intention~appetite~

 

 

作者 ヒラマ コウ

 

 

 

登場人物

 

 

 

天使・・・洋風ハンバーグ派

 

 

悪魔・・・和風ハンバーグ派

 

 

人間・・・ごく普通の人間

 

 

 

比率:【2:1 or 不問3】

 

 

 

上演時間:【20分】

 

 

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CAST

 

 

天使:

 

 

悪魔:

 

 

人間:

 

 

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(街中 ランチで悩む人間)

 

 

 

人間:「・・・今日のランチは、何にしようかな~」

 

 

 

天使:「そこの貴方、何か困りごとですか?」

 

 

 

人間:「え? 誰、あんた」

 

 

 

天使:「私は、天使です」

 

 

 

人間:「あ~、宗教勧誘は、間に合ってるんで、他あたって・・・」

 

 

 

天使:「ああああ、違います! ・・・私は、貴方の悩みを解決したいだけです・・・」

 

 

 

人間:「悩みって程の悩みでも無いんだけど・・・」

 

 

 

天使:「どんな悩みでも、構いませんよ・・・。私が解決して差し上げ・・・」

 

 

 

悪魔:「その悩み、ちょっと待った~!」

 

 

 

天使:「その声は・・・。・・・はぁ、また貴方ですか・・・」

 

 

 

悪魔:「おお、久しぶりなのに、その態度・・・。・・・相変わらずじゃねえか天使。

    少しは、会えて嬉しいって喜べよ」

 

 

 

天使:「貴方の顔見て、喜べたら・・・、戦争なんか起きませんでしたよ・・・」

 

 

 

悪魔:「あの戦争から、お前との因縁が始まって、もう数千年か・・・。

    長き因縁、今日こそ決着、付けてやるぜ!」

 

 

 

天使:「決着ですか・・・。・・・望む所です!」

 

 

 

人間:「はい、ストップ。・・・えっと、そいつ、誰・・・?」

 

 

 

悪魔:「この格好、見てもわからないのか? 俺は悪魔だ。

    その気になれば、人間なんか動物でも、何でも変えられるぜ」

 

 

 

人間:「・・・天使の次は、悪魔、登場か・・・。

    ・・・何? 今日、厄日・・・?

    いいえ、結構です・・・」

 

 

 

悪魔:「そいつは、残念だ。所で、人間、どんな悩みか話してみな」

 

 

 

天使:「そうです。私がその悩み、解決してさしあげますので」

 

 

 

悪魔:「抜け駆けするのか? この堕天使」

 

 

 

天使:「誰が堕天使ですか!? 私は、まだ堕ちてません・・・。そんな事よりお悩みを・・・」

 

 

 

人間:「・・・実は、ランチで悩んでて・・・」

 

 

 

天使:「悩んでるという事は・・・」

 

 

悪魔:「もう、食べたい物は決まってるんだな?」

 

 

 

人間:「今日は、ハンバーグ、食べたい気分は決まってるけど・・・」

 

 

 

天使:「ハンバーグ、魅惑的な食べ物ですよね。・・・私は、チーズ入りハンバーグが好きです」

 

 

 

悪魔:「何言ってるんだ。チーズなんか邪道だぜ。・・・俺は、断然、大根おろしたっぷりの和風ハンバーグ好きだ」

 

 

 

人間:「チーズ入りハンバーグに、大根おろしたっぷりの和風ハンバーグ・・・」

 

 

 

天使:「邪道とは何ですか!? 貴方には、チーズの尊さがわかってない!

    熱を加える事によって、トロ~リと溶け出すあの見た目・・・、そして濃厚な香り・・・。

    ハンバーグの肉汁と、合わさった時の美味しさは、まさにゼウス様をも骨抜きにします!

    チーズのない世界なんて、考えられない・・・。

    地球から、チーズが無くなった時、私は迷わず終末のラッパを吹きます・・・!」

 

 

 

人間:「あ~、チーズで、人類、滅ぼされるのか~・・・。

    ・・・戦争か病原菌で滅ぶ未来、想像してたから・・・、

    斜め上過ぎて、リアクションに困る・・・」

 

 

 

悪魔:「・・・終末のラッパ、吹くくらいの美味しさなのか・・・。・・・チーズ入りハンバーグ・・・」

 

 

 

人間:「何、少し、食べてみたいかもとなってる。・・・悪魔、負けるな、頑張れ」

 

 

 

悪魔:「俺とした事が油断してたぜ・・・。・・・中々、やるじゃねえか、天使・・・」

 

 

 

天使:「それ程でも、ありませんよ」

 

 

 

悪魔:「だがな、こっちも負けてねえんだよ。幾らチーズが魅力的でもな・・・」

 

 

 

人間:「チーズ、魅力的な部分は、認めるんだ。・・・悪魔、押しに弱いな・・・」

 

 

 

悪魔:「・・・美味しいからといって食べ過ぎたら、胃もたれして苦しむだろう!

