Life again...
作者 ヒラマ コウ
登場人物
アリソン・・・ブライアンにプロポーズされ、これから幸せな生活が待っていると夢見ていた。
だが、愛するブライアンを交通事故により突如亡くし、絶望の淵に立たされる。
最愛のブライアンを諦めることが出来ず、5年をかけてブライアンをアンドロイドとして蘇らす
ブライアン・・・アリソンとの順調に付き合っていてプロポーズをした次の日に交通事故により亡くなる。
時が経ち、アリソンの手により、アンドロイドとして蘇る
比率【1:1】
上演時間【70分】
※この台本は終盤、【人間のまま】と【アンドロイドに変わって生きる】にEDが分岐します。
演じる相手と相談して、EDをお決めください。
その際、【人間のまま】と【アンドロイドに変わって生きる】の記載は特にいりません。
上演の際は、Life again...とタイトルには、お書きください。
オンリーONEシナリオ2022
12月、テーマにしたシナリオです
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CAST
アリソン、車のAI:
ブライアン:
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001 アリソン:「遅い・・・。一体、何をしてるのかしら・・・。・・・待ち合わせ時間、とっくに過ぎてるのに・・・」
002 ブライアン:「遅れてごめん! かなり待たせたよね・・・?」
003 アリソン:「それがわかってるなら、もっと早くに来て」
004 ブライアン:「流石に2時間は不味かったか・・・」
005 アリソン:「2時間待たせて、大丈夫だろって思ってたわけ!? 信じられない・・・!」
006 ブライアン:「大丈夫だろまでは思ってないよ・・・。それに、遅れたのには理由があるし・・・」
007 アリソン:「長い間、待ちぼうけさせられてた私の気持ちが、全部消えるくらいの理由なのかしら?」
008 ブライアン:「消えるどころか、君なら、大喜びでその場で飛び跳ねたり、踊りだすくらいだと思うよ!」
009 アリソン:「何それ! そこまで言われたら、逆に気になるじゃない。早く理由を教えて」
010 ブライアン:「そうしたい所だけど、此処じゃまだ出来ないんだ」
011 アリソン:「ここまで話しておいて?ねぇ、お願い~!」
012 ブライアン:「そんな可愛い顔で、膨れても駄目なものは駄目だ!」
012 アリソン:「ブライアンのケチ~!!!」
013 ブライアン:「さ! 良いから、車に乗って」
014 アリソン:「車って・・・何処か遠くなの?」
015 ブライアン:「それは着いてからのお楽しみ」
(車内から景色を眺めてるアリソン)
016 アリソン:「あ~あ、私も車の運転したいな~」
017 ブライアン:「それには、路上教習を無事に済ませ、試験にも合格しないとだな」
018 アリソン:「意地悪・・・。私が運転、下手なのを知ってて、言ってるでしょう?」
019 ブライアン:「アリソンの運転は、観に行ったけど・・・あれじゃ、当分無理だろうな・・・」
020 アリソン:「そんなはっきり言わないで・・・。落ち込んじゃう・・・」
021 ブライアン:「アリソン、俺はそんな不器用なりにも、努力して、自分で決めた道にまっすぐ進む君が、
大好きなんだ。だから諦めず頑張るんだ」
022 アリソン:「ズルい男・・・。そんな事言われたら、頑張るしかないじゃない・・・」
023 ブライアン:「その意気だ。大丈夫。君なら、絶対出来るよ」
024 アリソン:「ブライアン・・・。ありがとう・・・」
間
025 ブライアン:「ほらっ、あそこ見て」
026 アリソン:「うわ~! 素敵な岬!」
027 ブライアン:「君なら、気に入ると思った」
028 アリソン:「あの岬が、目的地?」
029 ブライアン:「半分・・・正解」
030 アリソン:「と言う事は、まだ何かあるのね」
031 ブライアン:「それは着いてからのお楽しみ」
032 アリソン:「あ~! もう我慢できない! ブライアン、窓開けて良い!?」
033 ブライアン:「(笑う)良いよ」
034 アリソン:「う~~~ん! 潮風が気持ち良い~~!!!」
035 ブライアン:「おいおい、そんなに顔を出したら、危ないぞ」
036 アリソン:「平気だって! こんな素敵な場所があったなんて最高よ~! ブライアン」
037 ブライアン:「アリソン」
038 アリソン:「ん? 何~?」
039 ブライアン:「何でもない」
040 アリソン:「何それ~ (笑う)」
041 ブライアン:「そろそろ、目的地だ」
042 アリソン:「一体、何が待ってるのかしら・・・」
043 ブライアン:「アリソン、目瞑って」
044 アリソン:「どうして?」
045 ブライアン:「良いから早く」
046 アリソン:「何だか知らないけど、良いわ。これって何か映画のワンシーンにある展開ね。ブライアンったら・・・」
047 ブライアン:「ストップ。その先は言っちゃ駄目だ」
048 アリソン:「(笑う)わかったわ」
049 ブライアン:「手を貸して」
050 アリソン:「ええ」
(車から降りアリソンの手をとり、ゆっくり歩きだすブライアン)
051 ブライアン:「俺達、付き合って、3年になるな~」
052 アリソン:「もうそんなになるのね・・・。貴方と出会ったの、つい最近のように思うのに」
053 ブライアン:「じゃあ、覚えてる?」
054 アリソン:「何をかしら?」
055 ブライアン:「君が俺に付き合う時に、言った言葉」
056 アリソン:「覚えてる・・・。咄嗟にあんな事言っちゃったけど、きっと貴方とそうなれたら良いなと思ったんだと思うわ」
057 ブライアン:「その気持ちは、今でも変わらない?」
058 アリソン:「ええ。変わらないわ」
059 ブライアン:「それが聞けて良かった」
060 アリソン:「え?」
061 ブライアン:「目的地に着いたよ。良い? ゆっくり目を開けて」
(ブライアンの言葉にゆっくり目を開くアリソン。目の前には、青い屋根と白い壁、そして玄関前にベンチがある家が見えた。
その家を見て驚くアリソン)
062 アリソン:「これって!? 私の理想の家・・・」
063 ブライアン:「あぁ。君があの時、俺に言った理想の家だ」
064 アリソン:「それがどうして此処に?」
065 ブライアン:「君がそう望んだからだよ。・・・これでも苦労したんだ。不動産屋を探し回り、理想に近い家を見つけ、
そこからは少しずつ、屋根の色を君の好きな青色に変えたり、壁を白に塗り替えたり・・・」
066 アリソン:「ブライアン・・・。ねぇ、このベンチはもしかして・・・」
067 ブライアン:「やっぱりわかっちゃったか・・・。アリソンが望んだベンチまでは、見つからなくてさ・・・
それは、俺の手作りだ。やっぱ、不格好だからわかるよな~」
068 アリソン:「ううん・・・。凄く素敵・・・。私の為に、此処までしてくれるなんて・・・」
069 ブライアン:「そのベンチの完成が今日で、この家に置いてくる時間もあったりで、遅れたんだ・・・。
本当に、待たせてごめん・・・」
070 アリソン:「こんな素敵な理由なら、許すわ・・・。むしろ嬉しい・・・」
071 ブライアン:「アリソン、此処に座って」
072 アリソン:「ええ」
073 ブライアン:「どう?」
074 アリソン:「・・・さっきの岬が見える・・・。綺麗・・・」
075 ブライアン:「その景色は俺からのプレゼント。そしてこれも・・・。随分待たせちゃったけど、受け取ってくれるかい?」
(ジャケットのポケットから、指輪を取り出す)
076 アリソン:「それって・・・」
077 ブライアン:「アリソン・・・。俺には君しかいない・・・。
これからも2時間も待たせたりして度々、君を怒らすかもしれないけど、
そんな不器用な俺でも良ければ、結婚してくれ・・・」
078 アリソン:「これからも2時間か・・・。それは考えちゃうかも・・・」
079 ブライアン:「おいおい・・・」
080 アリソン:「嘘よ。だって、こんなに長い間、待たされた上に、そんなプロポーズなんだから、意地悪したくなっちゃった」
081 ブライアン:「じゃあ?」
082 アリソン:「2時間でも、いくらでも待つ。こんな素敵なサプライズを考えてくれるんなら。
ブライアン・・・。返事はイエスよ!」
083 ブライアン:「良かった! ホッとしたよ」
084 アリソン:「・・・」
085 ブライアン:「どうしたんだい?」
085 アリソン:「嬉しくて、涙が出ただけよ・・・。あ~あ、こんなに幸せで、良いのかな~」
086 ブライアン:「良いんだよ。俺も今、凄く幸せだ」
087 アリソン:「ありがとう・・・。これからよろしくね・・・。ブライアン・・・」
088 ブライアン:「こちらこそ、よろしく。アリソン」
089 アリソン(N):「ブライアンとの幸せな時間が、これから始まるんだとこの時の私は信じていた。
車で送ってもらい、彼を見送り、私は家に戻り眠りについた。
それが、生きてる彼の最後の姿になるなんて、知る由もなかった・・・。
翌日・・・私は1本の電話で目を覚ます・・・」
090 アリソン:「もしもし。・・・はい。ブライアンは私の彼ですが何か?
