『Angel~世界の終わりに見つけたもの~』

 

 

 

作者:ヒラマ コウ

 

 

 

 

上演時間:【30分】

 

 

比率:【1:1】

 

 

 

 

登場人物

 

 

 

エリ・・・荒廃した街に1人残された少女 地球の生き残り

 

 

NFP306・・・人間のお世話をする為に開発されたロボット

 

 

 

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CAST

 

 

エリ:

 

 

NFP306:

 

 

 

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(荒廃した街に1人残された少女)

 

 

 

エリ:「パパ・・・ママ・・・。どこに行ったの?」

 

 

 

(そこに一体のロボットが現れる)

 

 

 

NFP306:「生体反応・・・感知。大丈夫ですか・・・?」

 

 

エリ:「貴方は・・・。天使・・・?」

 

 

NFP306:「私は人間の為のお世話型ロボット、NFP306です。」

 

 

エリ:「なんだ・・・。私を助けてくれる天使じゃないのね・・・」

 

 

NFP306:「天使とは何ですか・・・?」

 

 

エリ:「天使はね、この世界の何処かにいて、私をパパとママの所に連れてってくれるの」

 

 

NFP306:「その天使に会えば貴方は幸せですか?」

 

 

エリ:「うん・・・幸せ。」

 

 

NFP306:「それでしたら、私も一緒に天使を探してあげます」

 

 

エリ:「本当に?」

 

 

NFP306:「はい。人間のお世話をするのが、私の仕事です」

 

 

エリ:「ありがとう。NFP・・・」

 

 

NFP306:「どうかされましたか?」

 

 

エリ:「ねぇ、NFP・・・じゃ、長くて覚えられないよ・・・」

 

 

NFP306:「名前を変更しろという命令ですか?」

 

 

エリ:「命令じゃないよ・・・。気に障ったのならごめんね・・・」

 

 

NFP306:「平気です。どんな名前だと覚えやすいですか?」

 

 

エリ:「短い名前だと良いけど・・・」

 

 

 

 

 

 

NFP306:「それでは、サムはどうですか?」

 

 

エリ:「うん、それなら覚えやすいし、呼びやすい!」

 

 

NFP306:「決まりですね」

 

 

エリ:「よろしくねサム! 私はエリよ」

 

 

NFP306:「よろしくお願いします。エリ」

 

 

 

(サムとの出会いを思い出しているエリ)

 

 

 

エリ(M):「初めての出会いは・・・こんな感じだった。あの後、住めそうな家を探したり、大変だったわね。

       貴方は私にいっぱいの思い出と思いやりをプレゼントしてくれたわ。

       そうそう、あの時も・・・大変だった」

 

 

 

 

(住めそうな家はあちこち壊れていたがサムは少しずつリフォームし始める)

 

 

 

 

エリ:「サム、おはよう。何してるの・・・?」

 

 

NFP306:「おはようございます、エリ。この家はあちこち壊れているので、直しています」

 

 

エリ:「どうして?」

 

 

NFP306:「エリが少しでも、快適に過ごせるようにですよ」

 

 

エリ:「ありがとう・・・サム・・・」

 

 

NFP306:「エリ、どうかしましたか?生体反応に乱れが生じています」

 

 

エリ:「なんだか頭がぼーっとしてる・・・」

 

 

NFP306:「大変です。体がオーバーヒートを起こしています。直ちに冷却措置を」

 

 

エリ:「側にいて・・・サム・・・」

 

 

NFP306:「私が側にいたら、オーバーヒートは直りますか?」

 

 

エリ:「うん・・・」

 

 

NFP306:「わかりました。私はエリの側にいます」

 

 

エリ:「サムの体・・・冷たくて気持ちいい・・・」

 

 

エリ:「これからも、ずっと側にいてね・・・」

 

 

NFP306:「エリの側から離れませんよ」

 

 

エリ:「約束だよ・・・」

 

 

 

(その後も少し会話をしエリが落ち着いたのを確認しベッドに寝かせるサム 

 エリの部屋のドアを閉めリビングで1人作業を始める)

 

 

 

 

NFP306(M):「私の名前はサム。

           西暦5000年、〇月✕日。

           本日から、私とエリの行動を記録に残すことにしました。

           今日のエリは、オーバーヒートを起こして大変でした。

           人間の場合はオーバーヒートではなく、

           熱と言うことを教えてもらいましたが、

           次にエリが熱を出した場合、

           私には何が出来るのでしょうか?

