因を直し元に組み立てる」

 

 

 

クロエA:「本当に? 結構バラしたけど、これをまた組み立てるの?」

 

 

 

クロエ:「えぇ、その時は残業確定ね。ボヤいてる暇あるなら、手を動かして」

 

 

 

クロエA:「(溜息)全く、原因はどこにあるって言うの」

 

 

 

 

 

(3時間確認作業を続けたが、結局原因は見つからなかった)

 

 

 

 

 

クロエ:「見つからないわね・・・。まだ、確認してない部分はあるし、また明日確認ね」

 

 

 

クロエA:「ねぇ、今何時? お腹が空いた・・・」

 

 

 

クロエ:「今確認する。もう18時ね。一旦解散して、1時間後、コミュニティルームに集合よ」

 

 

 

クロエA:「わかった。・・・シャワー浴びて、さっぱりしてくる」

 

 

 

クロエ:「じゃあ1時間後、今度は遅刻しないでよ」

 

 

 

クロエA:「えぇ、わかってる」

 

 

 

 

 

(確認作業を終え、一旦部屋に戻るクロエとクロエA、そして1時間後、先にコミュニティールームに来るクロエ)

 

 

 

 

 

クロエ(M):「あいつは、まだ来てないのね。それにしても、通信機はなんで動かないの。残された日にちも少ないのに・・・。

        とにかく時間が無い。明日こそ、原因を見つけないと。・・・駄目、何か心を落ち着かせなきゃ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(コミュニティルームに置いてあるCDで曲をかけ、ソファーに腰を下ろしそっと目を瞑るクロエ、

 そこにやってくるクロエA、同じように腰をソファーに下ろす)

 

 

 

 

 

【BGM:バッハ、G線上のアリア】

 

 

 

 

 

クロエ(M):「心が落ち着く。嫌な事を忘れるには、これが一番。地球の皆は、元気でいるのかしら・・・」

 

 

 

 

 

クロエA:「バッハのG線上のアリア・・・。名曲よね。心が落ち着く・・・。やっぱり、貴方も私なのね」

 

 

 

クロエ:「えぇ、そうよ。貴方と同じ血が流れてる」

 

 

 

クロエA:「この曲を聴くと思い出さない? 地球での出来事、仲間を・・・。本当、懐かしいわよね」 

 

 

 

クロエ:「そうね・・・。みんな、どうしてるんだろう。心配とかしてないと良いのだけど・・・」

 

 

 

クロエA:「そうね・・・。通信機も壊れて心配してるかもしれないわね。地球との時差は10年・・・。

      戻る頃には、10歳も、皆年上。そう考えるとなんだが、寂しいわよね」

 

 

 

クロエ:「えぇ。だけどこの仕事は、望んで引き受けた。なのに、思わぬトラブルで達成できないのが悔しい・・・」

 

 

 

クロエA:「今回のこの状況は、予想は出来なかった。そんなに悲観しなくても良いわよ」

 

 

 

クロエ:「私達を見て、皆はどう思うだろう・・・」

 

 

 

クロエA:「そりゃあ、最初は驚くでしょうね。だけど、きちんと話せばわかってくれる。上手く行けば私達、有名人になれるかも!」

 

 

 

クロエ:「能天気ね・・・。だけど・・・それも悪く無いわね」

 

 

 

クロエA:「・・・会社の連中とは戻ってからも、何かと喧嘩になるかもしれないけど、私は貴方と一緒なら、上手く行く気がする」

 

 

 

クロエ:「どうして?」

 

 

 

クロエA:「ちゃんと考えて相棒。私達は世間で言う、双子より、考えてる事がわかるのよ。

      私達2人がいれば、どんな窮地に陥ってても、乗り越えられる」

 

 

 

クロエ:「その為には、お互い信じる事から始めないとね。相棒」

 

 

 

クロエA:「えぇ、その通りよ。相棒。・・・悪いけど、なんだか眠くなってきた。少し寝かせて。起きたら一緒に、夕食食べましょう・・・」

 