・・・え? それは本当ですか? ・・・はい。・・・わかりました
では、失礼します・・・」
(電話が切れた後も、暫く放心状態になるアリソン。その手から電話が床に落ちる)
091 アリソン:「そんな・・・。どうして・・・。・・・これは何かの間違い。そう、夢よ・・・。そうに決まってる。
だって、昨日まで、あんなに元気に・・・。お願い、悪い夢なら、早く覚めて・・・!!!!」
092 アリソン:「・・・夢じゃない。ねぇ、ブライアン・・・。
どうしてなのよ・・・!!! こんなの酷過ぎる・・・!!!! (涙が溢れ大声で泣き続ける)」
間
093 ブライアン:「アリソン・・・。アリソン・・・。アリソンってば!
そんな所で寝てたら、風邪引くぞ。仕方ないな・・・。じゃあ、仕事行ってくるからね」
094 アリソン:「待って!!! ブライアン!!! ・・・え? ・・・そっか私、いつの間にか、寝ちゃったのね・・・。
ブライアンが待ってる・・・。早く病院に行かなきゃ・・・」
095 アリソン:「遅れてすみません。彼は・・・。ブライアンは・・・?」
(案内され、ブライアンの眠る部屋に着き、ブライアンの顔を見るアリソン)
096 アリソン:「綺麗な寝顔・・・。まるで、まだ生きてるみたい・・・。ねぇ・・・? 死んだなんて嘘なんでしょう?
何処かカメラが設置してあって、私を驚かすためのサプライズよね? 答えてよ・・・ブライアン・・・。
どうして、私だけを置いてくの・・・。2時間でも、3時間でも、待つから・・・。
お願い・・・。もう一度、目を開けてよ・・・!!!
ねぇ、ブライアンったら!!!!」(徐々に涙が溢れ、気付くと思いっきり叫び泣いている)
(ブライアンの遺体を後にし、部屋を出て、ロビーのベンチで考え込むアリソン)
097 ブライアン:「いつまでも君の側にいるよ」
098 アリソン:「嘘つき・・・」
099 ブライアン:「君の理想の家で、これから色々、思い出を作ろう2人で」
100 アリソン:「昨夜の車内での言葉、嬉しかった・・・。だけど、それも、もう・・・」
101 ブライアン:「どんな時だって、笑顔でいて。笑顔でいれば、きっと何もかも上手くいく」
102 アリソン:「そうよね、ブライアン。私に出来る事が何かあるはず・・・」
(病院を出て、家に帰り、PCで色々、検索するアリソン)
103 アリソン:「この人・・・。人間の脳を電子化させる事に成功してる・・・。この人なら、何とか出来るかも・・・!
こうしちゃ、いられないわ!」
(病院に電話するアリソン)
104 アリソン:「先程は、ありがとうございました。彼、ブライアンの葬儀に関してなのですが、待って頂けないでしょうか?
・・・はい。・・・すみません。よろしくお願いします・・・」
(人間の脳を電子化に成功した科学者の研究所を訪ねるアリソン)
105 アリソン:「夜分遅くにすみません!!! お願いです!!! 私の話を聞いてください!!!!」
間
106 アリソン(N):「あの時の私は無我夢中だった。断られるかもしれない。そんな事も頭によぎった・・・。
だけど、あのまま何もせずじっとしてはいられなかった・・・。その科学者は私の言葉を、
熱心に聴いて下さり、力を貸してくれた。そして、更に月日は流れ、1年が経過した」
(ブライアンがアリソンの為に用意した家で、作業をしているアリソン)
107 アリソン:「此処を、こうして・・・。こっちの回路に繋げて・・・。この配線は、こうよね・・・?
よしっ、これで良いはず。さぁ、目を開けて・・・。お願い・・・」
(アリソンの願いとは裏腹に、何も反応しないアンドロイドの頭部)
108 アリソン:「どうして!? 何で動かないの・・・。・・・何が間違ってるのか調べなきゃ・・・。
・・・駄目。わからない・・・。今の私じゃ、やっぱり無理なの・・・?
駄目ね・・・。少し休憩・・・。はぁ・・・」
(横に置いてあるソファーに力なく倒れ、落ち込むアリソン)
109 ブライアン:「元気を出してくれ」
110 アリソン:「ねぇ、ブライアン・・・。私がやろうとしてる事は・・・間違いなの?」
111 ブライアン:「間違ってるかどうかはわからない。自分を信じるんだ」
112 アリソン:「自分を信じたら、上手くいくの・・・?」
113 ブライアン:「きっと上手く行く」
114 アリソン:「もう・・・少しは否定もしてよ・・・」
115 ブライアン:「それは無理だ・・・。今の俺は、君の心が作り出した存在だから」
116 アリソン:「そうね・・・」
117 ブライアン:「君は努力を欠かさない」
118 アリソン:「ええ・・・」
119 ブライアン:「機械工学の知識なんて無いのに、1年前から、こうして努力を続けてる」
120 アリソン:「・・・」
121 ブライアン:「大丈夫。いつかは努力が報われるよ」
122 アリソン:「報われなかったら・・・?」
123 ブライアン:「その時は・・・。生前の俺の言葉を思い出すんだ。君ならそれでわかるだろ?」
124 アリソン:「わかった・・・」
125 ブライアン:「良い子だ」
126 アリソン:「ありがとう・・・。そうね・・・。こんな事で挫けちゃいられない・・・。前に進まなきゃ・・・」
127 アリソン(N):「こんなやりとりを、私の中のブライアンと続け、更に2年が経過した。努力のおかげか、
作業は少しずつ進んでいた。だけど、私は、嬉しい気持ちだけではなかった・・・」
(ハンマーを握りしめ考え込むアリソンに、アリソンの中のブライアンが話かける)
128 アリソン:「・・・」
129 ブライアン:「また何か悩んでるのか?」
130 アリソン:「ええ・・・。・・・私のこの努力は、本当に彼の為になるのかなって・・・。
ひょっとしたら、とんでもなく勘違いな努力になってるんじゃないの?」
131 ブライアン:「後悔してる?」
132 アリソン:「してないと言ったら、嘘になると思う・・・」
133 ブライアン:「そっか。なら、どうしたい?」
134 アリソン:「・・・」
135 ブライアン:「仕方ない・・・。その手に持ってるハンマーで、一思いに壊すんだ」
136 アリソン:「でも・・・」
137 ブライアン:「今の君を苦しめてる原因なんだ。躊躇わずに早く」
138 アリソン:「・・・」
139 ブライアン:「壊すんだ!!!」
140 アリソン:「(ハンマーを作りかけの部品に振り下ろす)」
間
141 ブライアン:「どうして、止めた?」
142 アリソン:「だって・・・」
143 ブライアン:「これからも、それは君を苦しめるかもしれないぞ」
144 アリソン:「・・・それでも、此処で壊して、何もかもリセットさせるなんて出来ない・・・!!!」
145 ブライアン:「(深い溜息)・・・君ならそうすると思った」
146 アリソン:「私が望む事、何でもお見通しなのね・・・」
147 ブライアン:「そう言う存在だからね」
148 アリソン:「都合が良いんだから・・・」
149 ブライアン:「俺じゃ、君を幸せに出来ないからね。残念だけど、それは此処で待っている彼の使命だ。
落ち込んでる暇はないぞ! 頑張れ! アリソン!」
150 アリソン:「うん・・・!」
151 アリソン(N):「私が今している事は、正しいかはわからない・・・。だけど、迷っていたら何も始まらない・・・。
自分の気持ちに嘘なんてつけない・・・。私は、ブライアンに・・・もう一度会いたい・・・。
彼の笑う姿を、見たい・・・」
間
152 アリソン:「ついに此処まで来たのね・・・・。長かった・・・。気付けば5年・・・。
何度も挫けそうになる度に、私の中のブライアンに励まされ、
この日を迎える事が出来たわ・・・。もう、何が起きても受け止める。いよいよ起動ね」
153 アリソン:「出力安定。電子脳のインストール開始・・・」
154 アリソン:「10%・・・。20%・・・。50%・・・。・・・順調にいってる」
155 アリソン:「70%・・・。75%・・・。もう少しよ・・・。80%・・・。・・・・・・97%」
156 アリソン:「100%・・・。インストール完了」
(ゆっくりと目を開く、ブライアン。それを見て、喜びを隠せないアリソン)
157 ブライアン:「・・・」
158 アリソン:「私がわかる・・・?」
159 ブライアン:「・・・」(無言で首を動かし、辺りを見回す)
160 アリソン:「・・・どうかした? 何処か、おかしい・・・?」
161 ブライアン:「アリソン・・・。俺は・・・。どうして・・・」
162 アリソン:「私の事が、ちゃんとわかるのね・・・!」
163 ブライアン:「俺は、アリソンと別れて、帰宅途中に・・・対向車が突っ込んできて・・・」
164 アリソン:「ブライアンだ・・・。私の知ってるブライアン・・・」
165 ブライアン:「アリソン・・・。何故? 泣いてるんだ・・・?」
166 アリソン:「何でもないわ・・・。嬉しくて・・・」
167 ブライアン:「でもどうして・・・? 何が起きたんだ・・・? 俺は意識が薄れ・・・あのまま・・・」