 

           以上、記録終了」

 

 

 

 

 

(エリ12歳 あれから月日は4年が経ちエリは元気に育っていた)

 

 

 

 

エリ:「サム、家も綺麗になったね」

 

 

NFP306:「私達がこの家に来て4年が経ちました。時間はかかりましたが、

        エリに喜んでもらえる家になったのでしたら、私も嬉しいです」

 

 

エリ:「うん! この家、大好きだよ!」

 

 

エリ:「ねぇ、今日は天気も良いし、外に行こうよ。サム!」

 

 

NFP:「わかりました」

 

 

 

(外に出てはしゃいでどんどん先に行くエリ)

 

 

 

エリ:「サム、そんな所にいないで、早く!」

 

 

NFP306:「エリ、前を見ないと転びますよ」

 

 

エリ:「そんなドジじゃないもん!」

 

 

NFP306:「・・・」

 

 

エリ:「サムったら心配しすぎだよ。ほらっ! 何ともないでしょ?」

 

 

NFP306:「私はエリみたいに早く走れません。だから、心配になるのです」

 

 

エリ:「私に何かあったらってこと?」

 

 

NFP306:「はい・・・」

 

 

エリ:「大丈夫! もう12歳だし、多少の事は平気だよ」

 

 

NFP306:「それでも、無茶は止めてください」

 

 

エリ:「・・・わかったよ! いちいちうるさいな!」

 

 

NFP306:「エリ、何処へ行くのですか?」

 

 

エリ:「サムの分からず屋! 知らない!」

 

 

NFP306:「・・・」

 

 

 

(再び当時の出来事を思い出しているエリ)

 

 

 

エリ(M):「あの頃の私は本当・・・子供だった。

       だから、いっぱい我儘を言って困らせちゃったわよね・・・。

       今でも時々、当時の事を思い出すと、やり直したくなるのよ・・・」

 

 

 

 

 

 

(エリを探し続けているサム それを遠くに隠れてエリは見ている)

 

 

 

 

NFP306:「エリ、何処にいるんですか? 雨が降って来て、生体反応が上手く感知、出来ません・・・」

 

 

 

エリ(M):「まだ探してる。しつこいな・・・。お願いだから、今はほっといてよ・・・」

 

 

 

 

NFP306:「エリ、出てきてください。」

 

 

 

(そう言いながら向こう側を探しに行ったサム)

 

 

 

エリ:「やっといなくなった! さてと、どうしようかな・・・」

 

 

エリ:「あっ、雨が激しくなってきた! 大変・・・。家に戻らないと・・・」

 

 

エリ:「だけど、このままだとサムがびしょ濡れになっちゃう・・・」

 

 

エリ:「ううん! 良いの! サムなんて雨で壊れちゃえ!!!」

 

 

 

 

 

(エリが家に戻って来てから数時間後家に戻ってエリの部屋を覗き

 エリが無事に戻ってきたのを確認するびしょ濡れのサム)

 

 

 

NFP306:「エリ・・・ちゃんと家に帰って来たのですね。良かった。

        私はエリを怒らせてばかりです。

        ですが、私は貴方の事が誰よりも大事ですよ。

        それだけは、忘れないでください・・・。

        おやすみなさい・・・。エリ」

 

 

 

 

(寝れないで起きていたエリ

 サムの言葉を聞いて酷く後悔している)

 

 

 

エリ:「ごめんね・・・。サム・・・。

    悪い子で・・・困らせてばかりでごめんね・・・」

 

 

 

 

(リビングで行動記録を記録しているサム)

 

 

 

 

NFP306(M):「西暦5004年、〇月✕日

           今日もエリを怒らせてしまいました。

           人間には反抗期という時期があり、

           エリもその真っ最中だと調べてわかったので、

           注意し過ぎないように気を付けようと思います。

           

           あれから4年が経ちましたが、

           エリの探している天使は何処にいるのでしょうか?