 

 

クロエ:「そうね。私もなんだか、凄く眠い・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(心地よい音楽のせいか、眠ってしまうクロエとクロエA、そして2時間が経過して、空腹で先に起きるクロエA、

 だけどそこには信じれない光景が待っていた)

 

 

 

 

 

クロエA(M):「ん・・・あれから何時間寝たのかしら・・・。お腹が空いて死にそう・・・。早くあいつを起こして・・・。

         えっ・・・これは何の冗談なの・・・。まさか、寝てる間に・・・。

         嘘でしょ・・・! さっき約束して、こんな事するの・・・?

         信じようって思ってたのは、私だけって事・・・」

 

 

 

 

 

 

 

クロエA:「ねぇ! 早く起きて!」

 

 

 

クロエ:「ん・・・私も寝てたのね・・・。今、何時・・・?」

 

 

 

クロエA:「そんな事はどうでも良い! これは一体、どういう事!?」

 

 

 

クロエ:「何を一体、叫んでるの・・・?」

 

 

 

クロエA:「ちょっと! 恍ける気!? そこに散乱してる物は、何だって聞いてるの!?」

 

 

 

クロエ:「まったく騒がしいわね。散乱してる物って・・・。えっ? これは何の冗談・・・」

 

 

 

クロエA:「冗談!? よくもそこまで、白を切れるものね! これは貴方の仕業なんでしょう!? 

      お互いを信じる事から始めないと・・・。よくもまぁ、さっきは言えたものね!」

 

 

 

クロエ:「待って!? 私はやってない! 寝てる間に、何が起きたって言うの・・・」

 

 

 

クロエA:「この散乱してる固形バーが、動かぬ証拠でしょう!? 一気に3本も食べるなんて、どんな神経してるのよ貴方は!」

 

 

 

クロエ:「少しは冷静になって考えてみて。私は貴方と同じで、さっきまで寝てた。こんな事が、出来るわけないでしょう!

     他の誰かが、私達を嵌めようとしてるのかも知れない・・・」

 

 

 

クロエA:「他の誰かって誰よ!? ねぇ! いるなら出てきなさい! ねっ、私達以外は、誰もいない!

      それに、先に起きれば出来るわよ。あれから2時間も経ってるんだから!

      貴方の事、信じようって思ってたのに! その矢先に、こんな裏切りが待ってるなんて!」

 

 

 

クロエ:「そう! じゃあ、言わせてもらうけど。貴方こそ、食べたんじゃないの!?

     作業終わる時、お腹が空いたって騒いでたじゃない! 我慢できずに、食べたんじゃ無いの?

     私が寝てるのを良い事に!」

 

 

 

クロエA:「私が食べるわけないでしょう! 貴方、本当に頭どうかしてるんじゃない!? 流石、私のクローンね!

      死んで、もう一度、会社の連中に、作り直してもらったらどう?

      今度は、本物の私みたいに、頭が良くなるように!」

 

 

 

 

 

クロエ:「貴方こそ、死んでクローンになったらどう? そうしたら、そのキレ易い性格も、少しは真面になるでしょうね!

     ねぇ・・・喧嘩してる場合じゃないのよ・・・。少しは落ち着いて考えま・・・」

 

 

 

(クロエの言葉を聞かずに、強くビンタするクロエA)

 

 

 

 

クロエA:「はぁ、はぁ、はぁ・・・。あぁ、清清した! そうよね・・・。

      結局、可愛いのは自分だけって事よね!

      貴方がその気なら、こっちにも考えがある! 精々、楽しみにしてるのね!」

 

 

 

 

 

クロエ:「痛っ・・・。・・・ちょっと! 待って! まだ話は、終わって無いでしょう!」

 

 

 

クロエA:「もう貴方と話す事は何もない! 覚悟しておくのね! 最初に始めたのは、貴方なんだから!