(ブライアンはアリソンに問いかけたが、アリソンの眼差しを見て、何が起きたか理解をする)
168 アリソン:「おかえりなさい・・・。ブライアン・・・」
169 ブライアン:「ただいま・・・。アリソン・・・」
170 アリソン:「・・・・・・」
171 ブライアン:「・・・・・・」
(暫く見つめ合うアリソンとブライアン。気付くと外は薄暗くなり始めていた)
172 アリソン:「部屋を案内するわ。付いてきて・・・」
173 ブライアン:「あぁ。・・・おっと」
174 アリソン:「どうしたの? 動きづらい・・・?」
175 ブライアン:「大丈夫だ・・・。まだ、慣れてないだけ」
(そう言いアリソンのいる方ではなく、玄関にかけてある鏡に向かうブライアン)
176 ブライアン:「・・・」(鏡に映った自分の顔を見て、手で顔を触ったり、色々と確かめている)
177 アリソン:「どう?」
178 ブライアン:「これは本物の皮膚?」
179 アリソン:「ううん・・・。違うわ。人工的な皮膚なのだけど・・・」
180 ブライアン:「触り心地も、違和感なくて驚いてる・・・」
181 アリソン:「当たり前じゃない。そこら辺も、苦労したんだから・・・」
182 ブライアン:「アリソン・・・。感謝してる」
183 アリソン:「それ本当? 心の中で何処か、生き返らせなくて良かったとか思ってたり・・・」
184 ブライアン:「そんな事、思う訳ないだろ」
185 アリソン:「本当に・・・?」
186 ブライアン:「一体、どうしたんだ? 俺の知ってるアリソンは、そんな不安になってばかりじゃ・・・」
187 アリソン:「仕方ないじゃない・・・。ブライアン、貴方が亡くなって、こうして甦らすまで・・・5年かかったわ・・・。
色々あったし、あの頃のままの私じゃないの・・・!」
188 ブライアン:「アリソン・・・。・・・ごめん。別に責めてるわけじゃないんだ。その5年間で、一体何があったのか、
話してくれないか?」
189 アリソン:「・・・」
190 ブライアン:「構わない。俺の知らない間の君を、知りたいんだ」
191 アリソン:「・・・わかったわ。此処は冷え込むし、こっちの部屋に行きましょう」
(部屋に入り、置いてあるソファーに座るアリソンとブライアン)
間
192 ブライアン:「落ち着いた?」
193 アリソン:「ごめんなさい。もう、大丈夫よ」
194 ブライアン:「わかった。じゃあ、ゆっくり何があったか、話て」
195 アリソン:「貴方は、交通事故で亡くなってから、私は無我夢中で調べ・・・ある科学者の家に行ったわ。
その方は、人間の脳を電子化する事に成功をした。その事を知って、私は必死に頼み込み、
協力をしてもらったの。ブライアンの脳を電子化する為に。そして、無事に電子化は完了したわ」
196 ブライアン:「それじゃあ、俺のこの体の中には、その電子化された脳が・・・」
197 アリソン:「ええ。そうなるわ。・・・その後は、本当・・・今思っても大変だった・・・。一からその方に、教えてもらい
機械工学を学んだわ。そして1年が経過した。その頃になると、私も少しずつ、貴方の体を作る計画を勧めたわ。
だけど、上手くいかなくて・・・。何度も挫け、落ち込む私を励ましてくれた人がいるの・・・」
198 ブライアン:「君が苦しい時に、支えた人・・・。ひょっとして男か?」
199 アリソン:「ええ。男性よ」
200 ブライアン:「そっか・・・。それはショックだし、その男に、嫉妬するよ」
201 アリソン:「(笑う)」
202 ブライアン:「何が可笑しいんだ?」
203 アリソン:「だって、余りに可笑しくて・・・(笑う)」
204 ブライアン:「おいおい・・・。理由を教えてくれ・・・」
205 アリソン:「そんな困った顔しないで。少しからかっただけよ。ごめんなさい。実はね、その男性は貴方よ」
206 ブライアン:「え? 俺・・・?」
207 アリソン:「正確にいうと・・・私の中のブライアンに励まされたの」
208 ブライアン:「要するに、君が作り出した俺に?」
209 アリソン:「ええ。だから、貴方が自分自身に嫉妬しているって思うと、なんだか可笑しくて・・・ (笑う)」
210 ブライアン:「それは違いない! (笑う)」
間
211 アリソン:「・・・その彼によって励まされ、その後も、苦悩したり、落ち込んだりを繰り返し・・・今日を迎えたの」
212 ブライアン:「もう無理だ。と諦めそうにはならなかったのか?」
213 アリソン:「そんな時もあったけど、貴方の言葉があったから頑張れた。」
214 ブライアン:「俺の言葉?」
215 アリソン:「『俺はそんな不器用なりにも、努力して、自分で決めた道にまっすぐ進む君が、大好きなんだ。
だから諦めず頑張るんだ』
この言葉があったからこそ、今の私があるのよ」
216 ブライアン:「あの時、車内で俺が君に伝えた言葉。覚えてくれてたんだな・・・」
217 アリソン:「当たり前じゃない・・・。貴方がくれた沢山の言葉の中でも、これは特別」
218 ブライアン:「アリソン・・・」
219 アリソン:「今の貴方は、まだ生まれたばかり。これから先、色々な可能性が広がってるわ。
だから、お願い。新たな始まり・・・第2の人生を、精一杯楽しんで」
220 ブライアン:「新たな始まり・・・」
221 アリソン:「そう。今日から始まるの」
222 ブライアン:「君と俺との」
223 アリソン:「ええ」
224 ブライアン:「じゃあ、あれも仕切り直しだ。ちょっと待ってて」
225 アリソン:「うん・・・」
226 ブライアン:「あったあった。アリソン、左手を出して」
227 アリソン:「はい・・・」
228 ブライアン:「アリソン・・・。君がくれた、新たな人生。俺は君と再び、過ごしたい。
結婚してくれ。アリソン」
229 アリソン:「2時間でも3時間でも待つとは言ったけど、5年は長過ぎよ・・・。
もう二度と、こんなに長く待たせないで・・・」
230 ブライアン:「わかった。・・・それで返事は?」
231 アリソン:「勿論、イエスよ! 結婚しましょう。ブライアン」
232 ブライアン:「あぁ、喜んで」
間
233 アリソン:「もうこんな時間・・・。夕飯の準備を・・・あっ・・・」
234 ブライアン:「どうした?」
235 アリソン:「・・・」
236 ブライアン:「あ~そっか・・・。大丈夫、俺の事は気にしないで」
237 アリソン:「でも・・・」
238 ブライアン:「じゃあ、1つ提案。俺は食べられないけど、側で君が食べてるの見て良い?」
239 アリソン:「黙って側で・・・?」
240 ブライアン:「それでも良いけど・・・本当に良いの?」
241 アリソン:「やっぱり、会話がしたい」
242 ブライアン:「君ならそう言うと思った」
243 アリソン:「私の事は何でもわかるのね」
244 ブライアン:「夫婦だからね」
245 アリソン:「さ~て、何作ろうかしら~」
(そう言ってキッチンに向かうアリソン。その行動を見て嬉しそうに問いかけるブライアン)
246 ブライアン:「あ~! ひょっとして、赤くなった?」
247 アリソン:「なってな~い! もう~! こっちに来ないで、そっちで待ってて」
248 ブライアン:「なってないって言うんだったら、顔見せてよ」
249 アリソン:「嫌よ。料理の邪魔しないで」
250 ブライアン:「その反応は、やっぱり照れてる証拠だ」
251 アリソン:「ブライアンの馬鹿・・・。急に、あんな嬉しい事、言われたら・・・そりゃあ、照れるわよ・・・」
252 ブライアン:「そりゃ、そうだな! 違いない! (笑う)」
253 アリソン:「そうよ・・・あなた」
254 ブライアン:「ふえっ!? 今、何て?」
255 アリソン:「期待通りの反応、ありがとう~」
256 ブライアン:「見事にしてやられた・・・」
257 アリソン:「さっきの仕返しよ (微笑)」
258 ブライアン:「それで、何を作ってるんだい?」
259 アリソン:「ビーフストロガノフよ~」
260 ブライアン:「良いね~」
261 アリソン:「さぁ、出来た」
262 ブライアン:「食器、出しとく」
263 アリソン:「ありがとう」
(食器棚の食器類を見て何か考え込んでるブライアン)
264 ブライアン:「・・・」
265 アリソン:「どうかした?」
266 ブライアン:「何でもない。この食器、持ってきてくれたんだ」
267 アリソン:「貴方と一緒に初めて買いに行った物よ。捨てたりしないわ」
268 ブライアン:「この食器・・・お店を5軒程回って、ようやくだったな」
269 アリソン:「貴方は・・・3軒目のお店辺りから、疲れた~を連呼してたわね」
270 ブライアン:「疲れるさ・・・。何で女は、こんなに買い物が好きなんだ! って心の中で叫んでたよ」
271 アリソン:「そんな事だろうと思った。でも、この食器を見つけた時、貴方も横で、綺麗だと言ってくれたの嬉しかったのよ。