 

           以上、記録終了」

 

 

 

 

(行動記録を終えたサム

 そこに寝れなくて起きていたエリがやってくる)

 

 

 

エリ:「サム・・・」

 

 

NFP306:「エリ、こんな夜更けにどうしたのですか?」

 

 

エリ:「今日はごめんね・・・」

 

 

NFP306:「謝る必要はありません。エリの今の状態は、

        人間の成長の過程で誰もが経験する反抗期というものです」

 

 

エリ:「反抗期・・・?」

 

 

NFP306:「エリにはまだ難しい事ですから、今のまま元気に育ってください。

        それが私からの望みです」

 

 

エリ:「うん!」

 

 

NFP306:「もう夜も遅いので、寝てくださいね。

        もし、寝れないのでしたら、絵本を読みます」

 

 

エリ:「じゃあ、絵本読んで」

 

 

NFP306:「わかりました。さぁ、ベッドに入ってください。準備は出来ましたか?」

 

 

エリ:「出来たよ」

 

 

NFP306:「それでは、始めます。

        

        むかしむかしある所に、おじいさんとおばあさんがいました。

 

        おばあさんは川へ洗濯に、おじいさんは山へ芝刈りに行きました。

 

        おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が・・・」

 

 

 

エリ:「スー・・・スー・・・」(寝息をたてて寝始める)

 

 

NFP306:「おやすみなさい。エリ」

 

 

 

 

 

 

 

(更に月日は流れエリは20歳になり立派に成長する)

 

 

 

エリ(M)「私とサムが出会って今日で12年・・・。

      私は20歳になった」

 

 

 

(リビングで朝食の準備をしているエリ

 その表情はなんだか深刻だった)

 

 

 

NFP306:「おはようございます。エリ」

 

 

エリ:「おはよう。サム」

 

 

NFP306:「今日はエリの誕生日ですね。何をして過ごしますか?」

 

 

エリ:「・・・」

 

 

NFP306:「深刻な顏してどうしましたか?」

 

 

エリ:「ねぇ、サム。最近思うの・・・。私はこのまま1人で年老いて、

    死ぬのかなって・・・」

 

 

NFP306:「エリは1人ではないです。私がいます。」

 

 

エリ:「それはわかってる。だけど・・・サムは一緒にご飯も食べられないし、

    出来ない事が多いわ・・・」

 

 

NFP306:「それは仕方ないことです。私はロボット、エリは人間。

        こればかりは、どうすることも出来ません」

 

 

エリ:「頭では理解してるのだけど・・・。この頃は心がその事についていけないの・・・。

    凄く苦しいのよ・・・!」

 

 

NFP306:「苦しい? どこか体調が悪いのですか?」

 

 

エリ:「そうじゃない・・・! 私は寂しいのッ!」

 

 

NFP306:「私がいても寂しいのですか?」

 

 

エリ:「サムは人間じゃないじゃない・・・!!!

    私がどんどん年老いても、貴方は変わらないまま・・・。

    私は1人で老いて死ぬしかないのよ・・・」

 

 

NFP306:「エリ、泣かないでください」

 

 

エリ:「サムとなんて出会わなければ良かった・・・!

    そしたら、私は、ぬくもりを知ることなく1人であそこで死ねたのよ!」

 

 

NFP306:「エリ、それは違います」

 

 

エリ:「何が違うっていうの・・・?」

 

 

NFP306:「私はエリと出会い、沢山の感情を知りました。私はエリを愛しています」

 

 

エリ:「ロボットに愛なんてわかるわけない・・・」

 

 

NFP306:「ロボットにだって心は宿ります。守りたいと思う気持ちは芽生えます」

 

 

エリ:「守って欲しいなんて、私は頼んでない・・・!」

 

 

NFP306:「これは私がエリを心から大事だから、自分で考えたことです。

        ですが、それが知らない間に、エリを傷つけていたのですね」

 

 

 

エリ:「サム・・・。今日は1人で過ごすわ・・・」

 

 

 

NFP306:「わかりました。エリ」

 

 

 

(その夜、エリが自室で寝たのを確認した後に行動記録を記録するサム)

 

 

 

NFP306(M):「西暦5012年、〇月✕日

           エリは酷く疲れた顔で叫びました。

           私はエリの気持ちに応えることが出来ないのでしょうか?