      この戦争、受けて立ってやる。じゃあね!」

 

 

 

 

 

 

 

(コミュニティールームを後にするクロエA、1人残されたクロエ、部屋にはリピートされてるG線上のアリアが流れている)

 

 

 

 

 

クロエ(M):「何が起きたって言うの・・・。あいつは、私を最初から生かす気がなかったって言うの?

        駄目よ・・・! 私までこんな考えじゃ、2人共死ぬだけ・・・。

        何する気かわからないけど、・・・食糧庫の錠前は、厳重にした方が良さそうね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(不安を残しつつも、食糧庫の鍵を厳重にした後に、自室に戻るクロエ

 そしていつの間にか寝てしまったが、深夜に何かの物音で目が覚める)

 

 

 

 

 

 

 

クロエ(M):「ん・・・何の音・・・? 何かを叩いてる音・・・? 今度は何が起きてるの・・・?」

 

 

 

 

 

クロエA:「はぁはぁ・・・もう! あいつめ! 鍵をかけたのね! そっちがその気ならこうよ!

      頑丈な鍵ね・・・。だけど、もう一息・・・! ええええいっ!」

 

 

 

 

 

(クロエAの何度もの強打に負けて、ついに食糧庫の鍵が壊れた)

 

 

 

 

 

クロエA:「手子摺らせやがって・・・。でも、これで、此処の食料は全部、私の物よ!」

 

 

 

クロエ:「そこで何をしてるの! 貴方、気は確かなの?」

 

 

 

クロエA:「これは、これは、遅い到着で。気は確かかですって? じゃあ、答えてあげる。えぇ、気は確かよ!」

 

 

 

クロエ:「とてもそうには思えない。まずは、その手に持っているスパナを床に置きなさい」

 

 

 

クロエA:「あぁ、これが怖いのね。それもそうよね! こんな物で頭殴られたら、大怪我じゃ済まないでしょうからね!」

 

 

 

クロエ:「そうよ・・・。お願い。もう一度、冷静になって話し合いましょう」

 

 

 

クロエA:「冷静になって何を話すのよ! そんな事はどうでも良い! 私はお腹が空いて気が狂いそうなの!

      邪魔をするのなら、間違えて、貴方の頭にこのスパナ振り下ろすかもね!

      わかったのなら、さっさとそこをどきなさい!」

 

 

 

クロエ:「わかった! 言われた通りにする・・・。・・・ただし、条件があるの」

 

 

 

クロエA:「この期に及んで条件? 貴方、自分の立場、わかってるの?」

 

 

 

クロエ:「えぇ、わかってる。私は、貴方のクローンだし、貴方は本物よ」

 

 

 

クロエA:「その通りよ。良いわ、続けなさい」

 

 

 

クロエ:「ここの食料は残り僅か。本当なら、均等に分け合いたい物だけど、それも無理そう・・・。

     だから、60と40くらいで手を打たない?」

 

 

 

クロエA:「私が60で貴方が40?」

 

 

 

クロエ:「そうよ。悪くない条件でしょう?」

 

 

 

クロエA:「えぇ、そうね。だけど、それじゃ駄目よ! そうね、私が70で貴方が30。これならどう?」

 

 

 

クロエ:「その条件を飲んだら、無茶な事はしないのね?」

 

 

 

クロエA:「えぇ、約束よ」

 

 

 

クロエ:「わかった。その条件で良い」

 

 

 

クロエA:「物分かりが良くなったわね。相棒」

 

 

 

 

 

(食糧庫の残りの食料を70と30で分け合うクロエとクロエA)

 

 

 

 

 

クロエ:「これで良い?」

 

 

 

クロエA:「えぇ、この私の食料は、自分で管理するわ」

 

 

 

クロエ:「此処に置いておけば、良いでしょう?」

 

 

 

クロエA:「勘違いしないで! まだ貴方を信用した訳じゃない!」

 

 

 

クロエ:「じゃあ、明日からの作業はどうするの?」

 

 

 

クロエA:「そうね、時間を決めて、お互い1人で作業するのはどう? 悪いけど、貴方と一緒に作業なんて、ごめんだからね!」

 

 

 

クロエ:「それだと作業に遅れが出るかもしれないわ。無茶を言わないで!」

 

 

 

クロエA:「無茶ね・・・。そんな物やってみないとわからないでしょう!? 言っておくけど、作業の時間も公平じゃないわよ!