これにして、本当に良かった」
272 ブライアン:「あぁ。あの時、諦めずに探したかいがあったな」
273 アリソン:「そうね」
274 ブライアン:「さぁ、折角の料理が冷めちゃうから、早く食べて」
275 アリソン:「うん。じゃあ、いただきます」
276 ブライアン:「召し上がれ」
277 アリソン:「ねぇ・・・」
278 ブライン:「ん?」
279 アリソン:「ううん。何でもない」
280 ブライアン:「・・・」(じっとアリソンを見つめる)
282 アリソン:「そんなに見つめないで」
283 ブライアン:「どうしてだい?」
284 アリソン:「もう、貴方って本当意地悪ね」
285 ブライアン:「さっきのお返し」
286 アリソン:「馬鹿・・・」
287 ブライアン:「これってさ、夢じゃないんだよな・・・。またこうして、君の色々な表情が見れるなんて」
288 アリソン:「現実よ。・・・ねぇ、明日は何処に行く?」
289 ブライアン:「・・・」
290 アリソン:「ブライアンの行きたい所に行きましょう。何処かある?」
291 ブライアン:「・・・アリソン。俺、人間に見えるよな?」
292 アリソン:「ええ・・・。外見はアンドロイドに見えないよう、頑張ったから、人間に見えると思うわ。
どうしたのいきなり?」
293 ブライアン:「じゃあ、落ち着いたら俺も仕事探す。これから維持費とか、色々かかるだろう?」
294 アリソン:「そうだけど・・・」
295 ブライアン:「何か不味いのか?」
296 アリソン:「ブライアン、よく聞いて。貴方は確かに、見た目は生前の姿よ。
だけど・・・貴方が亡くなって、脳を電子化した後、貴方の遺体は、墓地へ埋葬したわ・・・。
だから、戸籍上では、貴方は、もう存在してないの・・・」
297 ブライアン:「だったら、仕事は無理だな・・・」
298 アリソン:「心配しないで! その分、私が働くわ。だから、貴方は何も心配しなくて良いのよ」
299 ブライアン:「それじゃあ、君に負担をかけてばかりだ。こんな俺にも何か出来る事は・・・」
300 アリソン:「ブライアン・・・。・・・だったら、こうするのはどうかしら? 私の代わりに、家事をやってくれる?」
301 ブライアン:「それだと・・・」
302 アリソン:「勿論、わかってる。食事は、ちゃんと私が作るわ。だから、それ以外をお願いして良い?」
303 ブライアン:「それなら俺にも出来そうだ。わかったよ」
304 アリソン:「決まりね。じゃあ、さっきの質問に戻るけど、明日は何処に行きたい?」
305 ブライアン:「君は何処に行きたい?」
306 アリソン:「質問を質問で返さないで」
307 ブライアン:「そうだな~。実はさ、行きたい所は一杯あるんだ。だけどな~」
308 アリソン:「何か問題?」
309 ブライアン:「死んでる人間が、人の多い場所に行ったら不味いだろ?
それこそ、誰かに知り合いに見られたら・・・ゾンビ!!!! ってなって世間を騒がすことになりそうだ・・・」
310 アリソン:「それなら心配しないで。私に良い考えがあるわ」
311 ブライアン:「その考えなら、絶対バレない?」
312 アリソン:「私を信じて」
313 ブライアン:「わかった。君を信じるよ」
314 アリソン:「それで、何処に行きたいの?」
315 ブライアン:「じゃあ、まずはアイススケート」
316 アリソン:「わかったわ。明日、行きましょう」
317 ブライアン:「楽しみだ~。でも、今夜は寝れるかな~。
あっ、アンドロイドだから、スリーピング機能が付いてるか! (笑う)」
318 アリソン:「何、馬鹿な事言ってるのよ。そんな昨日は付けてないわ。
貴方は、人間のように、自然に眠気が来たら、寝れるわよ」
319 ブライアン:「なんだ残念・・・」
320 アリソン:「何で残念なのよ・・・。あっ、さては、アンドロイドになって、寝なくても良いとか、好きな時間にすぐ寝れるから、
夜更かして、映画にドラマ観放題!!!とか思ってたのでしょ?」
321 ブライアン:「君はエスパーか!!! 凄い!!! 当たってるよ!!!」
322 アリソン:「貴方の考えてる事なんてお見通しよ。全く・・・」
323 ブライアン:「ごめんごめん」
324 アリソン:「限りなく人間と同じように生活して欲しい。そう思って、頑張ったの。
だから、夜更かしもしても良いけど、システムに影響が出るかもしれないし、程々にね・・・」
325 ブライアン:「あぁ、わかってる。君が大事に作り上げた体だ。無茶はしないよ」
326 アリソン:「さ~て、明日の為に、そろそろ寝ましょう」
327 ブライアン:「アリソン、悪い。先に寝ててくれ」
328 アリソン:「もう、言った側から・・・」
329 ブライアン:「久しぶりに、観たい映画があるんだ! お願い!!!」
330 アリソン:「・・・わかったわ。ちゃんと観た後は、寝てよね」
331 ブライアン:「約束する。おやすみ。アリソン」
332 アリソン:「おやすみなさい。あ・な・た」
333 ブライアン:「ええっ!?」
334 アリソン:「さっきの仕返し。じゃあね~」
335 ブライアン:「全く・・・。相変わらずの負けず嫌いなんだから・・・」
(翌日、ブライアンが目を覚ましリビングに向かうと、既にアリソンは色々支度をしていた)
336 アリソン:「おはよう。随分と遅い起床ね。余程、ベッドが心地良かったのかしら~」
337 ブライアン:「おはよう~。寝室が一緒なんだから、起こしてくれても良かったじゃないか?」
338 アリソン:「だって、余りにも気持ちよさそうな顔して、寝てたから起こしたら可哀想かなって」
339 ブライアン:「そりゃあ、お気遣いどうも」
340 アリソン:「どういたしまして。それより、体に何か異常はない?」
341 ブライアン:「何も問題ないよ。所で、俺のエネルギーに関して何だが・・・」
342 アリソン:「その点は心配しないで。あらゆる光量を貴方の髪が受け取り、エネルギーにしてくれるわ」
343 ブライアン:「それはつまり?」
344 アリソン:「簡単に言うと、髪の毛1本1本がハイパワーなソーラーパネルの代わりよ。だから貴方は
普通に生活していれば、室内でも室外でも、1時間くらいでエネルギーは充電されるわ」
345 ブライアン:「私生活に不自由を感じないように、配慮してくれたんだね」
346 アリソン:「そんな所よ。じゃあ、そろそろ出かけましょう。準備は出来てるわ」
347 ブライアン:「昨日言ってた良い考えだね」
348 アリソン:「そう。だから、ブライアン、これをかけて」
349 ブライアン:「サングラス?」
350 アリソン:「それとこのジャケットも」
351 ブライアン:「わかった」
352 アリソン:「サイズはどうかしら?」
353 ブライアン:「ねぇ、アリソン!」
354 アリソン:「何~? 着替え終わっ・・・」
355 ブライアン:「ダダンダンダダン! I'll be back(アイルビーバック)」
356 アリソン:「(吹き出す)もう! 何してるのよ!!!」
357 ブライアン:「君の方こそ、黒いサングラスに、黒いジャケット用意して、これを期待してたんだろ!」
358 アリソン:「少しは期待してたけど・・・まさか本当にするなんて・・・(笑う)」
359 ブライアン:「君が喜ぶと思ってさ」
360 アリソン:「大満足よ! それに貴方は、戻って来たわ。私の元へ。だから間違ってない」
361 ブライアン:「あぁ、そうだな」
362 アリソン:「じゃあ、そろそろ出発しましょう」
363 ブライアン:「それは良いけど俺の車、持ってきてるのか?」
364 アリソン:「流石に処分しないと行けなかったから、新しく買ったわ」
365 ブライアン:「じゃあ、新しい車を運転出来るのか。楽しみだ」
366 アリソン:「ブライアン。貴方は、助手席よ」
367 ブライアン:「何で? 君は運転出来ないんじゃ?」
368 アリソン:「5年も経ってるのよ。無事に取れたわ」
369 ブライアン:「アリソンが免許を・・・」
370 アリソン:「何よ。その言い方・・・」
371 ブライアン:「免許取ってから、何年経った?」
372 アリソン:「半年程・・・」
373 ブライアン:「まだ今年じゃないか!? 本当に大丈夫か・・・?」
374 アリソン:「心配しないで! 普通に買い物にも行ってたし大丈夫よ」
375 ブライアン:「・・・」
376 アリソン:「良いから、ガレージに行くわよ」
377 ブライアン:「わかったよ」
間
378 アリソン:「ねぇ、目瞑って」
379 ブライアン:「どうして?」
380 アリソン:「良いから早く!」
381 ブライアン:「わかったわかった。・・・これで良いかい?」
382 アリソン:「ええ。良いわ」
(そう言うと、アリソンはガレージの開閉スイッチを押す。ゆっくりと開いていき、アリソンの買った新しい車が姿を現す)
383 アリソン(M):「やっとブライアンと色んなところにいける!