           私は永遠に歳は取らないし、壊れるまで稼働し続ける。

           エリは寿命が来たら死んでしまいます。

           そうなれば、私はまた1人ぼっち・・・。

 

           以上、記録終了」

 

 

 

 

(翌朝 エリが起きるとサムは既に起きていた

 だがサムの様子がおかしいのに気付くエリ)

 

 

 

エリ:「おはよう・・・サム。昨日はごめんね・・・」

 

 

NFP306:「おはようございます、エリ」

 

 

エリ:「サム、貴方・・・」

 

 

NFP306:「気付きましたか?」

 

 

エリ:「なんでこんな馬鹿な事したの!?」

 

 

NFP306:「私はエリのいなくなった世界で、また1人ぼっちになるのは、

        嫌だと思いました」

 

 

エリ:「だからって・・・。自分で維持装置を壊さなくても、良いじゃない・・・」

 

 

NFP306:「エリ、悲しまないでください。これで私も貴方と同じで、

        いつ機能が停止するかわからない状態になりました。

        愛するエリと一緒になれて、私は今幸せです」

 

 

 

エリ:「サム・・・。私の為にありがとう・・・。そして、ごめんね・・・」

 

 

 

NFP306:「エリの寿命が尽きるまで、私は側にいます」

 

 

エリ:「約束よ・・・」

 

 

 

(再び当時の事を思い出しているエリ

 あれから50年が経ちエリの寿命も尽きようとしていた)

 

 

 

エリ(M):「それが、彼の最後の言葉だった・・・。

       私は酷く後悔をし、あの日に戻りたいと、

       何度も思い、苦しんだ・・・。

       死にたいとも思った・・・。だけど、

       暫くして、見つけたサムの行動記録を見て、

       私は1人でも生き続けようと思った。

       だけど、私も今じゃ・・・70歳・・・。

       そろそろ、彼の側にいっても・・・」

 

 

 

(その時、懐かしい声がエリに聞こえてくる)

 

 

 

NFP306:「エリ、聞こえますか?」

 

 

エリ:「その声は・・・サムなの?」

 

 

NFP306:「はい。エリの生命反応が弱くなってきたのを感知したので、

        私の中の予め設定していた機能が動いたようです」

 

 

エリ:「どうしてそんな機能を・・・?」

 

 

NFP306:「私もエリと一緒に最後を迎えたいと思ったから、もしもの時の為に、

        設定しておきました」

 

 

エリ:「サム・・・」

 

 

NFP306:「私がいなくなってからは、どんな事がありましたか?」

 

 

エリ:「色々あったわ・・・。サムに話たい事が沢山。

    だけど、そろそろ時間のようね・・・」

 

 

NFP306:「死ぬのが怖いですか?」

 

 

エリ:「ううん、怖くないわ。貴方が一緒だから・・・」

 

 

NFP306:「私もエリが一緒なので怖くありません。

        ですが、1つ心残りがあります」

 

 

エリ:「どんな?」

 

 

NFP306:「私はエリの為に、天使をみつけられなかった。

        それが心残りです」

 

 

エリ:「それならもう良いの・・・。私はちゃんと見つけたわ」

 

 

NFP306:「どこでですか?」

 

 

エリ:「それは秘密よ」

 

 

NFP306:「わかりました」

 

 

NFP306:「エリ、私はそろそろ完全に機能停止しそうです」

 

 

エリ:「そう、ゆっくりおやすみなさい・・・サム。すぐに私も側にいくわ・・・」

 

 

NFP306:「おやすみなさい、エリ」

 

 

エリ:「おやすみなさい・・・。サム・・・」

 

 

 

(エリが目を閉じ旅立ったのを確認して静かにサムも機能を完全に停止させる)

 

 

 

エリ:「私の天使は貴方よ。誰よりも愛して大事に育ててくれた。

    本当、感謝してるわ・・・。

    そして、愛してるわ・・・サム。

    素敵な人生を・・・どうもありがとう・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わり