      精々、頑張ってね! 相棒!」

 

 

 

クロエ:「どういう意味?」

 

 

 

クロエA:「私は、正午から2時までの2時間。貴方はその後、夜の9時まで。これから毎日よ!」

 

 

 

クロエ:「7時間!? それは、いくら何でも無茶過ぎるじゃない!」

 

 

 

クロエA:「反論は認めない! これはもう決めた事よ。じゃあ、そういう事だから、明日から宜しくね! 相棒!」

 

 

 

 

 

(そう言って食糧庫を出ていくクロエA、その場で呆然とするクロエ)

 

 

 

 

 

クロエ(M):「どうすれば良いの・・・? 誤解を解くには、真実を見つけるしかない・・・。

         でも、どうやって・・・」

 

 

 

 

 

 

 

(翌日、クロエの部屋前)

 

 

 

 

 

クロエA:「ねぇ! いつまで寝てるの!? 貴方の作業の時間はとっくに始まってるわ! さっさと着替えて行きなさい!」

 

 

 

クロエ:「お願い・・・、冷静になって・・・。私は、本当に食料を独り占めしてない・・・」

 

 

 

クロエA:「そんな謝罪、信用できるわけないじゃない! 本当に独り占めしてないと言うなら、証拠を見せて!

      そうしたら、信用してあげる!」

 

 

 

クロエ:「それは・・・」

 

 

 

クロエA:「どうしたの? 早く貴方が、やってない証拠を見せて」

 

 

 

クロエ:「今は証拠はないわ・・・。でも! 必ず証拠は見つけて証明する。だから少し時間を頂戴・・・」

 

 

 

クロエA:「今日中よ。明日の朝には、私に証拠を見せて。それ以上は待たない。良いわね?」

 

 

 

クロエ:「・・・わかった。約束は必ず守る・・・」

 

 

 

クロエA:「話は終わり。作業にちゃんと行きなさい。じゃあ、また明日ね」

 

 

 

クロエ:「期限は1日・・・。グズグズしてる暇はない・・・。まずは、コミュニティルームから・・・」

 

 

 

 

 

(コミュニティルーム)

 

 

 

 

 

クロエ:「私は昨夜、ここでクロエと一緒にG線上のアリアを聴きながら、談笑してて、気付いたら眠っていた。

     そして、クロエに起こされた時には、固形バーは食べ散らかしてあった・・・。

     どう考えてもおかしい・・・。この施設には、私とあいつしかいないはずよ・・・。

     他に考えれらるとしたら・・・あいつが私に嘘をついて、初めから計画をして・・・。

     でも、いくら食料を欲しいからといって、あそこまでする・・・?

     何かがおかしい・・・。あの不自然な眠気も気になるし・・・。

     催眠ガスも考えられるけど、一体誰が何のために・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエ:「コミュニティルームをくまなく調べたが異常は見られない・・・。他に考えれる場所は、あいつが言ってた部屋ね・・・。

     昨夜の事と消えた医療ポッドは関係あるのかしら・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

(医療ポッドがあったらしき部屋)

 

 

 

 

 

クロエ:「この部屋よね・・・。やはり何もない・・・。やはり、あいつが言ってる事は嘘なの・・・?

     それとも、何処かに仕掛けが・・・?