この5年に見つけた素敵なもの、彼にも沢山、見せてあげなきゃ!
新しい車だけど・・・この車種に色、気に入ってくれるかな・・・」
384 ブライアン:「アリソン。もう目開けて良いかい?」
385 アリソン:「良いわよ。ゆっくり開けて」
386 ブライアン:「これは・・・」
387 アリソン:「最新型のSUVよ。色は貴方も乗る事を考えて、黒にしてみたけど、どうかしら?」
388 ブライアン:「君は、最高の妻だ!!! こんな車に乗れるなんて夢みたいだ!!!」
389 アリソン:「大喜びね! 早く助手席に乗って」
390 ブライアン:「なぁ、アリソン・・・。お願いだ・・・。俺に運転させてくれないか?」
391 アリソン:「ブライアン・・・」
392 ブライアン:「だって、こんな最高の車なんだ! 早く運転してみたいよ!」
393 アリソン:「・・・そうしてあげたいけど、まだ駄目よ・・・。その体に慣れない内には危ないわ・・・。
様子を見て、運転させてあげるから、待ってくれる?」
394 ブライアン:「・・・我儘言ってごめん」
395 アリソン:「落ち込まないで。すぐに運転出来るようになるわ。車を前に出すから待ってて。・・・これでよしっ。さぁ、乗って」
396 ブライアン:「あぁ」
(車に乗り込むアリソンとブライアン)
397 アリソン:「シートベルト、OK?」
398 ブライアン:「ちゃんとしたよ」
399 アリソン:「それじゃあ、出発する・・・」
400 ブライアン:「それバックギアに・・・」
401 アリソン:「えっ? きゃああああ!!!」(アクセルを勢いよく踏む)
402 ブライアン:「うわああああ!!! ブレーキ!!! ブレーキ!!!」
(慌ててブレーキを踏むアリソン。それを見て問いかけるブライアン)
403 アリソン:「はぁ、はぁ、はぁ・・・。危なかった・・・」
404 ブライアン:「なぁ、やはり俺が運転した方が・・・」
405 アリソン:「任せといて。これは、緊張しただけ。冷静になれば大丈夫よ」
406 ブライアン:「あぁ・・・」(思わずシートベルトをぎゅっと握りしめ身構える)
407 アリソン:「じゃあ、気を取り直して。出発!」
(先程とは違い冷静に運転を続けるアリソン。ブライアンは窓から外を見ている)
間
408 アリソン:「どう? だいぶ街の雰囲気も変わったでしょ?」
409 ブライアン:「あんな建物、前は無かった」
410 アリソン:「貴方が亡くなってから、2年ぐらい経って出来たわ。複合施設で、1階にあるお店、オススメなのよ!
今度、一緒に行きましょう!」
411 ブライアン:「ウキウキしてるって事は・・・さては、俺が蘇ってから、行きたい場所、色々リサーチしてただろう?」
412 アリソン:「ギクッ・・・」
413 ブライアン:「相変わらず、わかりやすいな。顔に出てるぞ。そうだって」
414 アリソン:「良いでしょ! もう!!!」
415 ブライアン:「悪い悪い。楽しみにしてたんだよな。俺とこうして、出かけるの」
416 アリソン:「別にそんなんじゃ・・・」
417 ブライアン:「その割には、また顔が真っ赤だぞ」
418 アリソン:「馬鹿! そんな事ない!!!」(助手席のブライアンを見てて、前を見てない)
419 ブライアン:「悪かったって・・・。って、おい! 前 前 前!!!」
420 アリソン:「えっ!? きゃあああああああああ!!!!
ぶつかる!!!!!!」(前の車にぶつかりそうになり、急ハンドルをきる)
421 ブライアン:「うわっ!? それじゃ、今度は壁にぶつかる!!!!! ハンドルきって!!!!」
422 アリソン:「こう!?」
423 ブライン:「よしっ! 良いぞ! 安定してきた! そのまま、ハンドルを維持して」
424 アリソン:「ええ!」
間
425 ブライアン:「もう安心だな。一時はどうなるかと思ったぞ。運転中は、前をちゃんと見なきゃ駄目だろ」
426 アリソン:「ごめんなさい・・・」
427 ブライアン:「俺も、からかい過ぎた。運転中は駄目だな・・・。反省してるよ」
428 アリソン:「程々にしてよね。もう・・・」
429 ブライアン:「どれくらいで到着?」
430 アリソン:「20分くらいよ」
431 ブライアン:「そう。・・・なぁ、運転、疲れてないか?」
432 アリソン:「後少しだから、平気よ」
433 ブライアン:「無理するなよ」
434 アリソン:「ブライアン・・・。貴方もわかりやすいわ。・・・仕方ないわね。全く・・・」
435 ブライアン:「え? 何が?」
436 アリソン:「教えてあ~げない。駄目なものは駄目なの。大人しく乗ってて」
437 ブライアン:「俺は、別に運転したいなんて・・・」
438 アリソン:「思ってるくせに」
439 ブライアン:「うっ・・・運転したいよ」
440 アリソン:「素直でよろしい。このまま今回のデートで問題なければ、来週からでも、運転させてあげる。
だから、そんな落ち込まないで」
441 ブライアン:「本当に!?」
442 アリソン:「ええ、本当よ。もう、本当、わかりやすいんだから。でも、そんな無邪気な部分に、
惹かれたのかもね」
443 ブライアン:「俺も、そんな優しい部分に、惹かれたんだよ」
(スケート場に到着)
444 アリソン:「嬉しいわ。ブライアン。さ~て、到着よ。心の準備は良い?」
445 ブライアン:「何処も変じゃないかな?」
446 アリソン:「大丈夫。何処からみても、人間に見えるわ。自信持って!」
447 ブライアン:「わかった。君を信じる」
448 アリソン:「その調子よ。さぁ、行きましょう」
(スケート場内)
449 アリソン:「アイススケートなんて、久しぶりだわ。上手く滑れるかしら」
450 ブライアン:「大丈夫。万が一転んだって、俺が支えてあげる」
451 アリソン:「私より転んでたくせに」
452 ブライアン:「今の俺は、前の俺とは違う。今は、何でも上手く出来る気がするんだ」
453 アリソン:「何だか別人みたい」
454 ブライアン:「君のおかげで、俺はスーパーヒーローさ。このまま、世界すら救っちゃうかもな」
455 アリソン:「それも素敵だけど、あいにく、そんな機能は付けてないわ。普通で良いのよ。
貴方は、私を守ってくれるこの世で一人のスーパーヒーローよ」
456 ブライアン:「君が望むのなら、俺は永遠に守り続ける。この体が動かなくなるまで」
457 アリソン:「ねぇ、ブライアン?」
458 ブライアン:「何だい? アリソン?」
459 アリソン:「貴方って、そんなにロマンチックだったかしら?」
460 ブライアン:「君がこの世に居る限り、俺はいくらでもロマンチックになれるよ」
461 アリソン:「・・・もう、そろそろ普通に戻って」
462 ブライアン:「結構、良い線、言ってたと思うんだけど、駄目だった?」
463 アリソン:「貴方らしくないわ。今の方が、ずっと好きよ。ねぇ、早く滑りましょう」
464 ブライアン:「置いてかないでくれ。アリソン」
465 アリソン:「私だけのスーパーヒーローさん、早く追いついてみて~!」
466 ブライアン:「よ~し、見てろよ!」
467 アリソン:「上手いわよ。ブライアン! その調子!」
468 ブライアン:「ねぇ、見てよ。俺、こんなに上手に滑れる!」
469 アリソン:「見えてるわ! さぁ、早く来て!」
470 ブライアン:「今行くから、逃げないでよ!」
471 アリソン:「ええ!」
472 ブライアン:「それ~!!!」
473 アリソン:「ねぇ、ちょっとスピード出し過ぎよ!」
474 ブライアン:「平気平気! もっと加速だ~!」
475 アリソン:「大丈夫かしら・・・」
(アリソンに追いついて、並んで滑るブライアン)
476 ブライアン:「お待たせ~。スーパーヒーロー、只今参上」
477 アリソン:「驚いたわ。いつからそんな上手に滑れるようになったの?」
478 ブライアン:「君に馬鹿にされっぱなしだったからね。密かに特訓してたのさ」
479 アリソン:「特訓の成果ってわけね。じゃあ、私も本気、出しちゃおうっと。それ~!」
(更に加速して、離れるアリソン)
480 ブライアン:「待ってくれ。君こそ、特訓してたんじゃないの?」
481 アリソン:「追いついたら、教えてあげるわ」
482 ブライアン:「わかった。追いついてやる。負けるか~!」
483 アリソン:「凄いわ。ブライアン。もう追いついたのね!」
484 ブライアン:「当然。俺だって、このくらい出来るのさ!」
485 アリソン:「私の負けね。教えてあげる・・・。って、ねぇ、ブライアン、何処行くのよ!?」
486 ブライアン:「アリソン! ヤバいよ! スピード上げ過ぎて、止まれな~い!!!」
487 アリソン:「嘘でしょ!? ブライアン、前、前!!!」
488 ブライアン:「うわああああああ!!! フェンスにぶつかる!!!」
(スケート場のフェンスにぶつかり、倒れるブライアン。周りの利用客も、何事だと集まってくる)
489 アリソン:「ブライアン!? 大丈夫!?」
490 ブライアン:「・・・頭はぼ~っとするけど、無事みたい・・・」
491 アリソン:「無茶し過ぎよ! ほらっ、立って」
492 ブライアン:「ありがとう。アリソン。・・・皆さん、お騒がせしました! 無事です! 心配しないで大丈夫です!」