    その点、大根おろしなら、胃には優しい! 消化作用もある!

    脂っぽくて、お肉、苦手というヘルシー思考の女性にも、絶大な人気を誇っている!

    そして、醤油ベースのソースも、ポン酢ベースのソースも合う!

    良い事づくしだ!!!

    最近、胃もたれで悩むルシファー様からも、お墨付きだぜ」

 

 

 

人間:「・・・ヘルシーなのは魅力的。・・・和風ハンバーグもありか・・・。

    ・・・地獄に住むルシファーも、胃もたれするなんて、

    案外、繊細なんだね・・・。悪魔への親近感、湧いた・・・」

 

 

 

天使:「・・・ヘルシー思考という点では、圧倒的に負けてますね・・・。

    最近、ミカエル様、少し・・・アンパン・・・、

    いえ、膨よかになられました? など、部下に皮肉も言われますし・・・

    大根おろし・・・、ダイエットの為なら・・・」

 

 

 

人間:「おっと、天使がやや劣勢気味。このまま、悪魔が、和風ハンバーグで、押し切るのか・・・」

 

 

 

天使:「まだ、負けたわけではありませんよ・・・。

    ・・・大根おろしハンバーグには、不利な部分があるのを、お忘れですか?」

 

 

 

悪魔:「不利な点だと・・・?」

 

 

 

人間:「此処に来て、天使は何やら、秘策があるらしい。果たして、どんな秘策なのか・・・」

 

 

 

天使:「それは、大根おろしは冷たいという点です!

    食べ始めの頃は、熱々でも・・・、冷たいソースによって・・・、

    次第に、ハンバーグの温度は下がり・・・、冷めてしまうのです!」

 

 

 

悪魔:「くそっ・・・、その部分に、気付いちまったか・・・」

 

 

 

天使:「それに対して、チーズ入りハンバーグは、チーズが熱々ですので、

    ハンバーグの温度は、下がりにくい!

    更に付け加えると、煮込みハンバーグにしてしまえば・・・、

    煮込んだソースの熱で、保温性アップします!

    ミートソースの煮込みハンバーグ、ビーフシチューの煮込みハンバーグ、

    そして、スパイスの香りが、食欲促進する・・・、カレーの煮込みハンバーグ・・・!

    どの煮込みハンバーグも、チーズとの相性抜群! ベストフレンド!!!

    チーズこそ、ハンバーグ最強なのですよ!!!」

 

 

 

悪魔:「・・・熱々だけじゃなく・・・、バリエーションも豊富・・・。

    そして、俺の大好物・・・、カレーとの相性まで・・・、・・・くっ・・・」

 

 

 

 

人間:「近頃、世の中は健康ブームで、圧倒的に、有利だったはずの悪魔に対して、

    禁じ手とも言える、カロリーの王様、カレーも導入して、反撃に出た天使・・・。

    ・・・カレーとチーズ・・・、考えただけでお腹が空く・・・」

 

 

 

悪魔:「・・・幾ら、カレーは魅力的と言っても、ハイカロリーだ・・・。

    健康ブームとヘルシー、この二つの盾、そして、女性からの圧倒的な人気は破れないぜ!」

 

 

 

 

天使:「・・・ふふふ、甘いですよ悪魔。

    ・・・女性が、ヘルシー思考だけだと思ってたら大間違いです!」

 

 

 

悪魔:「何だと!?」

 

 

 

 

天使:「カロリー気になるから、食べるのはちょっとは・・・建前にすぎません。

    本当は、女性だって、ハイカロリー、大好き! 美味しい物は、いっぱい食べたいなのです!

    とはいえ、その為には・・・、何か免罪符が必要となる・・・。

    そこで、私は、この剣で、その盾、破らせていただきましょう!」

 

 

 

人間:「おっと、天使が一気に動いた! 天使の用意した剣、・・・あれは、バーニャカウダーだ!」

 

 

 

 

悪魔:「バーニャカウダーだと・・・!?」

 

 

 

天使:「ええ、そうです・・・。バーニャカウダーなら、沢山の野菜が食べられる・・・。

    それ即ち・・・、肉を食べても、野菜も沢山食べてるから、ヘルシー・・・。

    それに加えて、彩り鮮やかな野菜と、お洒落な見た目は、インスタ映えもバッチリ・・・。

    ヘルシーで、見た目も楽しめる・・・。さぁ・・・どうです?」

 

 

 

 

悪魔:「・・・大根おろしたっぷりのハンバーグは、ヘルシーだけど地味といえば、地味・・・。

    まさか、インスタ映えまで、考えてるとは、やるじゃねえか・・・」

 

 

 

 

人間:「インスタ映えで考えると、チーズ入りハンバーグも魅力的・・・。

    最近、始めたけど・・・、投稿、悩んでたから・・・、

    やはり、チーズ入りハンバーグに・・・」

 

 

 

悪魔:「待て待て! 決断するには、早いから!