     ん・・・? この床のタイル・・・ここだけ、何か違和感がある・・・。

     この隙間にナイフを差し込めば、タイルをはがせるかもしれない・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエ:「よし、隙間にナイフが入った。後は、てこの原理で・・・」

 

 

 

 

 

(その時に施設全体と部屋の床が急に物凄い音と共に振動し始めた)

 

 

 

 

 

クロエ:「えっ・・!? 何が起きたの!? ・・・一旦、この部屋から出ないと・・・」

 

 

 

 

クロエA:「この揺れは何!? 貴方、一体何をしたの!?」

 

 

 

クロエ:「私もわけがわからない・・・。とにかく、ここは危険・・・。部屋から出るわよ」

 

 

 

 

 

クロエA:「嘘でしょう・・・!? 部屋のドアがどんどん遠ざかっていく・・・。どうなってるの・・・?」

 

     

 

クロエ:「違うわ! この床が下降しているのよ・・・。どんどん下に降りてく。どこまで行くのかしら・・・?」

 

 

 

 

 

(下降途中で見えた光景に驚くクロエ2人)

 

 

 

 

 

クロエA:「冗談じゃないわ・・・。これは本当に現実なの・・・?私が、沢山いる・・・。1人、2人なんてものじゃない・・・。

      この医療ポッドらしき中に眠ってる私は、100人以上・・・」

 

 

 

クロエ:「これは何かの悪夢なの・・・? 貴方の言ってた医療ポッドってのは、これの事?」

 

 

 

クロエA:「よく覚えて無いけど恐らく・・・。どうやら、着いたみたいよ・・・」

 

 

 

 

 

(床が止まり、着いた先の空間には無数の医療ポッドと中心にコンピューターらしき制御装置とモニター)

 

 

 

 

 

クロエ:「あれは制御装置・・・? モニターもある・・・。とにかく近付いてみましょう」

 

 

 

クロエA:「えぇ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエA:「ねぇ、動かせるの・・・?」

 

 

 

クロエ:「わからない・・・。キーボードもあるし、なんとかなるでしょう・・・」

 

 

 

 

 

(キーボードをいじってる内にあるプロジェクトのファイルを見つける)

 

 

 

 

 

クロエ:「これは・・・」

 

 

 

クロエA:「C・プロジェクト・・・。これがどうしたの・・・?」

 

 

 

クロエ:「何か気になるの・・・。開いてみるわ・・・」

 

 

 

クロエA:「大丈夫なの・・・?」

 

 

 

クロエ:「わからない・・・。でも、何かこの施設の手掛かりがわかるかもしれない。開くわよ・・・」

 

 

 

 

 

(エンターを押して、ファイルを開くとそこにはC・プロジェクトの詳細が書かれていた)

 

 

 

 

 

クロエ:「読むわよ。C・プロジェクト。このプロジェクトは、我社FTEの一大プロジェクトであり極秘事項である。

     被験者NO.0001、クロエ・アニストン。かの被験者のクローンを生成、大量生産し、

     近未来、この星での労働力になりえるか・・・この星の施設において、実験を行う。

     なお、実験内容を毎日記録をし、何か不備があった時は、クローンを処分し、

     新たなクローンを使い、実験を繰り返す・・・」

 

 

 

クロエA:「クローンを処分・・・」

 

 

 

クロエ:「続きがある。なお、何らかの予想外の出来事により、クローンがこの計画を知った場合は、

     本社の秘密工作部隊が施設を完全消去する・・・」

 

 

 

クロエA:「ねぇ、完全消去ってどういう事よ・・・!」

 

 

 

クロエ:「これは・・・?」

 

 

 

クロエA:「他に、何を見つけたの?」

 

 

 

クロエ:「動画のようね。昨日の日付になってる・・・。ひょっとして!?」

 

 

 

クロエA:「昨夜の出来事の犯人が・・・」

 

 

 

クロエ:「えぇ、わかるかもしれない。再生するわよ」

 

 

 

クロエA:「えぇ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエ:「やはり、昨日のコミュニティルームの様子ね・・・。私と貴方は寝ているわね」

 

 

 

クロエA:「本当だ・・・」

 

 

 

クロエ:「ん? 今入ってきたのは・・・無人ロボット・・・?