(無事なのがわかると、周りの利用客も再び各々、スケートを楽しむために戻る)
493 アリソン:「本当、大丈夫?」
494 ブライアン:「平気だよ。どこも痛くないし」
495 アリソン:「なら良いけど・・・。念のために、家に帰ったら、チェックさせて」
496 ブライアン:「わかった。それで良いよ」
497 アリソン:「ねぇ、少し休憩しましょう」
498 ブライアン:「あぁ、そうしよう」
間
499 ブライアン:「なぁ、アリソン・・・」
500 アリソン:「何? ・・・やっぱりどこか痛い?」
501 ブライアン:「そうじゃない。
・・・こうして君とまた一緒に、楽しんだり出来るのが、まだ信じられない。本当に夢じゃないよね?」
502 アリソン:「大丈夫。ちゃんと現実よ。貴方は、こうして今、私の目の前でちゃんと生きてる。安心して」
503 ブライアン:「・・・俺、生きてるんだ・・・。生きてるなら・・・」
504 アリソン:「何? どうしたの?」
505 ブライアン:「・・・いや、何でもない」
506 アリソン:「そう・・・。さてと、もう少し滑ったら、家に帰りましょう」
507 ブライアン:「そうだな。そうしよう」
(家に戻って来たアリソンとブライアン)
間
508 アリソン:「ただいま。・・・久しぶりの長距離ドライブは、疲れたわ」
509 ブライアン:「ソファーで座ってて。今、コーヒー、淹れてくる」
510 アリソン:「ブライアン。コーヒーだけど、地下のラボに持ってきて。」
511 ブライアン:「アリソン。夕飯もまだじゃないか。チェックは、明日でも良いよ」
512 アリソン:「駄目よ。何かあってからでは遅いの。お願いだから、言う通りにして」
513 ブライアン:「・・・わかったよ。ラボに持ってく」
514 アリソン:「ありがとう。ブライアン」
間
515 ブライアン:「はい、コーヒー」
516 アリソン:「そこのデスクに置いといて。・・・じゃあ、チェックするから、服脱いで、その装置の上に立って」
517 ブライアン:「チェックだけど、どれくらいかかる?」
518 アリソン:「まだわからないわ。初めての事だったし、少し時間かかるかも。でも、心配しないで。任せて」
519 ブライアン:「わかった。君を信じる。・・・さぁ、これで良い?」
520 アリソン:「良いわ。・・・じゃあ、始めるわね」
521 ブライアン:「あぁ、頼む」
522 アリソン:「チェック開始」
間
523 ブライアン:「アリソン、何だか・・・、眠くなってきた・・・。・・・これ正常なの・・・?」
524 アリソン:「ええ、正常よ。眠ってる間に、チェックは終わるわ。・・・おやすみ。ブライアン」
525 ブライアン:「おや・・すみ・・・。アリ・・・ソン・・・」
間
526 アリソン:「本当、嘘が下手なんだから・・・。待ってて。ブライアン・・・」
間
(チェックが終わり目覚めるブライアン)
527 ブライアン:「・・・おはよう。・・・アリソン。・・・チェックは終わった?」
528 アリソン:「おはよう・・・。ブライアン。ええ、終わったわ。・・・ねぇ、調子はどう?」
529 ブライアン:「・・・良い感じだけど。・・・あれ? アリソン、何か雰囲気、変わった?」
530 アリソン:「寝ぼけてる感じからしたら、正常ね。ねぇ、リビングで待ってて」
531 ブライアン:「わかった」
間
532 ブライアン:「・・・あれ? 何かリビングも、昨日と違って見える・・・。
まだ、俺、寝ぼけてるのかな・・・」
533 アリソン:「お待たせ。ねぇ、ブライアン。見て。今朝の朝食も美味しく出来たわ」
534 ブライアン:「アリソン・・・。君の手料理は、いつ見ても美味しそうだね。はぁ~。
・・・見てるだけじゃなくて、また味わえたら、最高なんだけどな~」
535 アリソン:「・・・やっぱり、本音隠してたわね。ねぇ、ブライアン?」
536 ブライアン:「何だい? アリソン・・・?」
537 アリソン:「人間じゃなくなって、出来なくなった事も、多いかもしれない。
でもね、一人で悩まないで・・・。私達、夫婦なのよ。
私、貴方の為なら、どんな困難な事でも、やり遂げるわ。
だから、諦めたり、一人で悩んだりしないで・・・」
538 ブライアン:「ごめん・・・。アリソン。君に負担かけたくなくて、言えなかった・・・」
539 アリソン:「負担なんて思う訳ないでしょ。これからは、ちゃんと言ってよね」
540 ブライアン:「わかった。約束する」
541 アリソン:「宜しい。・・・それじゃ、朝食にしましょう。・・・貴方の為に、久しぶりに腕を振るった料理が冷めちゃうわ!」
542 ブライアン:「え・・・!? 今、何て・・・?」
543 アリソン:「・・・はい。貴方の分」
544 ブライアン:「でも・・・」
545 アリソン:「私を信じて・・・」
546 ブライアン:「うん・・・」(恐る恐る料理を口に運ぶ)
547 アリソン:「・・・どう?」
548 ブライアン:「・・・君の手料理の味だ・・・。・・・ちゃんと味がするよ・・・。・・・美味しいよ・・・!」
549 アリソン:「・・・良かった・・・」
550 ブライアン:「・・・でも、どうして? 一体、どういう事?」
551 アリソン:「・・・ブライアン。・・・苦労したのよ。・・・でも、ちゃんと成功した。2年、待たせる事になっちゃったけど・・・」
552 ブライン:「え!? 2年!? じゃあ、君の雰囲気も、家の中の雰囲気が変わったのも!?」
553 アリソン:「全部、気のせいじゃないわ。・・・あのデートの日から2年よ。・・・長い間、待たせてごめんなさい・・・」
554 ブライアン:「謝らないで。アリソン。・・・君は謝る必要なんてないよ。むしろ俺こそ、無理させてごめん・・・」
555 アリソン:「大好きな貴方の望みだもの。無理なんかじゃない。こうして、喜んでくれるだけで、私は嬉しいわ。
ほらっ、どんどん食べて」
556 ブライアン:「うん。・・・俺は、世界で一番の幸せ者だ。・・・こんな優しくて、心の温かな奥さんと一緒になれたんだから」
557 アリソン:「これ以上、褒めても、食後のデザートしかないわよ」
558 ブライアン:「それで十分だよ。ありがとう。アリソン」
559 アリソン:「食べた物だけど、中で分解して、貴方の動力エネルギーに変換できるようにしたわ。
だから、いくらでも原理上は食べられるけど、食べ過ぎないでね」
560 ブライアン:「太っちゃうからかい?」
561 アリソン:「太ったりはしないけど、貴方が望むのなら、そういう体型にする事も・・・」
562 ブライアン:「そこまでしなくて良いよ。今のこの体型で十分だ」
563 アリソン:「わかったわ。私、そろそろ仕事に行く時間だから、行くわね」
564 ブライアン:「わかった。洗い物と家の掃除は任せて」
565 アリソン:「頼りにしてるわ。じゃあ、また夜にね」
566 ブライアン:「行ってらっしゃい」
(仕事に出かけるアリソン)
567 ブライアン:「さてと、アリソンが帰ってくるまでに、しっかり家事しとかなくちゃな。・・・ん? この封筒はなんだ?
アリソンからだ・・・」
(アリソンからのメッセージを読むブライアン)
568 アリソン:「ガレージに行ってみて。そこに貴方へのプレゼントがあるわ。・・・P.S 家事はちゃんとやってね。アリソンより」
569 ブライアン:「ガレージって・・・まさか・・・!」
(ガレージに行くと、2年前に見た車とは別の車が置いてある)
570 ブライアン:「やっぱり! 新しい車だ! でも、鍵は何処にあるんだ?」
571 車のAI:「声紋認証確認。初めましてブライアン」
572 ブライアン:「え!? 喋った!? 初めまして・・・」
573 車のAI:「私は、アリソンが開発したAIです。ブライアンの運転を安全にサポートするため生まれました。何処へ向かいますか?」
574 ブライアン:「何処に行こうか・・・。あっ、駄目だ駄目だ。まずは、家事からだ。また後で来るよ」
575 車のAI:「わかりました。ブライアン」
(家事をすませ戻ってくるブライアン)
576 ブライアン:「ただいま」
577 車のAI:「おかえりなさい。ブライアン。出かける準備は出来ましたか?」
578 ブライアン:「準備オッケー」
579 車のAI:「それでは、お乗りください」
580 ブライアン:「内装も好みだ」
581 車のAI:「気に入っていただけて何よりです。何処へ向かいますか?」
582 ブライアン:「えっと、この車は自動運転しか搭載されてないの?」
583 車のAI:「いえ。自動運転と手動運転の切り替えが出来ます。ハンドルのこちらのボタンもしくは、声紋認証で可能です」
584 ブライアン:「手動運転も出来るのは、嬉しいな」
585 車のAI:「それでは、手動運転に切り替えますか?」
586 ブライアン:「あぁ、頼む」
587 車のAI:「声紋認証、確認。手動運転に切り替えます」
588 ブライアン:「ありがとう。さぁ、出発だ」
589 車のAI:「安全運転を心がけてください」
590 ブライアン:「わかってるよ」
間
(仕事を終え、帰宅するアリソン)
591 アリソン:「ただいま、ブライアン、何処に居るの~・・・?