    今から、こっちの切り札も出すから!」

 

 

 

 

人間:「和風ハンバーグの切り札・・・。気になる・・・」

 

 

 

 

天使:「チッ・・・、後、一歩という所でしたのに・・・」

 

 

 

悪魔:「残念だったな天使。俺の切り札は・・・これだ!!!!」

 

 

 

人間:「そう言い、悪魔が用意した切り札・・・、あれは・・・、日本人の、心の故郷・・・、お味噌汁だ・・・!」

 

 

 

悪魔:「そう・・・、地域により味のバリエーションも様々! 

    無限大の可能性を秘めた究極の・・・ソウルフードだ!!!

    バーニャカウダーなんて、西洋の食べ物より、日本人なら、味噌汁・・・!

    大根おろしたっぷりの和風ハンバーグ、そして白米とも、まさに悪魔的、相性だぜ・・・」

 

 

 

天使:「・・・お味噌汁。これは、思わぬ伏兵を忍ばせていましたね・・・。

    ・・・こちらも、コーンスープ、コンソメスープで、対抗する事も出来ますが・・・。

    流石に、3対2では、フェアではありませんね・・・。・・・私は、具沢山のお味噌汁が、好きです・・・」

 

 

 

 

悪魔:「天使・・・、お前の事、見直したぜ・・・。・・・さぁ、人間・・・」

 

 

 

天使:「私達、それぞれのハンバーグのプレゼンは終了です。

    貴方は・・・どちらのハンバーグにするか、決めましたか?」

 

 

 

 

人間:「天使、悪魔、熱いプレゼン、ありがとう・・・。

    うん、決めたよ・・・」

 

 

 

天使:「では、その決断、お聞かせ願えますか?」

 

 

 

悪魔:「どちらが、より食べたいか、白黒付けてくれ」

 

 

 

人間:「私(俺)は・・・、・・・そこのチェーン店のハンバーガーにする!」

 

 

 

天使:「え!?」

 

 

 

悪魔:「え!?」(同時に)

 

 

 

人間:「二人のプレゼン中に、気付いたんだけど・・・、

    財布に、500円しかなかった・・・!」

 

 

 

 

天使:「えええええええええ!?」

 

 

 

悪魔:「おいおい・・・」

 

 

 

人間:「流石に、500円だと・・・、

    チーズ入りハンバーグと、バーニャカウダーも・・・

    大根おろしたっぷりの和風ハンバーグと、味噌汁も・・・

    どちらも、食べたくても食べられな~い・・・!

    何か・・・、折角、熱くプレゼンしてくれたのに・・・、ごめん・・・。

    と、いうわけだから・・・、さようならっ!!!!」(走って去る)

 

 

 

 

 

天使:「・・・なぁ・・・、悪魔よ」

 

 

 

悪魔:「何だ? 天使」

 

 

 

天使:「・・・今、抱えてる、やり場のない怒りと勢いで・・・、

    この終末のラッパを吹いても・・・、私は・・・、ゼウス様に、怒られないのではないのでしょうか・・・?

    きっと、今の気持ち・・・、チーズ好きのゼウス様もわかって・・・!!!」

 

 

 

悪魔:「気持ちは痛い程にわかる。でも、その手に持ってるラッパは、吹くのは駄目だからな・・・。

    まぁ、何だ・・・。・・・これから、ハンバーグでも食べに行くか?」

 

 

 

天使:「・・・貴方が、奢ってくれるなら、行っても良いですよ」

 

 

 

悪魔:「誰が、奢るか! そこは、仲良く割り勘に決まってるだろう」

 

 

 

天使:「・・・仕方ありませね。では、・・・勝負は、今日の所は、引き分けで・・・」

 

 

 

悪魔:「次は、負けねえからな、天使・・・」

 

 

 

天使:「望む所ですよ、悪魔・・・」

 

 

 

 

 

 

こうして、二人の因縁は、続くのであった・・・。

 

 

 

 

終わり