     固形バーを無造作に開けて・・・、あっ、少し、砕いて置いた・・・

 

 

 

クロエA:「まさか、無人ロボットが犯人だったなんて・・・」

 

 

 

クロエ:「これで私の無実は、証明されたわけね・・・」

 

 

 

クロエA:「殴ったりしてごめんなさい・・・。私もどうかしてた・・・」

 

 

 

クロエ:「誤解がとけたならそれでいい。待って・・・。これは例の報告書・・・。

     3日前の日付よ・・・。

     本部へ。本日深夜、機械の誤作動により2体目のクローンが目覚める。

     予想外の出来事が起こったので報告をする。

     引き続き、経過を観察し続け、また報告する・・・」

 

 

 

 

 

クロエA:「観察してたのね! あの無人ロボット供め・・・」

 

 

 

クロエ:「2日前の日付も読むわよ。経過報告。クローン2体は、言い争いをしながらも、協力して作業を行っている。

     なお、目覚めた方のクローンは、この地下の医療ポッドの存在を覚えてる可能性が高く、

     このままにしていては、危険と判断。処分の指示を本部に願う」

 

 

 

 

 

クロエA:「やはり、私達を処分しようとしてる・・・。続きはないの?」

 

 

 

クロエ:「1日前・・・。経過報告。クローン2体のこのままの団結は危険だと判断し、工作活動により、

     2体のクローンの団結力は無くなったが、本社の秘密工作部隊の申請を願う」

 

 

 

クロエA:「私達ごと、この施設も消去する気ね・・・。あの無人ロボット達、全員ぶっ壊してやる!」

 

 

 

クロエ:「残念ながら、それは無理のようね・・・」

 

 

 

クロエA:「どうしてよ?」

 

 

 

クロエ:「本社からの返信が来てる」

 

 

 

クロエA:何て書いてあるの?」

 

 

 

クロエ:「今から2時間後、秘密工作部隊は到着・・・」

 

 

 

クロエA:「2時間・・・。すぐじゃないの・・・」

 

 

 

クロエ:「そうね・・・」

 

 

 

クロエA:「脱出方法はないの!? ほら、ロケットとか宇宙船とか脱出ポッドとか何かあるでしょう!」

 

 

 

クロエ:「今、調べてる・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエA:「どう・・・?」

 

 

 

クロエ:「何もない・・・。この施設はおろか、この星には脱出する手段はないわ・・・」

 

 

 

クロエA:「そんな馬鹿な事って・・・。このままじゃ、私達は・・・」

 

 

 

クロエ:「本社の手によって抹消される・・・」

 

 

 

クロエA:「ただ、死ぬのを待つしかないって言うの・・・・」

 

 

 

クロエ:「ここで嘆いてても仕方ないわ・・・。上に戻るわよ・・・」

 

 

 

クロエA:「上に戻ってどうするの? 私達はどうせ死ぬ運命・・・。上もここも変わらないじゃない・・・」

 

 

 

クロエ:「いいえ、変わるわ・・・。最後の時くらい、好きな音楽を貴方と聞きたいの・・・」

 

 

 

クロエA:「可笑しい・・・。何だか、口説かれてるみたい・・・」

 

 

 

クロエ:「自分を口説いてどうするのよ」

 

 

 

クロエA:「それもそうよね・・。仕方ない。最後くらい貴方に付き合ってあげるわ」

 

 

 

クロエ:「ありがとう、クロエ」

 

 

 

 

 

 

 

(上に戻り、コミュニティールームに戻り、G線上のアリアを聴いてる2人)

 

 

 

 

 

クロエ:「やはり、この曲は良いわね・・・」

 

 

 

クロエA:「えぇ・・・。これから最後を迎える私達にはピッタリの曲ね・・・」

 

 

 

クロエ:「どうせ死ぬなら、悪あがきしてみる?」

 

 

 

クロエA:「何か打開策が浮かんだの?」

 

 

 

クロエ:「本社の宇宙船から、秘密工作部隊が来たら、そいつらをぶっ殺して、宇宙船を乗っとるってのはどう?」

 