ふ~・・・、車が無いって事は、早速、運転しに行ったわね。・・・本当、好きなんだから・・・。
あっ・・・、帰ってきた」
592 ブライアン:「おかえり。アリソン」
593 アリソン:「こんな時間まで走りに行くなんて、余程気に入ったのね」
594 ブライアン:「物凄く気に入ったよ。ありがとう。アリソン!」
595 アリソン:「どういたしまして。さぁ、ディナーにしましょう」
間
596 アリソン(N):「それから暫く、幸せな日々が続いた。
ブライアンは優しくて、本当に夢のような毎日だった。
でも・・・、ふと思った・・・。
ブライアンは、年を取らずに若いままだけど・・・、
私は・・・、年を取り、やがて・・・」
597 ブライアン:「ねぇ、アリソン。・・・今日も良い天気だし、ドライブに行かない?」
598 アリソン:「ごめんなさい・・・。これから用事があるの・・・。
悪いけど、一人で行ってきて・・・」
599 ブライアン:「そう・・・。なら仕方ない。・・・じゃあ、行ってくるね」
600 アリソン:「行ってらっしゃい・・・」
601 アリソン:「このままじゃ行けないわ。早く行動しなくちゃ・・・」
間
602 ブライアン:「ただいま~。あれ? アリソン・・・? まだ帰ってないのか・・・。
仕方ない・・・。この前のお詫びに、今夜のディナーは俺が作るか・・・」
間
603 アリソン:「・・・遅くなっちゃったわ・・・。ブライアン、ただいま~」
604 ブライアン:「夜遅くまで、大変だったね・・・。お腹、空いたんじゃない? 今日は俺が・・・」
605 アリソン:「ごめんなさい・・・。外で済ませちゃったわ。・・・明日、食べるわね」
606 ブライアン:「そう・・・」
607 ブライアン(N):「この日から、アリソンの帰りが遅い日が続いた・・・。
幾ら何でもおかしいと思いながらも、彼女の必死な表情を見たら、理由を訊けなかった・・・。
そのまま、1カ月、続いたある日だった・・・」
608 アリソン:「ねぇ、ブライアン・・・、今夜だけど・・・」
609 ブライアン:「いつも通り、遅くなるんだろう・・・。こっちは適当にディナー済ますから、気にしなくて良いよ」
610 アリソン:「ごめんなさい・・・。・・・イヴは、絶対に貴方と過ごせるから、それだけは約束する・・・」
611 ブライアン:「わかったよ。・・・ほら、急ぐんだろう? もう良いから、行って」
612 アリソン:「行ってきます・・・!!!」
613 ブライアン:「・・・さて、部屋の掃除から始めるか・・・。
先ずは、アリソンの部屋から・・・。
・・・あれ? アリソン、机の上のノートパソコンの電源、入れっぱなしだよ・・・。
さては、此処で作業したまま、寝ちゃったんだな・・・。
本当、仕方ないんだから・・・。・・・ん!? これって・・・。
そんな・・・。・・・アリソン、何てことを・・・!?」
614 アリソン:「・・・急ぎすぎて、ノートパソコン、忘れちゃった・・・。
・・・ブライアンは、出かけて居ないみたいね・・・。
後、もう少しだから、頑張らなくちゃ・・・。
え? ドア空いてる・・・。まさか・・・!?
・・・間違いない。見たんだ・・・。こうしちゃ居られないわ・・・!」
間
615 ブライアン:「・・・はぁ~」
616 車のAI:「溜息ばかり付いていると、幸せが逃げますよ。ブライアン」
617 ブライアン:「・・・お前は、意思を持って、辛い事はないか・・・?」
618 車のAI:「ありません。ブライアンは、辛いのですか?」
619 ブライアン:「・・・あぁ、今、辛いよ・・・」
620 車のAI:「私で良ければ、理由を聞きますよ。話してください」
621 ブライアン:「アリソンが俺に隠れて、進めている計画・・・、見てしまったんだ・・・」
622 車のAI:「・・・」
623 ブライアン:「はぁ~・・・。沈黙って事は、お前も知ってたんだな・・・」
624 車のAI:「申し訳ございません。アリソンから禁じられていたので、伝えられませんでした」
625 ブライアン:「・・・律儀なんだな。・・・なぁ、俺はどうすれば良い?」
626 車のAI:「素直な気持ち、伝えたらどうですか?」
627 ブライアン:「それが出来たら、此処まで悩んだりしないだろう・・・」
628 車のAI:「残念ですが、答えを出す時間のようです」
629 ブライアン:「どうして?」
630 車のAI:「後方から、アリソンの車が近付いてます」
631 ブライアン:「何でだよ・・・。どんな顔して会えば良いか分からないよ・・・!
・・・自動運転、解除! 手動運転に、切り替えてくれ・・・!」
632 車のAI:「許可出来ません。新たなルートを受信。自動運転を続けます」
633 ブライアン:「覚悟を決めるしかないのか・・・」
間
634 車のAI:「目的地に到着しました。自動運転を終了します」
635 ブライアン:「・・・此処は、セントラルパーク・・・」
636 車のAI:「アリソンが待っています。素直な気持ちを伝えてください」
637 ブライアン:「よし・・・。行ってくる」
間
638 アリソン:「ブライアン・・・。あのね・・・」
639 ブライアン:「・・・此処も久しぶりだな~。・・・アリソン、少し歩いて話そう・・・」
640 アリソン:「ええ・・・」
641 ブライアン:「・・・」
642 アリソン:「・・・」
643 ブライアン:「良かった、まだ此処にあった。覚えてるだろう? 初めて、君と出会ったベンチだ」
644 アリソン:「忘れたりしないわ・・・。読書していたら、いつの間にか横に座ってたわね・・・」
645 ブライアン:「あぁ・・・。読書してる姿が、気になって・・・、気付いたら、座ってたよ」
646 アリソン:「ずっと私の事、見ていて、可笑しかった・・・」
647 ブライアン:「仕方ないだろう・・・。一目惚れだったんだ・・・」
648 アリソン:「やっぱり、そうだったんだ・・・」
649 ブライアン:「アリソンは、俺の事、可笑しい人としか思ってなかったと思うけど・・・」
650 アリソン:「ううん・・・。今だから言うとね・・・。あの時、私も同じ気持ちだったのよ・・・」
651 ブライアン:「え?」
652 アリソン:「だから、あの時、嬉しかったわ・・・」
653 ブライアン:「初耳なんだけど。それじゃあ、その後に、俺からのデートを断った理由は?」
654 アリソン:「あれは・・・、初対面でオーケーしちゃったら、軽い女だって思われるかもしれない・・・。
そう、思ったからよ・・・」
655 ブライアン:「そんな事、思ったりしないよ・・・。馬鹿だな・・・」
656 アリソン:「慎重だったのよ・・・。だって、ずっと一緒に居たいと思う人に、巡り合えたんだから・・・」
657 ブライアン:「ずっと一緒にか・・・。そうだとしても、あの計画は・・・、相談して欲しかった・・・」
658 アリソン:「言わなきゃと何度も思ったわ。でも、貴方の事だから反対すると思って・・・」
659 ブライアン:「あぁ・・・。反対だよ・・・。
俺と一緒に居たいからって、自分自身もアンドロイドになるなんて・・・。
アリソンには、普通に年を取って・・・、寿命を迎えて死んで欲しい・・・」
660 アリソン:「やはりそうよね・・・」
661 ブライアン:「此処に来るまでは、その選択しか無かった」
662 アリソン:「え?」
663 ブライアン:「でも、君とこのベンチで、昔の事を話してたら・・・、他の選択肢も悪くないかな~とも思えてね・・・。
だから、アリソンが本当に望むことなら・・・、俺は、その選択を受け入れるよ」
664 アリソン:「ブライアン・・・」
665 ブライアン:「でも、約束してくれないか。決して無理はしない事。
後、俺達、パートナーなんだから、悩んだ時は、打ち明ける事。
・・・もしかしたら、君が浮気しているかもって、不安で寝れない時もあったんだ・・・」
666 アリソン:「浮気なんて、一度も考えた事はないわよ。
どちらの選択をしたとしても・・・、私は生涯、貴方のパートナーよ・・・。
だから、心配しないで・・・」
667 ブライアン:「アリソン・・・」
668 アリソン:「ブライアン・・・。私の理想の旦那様・・・。愛しているわ・・・」
669 ブライアン:「俺も・・・、愛しているよ・・・。アリソン・・・」
間
人間のままなら、【670】へ
アンドロイドに変わって生きるなら、【702】へ
670 アリソン:「私は・・・、1週間、迷いながらも、どちらを選ぶか決断した・・・」
間
(アリソンとブライアンの寝室)
671 ブライアン:「・・・おはよう、アリソン」
672 アリソン:「あぁ・・・。・・・おはよう・・・。ブライアン」
673 ブライアン:「今朝は、顔色が良さそうだな。・・・起きれるかい?」
674 アリソン:「・・・ねぇ・・・、ブライアン・・・。私、綺麗・・・?」
675 ブライアン:「・・・あぁ。・・・出会った頃から変わらず、綺麗だよ・・・」
676 アリソン:「ふふふ・・・。相変わらず・・・、お世辞が上手ね・・・。でも、気遣わなくて良いのよ・・・。
・・・自分が、年老いたことは、自分がよく知ってるわ・・・」
677 ブライアン:「・・・後悔してないかい? 本当は、もっと一緒に行きたかったんじゃ・・・」
678 アリソン:「・・・振り返ってみると・・・、後悔もあったのかもしれない・・・。
ブライアンは、若い頃の姿のままで・・・、私は・・・、一日ずつ年を取って・・・、
顔も手も、皺が増えていったわ・・・。・・・そんな時は、若返りの研究でも・・・、
とかも、考えたり・・・、今思えば・・・、老いを感じる事が、とても怖かった・・・」
679 ブライアン:「ごめん・・・、俺があの時、強く言い過ぎたから・・・」
680 アリソン:「ううん・・・。そうじゃないわ・・・。・・・あの時の言葉、嬉しかったのよ・・・。
・・・あれから、沢山、笑ったり・・・、泣いたり・・・、怒ったり・・・、
時には、夫婦げんかもしたわよね・・・。・・・その一つ一つの日々が・・・、
今も、目を閉じたら・・・、鮮明に浮かんでくる・・・。
・・・ブライアン、ありがとう・・・。
愛している貴方に・・・、受け入れて貰えた事が・・・、凄く嬉しかった・・・。
・・・・・・、だから後悔もしたけど・・・、貴方と出会えて、幸せな人生だった・・・わ・・・」
681 ブライアン:「・・・アリソン、まだ行っちゃ駄目だ・・・! ・・・俺を一人にしないでくれ・・・!」
682 アリソン:「ブライアンったら、泣かないで・・・。・・・安心して、旅立てないじゃない・・・」
683 ブライアン:「・・・いつか別れの日が来るって、覚悟していたけど・・・、まだ早過ぎる・・・」
684 アリソン:「・・・いいえ、私は・・・、もう80歳よ・・・。・・・長生き出来たわ・・・。
お願い・・・、ブライアン・・・。・・・もう、良いのよ・・・」
685 ブライアン:「でも・・・!」
686 アリソン:「・・・ねぇ・・・、窓を開けてくれる・・・?」
687 ブライアン:「あぁ・・・。・・・これで良いかい?」
689 アリソン:「・・・この部屋からの景色・・・、本当に綺麗・・・」
690 ブライアン:「当然だ・・・。愛しているアリソンに、この綺麗な景色、プレゼントしたのだから・・・」
691 アリソン:「・・・こうして一緒に、あの岬を眺めていると・・・、昔に戻ったようね・・・」
692 ブライアン:「あぁ・・・」
693 アリソン:「・・・ねぇ、ブライアン、見て・・・。・・・雪よ・・・。・・・岬に舞い降りた天使みたいで、綺麗・・・」
694 ブライアン:「・・・あぁ。・・・君みたいに綺麗だ・・・」
695 アリソン:「・・・ブライアン・・・」
696 ブライアン:「何だ・・・?」
697 アリソン:「・・・ア・・・リ・・・ガ・・・ト・・・ウ・・・」
698 ブライアン:「・・・アリソン・・・?」
699 アリソン:「・・・・・・・・・」
700 ブライアン:「・・・俺も・・・、君と出会えて・・・、幸せだったよ・・・。・・・ゆっくりお休み・・・、アリソン・・・」
間
701 ブライアン:(N)「・・・岬に舞い降りた白い天使は・・・、まるで彼女を祝福するかのように・・・、
静かに・・・、俺達の家に、降り積もっていった・・・。
・・・残された自分に、何が出来るか、今は、何もわからないけど・・・、
ただ一つ、言える事は・・・、アリソンの分まで・・・、
俺は・・・、この第2の人生を・・・、精一杯、生きるという事だけだ・・・」
【人間のままなら】 END
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702 アリソン:(N)「私は・・・、1週間、迷いながらも、どちらを選ぶか決断した・・・」
703 アリソン:(N)「・・・2年後・・・。・・・私は・・・、ブライアンと同じアンドロイドに、生まれ変わった・・・」
間
(自宅内の研究施設)
704 ブライアン:「・・・アリソン、・・・気分はどうだい・・・?」
705 アリソン:「・・・悪くない。・・・各、免疫システムも正常に、機能してる・・・」
706 ブライアン:「・・・一人で立てるかい・・・? 手、貸そうか・・・?」
707 アリソン:「・・・平気よ、自分で、歩ける・・・きゃっ・・・!」
708 ブライアン:「危ない・・・!」(アリソンを支える)
709 アリソン:「・・・ありがとう・・・、ブライアン・・・」
710 ブライアン:「・・・良いんだ。・・・ほらっ、俺と歩調、合わせて・・・」
711 アリソン:「うん・・・。・・・ねぇ、ブライアン・・・」
712 ブライアン:「どうした・・・?」
713 アリソン:「・・・ブライアンが、作ってくれたベンチに座りたい・・・」
714 ブライアン:「お安い御用だ・・・」
間
(家の玄関に設置しているベンチ)
715 アリソン:「今日も・・・、良い天気ね・・・」
716 ブライアン:「あぁ・・・。・・・さぁ、着いたよ。・・・ゆっくり腰かけて・・・」
717 アリソン:「・・・うん。・・・もう、大丈夫・・・。ありがとう・・・、ブライアン・・・」
718 ブライアン:「・・・なぁ、アリソン・・・」
719 アリソン:「何・・・?」
720 ブライアン:「・・・俺も隣に、座って良いかな・・・?」
721 アリソン:「うふふふ・・・!」
722 ブライアン:「ちょっと、どうして笑うんだい? そんなに可笑しい事、言ったかな~?」
723 アリソン:「ええ・・・。だって、今のブライアン、出会った頃のようだった・・・」
724 ブライアン:「それもそうか・・・。あっはははは・・・・」
725 アリソン:「笑ってないで、早く座ってよ・・・」
726 ブライアン:「あぁ・・・」
727 アリソン:「・・・此処から見る岬も綺麗ね・・・」
728 ブライアン:「君の方が綺麗だよ・・・。アリソン・・・」
729 アリソン:「・・・もう・・・、そんな真面目なトーンで、言わないでよ・・・。
こっちまで照れちゃうじゃない・・・」
730 ブライアン:「・・・ずっと俺達、一緒だ・・・」
731 アリソン:「うん・・・。でも、後悔してない・・・?
化学は進化し続けてるけど・・・、世間からしたら、
まだ私達のような関係は・・・、理解に苦しむ人々も居るわ・・・」
732 ブライアン:「後悔はしてないよ・・・。・・・少しずつ世間を変えていくさ・・・。
この先、何年、何十年、何百年、かかったとしても・・・、
君と共になら・・・、必ず良い方向に、未来は進むはずだ・・・」
733 アリソン:「ブライアン・・・。・・・そうね、きっとそうなる・・・。
いいえ、そうして見せる・・・。
私ね・・・、貴方に受け入れられるか・・・、怖かった・・・。
でも・・・、もう怖がったりしない・・・。
だって・・・、隣には・・・、ブライアン・・・、貴方が居てくれるのだから・・・」
734 ブライアン:「・・・あっ、雪だ・・・」
735 アリソン:「・・・綺麗・・・。まるで、私達の新しい未来を祝福してくれてる天使みたい・・・」
736 ブライアン:「新しい未来か・・・。うん、そうだな・・・。今日、此処から、新たに、二人の未来は始まるんだ・・・」
737 アリソン:「ブライアン・・・。そうね・・・、良い未来にしましょう・・・」
738 ブライアン:「・・・そうだな。・・・アリソン・・・」
739 アリソン:「何・・・?」
740 ブライアン:「ハッピーバースデー! アリソン・・・」
741 アリソン:「ブライアン・・・。・・・ハッピーバースデー! ・・・一緒に、第2の人生、楽しみましょう・・・」
741 アリソン:(N)「世間に、アンドロイドは認知され始めてるけど・・・、
まだ、全ての人類が、そうとは限らない・・・。
だからこの先、どんな困難が、待ち受けているかは、まだわからないけど・・・、
・・・ブライアンと一緒なら・・・、きっと乗り越えていける・・・。
・・・未来は、・・・自分達で、切り開いていくものだから・・・」
【アンドロイドに変わって生きるなら】 END
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