 

 

クロエA:「その後はどうするの? 地球に戻っても、本社のことよ、私達を指名手配にして殺そうとするわ」

 

 

 

クロエ:「地球には帰らない。何処か宇宙船で住める場所を探しましょう」

 

 

 

クロエA:「放浪の旅ってわけね・・・。良いわね・・・」

 

 

 

クロエ:「私達はクローン。失うものは何もない。そう考えれば気楽なものよ」

 

 

 

クロエA:「違いないわね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエ:「本社到着まで残り30分・・・」

 

 

 

クロエA:「絶対に私達は生き残るわよ」

 

 

 

クロエ:「えぇ。私と貴方、一緒に生きて脱出よ」

 

 

 

 

 

(その時、惑星に強い揺れが襲う)

 

 

 

 

 

クロエA:「何? この揺れは!? もしかして地震なの?」

 

 

 

クロエ:「本社の到着を待つ前に、死ぬ運命って事・・・」

 

 

 

クロエA:「冗談じゃないわ! 何があっても私達は生き残るのよ・・・!

      こんな揺れなんかに負けてたまるもんですか!」

 

 

 

クロエ:「そうね・・・! ここは物が多くて危険・・・。移動するわよ・・・!」

 

 

 

クロエA:「ええ・・・」

 

 

 

 

 

(宇宙船到着口、エントランス)

 

 

 

 

 

クロエ:「本社到着まで残り20分・・・。このハッチが開いたら、突っ込むわよ!」

 

 

 

クロエA:「本社の連中が何人いるかわからないのに、本当無茶苦茶な作戦よね!」

 

 

 

クロエ:「少しでも生き残れるなら、その確率を・・・私は、この手で掴み取るだけよ!」

 

 

 

クロエA:「ついて行くわ、相棒!」

 

 

 

クロエ:「えぇ!」

 

 

 

 

 

(その時、これまで以上の衝撃が2人を襲う、その衝撃で気絶する2人、暫くして目を覚ますクロエA)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエA:「痛っ・・・さっきの強い衝撃で壁にぶつかって気絶してたのね・・・。

      ねぇ、クロエ、しっかりして!」

 

 

 

 

 

クロエ:「一体どうなったの・・・?」

 

 

 

クロエA:「さっきの強い衝撃で私達、気絶したみたいよ・・・」

 

 

 

クロエ:「時間は・・・? どれくらい経過した・・・?」

 

 

 

クロエA:「待って・・・今確かめる。10分くらいね・・・。本社到着まで、後10分しかないわ・・・」

 

 

 

クロエ:「揺れも収まったようだし、さっきの作戦通り、行くわよ」

 

 

 

クロエA:「動けるの?」

 

 

 

クロエ:「頭は打ったようだけど、大丈夫。貴方は大丈夫?」

 

 

 

クロエA:「何とか大丈夫よ」

 

 

 

クロエ:「そう・・・。じゃあ、私は左側、貴方は右側。ハッチまで距離50m。

     合図と同時に、ハッチに向かって走って突っ込むわよ」 

 

 

 

クロエA:「OK!」

 

 

 

(時間になり宇宙船が到着した音が聴こえ、ハッチの開閉が始まる)

 

 

 

 

クロエ:「そろそろ行くわよ・・・。よし、今よ! GO!!! 走って!!!」

 

 

 

クロエA:「えぇ!」

 

 

 

 

  

 

BGM:G線上のアリア

 

 

 

 

クロエ(N):「私の考えは甘かった・・・。掛け声と共に駆け出した私とあいつは、無我夢中で走った・・・

        しかし1発の銃声が鳴り、次に見えたのは倒れ込んだあいつの姿だった・・・。

        額を撃ち抜かれ、あいつは即死・・・。

        私は絶望に襲われ、その場で膝まづいた。

        そんな私に近付く1人の女・・・。

        その顔を私は見る。その女は・・・

 

 

        私自身だった・・・。

 

 

        そうかこの女も・・・。

 

 

        私がそう思った時、2発目の銃声が無情にも響いた・・・」

 

 

 

 

 

(銃声)

 

 

 

 

 

 

クロエA:「ねぇ、クロエ、しっかりして!」

 

 

クロエ:「ここは天国・・・?」

 

 

クロエA:「何、寝ぼけた事を言ってるのよ。さっきの強い揺れで頭を強く打ったの?」

 

 

クロエ:「クロエ・・・。貴方は、私の目の前で・・・奴等に額を撃ち抜かれて・・・」

 

 

クロエA:「額を撃ち抜かれる・・・? 私はこの通り生きてるわよ。悪い夢でも見たんじゃないの?」

 

 

クロエ:「本当に夢だったの・・・。だとしたら正夢・・・? 時間はどれくらい経過した?」

 

 

クロエA:「今、確かめる。10分くらいね」

 

 

クロエ:「本社到着まで、後10分くらいね・・・。

     じゃあ、私は左側、貴方は右側。ハッチまで距離50m。合図と同時に、ハッチに向かって走って突っ込むわよ」

 

 

 

クロエA:「OK!」

 

 

 

 

 

(先程の光景が浮かんだクロエ)

 

 

 

クロエ:「やはり変更よ! 私は右側、貴方は左側」

 

 

 

クロエA:「何だか知らないけど、それで良いわよ」

 

 

 

クロエ(M):「これがもし正夢だとしたら、これで私に向けて奴らは発砲するはず。

        私はそれをかわす。それなら、あいつは無事にハッチに辿り着くはず・・・

 

 

 

クロエA:「本社が到着したみたいよ・・・。いよいよね・・・」

 

 

 

クロエ:「えぇ・・・。よし、今よ! 走って!!!」

 

 

 

クロエA:「えぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエ(N):「これで、あいつが死ぬ運命は変わるはずだった・・・。

        しかし無情にも、銃声が聞こえた後、見た光景は

        あいつが倒れる姿だった・・・。

 

       

        どうして・・・?

 

 

        正夢じゃないの・・・?

 

 

        目の前の状況で混乱してる私に、2発目の銃声が聞こえた・・・」

 

 

 

 

 (銃声)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエA:「ねぇ、クロエ、しっかりして!」

 

 

 

クロエ:「・・・」

 

 

 

クロエA:「私の事がわかる・・・?」

 

 

 

クロエ:「えぇ・・・、わかるわ・・・」

 

 

 

クロエA:「私達、あの強い揺れで頭を打って気絶してたようね・・・」

 

 

 

クロエ(M):「何が起きてるって言うの・・・」

 

 

 

クロエA:「本当に、大丈夫なの?」

 

 

 

クロエ:「・・・大丈夫よ。時間はどれくらい経過した?」

 

 

 

クロエA:「待って、今、確かめる」

 

 

 

クロエ(M):「このままじゃ、またあの光景を目にする事になるかもしれない。だとしたら・・・」

 

 

 

クロエA:「10分くらいね。本社、到着まで残り10分くらいしかないわ・・・」

 

 

 

クロエ:「そう・・・。クロエ、ごめん、そこに落ちてる工具箱とってくれない?」

 

 

 

クロエA:「わかったわ。これで良い?」

 

 

 

クロエ:「(腹を殴る)」

 

 

 

クロエA:「何をするの・・・」(倒れ意識を失う)

 

 

 

クロエ(M):「ごめんなさい・・・。貴方を救うにはこうするしか無いのよ・・・」

 

 

 

クロエ:「時間ね・・・」

 

 

 

クロエ(N):「意識を失ったクロエを安全な場所に寝かして、ハッチの前に戻ったら、

        3度目のハッチが、ゆっくり音をたて、開き始めた・・・」

 

 

 

 

 

クロエ:「私と貴方は、絶対生きてここを脱出する! その為なら何度でも私はこのチャンスを生かす!

     さあ、これが3度目の勝負よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

終わり